紙の本
重厚にして軽妙
2015/08/28 23:30
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙絵の防護服とロードバイクの組み合わせに惹かれてなんとなく購入しました。世界の終末に備えて作られた超巨大シェルター、アルカディアマンションの中と外で生きる人間を数百年単位で描いた重量級SFです。
働かずとも生活が保障されるアルカディアの在り方とその中で生き方を模索する人間の描き方が軽快で巧いと思いました。また、短編集の形をとりつつ、一族の歴史を軸にしてアルカディアの歴史的背景とアルカディアに関わる人達のショートストーリーを絡めた複雑な構成なのに読みやすかったです。重厚にして軽妙って感じで、さすがはライトノベル出身の作家さんだなーと納得しました。
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何となくタイトルに惹かれて購入。
最近のハヤカワ文庫JAではあまり見かけない雰囲気で、良い意味で意外性が高かった。割合に強い閉塞感というか、鬱屈した感情を叩きつけるような文体が印象に残る(勢い重視系なので好みは別れるか?)。
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江波XSFX家族サーガ。江波さんでガチSFだった一作。江波さんらしいキャラクターの立て方、その心理と、ガチのSF設定が組み合わさって実に面白い。家族サーガとしての構成も見事でテーマに関しても明確に提示かつ自分自身興味があるもので大変興味深く読むことが出来た。江波さん好き、SF好きなら楽しめる一作であると同時にここから両者に入っていく人にもオススメできる作品。多くの人に読んでもらいたい良作。
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「クロージング・タイム」★★★
「ペインキラー」★★★★
「ラヴィン・ユー」★★★
「ディス・ランド・イズ・ユア・ランド」★★★
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シェルターであり、何もしなくても生きることができる保証がされているアルカディアマンションの中で繰り広げられる短編集。
それぞれの話の時間と人物は違うが、「血縁」という関連がある。
内容的には人間の負の部分の話が多いものの、軽快に語られるのでさらりと入ってくる。
同じ内容の自分語りが繰り返されることも多いが、逆に人間くささが表現されている気がする。
理想郷、天国、楽園とは。
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めちゃめちゃ面白くて一気に読みました!これは聖書がベースです。世界の終わりが近付いている世界。世界を終わらせようとしている世界。配置されているもの全てに意味があってめちゃめちゃよかった!オッドアイの御園一族。御園は神に捧げる作物を作る畑。御園洛音とアルバドル・フーリーは実の兄妹で夫婦。アダムとイブ…なのか。リリスかも。最初の二人からはじまってオッドアイの一族が方舟のなかで外でどんな風に交わっていくかが何百年にも渡って書かれている。なんて広大なんだろう。面白すぎた。久々にスゴく好きなSF作品にあたった。日本にもこんな面白い作品書くSF作家いたんやなーと。哲学的でもある。ワタシは作品には隠れてても見えててもいいから、哲学がないとダメだと思ってるから。これは自分の勝手な言い分ですが。
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作者のライトノベル作品が好きなこと、早川文庫であることとあらすじから購入。夢中になって読み進めた訳ではないのに、いつの間にその世界に入り込んでいる。不思議な虚無感と諦念がある。
国民の大多数が生活保護を受給しニートとなり、窓のない外に出ることもない8畳の個室で衣食住に不自由なく生活している。外は大気汚染で満ちており、生身で出掛けるとリアルに寿命が縮む。生体チップを体内に埋め込むことが当たり前になっており、自分の寿命でさえ秒単位で確認できる。目指す将来の夢に対し心身の成長の指向性をもたせるなど、興味深いガジェットも登場する。
文明が崩壊したわけではなく、かといって目的意識のあるディストピアでもなく、ただただ弱者保護をしていたら巨大なニート産業が生まれていたところから、他の世界にはない独特の雰囲気をもつ。14才の女の子が、親元から離れて一人暮らしをし、義務教育も受けず一日中ネットをして暮らしていける。時間を潰す。死ぬまでの時間を潰す。そういった生々しい、何とはなしに嫌悪感を抱くような感情。
文明崩壊的なディストピアさを感じるのに、人情を感じないのは、あまりにも自由であるから。生きるも死ぬも自由。衣食住は保障され、何の不自由もない。ネットはただで見れて食事もただで食べれて、寝る場所もお小遣いも支給される。
人は、退屈には耐えられない生き物だ。何もしなくて良いとなると暇を持て余してぶらぶらする。一定の割合で無償で働き始める人がいる。
不自由は自由だということ。不自由だからこそ生きていける。何をしてもいいは何もしなくていいと同義、何をしても意味がないとも言える。不自由な身体という道具を駆使して、不自由に求められたことをやるから意味があるのかもしれない。
最終的にこの物語が何を言いたかったのかよく分からなかった。章ごとの繋がりも不明だし前後関係もよく分からない
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諸々の環境汚染で国民ほぼ全員が国営のシェルターマンションに引きこもりになった日本で生きる、とある一族のクロニクル。
連作短編を読み進むと、次第にマンションの成り立ちがわかってきて面白くなった。働く必要もなくなった世界は、果たして理想郷と言えるのかな。その辺りの設定は興味深かったけど、キャラクターにはイマイチ乗り切れず。つかみどころというか、自分の中の評価に難しい一冊だった。
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作者お得意の皮肉混じりな哲学を随所に散りばめつつSFガジェットも盛り込んで描かれた神話といった読み味。キャラの言動が激しくクッセエ癖にキャラクターたちがかわいくて最後に近づくにつれて泣けてくるし笑えてくるの、江波光則なんだよなぁ……
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わりと面白かった。
働かなくて良い世界、働かなくても生きていける、生きることができる世界。
なんとなく理想のような、でも何も目的もなくなってしまうような、そんな世界でのお話。
なんとなく、各話の登場人物の関連性が見えつつも、きちんと解説されるわけでもなく、想像任されたのだろうけれど、この書き方なら明確にして欲しかった、と思った。
150923
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不思議な未来のお話。働かなくていい世の中で、ともすれば生きる目的もなくしてしまう世界。登場人物は関連しまくりだけど、年代順序は読みながら自己補完するしかない感じ。一番最初のお話がとんでもない未来SFなので理解が難しくとっつきにくいかも。私も冒頭で訳がわからなくてしばらく積んでいた作品。読み進めるとなんとなく理解できてくる。各話の主人公たちは(おそらく)一族だけど個性があって、各々違った生き方をしてる。面白いと言えば面白いが、私ごときの頭では作品に込められたメッセージ的なものは理解できなかった。もしかしたらSFって苦手なのかも
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生活保護者を集めたマンションから始まり、ベーシックインカム、生活すべてを提供するシェルター、成長や肉体改造を制御が可能になった未来。
生きていくだけならオートモードでいけるが、それぞれの満足を求める話。
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マンションという窮屈な入れ物のなかに無理矢理詰め込まれた理想郷。
働かなくていい、適当に遊んでいればいい、そんな生活が許されたとしたら、人は何を求めて生きていくのか。
空想じみた世界観と、妙に生々しく現代と案外変わらない人々の営みの描写が合わさって生まれる、アンニュイな空気感が心地よかった。分不相応なものにこそ焦がれてしまう感じは胸にくる。
壮大かつ閉鎖的という、奇妙なラブストーリーだったけど、お話としてはちょっと分かりにくくて文量が中途半端だと感じた。もっと短くするか、がっつり長編が良かった。
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未来についての創作は、未来の世界に合わせて概念も変えていかなければ陳腐になり、全く面白くなく、人をいらつかせるということを気づかせてくれた作品。つまり、これはほんとにがっかりなやつ。ごみ。登場人物の台詞も鼻につく。もう12月で寒いから焚火にくべて暖を取ろう。
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タイトルは絵画。
アルカディア=理想郷。
アルカディアにも死の存在はある。死は必然、といったところか。
世界観は違和感なく受け入れられたが時代が前後するので読み終わるまで疑問が尽きなかったりする。短編集かと思ったけど、長編SFラブストーリーだった。
個人的にはクローズド・タイムは良かった。御園珊瑚への憧れと、憧れから来る焦燥・渇望が狂おしいほど感じられて、文章が生き生きしてた。
他の話は少し主人公に諦観が滲みすぎてて物足りなく感じた。
衣食足りて礼節を知る。が、衣食足りるだけでは満たされないのが人間。
個人の理想郷の実現と社会の安定を最大化できたとすればこんな世界になるのかなとも思うけど、ぞっとする。
やはり人間には衝動が必要で、個人の理想郷を追求すると他者のそれとは相容れることはないのだろうなぁ。