紙の本
読後、たまらく音楽が愛おしくなるエッセイ
2009/06/02 20:35
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌「ステレオサウンド」に連載されていたものをまとめた、音楽エッセイ。
クラッシックから、ジャズ、ロックと多岐にわたっているのがまず魅力的。
村上春樹のエッセイの魅力は、なんといっても主観のゆるぎなさだと思う。どういうジャンルのどういう音楽でも、彼はまず受け入れる。それから、これは自分に合うとか、合わないとかを、判断していく。と書くと、当たり前のことのようだけど、世界にあふれる情報に惑わされることなくその判断をするって、とても難しいことだと思うよ。
また、ここにあげているものが基本的に村上春樹の好きな音楽という前提もあるのだろうけれど、その文章もすごく優しい。ミュージシャンの中には、そういう時代性もあったのだろうけれど、破滅的な生活をして人間的には全くダメな人もいる。
そんなミュージシャンに対しても、春樹の視点は常に水平を保っている。
ゲイであると公表していたというプーランクにたいしても、単にそういう事実がありました、的は書き方をしている。
彼らが作り出した音楽の前に、その人間がどういうものであろうと、それは些細なことでしかないのだ。
これはこれ、あれはあれと、きちんと割り切れることが春樹の強さだと常々思っていた。
そして、これを読んで、そのことの揺るぎなさがうれしかった。
また、読後、すごく音楽を聴きたくなった。本にあげられていたミュージシャンや作曲家はもちろん、とにかくいい音楽が聴きたいと思った。
音楽エッセイとして、それが最上のことであることは間違いないと思う。
紙の本
いろいろ登場した音楽を聴いてみたいなと思いました
2023/06/27 16:48
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルービンシュタインとゼルキンの話が興味深かったです。読んでいると、とてもその音楽を聴きたくなりますね。
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スタン・ゲッツもマルサリスもゼルキンも、スガシカオでさえ聞いたことない私がこの本を読んでこんなにも面白いと思うのはまさに、「どや兄ちゃん良かったろ」的世界に足を踏み入れてしまってるからなんだろう(もちろんハルキ的世界にね)と思いつつ読みました。一番しっくり感じたのはプーランク論で、興味深かったのはルービンシュタインとゼルキンのくだり。スガシカオ論では書き手としての言葉選びへの言及があってこれも非常に楽しく読めた。
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『のおや(さん)の本棚』http://booklog.jp/users/noh/archives/4167502097
に同感です。
春樹さんによれば、
『文体』って『クゥ〜』って感じで10年くらいは中毒が続くんですね。
春樹さん本人は、
10年以上は職業的に限界を迎えていないわけだから、
それ以外の要素も兼ね備えてるわけですね。
まあ、当然と言えばそれまでなんですけど。
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まだ読みかけ
私にはまだまだ奥が深い分野で・・・
もっともっと知りたいな、っていい意味で私を焦らせてくれる本
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年末に帰省した際に行った本屋さんで購入
http://www.keibunsha-books.com/
音楽に造詣の深いヒトって素敵ですね。
村上さんといえばJAZZが詳しいイメージですが
ジャズに限らず色々守備範囲は広そうです。
私も好きなスガシカオがフューチャーされていて
へぇ。っと買ってしまいました。
★3つの理由は、今回紹介されている
全部の音楽を知らなかったので、全て読み切らなかったこと!
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ノルウェイ〜以来、どうにも苦手な作家さんでしたが、書かれているアーティストに興味があって久々に手にとりました。
次の日、著書の翻訳本を2冊買ってしまいました。見方が変わりました。
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文庫が出たら買おうと思っていて、買って読んだ。
個人的には、カーヴァー絡みであり、かつ時代的にも
著者と同時代人であるブルース・スプリングスティーンの回を
興味深く思った。
他には、ブライアン・ウィルソンの回とスタン・ゲッツの回は、
力がうまく伝わっているように感じた。
といっても、シューベルトの回とゼルキン・ルービンシュタインの
回もいい雰囲気が出ているし、その他の回だって、
俯瞰すると、全体のバランスの中でそれぞれいい味を出していると思う。
ウディー・ガスリーの詩もなかなか力強い。
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シューベルトのソナタ。なんで好きなのか考えたら、およそほとんど暗くて低い音が響いているのが、自分のいつもの心の中に似ているからかも。
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村上春樹が描くエッセイは素晴らしい
小説とはまたひとつ違った味わいがある
平易な文体はもちろん、ちょっとした生活のこととか、趣味とかそういう誰でもコミットできる題材を春樹流にまとめた文章は読んでいて気持ちいいものだ
しかし村上春樹は本当によく音楽を聞いているなあ・・・
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春樹のエッセーは基本的には読まない。
だけどこれだけは読まずにいられなかった。
彼の音楽観は小説にリンクしていて、
それがとても楽しみだったからだ。
そして想像通り、彼らしさを見せてくれた。
やはり秀逸なのはスガシカオについて。
邦楽と洋楽の違いなんてきっとない。
ないからこそ僕達は自分で線を引くんだろう。
これを読んで思ったことは一つで、
春樹の引いた線に同意する。
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シダー・ウォルトン、ブライアン・ウィルソン、フランツ・シューベルト、スタン・ゲッツ、ルドルフ・ゼルキン、アルトゥール・ルービンシュタイン、ウィントン・マルサリス、スガシカオ、フランシス・クープラン、ウディー・ガスリー、この面子を縦横に語って間断しないのは村上春樹ならでは。幸い、全て知ってる音楽家なのでとても楽しめた。
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村上春樹を読んでいると、クラシックやジャズにだんだん興味がでてきて、音楽に関する本を読もうと思ったのがこれ。バーをやっていただけあってさすがの知識ですね。
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これ、最後まで読めなかった…。
ジャズの専門用語とか、細かい単語がたくさん出てきて、
知ってたらわかりやすくて読みやすいんだろうけど
そういう知識が乏しい私には無理でした。
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まずジャズ、ポップス、クラシックにまたがる村上の博識に驚いた。もちろん努力して聴いている面もあるのだろうが、各ジャンルで自分の好き嫌いを持っている。大衆に自分の音楽の趣味を説得的に語るのは勇気のいることだ。生半可な知識と覚悟ではできない。しかもタイトル。口当たりのいいエッセイ調ではなく、音楽の魔法を可能なだけ言語化してみようという、果敢な試みだ。それがどれほど成功しているのかは分からないが、とりあえず未聴だったものを聴いてみたくさせてくれた。ジャズの話では陽炎のように孤独な音楽に引かれる村上の趣味が、神戸地震以前の彼の作品に通底する気分と呼応する気がするし、最後にウディ・ガスリーの話を持ってくる所には、逆にそれ以降の彼の動き、そしてこれから何かに向かっていく文学的な気概までをも感じさせる。