紙の本
家族・親族間の人間模様を描く
2020/09/01 23:34
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろいろなジャンルの小説を発表している周防であるが、今回は複雑な家庭環境にある家族同士の葛藤を描いている。タイトルからは、如何にも犯罪の匂いがするが、ストーリー自体は犯罪の陰はない。しかし、ミステリーと見れば見られないことはない。
中心となるのは兄弟である。ぐーたらで性悪な兄と真面目な弟の間での葛藤である。兄は自分で事業を行っているが、どれもこれも失敗が続き、生活する金さえ覚束ない。それにも関わらず、新たな事業を探し出してきては損をしている。弟は生まれながら腎臓に疾患があり、うまく機能していない、腎臓障害の行き着くところは透析か移植である。
病気を抱えながらの生活であるが、父親が交通事故にあい入院する。当初は怪我だけだと思われたが、脳に障害が残り、意識を失ってしまった。兄弟の間では植物人間になった父親の延命措置をめぐってもめてしまう。その際に工務店を経営していた父親の財産が2億円だという。
この財産をめぐって事業継続を目論む兄と、父親の生存を重視する弟の争いとなる。加えて、それぞれの配偶者、子供を加えて家族、親族間の付き合いが不安定になる。そこに意外な事実が弁護士からもたらされる。
これまで周防の歴史ものが気に入っていた。『逢坂の六人』、『蘇我の娘の古事記』、『高天原―厩戸皇子の神話』がそれである。とくに『逢坂の六人』はもっと人気が出てしかるべきであろう。それ以外もその切り口に特徴があって面白い。残念なのは寡作家なのか、作品数が少なく、新作を待たされることである。
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重厚な社会派小説を期待しましたが…、
何だか、安っぽいメロドラマでした…。
交通事故にあった父親の延命治療の是非を、
2億円の遺産を軸に、兄弟が争ぅ設定は…、
本来ならば、延命治療といぅ骨太の骨格に、
贅肉を削ぎ落とした筋肉質なお話になるところ、
骨粗しょう症のよぅな?スカスカの骨格に、
贅肉がたっぷりのブヨブヨなお話になっており、
終章もかなり興醒めな感じで、ガッカリ…。
延命治療にしろ、
腎臓移植にしろ、
遺産相続にしろ、
キャラクターから語られる主張は在り来たりで、
お話も含め、作者さんの創造力が乏し過ぎる…。
現実は、面白くなぃくらいシンプルで、しかし、
二者択一の選択の苦悩は、こんなもんじゃない。
そこを、どぅ脚色して、どぅ小説にまとめるか、
とても難しぃでそぅが、いつか読んでみたぃ…。
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車の事故で入院することになった父親がもし死んだら、その時は遺産が2億円ほどになるらしいと知った兄弟。延命治療を望む弟と、望まない兄と、兄弟それぞれの妻、また、父の内縁の妻、父の会社の従業員…多くの人を巻き込んで、命の重さと命の値段、価値について深く考えさせられる小説でした。
テーマは重いのですが、文体が読みやすくスラスラ進みます。
ただ、やっぱり割り切れない部分、同意できない部分、納得できない部分がありました。
それは、それぞれの家族にそれぞれの考えや結論があるのであって、これがという正解はないから仕方ないと思います。
本人の意思と残される者の意思や事情、どちらが優先されるべきなんでしょう。
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人間の本性を剥き出しにされる作品。この登場人物が直面した問題を考えながらも、自分にも同じことが起こったら、果たしてどうなのだろうかと。
ある兄弟。兄はロクデナシだが、どこか憎めない。弟は気持ちは優しいのだが、腎臓病をずっと患っている。兄とは腹違いの兄弟。その兄弟には誰からも慕われる強く正義感なお父さんがいる。
そんなお父さんが、近所の子どもがクルマに轢かれそうなところを身をもって助けたのだが、その後遺症で生死を彷徨うことに。
兄には借金とやはり腎臓病の子どもがいて、金がいる。そんな時に保険金の話が舞い降りて。弟は金なんていらないからお父さんを助けたいと言うが、人間の本性はそんな簡単なものではなく。
金だけの話ではなく、色々な問題点が絡んできて、自分だったらどうだろうと考えずにはいられない作品。最後のシーンでは心が救われた。
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舞台は九州最北端のK市。主人公の父親の葬式の場面から物語は始まるが、その死を心から悼む家族はいない。彼らに何があったのか。物語は5ヶ月前へとさかのぼり…。最後のまとめ方には性急さも感じられるけれど(いっそ金金言うてた人間が全員不幸になるような突き放した終わり方でもよかったのではw。そこは著者の優しさなんだろうか)、命とお金について考えさせられる良作。
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事故にあった父。
延命治療すれば莫大な時間と労力。
延命治療しなければ保険金のたぐいが2億円入る。
義理の息子である兄は延命なしの死を受け入れ、実の息子である弟は延命治療で生きていてもらいたい。
弟の考え方に納得できない部分が多かった。無理矢理こじつけて兄弟を対立させてるような。
こんなに感情の細やかな弟が、兄の嫁と不倫しといて悪いこととは思ってなかったところとか不自然に思える。いくら過去に女を共有していたとしてもだ。
ラストも馬鹿丸出しな感じで兄に操られたという印象。
延命について自分は冷徹に書かれていた兄の考えに近い。
命と対峙するには、感情論よりも現実的な労力や資金も考えなくてはいけないと思う。
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田村 一也と次也の兄弟とそれぞれの妻 玲子と孝江が父 田村工務店の社長 俊司の死をめぐって織りなす物語だ.打算的な一也に翻弄されてきた次也だが,一也が連れてきた弁護士 村上和彦から俊司が死亡すると2億円が遺産だという話を聞き,妙な気持になる.そんな折,俊司が交通事故にあったという連絡が来て東京に住む次也と大阪の一也が九州に帰る.その時は父俊司の容態は問題はなかったが,リハビリ中に卒中を起こし,植物人間状態になり,兄弟は延命治療の是非について延々と議論を重ねる.お互いの意見が変動するなかで,遂に俊司が死亡する.葬儀が終わった段階で,俊司の世話をしていた好美が正式の妻だったことが判明し,ひと悶着が起きる.次也は腎臓病で父の腎臓を生体肝移植で貰っており,一也の息子 湘も腎臓で苦労している.この腎臓病が話の全体に覆いかぶさっている感じだ.
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親を思う気持ち、自分の病気のこと、家族のこと
なんだか切ないんだけど、
どうしようもない兄貴なのかと思いながらも
最後には、スカッとさせられた
自分だったらどうするのかなとたくさん考えた
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主人公は田村次也。工務店を営む父親が近所の女児を助けるために交通事故に合うところから話が始まる。家族や命について考えさせられる作品。
人格者の父、その父は主人公にとって守護神だという。腎臓が悪く、父から生体腎移植をしてもらったことで今は健康に毎日を送ることが出来ている次也。次也には兄がいるが、正反対の性格、次也とは父違いの兄で、起業しても次々失敗し、その度に父親に尻拭いしてもらっている。父親の急変で、延命治療の有無で意見が食い違う。次也彼にとって父は一心同体、どんな状態でも生きていて欲しいと願う存在。現実主義の兄は目前の金にとびつく。いろんな仕掛けで次也を説得、結局延命治療せず、父親が亡くなるが、後半、大ドンデンが連続で…でもラストの前向きな終わりかたがよかった。
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一人称で記述された物語が苦手だ。少しだけ調べてみたが、書き手としても難易度は高いらしい。特に成人男性が主人公のものが苦手かも。
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命とカネの話し。蠢く欲望と思惑。そして、女は怖いという話し。この話しの結末には未来がある(と思う)。
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73生きる価値と困難を乗り越える難しさ。家族は難しいねえ。財産なんてものがあると問題が起きるという教訓か。暗くなり過ぎず軽やかなタッチで一気に読みました。