紙の本
アンソロジーを読む楽しみ
2016/06/18 05:38
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人小池昌代さんによる詩のアンソロジー。同じような試みは同じ新書から『通勤電車で読む詩集』として出ているが、今回はタイトルのとおり恋愛詩を集めてものだから興味をひく読者も多いだろう。
アンソロジーというのは異なる作家の、ここでは詩人だが、作品を選んで編まれたものだが、語源は花束という意味らしい。出来合いの花束ではなく自分で花一つひとつを選んでいるので選者の個性が出るともいえる。
「はしがき」によれば、恋愛詩と思えない作品もあるが、それが小池さんの「願う恋の姿」だとある。
「恋うとは遠いものに橋を渡すこと」だと小池さんはいう。もし、恋愛詩と思えない作品にそんな橋が見えないだろうか、それが小池さんの恋だ。
収録されている詩を少し紹介しておく。「初恋」(吉原幸子)「樹下の二人」(高村光太郎)「とてもたのしいこと」(伊藤比呂美)「無声慟哭」(宮澤賢治)「雷」(林芙美子)「薔薇の内部」(リルケ)といったように、古今東西の詩人が並ぶ。
それほどに恋愛は昔から詠われてきているのは、人として根幹の感情であるからだし、その思いの表現はその人の数だけあるということだろう。
詩人の茨木のり子からは詩集『歳月』から「夢」という詩が選ばれている。自分の好きな詩ということもあって、小池さんの選に納得する。
自分の好きな詩が入っていればうれしいし、新しい詩に出合うのもまたうれしい。
それこそアンソロジーを読む楽しみだといえる。
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片恋、恋人、夫婦、死んでしまった相手、世界そのもの、母のようなもの。
恋愛の形や相手はいろいろで、誰もがなにがしか考えたことがあるみたい。
詩だからこそ描き出せる、官能的なイメージあふれる詩もいくつもある。
印象に残ったのは松井啓子「ねむりねこと」、萩原朔太郎「強い腕に抱かる」、茨木のり子「夢」。
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小池昌代さんが選んだアンソロジーです。これって恋愛詩なの?と考えさせられる詩が大半を占めますが、そこがまた良いですネ。さらっと読むのではなく、味わいながら思いを巡らせることになりますから。
言葉にならないもの、言葉にできないもの、言葉では言い尽くせないものを表現するのが詩人なんだと思います。宮沢賢治の〝報告〟なんて、短いけれど妙に心に沁みますもんネ。行間や余白から香り立つものを、静かに感じ取る時間も、たまには必要ですよネ。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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恋のさまざま――はしがきにかえて
I
一目惚れ――ヴィスワヴァ・シンボルスカ 沼野充義 訳
報告――宮澤賢治
はい は楽しい いなかです――E・E・カミングズ 藤富保男 訳
初恋★――吉原幸子
「ニ」(あかしあは尽きないのに)――岸田衿子
井戸のまわりで ヤニス・リッツォス――中井久夫 訳
時こそ今は……――中原中也
橋★――まど・みちお
樹下の二人――高村光太郎
わかれのかた★――江代 充
ねむりねこと★――松井啓子
夜の脣――大手拓次
伝説★――会田綱雄
II
強い腕に抱かる――萩原朔太郎
なめる/蛇★/未来★――谷川俊太郎
プレゼント★――三角みづ紀
とてもたのしいこと――伊藤比呂美
欲望――ピエール・ルイス 沓掛良彦 訳
無声慟哭――宮澤賢治
薔薇の内部★――リルケ 富士川英郎 訳
夜までは★/舌★――室生犀星
男について★――滝口雅子
住所――ソホラーブ・セペフリー 鈴木珠里 訳
娘に――シャロン・オールズ 江田孝臣 訳
かぜのなかのおかあさん――阪田寛夫
III
雷――林 芙美子
秋の犬――村野四郎
緑――左川ちか
住所とギョウザ――岩田 宏
おやすみスプーン★――正津 勉
夢――茨木のり子
沈黙II――ローゼ・アウスレンダー 加藤丈雄 訳
あけがたにくる人よ★――永瀬清子
貝殻骨――須藤洋平
布良海岸――高田敏子
そろばん/切符――中 勘助
遅い★――新藤涼子
好日――天野 忠
はる なつ あき ふゆ――大岡 信
恋の枝を燃やす――あとがきにかえて
〈付〉詩人略歴
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チョコを食べると脳が“幸せホルモン”を出すという。それは恋愛中のドキドキに似ているという声もあるそうで。
これはチョコレートのような詩集です。
「恋愛」そのものというより、恥じらいとか、浮遊感とか、官能性とか、恋愛中に味わう心のふるえを体感できる作品が詰まってます。
この本では異質の作品なんですが、「住所とギョウザ」が衝撃で購入に至りました・・・!
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『通勤電車で読む詩集』の続編です。
編者の小池さんは、「はしがきにかえて」で、
「恋するひとは狂気のひとだ。彼らの目は中心を失い虹色になって輝いている。うらやましいがおそろしい。それはもはや、尋常な状態ではないのだから。恋は事件でなく、事故なのだと思う。そんな彼らに恋歌のアンソロジーを薦めてみたところで、読んでいる場合じゃないかもしれない。では恋歌を読むのは誰か。今日も明日も、一見恋とは程遠い現実のなかで、汚れにまみれながら生きている、わたしたちではなかろうか。(中略)
これって恋愛詩?と思われるような作品も、ここにはさりげなく、混ぜてある。でもそれが、わたしの願う恋の姿だ。恋うとは遠いものに橋を渡すこと、そうだとしたら、詩のことばはみんな恋を生きている」と語られています。
前編と同じくすべての詩に小池さんの解説付きです。
私が好きだったものを挙げると
「一目惚れ」ヴィスワヴァ・シンボルスカ
なんて素敵な詩!と思いました。
「報告」宮沢賢治
たった2行ですが、確かにりんとした風景です。
「樹下の二人」高村光太郎
あまりにも有名な詩ですね。
素晴らしいと思います。
「夜のくちびる」大手拓次
「未来」谷川俊太郎
佐野洋子さんに宛てられた詩ですね。
「プレゼント」三角みづ紀
三角みづ紀さんの作品は何作か読みましたが、私もこれに一番惹かれました。
「夢」茨木のり子
「プレゼント」
(前略)
わたしたち
本当は
おらんひとなのかもしれんけど
それでも
このひとが大好きだ
その事実にこころを殴られ
わたしは
不覚にも
泣いてしまう
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一見何気ない日常風景を切り取ったように思える詩も、恋が始まる瞬間を捉えたものかも…と考えて読むとまた違った面白さがあります。筆者の思う様々な形の恋、それらを気軽に楽しむことができる一冊です。
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欲求ほとばしる生々しいものから、妹に詠む宮沢賢治の詩まで、いろいろ。
始まりはすべて/続きにすぎない/そして出来事の書はいつも/途中のページが開けられている
ヴィスワヴァ・シンボルスカの「一目惚れ」の一節
これは深いと思った。