紙の本
21世紀の資本・不平等
2016/06/21 08:26
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投稿者:菜摘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本が主眼とするのは、ルソーからピケティまでの経済学者による不平等の
問題についての取り上げ方の見直し行っているという点で、それらについての
実証を試みているものではないことを確認しておく必要があります。
アダム・スミスが経済成長に伴い最下層の人々もその恩恵によって生活も改善
されていくと考えていたが、一方のカール・マルクスは資本主義による機械化・
省力化によって失業者が生み出され格差が拡大するという不平等を論じていた。
新古典派経済学が支配的な時代になると、資源の効率的活用により、生産は
最大になるという考えが現れ、市場の効率性を重視したものとなってくる。
やがて、「21世紀の資本」を表わしたトマ・ピケティや、それに続く「21世紀の不平等」
を書いたアンソニー・B・アトキンソンの理論の軸を成す、市場経済の中の不平等
へとたどり着く。また、彼らはそれらを助長する、現在世界中で大きな問題となっている
タックスヘイブンに対して、容認すべきではないとの動きを鮮明にしていることは、
富裕層のみ利することは許さないという考え方として、大いに理解することができるの
である。
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【不平等は悪なのか? 二六〇年の経済学史を追う】なぜ不平等は生まれるのか? どうすれば平等に近づけるか? 経済学者たちが問い続けてきた二六〇年間の議論が、この一冊で分かる!
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理解に多くの前提を必要とする。どこに定点を見出すかによってスタンスに違いが出てくる。語られること以外の要素が大きな問題であるよう。その問題は底が抜けているので語られない気がする。処方を見出して共有するの難しそうだというのが率直な感想。
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ルソーとスミスからピケティまで、経済学における不平等に関する論述を俯瞰した一冊。それに対して、ご本人はどのような意見を持っているのか不明なのが、日本の学問の不幸です。
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もっぱら、現代でのピケティの議論に至る「分配」を巡っての経済学の長い歴史の一般的な解説である。このテーマが全世界と数百年の時を経て、幾人もの偉大な思想家と経済学者によって考察されてきても、いまだ誰にも全貌を見通しよく把握することのできない、人間の最大のテーマの一つ(生命とはなにか、とか、宇宙とはなにか、とか・・に匹敵する)であることがわかる。
新書とは思えない難しい内容であり、例えば、経済システムについての理解が現代社会の舵取りにはマストな教養インフラであったとしても、こういうことが政府部内や立法府でまともに議論できるようになるとは思えない。実際の政治システムや民意の形成では、「専門家」が否定され叩きのめされ、素朴な感情論で共感を得る政策しか生き残らない。社会システムでは「知の格差」の解消、トリクルダウンこそが必要だ。
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ちょっと対象読者がわかりにくい。ていうか、すでにわかってる人かインテリ向き。ポイントポイントは重要なことを指摘していると思うんだけど、素人には情報量が多すぎて岩波新書のようだ。少なくとも文春新書向けではない。
マルクス的な資本家対労働者、みたいなのの図式がよくわからんというか現代人の感覚とちがうと思うので、株式会社とか株とか金利とかの話とかはもっとゆっくり書いてほしかった気がする。
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トマ・ピケティの『21世紀の資本』(2014年、みすず書房)が日本でも広く話題となった状況のなかで刊行された数多くの本のひとつですが、著者が「あとがき」で述べているように、ピケティの解説書ではなく「不平等との戦い」というテーマの経済学史における変遷をたどり、このテーマが現代においてあらためてとりあげられることになった文脈を明らかにしている本です。
本書ではまず、ルソーとスミスの対立にまでさかのぼり、ルソーが私的所有制度のもとでの分業が不平等を生み出すことを問題視したのに対して、スミスは市場メカニズムを通じて全体としての豊かさが実現できることに目を向けたことが説明されます。つづいて、マルクス経済学を瞥見し、新古典派経済学の誕生へと、経済学史のメイン・ストリームが解説されます。とりわけ、労働者と資本家の対立というマルクス経済学の基本的な構図が、新古典派経済学においては解消され、不平等というテーマも経済学者たちの主要な関心からしりぞいていった経過が論じられます。その後、現代の経済学において不平等をめぐる問題にふたたび注目が集まった経緯が解説され、ピケティの著書がそうした大きな文脈のなかでどのような位置づけをもつのかということが論じられています。