電子書籍
胸がつまるというか・・・
2017/11/16 15:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:poyo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロンドンに移り住んだ移民の子供たちに向けられる、執拗な尋問や疑惑の目によって孤立化し、結局はISは取り込まれていくことになる。
その若者達を追ったドキュメンタリー
投稿元:
レビューを見る
テロ防止法等によって規制を強めたことや、空爆が結果、狂気のテロリストを更に増やしているのではないかと思う。
テロリストによりムスリムに対する差別が生まれ、一般的なムスリムの人たちが住みにくい環境になりその人がまたテロリストへ・・悪循環をたちきることはできるのか
投稿元:
レビューを見る
【工科大学の物静かな学生が、ISの処刑人として後藤健二さんを殺害するまで】クウェート難民としてロンドンで育った少年は、なぜイスラム国の斬首人となったのか。彼と会った唯一のジャーナリストによる評伝。
投稿元:
レビューを見る
2015年、ジャーナリストの後藤健二さんと湯川遥菜さんがイスラム国によって殺害された。日本人としては初めてイスラム国に人質として拘束されたこの事件。イスラム国側は日本政府に対し身代金として2億ドルを要求し、72時間の猶予を発表したが、その結末は2人の死という最悪のものとなった。
当時、公開されたビデオには、オレンジ色のジャンプスーツを着て、カメラに向かって跪く2人の間に、黒ずくめの男が立っていた。ナイフを握り、覆面を被ったその男は「ジハーディ・ジョン」というニックネームで呼ばれていた。イスラム国の処刑人として、数々の西側ジャーナリストや、活動家たちの首を斬ってきた残忍極まりない人物だ。
しかし、この極悪非道な「ジハーディ・ジョン」の生い立ちを丹念に読み解くと、彼もまた「対テロ戦争」の被害者であったのか……? と、考え方が揺らいでしまうだろう。イギリス人ジャーナリスト、ロバート・バーカイクによる『ジハーディ・ジョンの生涯』(文藝春秋)から、この「処刑人」の半生を見てみよう。
ジハーディ・ジョンことモハメド・エムワジは、1988年、クウェートに生まれた。湾岸戦争の戦火に巻き込まれたエムワジ一家は1993年、イギリスに亡命。西ロンドンのメイダヴェール地区に移り住んだ。家族はアラビア語で話し、母はヴェールを被っていたが、一家は決して敬虔なムスリムというわけではなかった。特に、マンチェスター・ユナイテッドの熱狂的なファンであったエムワジは、子供の頃には『シンプソンズ』を愛し、中高にかけてはジェイ・Zやエミネムなどのラップを愛聴した。ベースボールキャップをかぶり、マリファナを吸い、戒律で禁止されているアルコールに酔うやんちゃな少年だったのだ。
そんな、彼の人生にとって、転機となったのはイスラム過激派グループとの交際。エムワジの近所に住む、ムスリム移民のモハメド・サルクは、過激なイスラム思想を持つとしてMI5(イギリスの諜報機関)から徹底的にマークされた人物であり、エムワジの世界観にも多大な影響を与えたと考えられる。折しも、2005年のロンドン同時爆破テロ以降、保安当局はイスラム過激派に対して目を光らせ、イスラムグループの若者たちを徹底的にマークしていた時期。その追求の手は、ウェストミンスター大学に学ぶエムワジにも及ぶようになる。サルクなどの人物を介してイスラムグループに入り浸るようになった彼は、日に4〜5回の祈祷を行い、コーランの暗記もはじめるなど、徐々に信仰に目覚めていった。また、周囲の仲間だけでなくインターネットでイスラム過激派の「ジハードに参加せよ」というプロパガンダに触れ、その思想を先鋭化させていったのだ。だが、その頃はまだ過激な思想を持つムスリムにすぎない。
そして、皮肉にも、このMI5のマークが、彼をムスリムから「ジハーディスト」へと脱皮させていった。
MI5は、イスラム過激派グループの若者たちにに近づき、MI5のスパイとして働くか、テロリストの認定を受けるかという選択を迫るなど、脅迫のような行為でムスリムたちを追い込んでいく。その申し出を断ったエムワジを待ち受けていたのは、長時間にわたる拷問や、婚約者の��族に対する取り調べの末の婚約破談など、「嫌がらせ」の数々だった……。
MI5によって生活を滅茶苦茶にされた彼は、人生の再スタートを求めて祖国・クウェートに渡る。コンピュータ・プログラマーとしての仕事を見つけ、クウェート人女性との婚約も果たしたエムワジ。しかし、またしても、彼の幸福はMI5によって打ち砕かれた。ロンドンに一時帰国したエムワジは、クウェートに向かう飛行機の搭乗時に、テロリズム法のもとに取り調べられ所持品を没収。さらに、警察官から暴行を振るわれ、イギリスからの出国を禁じられてしまったのだ……。一度ならず二度までも幸福を奪われたエムワジが、怒りに燃えたことは想像に難くない。
もちろん、諜報機関としては、イスラム過激思想に触れる人間を監視する必要がある。しかし、その行動は、上記のように「嫌がらせ」と言えるような行き過ぎたものだった。ロンドン時代のエムワジは、ロバート・バーカイクのインタビューに対して「MI5に人生を台無しにされた」と嘆く紳士的で礼儀正しい青年だったという。
2013年、厳しいMI5の目をかいくぐってイギリスを脱出したエムワジは、失うものもないジハーディストへと成長していた。イスラム国に参加すると、人質となった西洋人たちに拷問を加え、カメラの前で人質たちの首を斬り、世界中を震撼させる。ロンドンにおいては、不良の喧嘩程度しか暴力の経験がなかった彼は、ムスリムとしてのプライドや、過激思想、そして、MI5に対する恨みなど、さまざまな要因が絡み合って、「ジハーディ・ジョン」へと生まれ変わったのだ。後藤さん、湯川さんをはじめ、カメラの前で殺害した人数は数十人にも及ぶ。
アメリカやイギリスなど、対テロ戦争を戦う西側諸国から、最重要指名手配犯として血眼に捜索されたエムワジは、2015年11月12日、アメリカ軍のドローンからの空爆を受け殺害された。
イギリス政府は、イスラム過激主義に対して「ゼロトレランス(不寛容)」という厳しい態度を持って臨んでいる。テロの防止という掛け声のもとに、ムスリムやムスリムコミュニティに所属する多くの人々を「テロリスト」とみなし、時には人権侵害を辞さない振る舞いに及んでいる。エムワジが殺害された翌日には、フランス同時多発テロが起こり、「非常事態宣言」のもとに1万人の「要注意人物」が取り調べられた。現在も、ヨーロッパ各地で「テロリスト」の汚名を着せられているムスリムたちは、西側政府や市民への不満を募らせている。今後も、ヨーロッパ中から、第二・第三のジハーディ・ジョンが誕生するのは時間の問題だろう。
投稿元:
レビューを見る
あるジャーナリストが関わったモハメドエムワジの生涯の話なんだけど、イギリスのムスリムの生活やMI5など日本と全然違う環境で知らないことが多かった。いろいろなテロ対策をうつ治安当局だけど、結局それがテロリストを生み出すのか。
投稿元:
レビューを見る
読み終えても、彼がいつ、なにを契機にジハーディストになったのか、明確な答えは得られなかった。
そもそも、「これ」というはっきりとしたきっかけなんてものはないのかもしれない。国に対する小さな不信感が積もり重なって、逃げられないという圧迫感に堪えられなくなり、ある日「突然」弾けてしまう。救いが欲しくて、答えを与えてくれるなにかに傾倒する。
イスラム国に限ったことでもなく、カルトとか、オウム真理教とかと根源は同じな気がする。
それに逃げてしまうのは「心の弱さ」なのかもしれないけど、自己責任と、すべてを個人になすりつけてしまう社会では、テロリストを量産し続けてしまうんじゃないだろうか。
その背景はメディアによる「貧困」や「移民への差別」とか、単純な言葉で語られてしまっているけど、白黒はっきりできるようなものではないから、自分の頭で想像して、考えないといけない。
投稿元:
レビューを見る
敵国の人間を斬首するというショッキングな映像を見せられてからイスラム国の戦士はどのような経緯を経てこんな残酷なことができるのだろうと思っていた。
結局彼は,テロを防ぎ、国を守るためのイギリス当局の執拗な干渉に自由を奪われ、結婚も邪魔され、新天地への移住もできなかった。そうした処遇も手伝ってイギリスを憎みイスラム過激思想にのめり込んだのだろう。
そんなイスラムの戦士の中でも他の戦闘員にない寡黙さを持ち、失うものが何もないようだったという記述に、人間としての尊厳を奪われ、失意のどん底から立ち直らないままいびつな性格、人間性を固定していったのではないだろうか。、
だが、しかしそれでもあの残酷なシーンは世界中の人たちを震撼させ、この先の暗澹たる未来を予言せざるを得なくさせた。通常あるべき善悪を超越し、良識を失った過激で野蛮な“国”の誕生がどれほど世界に大きな影を作ったか。大きなとてつもなく大きな罪を作った。彼もイスラム国も。
投稿元:
レビューを見る
どのようにして普通のイギリス人がイスラム国の処刑人になっていくのか.ジハーディー・ジョンことモハメド・エムワジに英国保安当局の嫌がらせ受けていると相談を持ちかけられたことのある著者が豊富な情報を元に説明する.
投稿元:
レビューを見る
ジハーディ・ジョンの生涯というより,誰でもがジハーディになりえたかもしれない脅威.不寛容,対応のまずさ,追い詰めることからのますますの過激化.世界を震撼させるテロの前に,悪循環の悪夢ばかりが思い浮かぶ.何とかならないものだろうか.非常に考えさせられる本である.
投稿元:
レビューを見る
「安倍よ、お前が勝つ見込みのない戦争に参加するという無謀な
決断をしたために、この刃はケンジのみならず、いかなる場所に
おいても、引き続き日本国民を殺すだろう。つまり日本の悪夢が
始まるのだ」
2015年に日本人ジャーナリスト後藤健二氏を殺害したことを告げ、
インターネット上で公開されたイスラム国の動画の中で、黒装束
の処刑人は日本へ宣戦布告をした。
ジハーディ・ジョンと呼ばれた処刑人はこの動画を最後に公の場
から姿を消し、2015年11月12日にアメリカ軍のドローン攻撃によっ
て殺害された。
アメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーから日本人2人の
殺害まで。常にイスラム国の動画に登場したジハーディ・ジョンとは
一体、何者であったのか。
イギリス訛りの英語を話す彼の本名はモハメド・エムワジ。イギリスで
教育を受けたクウェート移民の子だった。
ドローン攻撃による殺害後、著者はジハーディ・ジョンになる前のエム
ワジと会ったことがあることに気がつく。あのムスリムの青年が、世界
を震撼させた処刑人になっていたとは。
ひいきのサッカー・チームの選手になることを夢見た少年。信仰には
決して熱心ではなかったし、ムスリムとしての自覚を持ったのも遅かっ
た。そんなエムワジが、何故、イスラム国に参加することになったの
だろうか。
エムワジの周辺にはソマリアの過激派と繋がる者がいた。それが英国
の治安当局から目をつけられることになった。そうして始まった嫌がらせ。
証拠もなくテロリストの疑いをかけられ、治安当局のスパイになれとの
脅しをかけられる。海外旅行はことごとく妨害され、結婚さえも思うよう
に出来なくなる。
エムワジだけが特別だったのではない。何人、何十人ものイギリス在住
のムスリムの若者がテロの嫌疑をかけられ、似たような嫌がらせを受け
ていた。著者は彼らの話を聞き、当時在籍していた新聞にムスリムたち
の窮状を公表した。
一定の効果はあった。治安当局は自分たちの行いが公になったことで
嫌がらせは止まった。だったら、自分のケースも公表することで好転
するかもしれない。エムワジは一縷の望みをかけたのかもしれない。
著者に接触し、窮状を訴えた。
だが、タイミングが悪かった。著者が転職する時期と重なった為に、
エムワジのケースは紙面に載ることはなかった。
どの時点でエムワジが過激主義に染まったのかは分からない。もしか
したら、著者に接触した時点で一定程度の過激主義に感化されていた
のかもしれない。
それでも考えてしまう。もし、イギリス治安当局が執拗な嫌がらせをしな
ければエムワジは八方塞がりになることはなったのではないか…と。
確かに国内での監視を強めれば、過激主義に染まってシリアや周辺国へ
渡航する若者は減るかもしれない。だが、その分、国内で不満を蓄積し、
その国への憎しみを募らせる人々を増やすのではないか…と。
テロリストを育むのは、何も過激主義者たちのプロパガンダだけではない。
排外主義こそがテロリストの芽を育てるのではないだろうか。
エムワジは死んだ。けれども、第2、第3の「ジハーディ・ジョン」が誕生する
土壌は確実にあると思う。
投稿元:
レビューを見る
中盤はだるくなって飛ばし読みしちゃったけど、どうして平凡な幸せを手に入れたいだけだったはずの人たちが、殺人に手を染め、他者を拷問するほどに先鋭化してしまうのかが怖くなる本だった。
日本でも、団塊の世代の学生運動で人を焼き殺したり、仲間内で殺し合ったのも似たような心理状態だったのかな?
渋谷暴動事件も浅間山荘事件も理解できない。なぜあんな蛮行を?
当事者たちはイデオロギーがどうのこうのと言い募るかもしれないけれど、ただ単にサイコパスだったか、人間関係を含む異常な環境から抜け出せず人間性を見失ってしまったかという話なんじゃないのかな。
単なるサイコパスはそれほど多くはないはずだから、つまり異常な環境下で不安定な足場に立つ自分を見つけたら、その自分は案外簡単に他者を拷問したり殺したりしてしまうかもしれないと想像できてしまうのが恐ろしい。
少なくともロバート・バーカイクによるジハーディ・ジョンの物語からは、あるグループを排除するというやり方では、問題を解決できないどころか、新たな無数の問題を作り続けるはめになるとわかる。
ジハーディ・ジョンのしたことは、彼が過去に受けた不平等や差別的取扱いをもってしても許される余地のない恐ろしい
蛮行だ。同じ環境でもテロリストになんかならない人のほうが多いはずでしょ。
でも、イギリスの社会がもっと公正な場所だったなら、ジハーディ・ジョンのような短絡的なアホでも、誰も殺すことなく普通のロンドン市民として、今も生活していたかもしれない。
差別や排斥の問題は根深くて難しい。差別を受ける当事者が加害者になると、更に複雑になる。その恐ろしいまでの複雑さが現実だ。
読み飛ばしたとか最初に書いておいてこんなことを書くのもなんだけれど、現代を生きていて、この世の中がどうなっているのか考え続けたい人なら、この本は読む価値があると思う。
私はラストの章で登場したDr Jonathan Leader Maynardの記事か本か論文を読みたい。日本語訳が無さそう…ネットを見れば、多分英語で書かれた何かしらを見つけられるでしょう。がんばろう。