紙の本
坂崎乙郎氏の美術エッセイですが、何か哲学的な思想を感じる興味深い一冊です!
2020/06/01 10:06
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、西洋美術史研究家であり、美術評論家でもあった坂崎乙郎氏の作品です。同氏は、『夜の画家たち』などの著作でドイツ表現派や幻想派の画家を紹介、評論活動、執筆活動を行われた方として有名です。同書は、同氏の美術についてのエッセイ集なのですが、最初はとても難解に感じます。しかし、読み進めていくうちに、同氏が読者に伝えようとされていることが、なんだんと分かってきます。絵というものを真に理解するためには、美しいものばかり追い求めて満足するのではなく、「読んで」、「見て」、「感じる」ことが重要であり、その為には個人の感覚をもっと研ぎ澄ませることが必要であるということです。豊かさだけでは決して得ることが出来ない体験が、人間を高次の段階へ高めていくとも主張されています。美術エッセイとは言いながらも、一つの哲学を聞いているような心に強く訴えかける書です!
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僕の指標は村上隆さんなので、別な作者の考え方を知りたくて購入。坂崎さんが講演された「絵とは何か」をまとめた内容となっている。後半はゴッホを題材に絵とは何かを書き記している。村上さんと同じ事を言っているようで、当初の予定は達せられなかった。
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昔、同じ著者による「イメージの狩人」を読んで面白かった記憶があるので、文庫化されたこの本を読んでみた。講演の記録が多いので読み易いが話があちこち飛し、小林秀雄ばりの絵は気合いだ調の文章が多く、タイトルを含め全体に少し期待外れだった。
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学生時代に、坂崎氏の著作から、エゴン・シーレと鴨居玲の存在を知った。この本の中でもこれらの画家についての言及がある。初出は1976年だから、ずいぶん早い。日本では、まだほとんど誰もこういった画家を取り上げていなかったはずである。著者の批評のスタンスの一つに、評価がある程度定まった画家ではなく、無名の優れた画家の作品を発掘して評価するというものがある。このような気骨のある批評家は、最近めっきり少なくなった。
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絵本に興味があることから絵にも派生してなんとなく手にしてみたのだが、意外に文学との共通点についての言及も多くてその意味でも発見があった。中でも、読者や鑑賞者は、作者がその作品をつくるに至った意図に思いを馳せるところに意味がある、という点が自分の中に残った。
講演録をまとめたものなので、タイトルの問いに対する答えが一冊を通して書かれているわけではなく、著者はゴッホへの思い入れが強いようでその話題が多かった。
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「売れなくてもいいんじゃないか」と言い切る。絵を「見て」「感じて」「読む」ことは小説のそれと似ている、という表現に納得。
綺麗で技術の高いものにばかりスポットライトが当たるというピラミッドとは、違うところに芸術があるのではないか、という主張は多分、絵以外の表現にもそのまま、当てはまるような気がする。
そうか、絵ってそんな風に見たら良いのか〜
面白いと思えそうな気がしてきた。
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大学等での講演記録(1976年)を含む美術エッセイ。素朴だけど、深い問いかけ。“絵とは「感覚」である”ことを、語りかけるように伝えてくれた。とくに後半の『ゴッホをめぐって』『ゴッホの遺書』が、個人的にはとても良かった。読み物でゴッホの生涯を垣間見るたび、作品の熱量と魅力が増すように感じる。絵は、描いた人の分身みたいなものかもなぁと思った。少なくとも、感情が宿ってそうな絵には惹かれる。
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伊坂幸太郎『3652』エッセイ集より。
伊坂さんがお父さんから10代の頃にもらった本。
帯に「人の一生は一回限りである。しかも、短い。その一生を”想像力”にぶち込めたら、こんな幸福な生き方はないと思う」とあり、この非常に魅力的で無責任な言葉に、僕は唆された と書いている。
(『3652』伊坂幸太郎 新潮社 p.13 「幾つもの映像や文章に影響を受け、そして現在」 より)