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銀河英雄伝説
“常勝の天才”ラインハルトと、“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリー。ふたりの名将が現れたとき、銀河帝国と自由惑星同盟の抗争は新たな段階を迎えた。圧倒的なスケールを誇る宇宙叙事詩、スペースオペラの金字塔。
銀河英雄伝説外伝5 短篇集
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銀河英雄伝説 1 黎明篇
2007/06/15 02:06
人類の未来を垣間見れる
16人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時々思うことがある。今と過去と未来とどこに生まれた人間が一番幸福なんだろう。突き詰めて考えるとおそらく個々人情況により異なるもので答えは無いのだろうが、私は断然未来に生まれたい。古代から現代までおよそ世界史を鳥瞰してきたが、未来の歴史を見ることなく死ぬのはなんと悲しいことだろう。地球型居住可能惑星が最近見つかったそうだが、現在では行く事はもちろん、見ることさえ出来ないのだ。
そんな中、例えばこの銀河英雄伝説などは未来の戦争というものを何となく髣髴とさせる魅力がある。いわば星間戦争を描くものであるが、内容は徹底したリアリズムであり、魔法や宇宙人は一切出てこない。
その戦争の背景には人類の採るべき政体の争いがある。優れた人物による独裁か、民主主義か。作品は大長編であり、その過程においては民主主義を広大な宇宙で実現していく事の困難さ、儚さ、脆さが様々な角度から露呈してくる。
民主主義政体を推進するのは、一方の主人公であるヤンというアジア系の人物で、中国史が好きな著者らしく、戦術の天才として描かれる。魔術師ヤン、無敗のヤンなどと呼ばれている。
独裁を是とするのはラインハルトというおそらくゲルマン系の人物で、戦略謀略の天才として描かれる。その配下には綺羅星の如き賢才が結集しており、その点におけるヤンとの差は歴然である。しかし、それをおして余りあるヤンの戦術の巧みさはなかなか面白い。宇宙では韓信の背水の陣はブラックホールを背にして戦うなどというのはなるほどと感じたりした。
この世界でも地球という惑星は存在しているが、もはや人の住めない惑星となり、今や怪異な宗教の総本山と成り果てている。大体権力と民衆と来たら「教会」という第3勢力があるというのがセオリーだが、地球教という宗教は正しくその位置にあるといってよい。宗教との戦いは、人間が弱くなればなるほど深刻度を増し、いずれ必ず人類に仇名す日が来る事のひとつの警鐘を感じ取れるのではないか。現に、テロという名の宗教戦争は現実に起きている。宗教が原因で戦争が起こるとするなら宗教などやめてしまえと思うのは私だけであろうか。ともかく、地球教の如き存在はこういう宇宙世界にも、いや人類が宇宙に拡散し、共通の拠り所が無くなれば無くなるほど顕在化してくるだろう。
結局、この作品の主人公に「悪」は無い。2人とも最大のライバルでありながら、共通の敵、手段の異なる同じ目標に向かって走っている。このヤンとラインハルトという主人公どちらに肩入れするかはかなり前から二分されてきた難しい問題である。
そして、本作品はアニメ化されたが、日本の声優オールキャストで臨んだほど登場人物が多い。皇帝の配下の名将たちには各人堂々たる存在感があり、各参謀にさえ存在感がある。実に類稀なる筆致である。やはり、名作には何か光るものがある。
ところで、本書は何度も改訂されてきた古典的名著であるが、何故出版社が変更されたのだろう。徳間書店はこの分野を捨てるつもりなのだろうか。
銀河英雄伝説 1 黎明篇
2011/08/10 11:47
エッセンス凝縮
13人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金曜日のらいおん - この投稿者のレビュー一覧を見る
何故,この作者の文章は,重厚なのにこんなに軽やかに読めてしまうのでしょうか。
単純に面白いというだけではない,何度も読み返したくなる話の筋,伏線,魅力的な登場人物。
そして全体の構成力の高さがすばらしい!
始まりは良く構成されていても,人気が出てくると妙に本筋ではないところに話がそれたり,間延びしたりという経験は本好きの方なら,何度もあるかと思います。
それが10巻ですっきりとまとまっています。外伝はありますが。
特に一巻のエッセンスの凝縮されていること!
初版本には「1」の文字がなく1巻で完結できるように書かれたとはいえ,銀河帝国ができるまでの歴史,現在の停滞している状況,アスターテ会戦,イゼルローン要塞攻略,アムリッツア会戦までが一巻に収められています。
久しぶりに読みなおし,全体のボリュームを知っているからこそ,その凝縮ぶりがおどろきです。そして,登場人物が本当に魅力的であり,その心情に共感してしまいます。
同時に,この小説は歴史観というか,自分の今いる状況が歴史の大きな流れの中にあるのだなという,考えてみれば当たり前のことに気付かせてくれました。
私は,高校という多感な時期にこの小説に触れ,ニュースも見方がすごく変わったのを覚えています。この小説に出会わなければ,私の青春時代はもう少し彩りがなく,かつ大きな視点で物事をとらえる感覚を得るのも随分と先になっていたと思います。
おススメです。
2021/06/01 15:41
20年近く前、授業中に没頭していた、隠れ読書を思い出しました
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
キャラが立っている、
という語句を人生で初めて耳にした時、
自分の読書体験の中から、
真っ先に脳裏に浮かんだ作品が、これでした。
ああ、こういう物語のことを指す表現なのかな、
と妙に腑に落ちたりして。
敢えて口走ってしまいましょうかね。
この書が、三国志や水滸伝のように、
末永く幅広く読みつがれていきますように、と。