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放 蕩 記
著者 佐藤正午 (著)
私はなぜ小説を書くのか。お金のためである。――処女作が新人賞を取って売れまくり、使っても使ってもお金が入ってくる“ぼく”、海藤正夫(かいどうまさお)。昼も夜もなく、酒と女...
放 蕩 記
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放蕩記 (光文社文庫)
商品説明
私はなぜ小説を書くのか。お金のためである。――処女作が新人賞を取って売れまくり、使っても使ってもお金が入ってくる“ぼく”、海藤正夫(かいどうまさお)。昼も夜もなく、酒と女に溺れる放蕩の日々。それは果てしなく続くと思われたが、ある日金が底をつき、あっけなく終わる。どん底の中、小説家が見つけた真実とは? 各章ごとに文体が変貌する、佐藤正午のみに書きうる傑作。
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紙の本
佐藤正午らしい一冊
2009/01/01 10:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は1984年。デビュー作が売れて莫大な印税が振り込まれだした新人作家・海藤正夫。酒と女、そして競輪に湯水のように金を注ぎ込む放蕩の日々を送る。
著者自身の体験に基づいているのか、それとも佐藤正午ならではの法螺話なのかは判然としませんが、近年の作「5」(角川書店)の原型のようなところがある本書を私は大変興味深く読みました。
にわかにあぶく銭のごとき金銭が手に入り始めて、主人公はたががはずれたような放埓な暮らしを始めるのですが、そこに安寧の見つかることはありません。
昭和のある時期までは、無頼な作家の放縦の暮らしも作家同士の交友関係の中で危うい均衡をなんとか保っていられた、そんな様子が物語の中ほどで久米正雄/菊池寛/芥川龍之介/夏目漱石の関係を引き合いにして語られます。しかし海藤は「作家に限らず、みんな一人で頑張るしかない」(128頁)時代に生きています。
そしてそのお金の使い方は、「お姉さん」と呼ばれる女性がいみじくも指摘するように、「お金の値打は使う人の必要以上では決してあり得ないに」「お金を使えばもっと何かが手に入るという幻想にとりつかれてしまった。お金が欲しいものを見つけてくれる」(169頁)と思い込んでいるかのようです。
お金によっても一向に埋まることのない孤独感を、著者特有の諧謔趣味で描いた物語といえます。主人公には近づきがたい無頼の徒という印象はなく、作家でもなければ放蕩するだけの金銭的余裕があるわけでもない読者の私にも、ここに描かれる彼の寂寥感が妙に身近に感じられ、時に心地よさを感じてしまうのです。
大なり小なりそうした身近な孤独感をいつも感じさせる佐藤正午が私は嫌いではないのです。