読割 50
漂泊 - 警視庁失踪課・高城賢吾
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
漂泊 (中公文庫 警視庁失踪課・高城賢吾)
著者紹介
堂場瞬一 (著)
- 略歴
- 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。ほかの著書に「複合捜査」「夏の雷音」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
堂場瞬一氏の人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、『蝕罪』、『相剋』、『邂逅』に続く第4弾です。
2020/07/27 10:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『天国の罠』、『棘の街』、『約束の河』といった傑作をはじめ、数々の刑事小説を紙シリーズで刊行され、読者から大好評の堂場瞬一氏の作品です。同書は、大人気の「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズで、『蝕罪』、『相剋』、『邂逅』に続く第4弾です。内容は、ビル火災のバックドラフトに巻き込まれ負傷した明神ですが、鎮火後の現場からは、殺しの痕跡のある身元不明の二遺体が出ます。犯人による隠蔽目的の放火だったのでしょうか?傷つけられた仲間のため、高城は被害者の身元を洗う決意をします。調査の中で、ひとりは捜索願の出されていた作家ではないかとわかり、事態は思わぬ方向に進んでいくことになります。一体、この事件の背景には何があるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
紙の本
本当は☆一つ追加したいところ。前作では登場人物たちのあまりの嘘っぽい動きに、レベルが下がったと書きましたが、くだらない登場人物を整理したら持ち直しました。めったにシリーズものを評価しない私ですが、これは楽しみなものになりそうです。
2010/10/04 20:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本のカバーのフォーマットが好きです。写真の選択、使い方、フォント、全体の色調、どれもいい。シリーズものは、読者も全作品を買う傾向が強いので、統一されたフォーマット、しかもレベルの高いそれを持つと、揃えた時の満足感はひとしおです。例えば早川書房のディック・フランシス作品や、講談社ノベルズの京極夏彦・西尾維新作品、集英社の嶽本野ばらの本のカバーデザインを思い起こせばいいでしょう。堂場の本のカバーデザインは、松田行正+相馬敬徳、カバー写真はKAN SAKURAI/SEBUN PHOTO/amanaimages です。
で、警視庁失踪課・高城賢吾シリーズですが、私は第二作『相剋』から読み始めたので、第三作『邂逅』が二冊目、第四弾の今回は三冊目となります(どうでもいいけど、ややこしい)。つい先日、第五弾『裂壊』を読み終えたばかり。ということで現在、第一弾『蝕罪』だけが未読という状態。ま、いつか機会があれば読むことになるでしょう。
読み終えた作品に点数をつけると、最高が『裂壊』で、次が今回の『漂泊』、次が『『相剋』で、もっともレベルが低いのが『邂逅』となります。評価の基準は、高城と女性陣の絡み方で、もっともいい加減なのが第三作。それを改善し、さらに整理したのが『裂壊』となります。ここらは、実際に読まないと分からないので、この程度にしておきますが、明らかに差があります。バロメーターとなるのが、法月さやかの扱い、とだけ言っておきましょう。で、今回の『漂泊』、カバー後ろの言葉は
*
ビル火災のバックドラフトに巻き込まれ負傷
した明神。鎮火後の現場からは、殺しの痕跡
のある身元不明の二遺体が出た。犯人による
隠蔽目的の放火だったのか。傷つけられた仲
間のため、高城は被害者の身元を洗う決意を
する。調査の中で、ひとりは捜索願の出され
ていた作家ではないかとわかり、事態は思わ
ぬ方向に進んでいく。書き下ろし長篇第四弾
*
です。あれ、どこかで読んだような設定・・・。レジナルド・ヒル『ダルジールの死』は、主人公が爆発に巻き込まれて死んでしまう話で、確かに似ていると言えないこともありませんが、ちょっと違う(ま、弔い合戦、と言う意味では似てるんですが)。もっと感動的な上司と部下の話があったような気がするのですが、自分のメモを検索しても空振りばかり。なんだったかな、英国の警察小説だったことだけは確かなんだけれど・・・
事故に巻き込まれた明神愛美は、失踪人捜査課三方面分室に配属されたことに不満を持っている27歳の刑事です。吹き溜まり的な部署への異動したことで、上司の高城に厳しく当たってきましたが、最近はようやく仕事のやりがいを見つけたような気配があります。どうも、ここらの感じは、日本のというよりは英国の警察小説に学んでいる気がします。例えばイアン・ランキンんのリーバス警部シリーズに登場するエレン・ワイリーとか・・・
で、今回、話が締まった最大の要因は、前作で警察官としてよりも社会人として考えられない暴走ぶりをみせた法月大智と、何でも人のせいにして怒りまくる愚かな弁護士さやかの大馬鹿父娘が殆ど登場しないことです。はっきり言って、この二人の動きは、物語からリアリティを喪失させ、緊迫感あふれるべき物語を、日本のドタバタホームドラマレベルに落としていました。その不要な部分がなくなっただけで、話は様変わりします。勿論、良いほうに。
それと読者を(私を、と言ってもいいのですが)喜ばせるのが、三人の作家、失踪した藤島憲と、20歳のとき「『蒼』文芸新人賞」を受賞してデビューしたものの、二作目以降が書けずに忘れられた純文学作家で、藤島の高校時代の友人・村上崇雄、藤島の作家仲間で、40歳でデビューした時代小説作家の花崎光春といった一癖も二癖もある男たちの存在です。
でも、何といっても今回、圧倒的な存在感を示すのが井形はなです。彼女は道警の期待の星といわれていましたが、警察官と離婚したことが祟ったか、二年限定で警視庁に出向させられ、警視庁捜査一課の長野のところで研修中で、高城たちの捜査に協力することになります。小柄なタンクみたいな女性で、色気を感じさせませんが、彼女の後半での活躍ぶりは見ものです。そして、高城との距離感がいい。ベトベトせず、男と女ではなく、あくまで職場の仲間として動くのが心地よいのです。
薄皮を剥ぐように回を追って徐々に現われてくる分室室長・阿比留真弓の私生活は次の『裂壊』で、よりはっきりとしてきますが、この巻でもその片鱗はうかがえます。ここらは、ランキンんのリーバス警部とジル・テンプラーの関係を思わせ、高城の娘・綾奈の行方とともに、このシリーズ全体の核になっていくようですし、私もそれを楽しみにしていきたいと思っています。全20章で、文庫としては京極夏彦本を別格にすれば、かなり分厚い本ですが、一気に読めます。
それにしても、この出版ペースは偉い。しかもです、『邂逅』でレベルを落としはしたものの、あとは人物の動きも整理されて、物語から冗長感が失せ、尻上がりに調子を上げているのは凄いとしかいいようがありません。このまま突っ走れば、エライことになりそうです。ともかく、この作家からは目が離せない、そういえることだけは間違いありません。願わくは、著者がメタボ腹のデブではないことを願って、筆をおきましょう。