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電子書籍
大川わたり
著者 山本一力 (著)
「二十両をけえし終わるまで、大川を渡るんじゃねえ」博徒の親分との命がけの約束。大工の銀次は博打に嵌まり、仲間の家庭まで潰してしまったのだ。懊悩しながらも、老舗呉服屋の手代...
大川わたり
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大川わたり (祥伝社文庫)
商品説明
「二十両をけえし終わるまで、大川を渡るんじゃねえ」博徒の親分との命がけの約束。大工の銀次は博打に嵌まり、仲間の家庭まで潰してしまったのだ。懊悩しながらも、老舗呉服屋の手代として新たな人生を歩み始めた銀次だったが、どうしても川を越えねばならない出来事が!直木賞作家・山本一力の原点となった時代長編。
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紙の本
現代人に決定的に足りない栄養素は・・・
2005/08/16 15:36
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりに世知辛いニュースを見てしまった時。あまりにせせこましい心に触れてしまったとき。僕は山本作品を手にする。読むほどに、「ああ、日本はかくも美しく素晴らしい国だったのだ。」と気持ちが落ち着き、心豊かになれるのだ。
山本作品の魅力は、なんと言っても「粋」。これに尽きる。誰もが恥を嫌い、金よりも義と信とに重きをおく。当たり前と言えばあまりに当たり前の事。しかしその当たり前がこれだけ胸に来てしまうという、悲しい程さみしい現代に私達は生きているのだ。
もちろん、この「大川わたり」でも十二分に「粋」を感じる事が出来る。ほんの数箇所に挟み込まれた、主人公銀次と冷や水売りの親父とのやり取りが、絵に描いたように粋だったりする。
ただ山本作品は、「粋」だけじゃない。謎解きやサスペンス、時にはミステリのようなエンタテイメントが描き出される。読む側はそこに惹き込まれ、時間を忘れて物語の中に取り込まれてしまう。
そしてこの「大川わたり」、他の作品と比べてもそのエンタテイメント的な側面が大きいように感じるのだ。江戸の情緒と風情に触れながらも、はらはらぞくぞくするような物語が紡ぎ出されていく。特に終盤物語がじわりと動き出した時は、読んでいてぞぞぞと鳥肌が立った。この感覚は、他の山本作品と比べても秀でていたように思う。
忠と信の元に人が集い、智と義が賊を討つ。それでも仁と礼とを失わない姿をこそ、「粋」ってものじゃないだろうか。
時代小説でありながら、これほど見事にエンタテイメントを感じさせてくれる作品も珍しい。いやエンタテイメント作品を時代小説で現したのか・・・いややっぱり・・・。ええい、この際どちらでも構わん!
とにかく私も含めた現代日本人に決定的に足りない、「ビタミンEDO」が豊富に含まれているこの作品を、読まない手は無いのだ!!