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さむらい劇場
著者 池波正太郎 (著)
酒と女に溺れ家中の鼻つまみものである榎平八郎は二十一歳。七百石の旗本の三男に生れながら妾腹の子ゆえに家来にまで蔑まれている。ある夜女を抱いた帰途、何者かに襲われる。やがて...
さむらい劇場
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さむらい劇場 改版 (新潮文庫)
商品説明
酒と女に溺れ家中の鼻つまみものである榎平八郎は二十一歳。七百石の旗本の三男に生れながら妾腹の子ゆえに家来にまで蔑まれている。ある夜女を抱いた帰途、何者かに襲われる。やがて、それは彼を疎む父親の命であることが判明する。徳川吉宗が将軍位について二十余年、いきいきとした時代を背景に、青年ざむらいが意地と度胸で、己れの道を切りひらいていく姿を描く長編時代小説。
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紙の本
時代小説における波乱万丈の主人公
2011/11/20 21:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
池波正太郎、お得意の時代小説である。いつものことだが、池波のストーリー展開は読む者を飽きさせない。本書では、旗本七〇〇万石の榎家の三男が主人公である。この主人公の若者は、榎家の三男とはいえ、妾腹の三男なので、兄弟にもいじめられ、父親からも冷遇されるという辛い境遇である。
ここから物語はスタートするのだが、『さむらい劇場』というタイトルどおりに波乱万丈の一生を描いている。この描き方である。様々な伏線を張っており、そこでの人間同士の邂逅などが実に面白い。
時代は徳川吉宗が将軍である時代である。親からも冷遇されれば、酒と女におぼれるのも当然であるかも知れない。これからのストーリー展開が面白さの真骨頂なのだが、それをここで語るわけにはいかない。しかし、まるで芝居の舞台でも見ているような展開である。おそらく池波は意識して「劇場」というタイトルにしたのかも知れない。
この主人公が盗賊一味に加わったり、御三家の一部と知己になったり、肩を持ってくれる一族の加勢があったり、小説ならではの奇想天外な主人公の描き方である。もちろん、剣術の師匠も登場する。時代小説の主人公はやはり剣の使い手でなければならない。なぜなら使い手でなければ剣劇が小説の中に登場しないからである。馴染みの女との出会いも面白く描かれている。すれ違いが読者を焦らせるのである。
テレビドラマの水戸黄門でも天下の副将軍という権威をうまく利用している。本書でも武士の町人の市井の生活を描いただけではそれほど注目はされない。読者の眼を惹くためにはやはり権威を利用するに限る。本当にそんな雲の上の人々と気安く話ができるのかどうかは、やはり小説だからできることで、自由に気ままに池波は書いている姿が目に浮かぶ。
文庫本で600頁を超える長編なので池波時代劇を間違いなく堪能できる。ただ長いだけに短編でみるような切れ味の鋭さは感じられない。ややもたついている印象や冗長感を受けるのだが、そんなことはたいした問題ではなかろう。池波ファンにはこたえられない一冊である。