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上意討ち
著者 池波正太郎 (著)
殿様の尻拭いのために仇討ちを命じられ、どうしても相手を討つ気になれない武士の心情を描いた表題作をはじめ、江戸家老の馬鹿息子のいたずらが招いた悲劇(「刃傷」)、愚かな領主の...
上意討ち
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上意討ち 改版 (新潮文庫)
商品説明
殿様の尻拭いのために仇討ちを命じられ、どうしても相手を討つ気になれない武士の心情を描いた表題作をはじめ、江戸家老の馬鹿息子のいたずらが招いた悲劇(「刃傷」)、愚かな領主の死後、藩を守るべく奔走する江戸留守居役の苦労話(「疼痛二百両」)など、身分社会ならではの葛藤を描いた傑作短編集。剣豪・塚原卜伝や近藤勇、土方歳三など新選組を描いた佳篇をも収録。
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紙の本
典型的な池波作品で、短編ながら珠玉の作品群
2007/08/26 21:27
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
おなじみ池波正太郎の時代小説短編集である。11の短編が集められている。時代設定として江戸時代以前の物語が8編、幕末から明治へかけての新撰組にまつわる話が3編である。
いずれも大いに楽しめたのである。タイトルとなった『上意討ち』は、藩内での不祥事でお尋ね者となった藩士に、討手として差し向けられた藩士の物語である。討つべき相手は知り合いである。なるべくなら討ちたくない。相手を追い求めて日本中を探すのだから大変である。ところが、討ちたくないと思っていると、よく顔を合わせてしまうという皮肉。全国を逃げ回れば捕まる方が珍しいと思うのだが。
私は、時代小説というと時代背景としては江戸時代が多いので、それほど興味が湧かなかった。歴史小説というならば、平安時代後期から室町時代の前半までに興味があった。江戸時代などつい最近のことのようで、歴史的な遺物もまだ数多く存在する。言い換えれば、よく分かる時代なのである。
それはそれで、楽しみも面白みもあるのだが、反面神秘性はなく、想像力も掻き立てられることはない。それよりは、分からないことの多い中世の方が面白い。そこで起きたことの真偽もあやふやである。この方が面白いと思っていた。
池波正太郎は、時代小説といってもここに掲載されている幕末、新撰組、近藤勇の活躍を小説にしている。初めて読んでみたが、これが抜群に面白いのである。近藤勇、土方歳三などがとてつもなく近い存在に感じられる。
本書の11編はいずれも短編ながら、主人公の人となりを見事に描いており、さすがに池波正太郎は読者を間違いなく楽しませてくれると感じた。鬼平犯科帳以外には関心がなかったのだが、読まず嫌いは止めて、範囲を広げてみることにしよう。決して損はないと確信した。