紙の本
「労働」と「お金」の尊さ
2013/10/19 01:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
西原理恵子は、「毎日かあさん」などで有名なマンガ家だが、これは「字」の本。
この本での、サイバラは大マジメである。
中扉に、自身の二人の子供を描き、「子供に読んでほしくてかきました。」とある。
本文、すべての漢字に振り仮名が振ってあり、語調(文体)も、「…だよね」「…と思う?」などと、本当に自分の子供か、知り合いの子に話しかけているようである。
話の展開も、とても分かりやすい。
さて、内容だが、自らの生い立ちをなぞるようにして、「お金」についての話をあれこれと進めていく。
この本は、サイバラの自叙伝とも言える。
生まれる直前の両親の離婚、三歳での実父の死、再婚した母と義父の不仲といった家庭環境や、六歳まで過ごしたという高知県浦戸の港町と後に引っ越した県内の工業団地の町での社会環境。
それらから、本書は、まず貧困と家庭不和、貧困と非行について書き起こしていく。
あの頃は、町中が皆貧乏だったと回想する。
サイバラは、1964年生まれである。
だから、前述の家庭環境は、70年代頃の、高知県の一地方の状況である訳だが、今日児童虐待などで虐げられている子どもたちのニュースを思い浮かべると、全く違和感なくイメージが重なるのは、やはり「貧困」と「暴力」の結びつきについてのサイバラの見識が、今も普遍性を持っているということか。
その後、サイバラは上京し、美大受験のための予備校に通う。
この辺りの件が、僕は一番面白いと思った。
予備校で出された課題の結果が、成績順に貼り出され、自分が最下位であるのを見て青ざめたとあるが、その後の行動がすばらしい。
自分の目標は、「トップになること」ではなく、「東京で、絵を描いて食べていくこと」であると再確認し、まだ予備校生の頃から出版社周りを始めるのである。売り込み(営業)である。
少なく見積もって五十社、部署にしたら百カ所以上回ったという。
すごいバイタリティだ。
結果、カット描きから、仕事をスタートさせる。
本書でサイバラは、「働くこと」の大切さを何度も説く。
働いてお金を得ることで見えてくるもの、さらに得られるものについて、様々な面から丁寧に語り、「働きなさい」と勧める。
「労働」と「お金」の、本来の尊さに、改めて気付かされる。
本書では、他にギャンブルや投資の話、アジアの貧しい子どもたちやバングラデシュのグラミン銀行についてなどにも触れられていて、文字が大きく、やさしい文体ながらなかなか読み応えがある。
まずは、自分で読み、お子さんのいる方は、お子さんに読ませるのもアリかと思う。
(角川文庫にもなっている)
電子書籍
いちばん大事な本かもしれない
2016/01/31 15:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トモモモモ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供のために書かれた本だそうです。
でも大人にも、いや大人にこそ骨身にしみるカネの話。
あまりにも心に突き刺さって泣けました。
「生まれる場所を、人は選ぶことができない。
だとしたら、ねぇ、どう思う?
人って、生まれた環境を乗り越えることって、
本当にできるんだろうか。」
西原理恵子の問いかけ。
いろんなお金の話がでてきます。
海辺の町の魚の匂いがするお金から、FXのあぶく銭まで。
その間には、つらいことをして手にするお金、工夫して働いてもらえるお金、ギャンブルで消えていくお金、貧しい国のお金。お金がない恐怖ももちろんある。
どうして働かなければいけないのか、やりたいことが見つからない。
迷った時に、この本を読んでガツーンとやられたらいいと思います。
私はやられました。
大手出版社が同じ本を出しているようですが、ユーメイド社から出版された経緯は、冒頭で著者自身が説明しています。
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大人が読んでも心を揺さぶられることのある「よりみちパン!セ」。
「金の価値」や「幸せ」について考えさせられる一冊。
著者の作風を違った面から見ることができるともいえる。
※収益が全額寄付されるそうなので、こちらで紹介。
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あなたは一度として本気でカネに向き合ったことはありますか?
著者の西原(さいばら)さんはド貧乏な家庭で育ち、小さなころから非常に苦労を強いられてきた方。
カネの大事さなんかはそこら辺の誰よりもよくわかってる。
読み進めていると、今の自分とは全く違う価値観を持っていることに驚くが、それらが全部書き換えられてしまうくらいに非常に重要な事が書かれている。
著者も述べているが、ぜひ子供に読んでもらいたい。
若いうちに読んでお金に対する自分なりの考えを持てる大人になってほしいと思う。
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ブクログで検索して、出版社と版権のことを知りました。
読んだのは図書館で借りた理論社「よりみちパン!セ」でしたが、
ブクログの登録は、こちらで。
説得力のある話です。
・自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。
・自分探しの迷路は「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。
・外に出ていくこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。
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生きていく上で大事なもの、それがお金。
これがあるからこそ、食べる事が出来て寝る事が出来て
他の娯楽に手を出す事ができる…。
幸せがあればいいの、という言葉に反論している文章に
まったくだ、と同意していました。
お金がない生活は、心がすさんでいきます。
そうすると、何だか大事なものをなくしていきます。
その状態に気がつかないで生活が進んでいきます。
お金があって、その日生活がきちんと成り立った後に
幸せはあるものなのです。
正しく正論。
正しい生活観念。
なので、ギャンブルには気をつけましょう…w
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働いてお金を稼いで貯めて自分のためにお金を使う。
とてもシンプルだけど、一番楽しくて重要なこと。
一生働く覚悟を決めたいと、強く思った。
“お金には、そうやって家族を、嵐から守ってあげる力もあるんだよ。
いざというとき、大切な誰かを安心な場所にいさせてあげたい。
そう思うなら、働きなさい。働いて、お金を稼ぎなさい。そうして強くなりなさい。
それが、大人になるっていうことなんだと思う。”(p.227)
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「カネ」を軸として語られる著者の自叙伝みたいな感じかな。
すごく面白かった。
個人的に4章の終りで「豊かさ」が実現したときに人はどう生きる(仕事する)べきなのかってところがきちんと論じられてて良かったと思う。
1、やりがいのある仕事して高収入
2、やりがいのある仕事して低収入
3、しんどいことして高収入
4、しんどいことして低収入
5、ニート
1、は、うん、激ムズ。4、はワープア、過労死。ってことで一般的には2、3、の間で「カネ」を軸に、どこに自分を落としこんでいくか、って考えるとシンプルだよねって話。
それ以外にも、「カネ」に関する人間関係だとか博打だとかいろいろと・・。
なんだか「カネ」に固執するのは悪いことだよね、心を豊かにするべきだよね、っていう空気って存在してるような気がするのだけど、それは結局、使う人の問題であって、グラミン銀行の例のように貧困を救うこともできるって終わりの方で書いてたのも心に残った。
原子力発電なんかも同じような気がするな。それ自体には良いも悪いもない。使う人の問題だ。まぁそれが人生を通して考えるべき大問題なのですが。
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西原さんが経済論をわかりやすく語る本なのかな?と思いながら手にとったらそういうことではなかった。
内容はもっとシンプルで、「カネ」についての西原さん自身の経験と、そこから学んだ教訓を、「子供に読んでほしくて書きました」と前書きにある通り、子供に説くような形で話が展開していく。
西原さんの半生記のようにもなっているのですぐ読めるし、私の年齢であっても、仕事に対しての考え方とか、感じることも色々あって面白かった。
子供に対して自分の経験をもって語れることがあるっていうのは、大事なことだな。
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持っている言葉の重み、強さ、濃さが違いすぎる。
説得力のある言葉ってこういうものだ。
頭で考えず、体を使って知っていくことはとても大事だが
ここまで大きく振れた生き方をするのは難しい。
でもそれをやった人の言葉から知ることはとても多い。
身に染みた金銭感覚が、自分を守り強くする。
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お金に関して教育する難しさと、お金を大切にするとはどういう事なのか非常に考えさせられた。粗方の内容はカネを巡った筆者の人生体験で、大人が読むには少し砕けた表現が多くストレスを感じるような印象だった。ただ、子供に読んで欲しい本だと筆者が述べている通り、分かりやすさと痛快さは併せ持っているとも思う。自分がまだ両親の庇護のもと生活させて貰っているからか、この本からは満足のいく答えや結論(というと語弊がありそうだが)を導く事は出来なかった。社会に出て自分の力で生活するようになってからもう一度読んでみたい。
”人って気候がよくて、食べる物に困らなければ、お金なんかそんなになくたってカリカリしないで暮らしていけるものなのよ”
”親から「あなたは食べさせてもらってるんでしょ」「学費払ってあげてるじゃない」と言われちゃったら、もう何も言い返せない。
子供って、うんと不自由だよね。親の説教の中でも「お金」の話を持ち出すのって、子供にしたら「反則だ!」って言いたいくらいだと思う。”
”日本では年間で三万人もの人が自殺をしているという。
この数字は先進国の中でも異様な数なんだって。日本の交通事故死者数が年間で五千人というから、その六倍もの人が自殺を選んいる。それを思うと、銃声の音は聞こえないけど、「日本にもかたちのちがう戦場があるのかもしれない」って思う。”