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  3. あずきとぎさんのレビュー一覧

あずきとぎさんのレビュー一覧

投稿者:あずきとぎ

66 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様 決定版

水木しげる妖怪学の集大成

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

水木しげるによる妖怪研究の集大成ともいえる書。
1ページに1項目(絵と解説)を載せ、全895項目(妖怪…764、あの世…19、神様…112)を網羅する。
これほどのページ数となると、文庫が立つ(!)。
内容は、著者の勝手な想像・創作などではなく、論拠を示しながらの解説・論考である。
資料としては、江戸時代の鳥山石燕が描いたいくつかの妖怪画集や、「和漢三才図会」を中心に、記紀や風土記から柳田國男の著作まで、古代から近代にまで及ぶ。
そこに、著者のフィールドワークの成果か、各地の伝承・習俗を加え、著者なりの見解を論じている。
改めて、この分野における水木しげるの偉大さを、思い知らされた。
妖怪だけでも764項目あるので、読み進めるのが大変に思えるかも知れないが、この手のものが好きな人にはまったく苦にはならないだろう。
大体20~30項目も読むと、始めの方の内容はあらかた忘れてしまう。
さすがに900近い項目を、頭に入れるのは難しい。
むしろ本書は、一読した後、時間が空いたときなどに書棚から取り出し、パラパラと適当なページを開いて数ページ読むことで時間を満たす、という読み方が相応しいのではないか。
妖怪などの名前と絵を見ていくだけでも、十分楽しい書だ。

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紙の本

失踪日記 2 アル中病棟

紙の本失踪日記 2 アル中病棟

2013/10/31 19:02

力作!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前作「失踪日記」で未完になっていた「アル中病棟」の続きであり、完結編。
表紙カバーに描かれた一枚絵を見るだけでも、本作に掛ける著者の意気込みが分かる。
病棟を斜め上から俯瞰した絵なのだが、実に細かく描き込まれている。
この熱量は、当然作品本編にも表れており、吾妻作品の中でも、一コマ一コマにここまで描き込んだものはあまりないだろう。
前作と比べると、人物の服装や髪のツヤ、背景の端から端まで実に細かく描かれている。
前作が四段組み(1ページを横に四分割してコマ割りをする)であったのを、本作は三段組みにしており、一コマが広くなった分より細部に渡って描き込まれていったようだ。
(これは、前作の描画が悪いとか手を抜いているということではない。前作の絵もまた味わいがあるのだ。)

また、豊富な登場人物の描き分けも、本作の見どころの一つだ。
当時、病棟には30人ほどが入院していたというが、洗面や食事のシーンに描かれている多数の人物、そのほとんどが「登場人物」としてストーリーに絡み、それぞれに別個のエピソードを持つ。
さらに、そこへ複数の医師や看護師が登場する。
これほど多くの人物を描き分け、キャラ付けしていくのは、大変なことだ。
著者の力量に、改めて感服するしかない。

読み進めていく中で、特に印象深いのは、大ゴマの挿入の仕方とその描写である。
ページの三分の二、あるいは1ページ丸々一コマという大ゴマに描かれた絵には、その時々の著者の心情――開放感や戸惑い、不安などが、読み手の心に迫ってくるように巧みに、それでいてどこかしら空虚感を伴って表現されている。
結尾の3ページは、何とも言えない読後感を与える。

内容(ストーリー)は、アルコール依存症の治療の経過を、病棟生活を中心に描いたもので、過度の飲酒が体に与える影響や依存症の症状、治療の進め方、病棟での生活スケジュールなども説明されているので、これらに関心のある人にはよい参考になるだろう。

アルコール依存症の治療過程の実態を描きつつ、それをエンターテインメントにまで仕上げている、著者入魂の一冊である。

(ちなみに、コマの端などに、魚や得体の知れない生き物が描かれているときがあるが、これは幻覚ではなく、吾妻作品ではよくあることなので、誤解なきよう。)

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紙の本

総員玉砕せよ!

紙の本総員玉砕せよ!

2013/10/19 01:33

実体験をもとに描かれた戦場の悲惨さ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1973年発表の作品。
太平洋戦争の戦場を描いた作品として、あまりにも有名。
作中で玉砕する大隊に、水木しげる自身も所属していた。
しかし、前年に爆撃により左腕を失い、傷病兵としてラバウル近郊に下がっていたため、玉砕に巻き込まれることを免れたのである。
その為、各場面の描写はとても生々しい。
前半は、占領地バイエンでの日常が描かれる。
南方のジャングルの過酷な環境とアメリカ軍による断続的な攻撃に晒される日々は、正に生と死が隣り合わせである。
淡々と人の死が描き継がれていく。
後半は、アメリカ軍の反攻に遭い、追い詰められ、切り込みを決意し玉砕に至る過程が描かれる。
戦争の悲惨さ、非情で不合理な軍律を訴える物語に添い、その筆致はさらに熱がこもる。
画面は一層暗くなり、兵士たちの表情は険しく、人は無慈悲に殺され、ジャングルはより鬱蒼と繁る。
前半にいくつか見られたような作者特有のユーモアも全く見られなくなり、ひたすらハードでシリアスな場面が続く。
序盤、バイエン上陸前の場面で慰安婦と兵士によって歌われた「女郎の歌」が、クライマックスシーンで印象的に登場するのは、見事だ。
ラスト数ページの絵の放つ力は凄まじい。
あまりに惨い描写なのだが、目を背けることが出来ない。
そこに込められた水木しげるの熱い思いが、存分に伝わり、強く訴えかけてくる。
国民の多くが戦後生まれとなった現在、ぜひ一人でも多くの人に読んでもらいたい作品だ。

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紙の本

カオスノート

紙の本カオスノート

2014/11/13 01:56

著者の代表作がまた一つ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書名が表しているように、およそ250ページの単行本一冊に不条理ギャグが溢れんばかりに詰め込まれている。
吾妻作品を構成する三要素――ギャグ(殊に不条理ギャグ)、SFマインド、美少女(美しいというよりは、かわいい)のうち、不条理ギャグを前面に押し出し、かわいい女の子を添え、時折SF色を交える。
「○月○日 ~をする(or した)」で始まる各エピソードが、一コマから数コマ、数ページと長さもまちまちに、次々と繰り出され、そのすべてがありふれた日常を離れた不条理な世界だ。
帯の推薦文で高橋留美子が「一人大喜利」と表現しているが、正にどれだけ不可思議な世界とギャグを生み出せるかという「一人ネタ出し合戦」といった印象。
例えば、「飛び出す絵本を読む」では、ページをめくる度に様々なものが飛び出してくる。
また、海上を漂流しているときには、続々と多種多様なものが姿を現す。
一コマだけのネタが、いくつも連続して繰り出されると、その非日常的なめくるめく不条理世界に取り込まれていくかのようだ。
ここで、その不条理性に「なんで」と問いかけてはいけない。
目の前に描かれているものは、見たままそのものでしかなく、「なんで」という問いは無粋でありナンセンスである。
ここは、この日常を離れた無秩序で不条理な混沌世界に身を委ね、存分にそれを楽しむのが正しい読み方というものだ。
実際、僕は、次はどんなネタが飛び出すかと、うきうきしながら楽しく読んだ。
帯の文句に「最高傑作」とあるが、著者の代表作の一つに加えるに十分な傑作だ。

ちなみに、本書後半から著者(の分身)が、胸に「SOBER」と書かれた黒いTシャツを着ているが、これは以前鬼束ちひろのHPで、販売されていたもの。
(sober…シラフの、酒・薬をやってない)

(カバー裏に、「著者判断によるボツ原稿」が掲載されている。本書がただ勢いだけで描き進められたのではないことの証左である)

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紙の本

この世界の片隅に 前編

紙の本この世界の片隅に 前編

2013/12/25 01:28

戦争を知らない世代に奨める

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書の主人公は、浦野すずという少女である。
本編の前に、雑誌掲載時読み切りだった短編が三編あり、「プロローグ」的な役割を果たしている。
この三編では、すずの幼い頃などが描かれ、ここで、すずの家族構成・性格・絵が得意なことなどが提示され、本編の中でちゃんと回収されている。
すずの家は、広島の江波地区で海苔の養殖をしており、両親と兄、妹の五人家族だった。

彼女は、「第1回 18年12月」で嫁入りが決まり、「第2回 19年2月」で嫁ぎ先の呉へと移る。
以後、呉での生活が描かれていくが、非常に丁寧に詳しく、それでいて自然に分かりやすく描写されている。
作者こうの史代は、1968年生まれなので、当時の様子を知っている筈もないのだが、まるで見てきたかのように自然と生き生きと、描かれている。
その裏付けが、巻末に並ぶ「おもな参考文献」で、たくさんの書物・資料が載せられている。

さて、昭和19年といえば、もう戦争も末期に向かっている頃で、呉には(当時、東洋一と言われるほど)大きな軍港があり、当然軍事的要衝として標的になっていた。
やがて、空襲警報が鳴り響くようになり、本土への空爆が始まり、呉にも米軍機が来襲するようになる。
物資の窮乏もひどくなる中、どうしても暗くつらく厳しくならざるを得ない物語を、ささやかなユーモアで和らげつつ、戦時下の生活が描かれていく。

しかし、現代に生きる我々は知っている。
戦争は、昭和20年8月15日に終わるということを。
そして、その直前、広島と長崎に何が起きたのかを…。

終戦を迎え、すずと、呉の家族、広島の実家の家族の人たちは、それぞれ皆何かを失い、何かが残った。
そして、そのような状況からでも強かに生きていこうとする様が、描かれている。

僕のように、戦争を直接知らない広い世代の人たちに読んでもらいたい作品である。

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紙の本

ウルトラセブン研究読本 円谷プロ傑作SFドラマを徹底インタビューと秘蔵資料で大解剖!

セブンファン必携の書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2012年刊。
シリーズ中最もSF色が強く、且つ深いドラマ性を持つ作品として、今も尚コアなファンに支持されている「ウルトラセブン」。
その誕生45周年に合わせて刊行された。
300ページ以上に渡り、豊富な資料・写真、出演者・スタッフへのインタビュー、そして作品解説などが、これでもかという程に掲載され、かなりの読み応えである。

撮影時の様子やメカニックのミニチュアを収めた貴重な写真は、それだけで本作品に掛けられたスタッフの情熱が伝わってくる。
出演者インタビューは、レギュラーメンバーはもちろん(故人を除く)、作品中に登場したヒロイン達までカバーしている。
スタッフインタビューは、さらに充実している。
監督、脚本家は言うに及ばず、特撮美術(怪獣・宇宙人のデザイン、メカやミニチュアセットの設計・製作など)や機電(ぬいぐるみに仕込むギミック…目が光る、角が回る、など)といった、円谷プロお得意の特撮シーンに欠かすことの出来ない重要なクリエイターや、シンフォニックな音楽で作品のクオリティーに多大な貢献をした冬木透、ナレーターの浦野光らの貴重な証言を読むことが出来る。
また、全エピソード各話について、解説と収録の裏話、台本の準備稿・決定稿と放映版との差異などが詳述されるという、豪華さである。
その他、ここに挙げきれないほど多くの資料と証言が、網羅されている。
これはもう、本作品を語るうえでの一級資料と言ってよい書であろう。

上述のように、とてもじゃないが初心者向けとは言えないほど深い内容である。
セブンファン必携の書だ。

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紙の本

プリニウス 1 (BUNCH COMICS 45 PREMIUM)

ローマ随一の博物学者を描く

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

雑誌「新潮45」に連載中のマンガ。
「テルマエ・ロマエ」で知られるヤマザキマリと、とり・みき(飛び抜けてメジャーな作品はないかも知れないが、僕の一番好きなマンガ家だ)の二人による合作である。
プリニウス――ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、一世紀の古代ローマに実在した人物で、政治家や軍人である上に博物学者でもあった。
彼は、膨大な量の書物と見聞を元に、百科全書『博物誌』を書き残した。
その内容は、天文・地理・鉱物・動植物・絵画・彫刻に至るまで、森羅万象すべてを網羅するかのように、多岐に渡った。
今日から見れば、誤りや空想(?)と言える記述も少なくないが、ヨーロッパでは中世まで「古典中の古典」として知識人を中心に読まれていたという。

物語は、プリニウスと彼の口頭記述係であるエウクレスの二人を中心に展開する。
第2話以降、二人はシチリアからローマへと旅をする。
旅の途中に遭遇する事物・現象について、プリニウスがその持てる知識を言葉にして披歴し、それをエウクレスが書きとめる。
この作品の魅力の一つは、毎回披露されるプリニウスの博識ぶりだ。
目にしたものについて、彼の脳から溢れ出してくる知識が、滔々と淀みない流れのように語られる。
前述のように中には誤った事柄も含まれているのだが、堂々と自信を持って語られる論理的な講説に、つい引き込まれ納得させられてしまう。
実は、この物語は、プリニウスの脳内を旅しているのかも知れない。

さて、時は皇帝ネロの治世。
1巻の終わりで、プリニウスは、彼の帰還を待っていたネロに出会う。
ローマにおいて、これからどのように物語が展開していくのか。
次巻が、楽しみだ。

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紙の本

この世でいちばん大事な「カネ」の話 新装版

「労働」と「お金」の尊さ

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

西原理恵子は、「毎日かあさん」などで有名なマンガ家だが、これは「字」の本。
この本での、サイバラは大マジメである。

中扉に、自身の二人の子供を描き、「子供に読んでほしくてかきました。」とある。
本文、すべての漢字に振り仮名が振ってあり、語調(文体)も、「…だよね」「…と思う?」などと、本当に自分の子供か、知り合いの子に話しかけているようである。
話の展開も、とても分かりやすい。

さて、内容だが、自らの生い立ちをなぞるようにして、「お金」についての話をあれこれと進めていく。
この本は、サイバラの自叙伝とも言える。
生まれる直前の両親の離婚、三歳での実父の死、再婚した母と義父の不仲といった家庭環境や、六歳まで過ごしたという高知県浦戸の港町と後に引っ越した県内の工業団地の町での社会環境。
それらから、本書は、まず貧困と家庭不和、貧困と非行について書き起こしていく。
あの頃は、町中が皆貧乏だったと回想する。
サイバラは、1964年生まれである。
だから、前述の家庭環境は、70年代頃の、高知県の一地方の状況である訳だが、今日児童虐待などで虐げられている子どもたちのニュースを思い浮かべると、全く違和感なくイメージが重なるのは、やはり「貧困」と「暴力」の結びつきについてのサイバラの見識が、今も普遍性を持っているということか。

その後、サイバラは上京し、美大受験のための予備校に通う。
この辺りの件が、僕は一番面白いと思った。
予備校で出された課題の結果が、成績順に貼り出され、自分が最下位であるのを見て青ざめたとあるが、その後の行動がすばらしい。
自分の目標は、「トップになること」ではなく、「東京で、絵を描いて食べていくこと」であると再確認し、まだ予備校生の頃から出版社周りを始めるのである。売り込み(営業)である。
少なく見積もって五十社、部署にしたら百カ所以上回ったという。
すごいバイタリティだ。
結果、カット描きから、仕事をスタートさせる。

本書でサイバラは、「働くこと」の大切さを何度も説く。
働いてお金を得ることで見えてくるもの、さらに得られるものについて、様々な面から丁寧に語り、「働きなさい」と勧める。
「労働」と「お金」の、本来の尊さに、改めて気付かされる。

本書では、他にギャンブルや投資の話、アジアの貧しい子どもたちやバングラデシュのグラミン銀行についてなどにも触れられていて、文字が大きく、やさしい文体ながらなかなか読み応えがある。

まずは、自分で読み、お子さんのいる方は、お子さんに読ませるのもアリかと思う。
(角川文庫にもなっている)

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紙の本

ライ麦畑でつかまえて

紙の本ライ麦畑でつかまえて

2017/04/15 11:44

思春期の少年の大人社会との葛藤

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1951年の作品である。
主人公ホールデン・コールフィールドが、「君」(=読者)に語る、一人語りの形式になっている。
十七歳の彼が、前年のクリスマス前(この時は十六歳)、退学処分の決まった高校の寮から一足先に飛び出し、自宅のあるニューヨークの街で過ごした三日間の様子が語られる。
発表当時は、賛否両論だったらしい。
批判(非難)の的となったのは、主人公の行状のようだ。
ホールデンは、成績不振などで三校にも渡って退学処分を食らった生徒で、飲酒・喫煙はするし、セックスについて語る箇所が出てくるし、果ては売春婦を買うシーンまで出てくる(但し、しばし言葉を交わしただけで、帰してしまう)。
「このような悪童が主人公の、不道徳な作品は、けしからん」という訳だ。
にも関わらず、半世紀以上を経た現在でも、変わらず読み継がれているロングセラー作品であることは、周知の通りである。

作品中、彼が何度も持ち出す言葉がある。
「インチキ」「デタラメ」「これには僕も参ったね」「低能(野郎)」「へどを吐く」「下司な野郎」…
彼は、ニュ―ヨークの街の様々な場所で、種々の人々と出会い、また在学中の出来事を思い出す度に、こうした表現でこき下ろす。
彼が出会う者たちは、ことごとく彼の抱いている価値観・倫理観・正義感に反しているのだ。
そうして、彼はその度に「気が滅入」り、「憂鬱に」なる。
ホテル、バー、その他と、街中を彷徨い、可愛がっている妹に会うために、ようやく自宅に辿り着くが(夜中に忍び込む)、その妹にも彼の苦悩や願いは理解されない(まあ、妹はまだ十歳なのだが)。

純粋・公正・正義を求める少年と、社会に適応するために様々な工夫・妥協をしている大人たち。
思春期を通して直面する、大人社会との葛藤。
それは、誰もが経験するものだろう。
しかし、その葛藤は、その苦悩は、思春期に限ったことだろうか。
成人し、大人社会の仲間入りを果たしてからも、この葛藤は続くのではないか。
うまく折り合いをつけられている人は、いい。
だが、すべての人が、社会の矛盾と折り合って生きている訳ではあるまい。
この辺りに、この作品のロングセラーたる所以があるように思う。

ぜひ、若い人には、若いうちに読んでもらいたい。
また、僕のようないい年をしたおっさんが読んでも、共感できる作品であると思う。

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紙の本

僕らの漫画 東日本大震災復興支援チャリティーコミック (Big Spirits Comics Special)

震災支援とマンガ家の本気

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

東日本大震災の被災者支援のために、制作された本。
マンガ家・装丁者は全員無償で参加し、必要最小限の経費を除いた収益すべてを、岩手・宮崎・福島各県庁が主催する「震災遺児・孤児のための育英基金」に寄付されることになっている。
27名の漫画家が28本の読み切りを描き下ろした。
震災や東北に関連したもの、特に関わらないで描かれたもの、日常を描いたもの、ファンタジーに徹したもの…、各人各様で、本当にいろいろな作品を味わうことが出来た。
そして、どの作品もマンガ家の「本気」の思いが感じられて、すばらしかった。
特に印象深い作品は、ラストを飾るとり・みき「Mighty TOPIO」だ。
とり・みきお得意のパロディギャグで描き出され(超有名ロボットのパロディ)、わずか8ページの中に震災の被害も、復興も、希望や風刺も、そして将来への願いまでも詰め込んである。
それも、ごく自然な流れの中に。
最終コマを見て、何を感じるか。
読んだ者、それぞれが、それぞれに感慨にふけるだろう。
*電子書籍版もあり。

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紙の本

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

紙の本アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

2013/10/19 01:17

映画とは違った感慨が…

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1968年発表の作品。
映画「ブレードランナー」の原作小説としても、あまりに有名。
主人公リック・デッカードは、警察に属する賞金稼ぎである。
彼は、植民惑星から地球に逃亡してきたアンドロイドを始末することで懸賞金を得て、生活していた。
映画とは異なり、小説のリックは妻帯者だ。
(戦争のため)半分ほどしか入居者のいない高層集合住宅に、妻と二人で暮らす彼が、ある朝目覚めるところから物語は始まる。
実は、この作品は、彼のほぼ丸一日を描いている。
朝から妻と口論になり、彼女をなだめ、屋上で隣人と会話し、ホバーカーで出勤する。
この最初の場面で、物語世界の背景が巧みに織り込まれる。
核戦争による放射能汚染、世界的な生物の激減と人口の減少。
人々は、引き続く放射能灰による汚染に肉体を侵されるにとどまらず、その過酷な環境により不安や孤独などを日々感じていた。
この精神の不安定さを補うため、各世帯には二つの装置が備えられていた。
情調(ムード)オルガンと共調(エンパシー)ボックスである。
これらは、機械的(電気的)に人の精神に作用し、前者は自在にその気分・欲求をコントロールすることが出来、後者は人類他者の存在を感じ交感・共感することが出来る。
放射能汚染により、人類の一部は精神に障害を持っている。
彼らは、テストにより峻別され、俗に「ピンボケ」と呼ばれ、差別される。
しかし、適格と判断された人々も、上述のような機械に頼って、その精神を保っている。
はたして、その違いはあるのか。
さらに、精巧に造られたアンドロイドもその対比に加わる。
精神の異常・正常とは、何を持って言えるのか。
この命題は、物語の進行と共に、「人間とは、何か」という問題へとつながる。
人間とは?
人間らしさとは?
発表から四十年以上が経つが、作品のテーマも、描かれている近未来の人間像も、まったく色褪せないどころか、むしろ現在を生きる我々にこそ肌に感じるものがあると思う。
映画とは、また違った感慨があった。

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紙の本

ウドウロク

紙の本ウドウロク

2017/04/27 08:56

有働さんをもっと好きになる

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者は、スポーツ番組やニュース番組の担当を経て、紅白歌合戦・情報番組「あさイチ」の司会で今や名実ともにNHKの顔の一人となったアナウンサーだ。
彼女初の著書は、エッセイ集。
過去から現在まで、仕事のこともプライベートも、NY赴任中のエピソードから恋愛に至るまで。
縦横無尽に書きつけられた文章が、各章立てによりテーマ別に分けられて収録されている。

書名の「ウドウロク」は「有働録」なのだが、反対から読むと「クロウドウ」になる。
「あさイチ」の放送後、プロデューサーに「出たね、今日もクロウドウ」と言われ始めたのがきっかけという。
本人には特に他意はなかった発言が、周囲には棘があったりちょっとした悪意が感じられたりするように受け取られ、「クロウドウ」と呼ばれるようになった。
ならばと、クロいと言われるような部分も、反面「シロい」と思っている内面も、すべて本音で書き連ねたのが本書である。
この一冊を読めば、彼女の人となりや人物史をよく知ることができ、より親しみが持てるようになるだろう。

彼女自身、「番組が調子いいからって、調子こいてエッセイかよ」と言われるのを承知の上で出版したという本書。
「もしよろしければ、四十半ばの女のひとりごと、読んでみてください」と殊勝な態度で書いてはいるが、そこは硬軟取り混ぜた様々な番組を経験してきたベテランアナウンサー、堅苦しい文章に止まるはずはない。
最初のエッセイが「わき汗」である辺り、読者の要求のツボを押さえ、エンタテインメントを熟知した「分かっている」アナウンサーなのだ。

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紙の本

自傷行為の理解と援助 「故意に自分の健康を害する」若者たち

自傷行為について理解を深めたい人へ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009年初版。
著者は、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防対策センター副センタ―長という長い肩書(出版時)を持つ、精神医学者である。

本書は二部構成になっており、第1部で自傷行為の定義とその発生(発現)要因を解説し、第2部で自傷行為への対応・治療について述べられている。
特徴的なのは、想定されている読者で、自傷する若者たちの支援をしている人たち――プライマリケア医、精神科医、保健師などや、最も多く彼らと遭遇しているであろう中学校・高校の養護教諭やスクールカウンセラーに向けて、執筆したのだという。
(もちろん、自傷者本人が読んではいけない訳ではない)

本書における著者の主張の柱となるものは、「自傷行為は、アディクション(嗜癖)化し、やがては自殺企図へとつながっていく」というものだ。
自傷行為は、身体を切る(cut)ことで「つらい感情」などを切り離し(cut away)、「身体の痛み」によって「心の痛み」に蓋をする行為であり、その意味で「生きるために」切るのだが、繰り返すうち効果も薄れ、「心の痛み」に蓋をしきれなくなり、「死」を引き寄せてしまう、と著者は考えている。
元々、自傷者は「死にたい」「消えてしまいたい」という思いから自傷をし始める場合が多い。
その「つらい感情」は自傷行為によって、一時的に緩和される。
そういった意味で「生きるために」自傷をしているのだが、効果が薄れ、アディクション化し、周囲の非難・無関心などから再び「死にたい」「消えてしまいたい」という(初めの)思いに戻ってしまう。
しかし、それは初めよりも、もっと強い思いとなってしまっており、具体的な自殺念慮・自殺企図に結びついてしまうというのだ。

「リストカットじゃ死なない」かも知れないが、「リストカットする奴は死なない」とは言えないと、著者は警告する。

援助者は、こうした自傷行為の実態や進行プロセスを理解した上で、自傷者への援助・対応に当たらなければならない。
その具体的な方法や手段、注意点などは、第2部に詳述されている。

本書は、前述のように、主に自傷行為の援助者を想定して書かれたものである。
該当する方たちには、とても有用な手引きとなるだろう。
また、自傷をやめたいと積極的に思っている自傷者当人にとっても、参考になる書であると思う。

《注意》
本書を、自傷者本人が読む場合、かえって自傷を促してしまうことも考えられるので、十分注意していただきたい。

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紙の本

戸川純全歌詞解説集 疾風怒濤ときどき晴れ

これはもう自叙伝

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歌手・戸川純のデビュー35周年を記念して出版された。
この35年の間に彼女が歌い続けてきた数々の楽曲の中から、彼女が作詞を手掛けた曲を彼女自身が解説をする。
アルバム順に掲載された楽曲(解説)は、「蛹化の女」(『玉姫様』)から「オープン・ダ・ドー」(『TOGAWA FICTION』)まで67曲。
その解説は、単に歌詞の内容を述べるだけでなく、歌詞が生み出されてからレコーディングに至るまでの過程や、歌詞の中の主人公や展開を作り出す元となった自らの体験・記憶なども語られていて、非常に興味深い。
エキセントリックなパフォーマンスや七色の歌声に耳目を引かれがちだが、彼女の書き上げる歌詞は緻密な計算の元に組み立てられている。
彼女は、自分の歌のテーマを「諦念」「一人感」「生への執着」であると言っている。
そして、その多くが十代のときの家庭・学校での経験・記憶に根差したものだという。
十代の頃のいじめについては、これまでも言及されてはいたが、家庭での虐待と家族関係、事務所とのトラブル、そして95年の自殺未遂といったことについて、本人の口から直接語られたのは、今回が初めてのことだろう。
本書は、歌詞に描かれた事象の背景を説いているとともに、戸川純の半生をも書き記した彼女の自叙伝としての性格を持つものである。
彼女に興味を持った人、より深く知りたい人に最適と言える。

最後に、本書「あとがき」にもあるように、ぜひ歌詞・声・音が一体となった「楽曲」を聴いていただきたい。
そこまでを含めて、本書をすべて味わったことになるのだ。

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紙の本

ブラック・ジャック創作秘話 Vol.5 手塚治虫の仕事場から (SHŌNEN CHAMPION COMICS EXTRA)

シリーズ完結

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「ブラック・ジャック」連載当時を中心に、手塚プロでの作品制作の実態やその周辺について、関係者の証言を元に描いてきたシリーズも、この5巻で完結となった。
全5話が収録されている。

第20話「ふたりのピノコ」
4巻では、手塚の長男眞が取材を受けていたが、ここでは長女るみ子、次女千以子の二人が登場。
それぞれの幼少期から手塚が病没するまで、父・手塚治虫と人気漫画家・手塚治虫について、二人各々の視点から語られる。

第21話「砂かけ男」
手塚が、しばしば締切り間際まで原稿が遅れてしまうことは、1~4巻でも描かれてきた。
だが、原稿が編集部に届いても、それだけでは雑誌は出来ない。
編集部(出版社)から印刷会社、製本会社、配送会社を経て、やっと全国の書店に雑誌が並ぶのだ。
ここでは、この雑誌作りにおける出版社と印刷会社とのぎりぎりの攻防を、秋田書店製作部の荒木を中心に据えて描く。

第22話「歯医者はどこだ!?」
歯学部在学中、一年だけ休学して手塚プロに入ったアシスタントによる思い出話(12ページの掌編)。

第23話「手塚治虫は困った人なのだ」
手塚をよく知る赤塚不二夫と、手塚・赤塚両者の担当を経験した編集者による証言。
当時の名物編集長カベさんも登場。
手塚の原稿が遅いと愚痴や悪態を口にする編集者たちを、赤塚は一喝する。
赤塚から語られる、手塚の思いとは。

最終話「最後のひとり」

手塚プロに17年アシスタントとして在籍していた伴俊男の証言による、執筆時の手塚の姿。
そして、最晩年のエピソード。
入院してしまった手塚の指示を待ち、一人手塚プロの仕事場で電話の前に座る伴。
ようやくかかってきた電話で、伴は手塚から激しく怒鳴られてしまう。

シリーズ完結。
ぜひ全五冊を読み通して、「天才」「漫画の神様」と呼ばれた手塚と、手塚プロスタッフ、編集者らの漫画に懸けた思いを、追体験していただきたい。

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