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教えることの復権
日本の教育界では、「教える」ことよりも「学ぶ」ことに重点を置きはじめたように見える。だが一方で、教師の役割を軽視しすぎてはいないだろうか? 教師が「教えるということ」をも...
教えることの復権
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教えることの復権 (ちくま新書)
商品説明
日本の教育界では、「教える」ことよりも「学ぶ」ことに重点を置きはじめたように見える。だが一方で、教師の役割を軽視しすぎてはいないだろうか? 教師が「教えるということ」をもう一度正面から見つめ直し、もっとも必要なことは何かということを、すぐれた教師とその教え子、教育社会学者の間で徹底的に考える。
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紙の本
教育のテルミドール反動に抗して「教えること」を復権する(ババーン)
2003/05/18 23:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヨネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
3点にわけて,この本を紹介します.1)この本が置かれている文脈,2)内容の構成,3)とくに感心したところ.
この本が置かれている文脈について.
題名に「教えること」ってあります.まず,そこから話をおこしますね.「教える」っていうことばを聞くと,なんだか一方的に相手へ知識を詰め込むばかりのことのように思えてしまう.たとえば,歴史の年号をどんどん暗記させる,みたいなのが,典型的なイメージでしょうか.
もし,「教える」イコール詰め込みだとすると,みんなが「詰めこみ教育はよくない」って考えるようになったとき,じゃ,教えるのはよくないよね,となってしまう.実際,小・中学校では,その傾向がつよまった.そして,結果としては,学力のさらなる低下が経験的にみえるかたちであらわれた.すると,こんな意見がでてくる──「子どもの主体性を尊重するだなんて甘いことをいうから,こうなるんだ,きびしく詰めこまないとダメだって,わかっただろ.だから,教育の方針をもとにもどそうじゃないか……」. こういうのを「反動」っていうんでしたっけ.一方の極から反対の極にとんでしまう.
ここでみなくちゃいけないのは,「教えることイコール詰めこみ」っていう前提の正しさだ.「教えること」は,具体的にどういう行為に分解できるのか,また,どんなノウハウがあるのか.これを考えるためには,すぐれた教師に話を聞いてみるのがいい.
大村はまさんは,長年にわたって国語教育にたずさわってきた.だから,そのインタヴューの適任者だ.その大村さんを囲んだ対談を中心にして,この本は構成されている.まず,冒頭で,「大村はま国語教室」が,ぼくたち読者に紹介される.それから,言葉や文化が学ぶに値するって話をして,じゃ,その国語教室の実践はどんなものか,という対談がはじまる.で,本の最後に,論考「教えることの復権をめざして」がおかれて,教育社会学者の苅谷剛彦さんが,「教えること」をあらためて具体的に分解する.そして,「教えること」っていうミクロな行為を,社会っていうマクロに関連づける.──こうして本の構成をみると,話が堅実に組み立てられているのがわかる.対談の本って,しばしば,脈絡もなく話が右往左往する.まっすぐ「教えること」の考察に向かっているこの堅実な構成は,地味ながらも大事な長所だ.
内容のすばらしいところについて.
インタヴューのなかの話は,具体的で,現場=教室のディテールがつたわってきます.しかも,たんに細かいだけじゃない.大村さんの話には,いつも,なんのためにこういうことをしたのか,そして,やってみたらどうなったのか,という筋道がある.目的−手段−結果の関連をいつも考えている.たとえば,国語の長文読解力をつけるという目的は,どうすれば達成できるんだろう.そのためには,ひとりの生徒の読解力について,なにがネックになっているのかを知らなくてはいけない.そのために,テストを組み立てる.すると,「読解の病気」(p.116) がみえる.そのネックになっているクセをなおして,読解力がすこしよくなる──これって基本だけれど,学校ではかならずしも踏襲されてない.さらに大村さんは,こうした手段について,工夫を凝らしています.
そして,そうやって成長する言葉の力は,
《心が相手に間違いなく伝わるように音にしたり文字にしたりできる技術だと考えればいいわけね.〔中略〕自分の気持ちがそっくり素直に言えてそれがすーっと相手の人に伝わっていく,そういう人が集まって話し合ったときに民主国家の基盤ができるということでしょう.それで私は一生懸命になって話し合いの指導に心を砕くようになるわけ》(p.72)
大村さんの口から出たこの言葉は,かじかんでない.これは近頃ではちょっとすごいと思う.言葉の共和国の,ちゃんとした保守主義者──そんな感じの一言です.
紙の本
教育実践者と教育社会学者のユニークな対談です!
2016/03/02 08:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、戦後の貧しい日本で地道な教育実践を展開してこられた大村はま氏と教育社会学者である刈谷剛彦氏とその妻夏子氏の対談集です。本書は、大村はま氏の教育についての考え、教育という活動を行っていく意義などが非常にわかりやすく書かれています。教育に携わっておられる方々には必読の一冊です。