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芥川賞を取らなかった名作たち
著者 佐伯一麦
第一回芥川賞選評で「生活の乱れ」を指摘された太宰治。受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子……。「私...
芥川賞を取らなかった名作たち
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芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
商品説明
第一回芥川賞選評で「生活の乱れ」を指摘された太宰治。受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子……。「私小説を生きる作家」として、良質な文学を世に問い続ける著者が、当時の選評を振り返りつつ、敬愛する名作の魅力を解き明かす。芥川賞落選史にみる、もうひとつの文学史。
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紙の本
その時、太宰は怒った
2009/02/19 08:32
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書巻末に収録されている歴代の「芥川賞候補作一覧」を見ると、芥川賞といえども、見逃した作家たちも多くいることがわかる。
本書でも取り上げられている太宰治や吉村昭をはじめとして、中島敦や島尾敏雄、近くでは村上春樹や吉本ばななといったところだろうか。
作家として彼らは名を残した(あるいはもちろん現役で活躍中)が、あくまでもこの賞は作品の評価であるために(選考委員の好みもあるだろうが)、たまたまその作品が選ばれなかったというしかない。
本書は『芥川賞を取らなかった名作たち』と書名にあるとおり、作品論であり、作家論ではない。
そういう点で、自身がかつて芥川賞候補作家であった佐伯一麦は、芥川賞の本質をよく理解しているといえる。
また、本書のもとになったのが仙台文学館での連続講座ということで、参加者の声を拾いながら、あたかもその会場で佐伯の話を聴いているかのような構成も、難しく構えた作品論とは一味ちがう。
「分かりやすさの奥にある、語りにくいものに触れていきたい」(33頁)。
それが、本書における著者の基本スタンスである。
さらに「小説というのは、たらいに水を張るように、いろんな言葉や表現やイメージやエピソードを溜めていって、それを一つもこぼさないように書き終わるまで持ち運んでいくことだと私は思うんです」(185頁)といったように、実作者である佐伯は随所で自身の「書く姿勢」についても言及している。
こういう話がはいることで、作品をどういった観点から読めばいいのか、というような解釈が広がる。
本書で紹介されている十二篇の作品のみならず、作品とはもちろん書き手である作家が生み出したものであるが、作家を離れて作品固有のものである。
それが本来の芥川賞の評価だろうし、それでないと本来の作品としての評価ができない。
だとしたら、「作家目下の生活に厭な雲ありて」と川端康成に指摘された太宰は立つ瀬がなかったに違いない。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
紙の本
俗な太宰さんに逆に好印象
2022/07/05 10:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
金木の斜陽館には、太宰治が実兄あてに送った「今度はとれそうなので支援(金)よろしく」という内容の手紙が残されている、「逆行」は未読なので内容は知らない。あと、北條民雄の「いのちの初夜」(これは既読)は作者の病が病だっただけに取らしてあげてほしかった