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松本清張への召集令状
著者 森史朗
昭和18年の秋、家族六人を支える中年の版下職人、松本清張のもとへ突然の召集令状がきた。34歳にして戦場へ送られた体験がこの作家の根底に残した深い傷へ、担当編集者だった著者...
松本清張への召集令状
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松本清張への召集令状 (文春新書)
商品説明
昭和18年の秋、家族六人を支える中年の版下職人、松本清張のもとへ突然の召集令状がきた。34歳にして戦場へ送られた体験がこの作家の根底に残した深い傷へ、担当編集者だった著者が迫る。
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紙の本
社会が壊れ始めているいま
2009/06/21 15:32
8人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝日新聞によるミステリー小説に関するアンケートによると、約3千人が選んだ「好きな日本の作家」の上位は、宮部みゆき、松本清張、東野圭吾だったそうだ。
生誕100年の松本清張は、死後もあいかわらず読まれ続けている。
何が人を松本清張に向かわせるのか。
社会がものすごく単純化されてきていると思う。強いものが弱いものを淘汰する。弱者はただ死に行くのみ。多くの人たちが職を失い、住むところさえなくさまよい歩く今の社会において、彼らに公共的な支援が差し向けられることはほとんどない。
本来、人間が、数ある生きものの中で、この地球において独占的な地位を占め、これだけの文化を築き上げてきた理由の一つに社会の構築があると思う。
人間は、社会を構築し、時には愚かな戦争により殺し合いをしながらも、協調や助け合いによりお互いを尊重する社会の中で、一定の文化的な成熟が成し遂げられてきた。
日本では、その社会がいま壊れ始めている。
松本清張の描く小説には、その社会がある。人間と人間の、きれいごとばかりではない、時にはどろどろとした深い人間関係がこれでもかとばかりに描き出されている。
人々が、あいかわらず松本清張に向かう行動は、いま、日本で失われようとしている大切なものを探しだそうとする無意識の所作なのかもしれない。
小説家として名声を築くのが比較的遅かった松本清張が、簿給の勤め人を続けながら大家族を養っていたころ届いた召集令状。彼の思いはいかばかりであったろう。
彼もやはり、か細い人間社会の片隅の一員であった。
紙の本
松本清張が分かる
2022/12/20 18:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張に関しては、本人の著作はもちろん、多くの担当編集者や関係者、研究者、ファンがその作品や背景を分析した文章が残っており、多すぎて印象に残らないことも多いのだが、その中で最も切り口が面白かったのがこれ。
「鋭い人間観察とその背後にある大きな権力への対決」といった視点から、清張を掘り下げた著者が突き当たったのが「一通の召集令状」。
なるほど清張は、自身の従軍体験から『遠い接近』を書いている。その後、清張が書いた作品に通底する、権力への対峙や秘密の暴露もまた、召集令状から始まった体験に根ざしているのだろう。
「34歳での本格的な戦場送りがこの作家の根底にどれだけの深い傷跡を残したのか」という著者の言葉が響く。