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ニコラス・クインの静かな世界
ニコラス・クインが海外学力検定試験委員会の一員に選ばれた際、委員会は大騒ぎとなった。彼は極度の難聴で、会話を交わすにも読唇術だけが頼りだったからだ。三ヶ月後、クインは毒殺...
ニコラス・クインの静かな世界
ニコラス・クインの静かな世界 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
商品説明
ニコラス・クインが海外学力検定試験委員会の一員に選ばれた際、委員会は大騒ぎとなった。彼は極度の難聴で、会話を交わすにも読唇術だけが頼りだったからだ。三ヶ月後、クインは毒殺死体となって発見された。補聴器をつけた安全無害の男がなぜ殺されなければならなかったのか?モース主任警部は即座に委員会に照準をあわせ捜査を開始するが……現代本格派の騎手が紡ぎ出す華麗な謎解きとアクロバティックな推理の世界。
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紙の本
クロスワード・パズラー
2004/07/06 06:48
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:明けの明星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
デクスターのミステリはクロスワード・パズラーです。
クロスワード・パズルがただのクイズではないのは、桝目があり、しかもそれが交錯しているからです。ある一つのタテのカギの答えがわからなくても、ヨコのカギに答えて桝目を埋めていくうちに、答えが推測できるかもしれません。
「“ランゲルハンス島はどこにあるか(八字)”彼は答えがわかるまで、たっぷり二分間、とびとびに書いてある━A━C━E━Sの文字とにらめっこしていた。」
モースは、普通の人と同じように、こんなふうにクロスワード・パズルを解いているのです。
モースは事件にぶつかったときも、クロスワード・パズルを解くように、事件を解き明かそうとします。物的証拠・状況証拠は、パズルのカギです。
しかも初期のデクスター作品で素晴らしいのは、それが複数の解答を持つクロスワード・パズルになっていることです。
こう見ていくと、デクスターのミステリの欠点といわれている部分が、必然的なことがわかります。
デクスターのミステリでは、1、証拠が少ない。というよりも、事件全体がなんとなくぼんやりしているように感じる。2、モースが根拠薄弱なことを妄想し過ぎである。
証拠が少ないのは、それがクロスワード・パズルのカギに相当するものだから。事件がぼんやりしているのは、桝目が埋められていないから。モースが妄想するのは、桝目を埋めようと四苦八苦しているから。
一般的なミステリは、ジグソーパズル的じゃないかと思います。読者は事件をはっきり把握することができます。手がかりもはっきりしているし、謎もはっきりしている。ピースをうまいこと正しい場所に押しこめば、絵柄(真相)が完成する。ところがデクスターの場合は、ジグソーパズルじゃなくて、クロスワード・パズルなのです。
で、本書『ニコラス・クインの静かな世界』も、クロスワード・パズラー━━しかも複数の解答を持つ、それです。
ニコラス・クインという難聴の人物が自宅で死んでいるのを発見されました。彼は毒殺されたのです。モースはまず「なぜ殺されたのか?」に焦点を合わせて、捜査を進めます。しかしそれよりもはるかに困難な問題が、モースの前に立ちふさがります。━━「ニコラス・クインはいつ殺されたのか?」
この作品では、あるひとつの「カギ」に対して異なった「答え」を与えることで、犯人を変えてしまうという、おもしろい趣向がしてあります。前二作のすばらしい出来映えに比べると、モースの妄想がおさえ気味で、謎解きとしてはやや落ちます。しかし水準以上だと思います。
デクスターのミステリは、アクロバティックなクロスワード・パズルなのです。