紙の本
わりとよかったで~
2019/06/20 19:27
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
『傍聞き』の長岡弘樹の初期短篇集が『陽だまりの偽り』。
わりとよかったです。
デビュー作より、その後の方がよくなってるから、これから期待できそう。
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よくできた作品ですが、弱いかな。
2018/06/16 02:01
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
「傍聞き」がベストセラーになった長岡氏のデビュー作。
5話からなる短編集です。
「傍聞き」も確かに読んでいるはずなのに、どんな話だったか思い出せません。
この作品も5話それぞれに良く出来た物語になっているとは思うのですが、いつまでも忘れられない程印象に残っているか?と訊かれれば正直自信がありません。
良くも悪くも癖が無さ過ぎるのかもしれません。
ケチを付けるところは全然ないけれど、手放しで褒めることもできないというのが私の感想です。
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貴方の周りにありそうなミステリ譚
2016/08/28 23:30
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投稿者:テトラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や現代を代表する短編の名手ともされる長岡弘樹。彼のデビュー作は読者の町にもいるであろう人々が出くわした事件、もしくは事件とも呼べない出来事をテーマにした日常の謎系ミステリの宝箱である。
物忘れがひどくなった老人が必死にそれを隠そうとする。
自身のキャリアを高めるために必死に働くがために一人息子を問題児にしてしまったキャリアウーマン。
卒なく業務をこなし、出世の道を順調に上がろうとする公務員。
同僚にケガをさせたことで自責の念から職を辞し、実家の写真屋を受け継ぐが資金難に四苦八苦する元報道カメラマン。
ある事件から息子との関係が悪くなった荒物屋の店主。
全て特別な人たちではなく、我々が町ですれ違い、また見かける市井の人々である。そしてそんな人たちでも大なり小なり問題を抱えており、それぞれに隠された事件や出来事があるのだ。
これら事件や出来事を通じてお互いが抱いていた誤解が氷解するハートウォーミングな話を主にしたのがこれらの短編集。中に「プレイヤー」のような思わぬ悪意に気付かされる毒のある話もあるが。
気付いてみると5編中4編はハートウォーミング系の物語であり、しかもそれらが全て親子の関係を扱っているのが興味深い。
「陽だまりの偽り」はどことなくぎこちない嫁と義父の、「淡い青のなかに」と「写心」は母と子の、そして「重い扉が」はと父と子の関係がそれぞれ作品のテーマとなっている。
それはお互いがどこか嫌われたくないと思っているからこそ無理に気を遣う状況が逆に確執を生む、どこの家庭にもあるような人間関係の綾が隠されていることに気付かされる。逆に正直に話せばお互いの気持ちが解り、笑顔になるような些末な事でもある。
人は大人になるにつれ、なかなか本心を話さなくなる。むしろ思いをそのまま口にすることが大人げないと誹りを受けたりもするようになり、次第に口数が少なくなり、相手の表情や行動から推測するようになってくる。そしてそれが誤解を生むのだ。実はなんとも思っていないのに一方では嫌われているのではと勘違いしたり、良かれと思ってやったことが迷惑だと思われたり。逆に本心を正直に云えなくなっていることで大人は子供時代よりも退化しているかもしれない。
作者長岡弘樹はそんな物云わぬ人々に自然発生する確執を汲み取り、ミステリに仕立て上げる。恐らくはこの中の作品に自分や身の回りの人々に当て嵌まるシチュエーションがある読者もいるのではないだろうか。
私は特に中学生の息子を持つがゆえに「重い扉が」が印象に残った。いつか来るであろう会話のない親子関係。その時どのように対応し、大人になった時に良好な関係になることができるのか。我が事のように思った。
しかしこのような作品を読むと我々は実に詰まらないことに悩んで自滅しているのだなと思う。ちょっと一息ついて考えれば、そこまで固執する必要がないのに、なぜかこだわりを捨てきれずに走ってしまう。歪みを直そうとして無理をするがゆえにさらに歪んでしまい、状況を悪化させる。他人から見れば大したことのないことを実に大きく考える。本書にはそんな人生喜劇のようなミステリが収められている。
全5作の水準は実に高い。正直ベストは選べない。どれもが意外性に富み、そして登場人物たちの意外な真意に気付かされた。実に無駄のない洗練された文体に物語運び。デビュー作にして高水準。今これほど評価されているのもあながち偽りではない。また一人良質のミステリマインドを持った作家が出てきた。これからも読んでいこう。
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些細なミスや仕事上の失敗を嘘で誤魔化そうとする。
その小さな嘘を取り繕うとするために、どんどん嘘が大きくなる。
人間って不思議なもので、追い込まれると自分を守ろうとするために思いもよらぬ悪知恵が働くものだ。
「もー止めればいいのに。最初から正直に話せば良かったのに。」とか、読んでてハラハラしました。
タイトルにもなっている「陽だまりの偽り」は痴呆症を認めたくない老いていく老人の気持ちっていうか、プライドっていうか、何となく分かる気もする。
最終的には「陽だまり」のようにホッコリできる作品。
「プレイヤー」の言葉の使い方に『おぉ!なるほど!!』
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内容(「BOOK」データベースより)
物忘れのひどくなってきた老人が、嫁から預かった金を紛失。だがこのことで、老人は同居している彼女の気持ちに触れる―表題作。
市役所管理の駐車場で人が転落死した。事件は役所内の人事に思いもよらぬ影響を与えた―「プレイヤー」。
日常に起きた事件をきっかけに浮かびあがる、人間の弱さや温もり、保身や欲望。誰しも身に覚えのある心情を巧みに描きだした5編。
2008年度日本推理作家協会賞受賞作家のデビュー作、待望の文庫化。
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「陽だまりの偽り」「淡い青のなかに」「プレイヤー」「写心」「重い扉が」の5編。
物忘れがひどくなっている自分の老いを必死で隠そうとする老人、育児に苦しむ若い母親、断絶する親と10代の子など…。
著者はどの作品でも、弱い者の側にいる。目先の刺激やあざとさを追わない。
イヤミスの対局と言える。
筆は実に滑らか。つまらないひっかかりもなく、安定している。日常の細かいところまで目が行き届いているな、と感じる。巧さを意識させないくらい、巧い。
モティーフは、いずれもあまりに普遍的で古典的とさえ感じる。古いかもしれないけれど、古びさせてはいない。
現代のミステリというより、時代もの人情ものに近いような読後感である。
この人はもっと注目されてもいいと思う。
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2012/3/14 Amazonより届く。
2014/7/14〜7/16
「傍聞き」を読んで興味を持った長岡さんのデビュー作。読む順番がなかなか回ってこなくて、ようやく読めた。
「陽だまりの偽り」、「淡い青のなかに」、「プレイヤー」、「写心」、「重い扉が」の5編。いや〜、すごい。「傍聞き」レベルの作品が目白押し。どれも良いが、強いて挙げるなら表題作の「陽だまりの偽り」と「重い扉が」か。いや「プレイヤー」や「写心」も捨てがたいし、「淡い青のなかに」だって良かったぞ。まあ、結局全作品面白かったということだ。未読の方は是非!(「傍聞き」も勿論!)
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短編集。いづれも不慣れな犯罪を犯す主人公が躊躇い、戸惑いの果てに何らかの気づきを得るような内容。キャラもストーリーも差異があって飽きはしないが、すごく残るといったインパクトはない。軽く楽しめる本。
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【読了】傍聞きで、一気にブレイクした感のある長岡さんのデビュー作。もう参りました。ミステリーでありながら、ほっこりさせてくれる筆致。只者ではありません。もっと読みたい!
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ミステリでもあり、読ませる小説でもあり。連城三紀彦さんの位置付けに近い感じがします。痴ほう症の兆候を感じとり、家族に隠そうとする老人。補導された息子を迎えにいった帰りに事故を起こしてしまったシングルマザー。人事異動を前にした市役所でおこった事件に、実家の写真館の借金に追い詰められたカメラマン、事件に巻き込まれた息子の対応に振り回される父親…。ミステリ抜きに小説として成り立ちそうな設定ですが、謎が解けると同時に自分自身の問題や状況に気づかされる、その鮮やかさが見事です。話題の「傍聞き」の前に発表されたデビュー作にも関わらず、文章に不自然さもなく、派手な展開も無理に仕込んだお笑いもないので気持ち良く読むことができました。特に子供たちの心意気がよいです。実際に存在するわけではないけれど、こういう子達がいれば未来は明るい。
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短編ミステリー集。収録5作のタイトルと主人公は以下のとおり。
「陽だまりの偽り」痴呆気味の老人
「淡い青のなかに」中学生の息子を持つキャリアウーマン
「プレイヤー」市役所職員
「写心」地方の写真館のカメラマン
「重い扉が」商店店主
「陽だまりの偽り」が断トツに良い。痴呆症の兆しを嫁に気取られたくないプライド高き老人が、自分の不自然な行動を隠そうと小さなウソを重ねるなかで抜き差しならない窮地に追いつめられていく。ヒッチコックのサイコスリラーのような気配を漂わせるストーリーには、あっと驚くうれしい結末が用意されている。先に読んだ『傍聞き』の4編とあわせた9編のなかでも、これがマイ・ベストです。
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5編の短編集。
どれも読みやすいが、中でも「陽だまりの偽り」がとても心温まるいい作品。嘘を隠すために嘘を重ねてしまう人間の悲しい性を描きながらも、作品のテーマは別のところにある。
さらっと読める良い短編集です。
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日常の些細な出来事や謎を解く日常ミステリーの短編集ですが、その謎を解くとあたたかい雰囲気になれるハートフルミステリーと言ったらいいのかな、そんな短編集です。、「陽だまりの偽り」「淡い青のなかに」「プレイヤー」「写心」「重い扉が」の5つのうち「プレイヤー」だけちょっとその範疇に入らない作品だけど、表題作「陽だまりの偽り」は物忘れのひどくなってきた老人が、嫁から預かった金を紛失することで、嫁の温かい気持ちがわかりほっとすると同時に、物忘れは他人事でなくなかなか切実な気持ちに(笑)。
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表題作のほか「淡い青の中に」「プレイヤー」「写心」「思い扉が」の5編からなる、「偽り---嘘」をテーマにした短編集。
傍聞きの時と同様、ミステリータッチに進めながら、ちょっとした見栄や、人生のかかった大事な時に、簡単な嘘を重ねてしまい、誰もが隠したくなるようなことを描き、その偽りから生み出される人の温かさを表現する。
嘘からはじまるストーリーは、悲劇が描かれることが多いが、この作品は最後に人の温かさや前を向いて歩いて行けるようなポジティブさを描いてくれていて、なんとなく清々しい気持ちにさせてくれた。
ただ、結末の弱さや、登場人物への共感、魅力といったものが足りないと感じられた。
とはいえ、これはデビュー作とのこと。
次の「傍聞き」へ十分生かされていると言うことだろう。
なにせ「傍聞き」はテーマといいホントに面白かったので。
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物忘れがひどくなった老人、中学生の息子と意思疎通が図れない母親、市役所の駐車場を管理する課長、写真館の経営が苦しくなった店主、息子が傷害事件に巻き込まれた荒物屋店主。事件に巻き込まれるのは些細なきっかけだが、その裏にあった勘違いや思い込みや・・・というのが5つの短編ミステリーに共通したストーリー。これでデビューした著者のためておいたアイディアを書き並べたのだろうが、そのひねりの部分だけを見せられた感じで、小説としての楽しみに欠けた。
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ミステリに分類したが、人は死なない系なので正直ここに分類していいのか迷う。
ただ、小さなミスリードによって、ラストに小さな驚きのようなものを毎回与えてくれる作者だという認識でいる。
長岡弘樹の本は『傍聞き』から入ったが、こちらも同じテイストであった。
日常の中の人々のちょっとの不思議を描いている。
個人的には表題作である『陽だまりの偽り』の本当に温かい雰囲気が好きだった。
大きな驚きなどは期待しない方がいいが、ちょっとした時間に開きたくなる作品だと思う。
個人的には好きな作風のため、他にも読んでみたい。