紙の本
小説より奇なり
2016/08/20 10:27
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史小説と時代小説は似ているようで、文学的には大きな違いがある。
歴史小説が実際に歴史上存在した人物や事件を表す一方、時代小説はほとんど作者の創作によって表現される。
葉室麟の場合、直木賞を受賞した『蜩ノ記』などの羽根藩シリーズなどは時代小説だが、本作は歴史小説である。
石田三成の娘辰姫と徳川家康の姪満天姫が津軽藩の藩主にともに仕えたというのは史実である。
本人たちがどのように感じていたかわからないが、本の惹句にあるように「これぞ女人の関ヶ原!」と時の人たちは噂したのであろうか。
こういう題材を見つけてくる。これは時代小説では味わえない、歴史小説の醍醐味ではなかろうか。
残された系図や手紙の端々から文学的な興味をいかに生み出すか。
歴史小説家は石の中から玉を発見するかもしれないし、読者が夢中になるかもしれない。例えば、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』などはその典型だろう。
この本には表題作となった「津軽双花」だけでなく、大阪城開城をめぐる攻防を描いた「鳳凰記」、関ケ原の戦いの中でも三成の絶望を描いた「孤狼なり」、そして本能寺の戦いを光秀側の武将の視点で描いた「鷹、翔ける」が収められている。
いずれも歴史小説である。
歴史の中に真実はひとつである。
しかし、そこに関わった人の数だけ真実があることを思えば、歴史小説はまだまだ面白い史実を読者にしめしてくれるだろう。
慈父のような視点を持った葉室麟ならではの、歴史小説をこれからも読んでみたい。
紙の本
津軽双花
2016/08/22 20:52
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投稿者:tatetate - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は女性を描くのは不得手という印象があったが、みごとに払拭した。ストーリーテーラーとしての実力を発揮。豊臣、徳川、石田の相克を通じて、武家社会に於ける天皇家の位置づけの変貌を明快に示す。この作品で葉室麟はある段階を突き抜けたように思われる。
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津軽藩2代藩主の津軽信枚に嫁いだ、
石田三成の娘で、高台院/ねねの養女・辰姫と、
徳川家康の養女・満天姫の、二人の姫を描いた、
中編の表題作と、
アンソロジー「決戦!」シリーズに収録された、
短編3編からなる作品集です。
収録作は、時系列に遡って収録されていますが、
短編から、時系列通りに読み進めて頂ければ、
表題作の面白さが、より引き立つと思います。
二人の室によるドロっとした愛憎劇とはせずに、
二人の室のプライドと覚悟を、純に描いた点は、
好感が持てましたが…、
特に、満天姫の人物設定を、特異としたために、
後半は、史実との辻褄合わせが強引だった点は、
ちと違和感も感じられて、勿体なかったかも…。
葉室さんにしては、深みが足りなぃ感じですが、
その分、複雑な境遇の二人の姫の愛憎と敬愛を、
嫌味なく、穏やか?に、読むことができました。
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表題作は結構よかったと思う。
久しぶりの歴史物。結構楽しく読めた。
なぜだかわからないけど、人の一生を凝縮して読んだ気がして、読み終わった後泣いてしまった。
そんな感動的でもないのに。
あと20年経って、もう一度読みたい。
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石田三成公の娘辰姫が高台院の養女となり津軽藩主に嫁いで子孫をなしていたという史実が小説で読めて嬉しいです。
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戦国時代の歴史モノ4編。表題作以外は「決戦!」シリーズにて既読。表題作は、弘前藩2代藩主・津軽信枚(のぶひら)に嫁した二人の姫、満天(まて)姫(徳川家康の姪であり養女)と辰姫(石田三成の娘、高台院の養女)との「女人の関ヶ原」を描いた作品。正室の座を奪い奪われた間柄の二人が、津軽家の川中島への転封を協力して阻止するところが読みどころ。
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女の闘い、には違いないのだけれど、どろどろした感じがなく、読んでいて嫌にならない。私は、辰姫様の側に付きたいかな、とは思う。
読了後、たまたま津軽地方を訪れたので、にわか知識を家族に披露(笑)。
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戦国末期から徳川初期の人物に新たな光を当てた中、短編集
2015年に毎日新聞に連載された中編の「津軽双花」は、津軽藩主に嫁いだ誇り高い2人の女性の心の対立と共感の話。
豊臣秀吉の正室だった高台院の養女として嫁いだ辰姫は石田三成の娘であり、伊達政宗に対する押さえとして津軽を利用したい徳川家康によって送り込まれた姪の満天姫と、正室の座をめぐって「女の関ヶ原」を戦う。しかし、津軽家存続の危機と再び乱世となる危機に際して協力して対処し、互いを認めあい心通わせる。人間の気高さを美しく描くのはいかにも葉室麟の面目躍如といえる。
短編の「鳳凰記」は、豊臣秀吉の死後の茶々が、実は秀吉の遺志を嗣いで朝廷を守るために豊臣を捨て石として徳川と戦ったと描く。
「孤狐記」は毛利の安国寺恵瓊の「駆虎呑狼」の策を防ぐために、石田三成は小早川の裏切りを工作しあえて関ヶ原で負ける戦を仕組んだと描く。
「鷹、翔ける」は美濃の守護代斎藤家の末裔斎藤内蔵助が美濃の守護土岐家の末裔明智光秀の家老となって、美濃を奪った織田信長への恨みから本能寺の変を起こしたと描く。
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綺麗な崇高な思いだとは思うけれど入り込めませんでした。何だか上滑りしているようで、字面を追っている読書でした。
ただ、石田三成や茶々に関しては、面白い解釈だなぁと思いました。
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「関ヶ原合戦図屏風」が家康の下から津軽の旅へと。ここ津軽藩、正室を賭けて嵐に双花が揺れる。藩主津軽信枚の正室で石田三成の娘でもある「辰姫」のもとに、家康の養女「満天姫」が徳川の権力拡大の代償に側室として輿入れ。関ヶ原の火蓋が再びか?湖面の様な静謐な美しさを持つ辰姫、一方艶やかで華やかな美を持つ満天姫だが夫々石田、徳川の矜持を心に抱きながらも、願いは共におのれが愛し慈しみそのものために生きるという戦なき平和。負ける戦をせねばならぬ者の美あれば、勝つことの厳に耐え抜くものの見事さ、が戦はいつの世も非情で無情だ
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石田三成の娘vs徳川家康の養女。
当人同士は決して憎しみあってはおらず好敵手のようになるが、周囲が謀をめぐらした結果満天姫と前夫の息子直秀が死んでしまう。
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内容(「BOOK」データベースより)
天下分け目の戦いは決し、敗者は歴史に葬られた―。父・三成の死後、ひっそりと津軽家に嫁いだ辰姫。当主の信枚と仲睦まじい日々を送るが、三年後、家康の姪・満天姫との縁組が決まる。正室の座は取って代わられる―。辰姫の胸に浮かんだのは、「父の仇」という言葉だった。美姫たちの戦いはここから始まった!乱世の終焉を辿る「大坂の陣」「関ヶ原の戦い」「本能寺の変」を描いた傑作短編も同時収録。
令和2年1月3日~6日
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読ませて頂きました。女性の心のひだが凄くわかり、尚且つ、抑える気持ちの苦しさが手に通る様に描かれてた。
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関ヶ原合戦の後、ひっそりと津軽家に嫁いだ三成の三女辰姫。その三年後、当主の津軽信枚と家康の姪満天姫との縁談が決まる。
家康の姪と三成の娘との女達の闘いが始まる。
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葉室麟の小説は登場する女性も男性も皆凛々しくて、筋が一本通って、読み終わると勇気づけられてまた頑張ろうという気持ちにさせてくれる。この本も、4編から物語から構成されていて、関連した話が時代を遡って語られ深みを増して行くというものでした。本能寺の変、大阪の陣、関ヶ原の戦い、その後と小説によっては諸説ありますが、この4編もまた納得のストーリーで読み応えがありました。それぞれの登場人物の生き様にうなづけるものがあり、面白かったです。