60歳からを楽しむ生き方　フランス人は「老い」を愛する

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今現在を生きる楽しみの連続の先に老後の楽しみがあるという考え方が素敵だと思います。
本書の中では何も難しい事は言われていません、心の持ち方だとつくづく感じました。

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老後に向けて、人とつながる趣味を作っておきたいと思った。
印象に残った言葉は、本当の老いとは、学ばないこと。

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40代を迎えるにあたり、今後をどう生きるかのヒントになればと手に取った。フランス人のおしゃれなおばあちゃんの生き方の本だと思ったのだが、日本の元外交官のおじいちゃんが書いた本だった！

バリバリお国のために働いたおじいちゃんから見たフランス人とは、家族を大切にして、会社以外の友達も作り、趣味に生き…39歳の女性ならほとんどの人ができていることばかりだった。

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老いに向き合おうと思っていたときに丁度良く見つけた本。フランスの文化や考え方が伝わってきて、老いとは何か、何故老いを皆悲観するのかという哲学的・論理的な考えは載っていなかったが、老いと向き合う文化の具体例を読んでいて心地の良い文章で表現してくれているので、なんとなく老いを大切にするってこういうイメージだな、という絵が頭の中に入ってくる。頭が回らなくても読めるし、心に余裕がなくても読める。

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「老いは熟した果実」「人生の実りと収穫の秋」
　素敵な言葉ですね。
日本人特有の「もうおばあちゃんですから」「もう年ですから」
と言う言葉、使いたくないですね。
「もうこんな年」ではなく、まだ、「こんな年」で老いを楽しみたいですね。
「老いは、われわれの顔よりも心の方により多くの皺を作るものだ」の言葉にはじめて出会いましたが、心に皺を増やしたくないですね。

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高齢者と接する機会が多い仕事なので、日本の高齢者は老いに対して悲観的だという主張に納得できたし、自分も同調して老いは恥ずかしいことだと思ってた
老後を楽しみに中高年期から入念な準備をして、いざ定年！さあ楽しむぞ！なフランスの国民性大好き
老うことに対してのネガティブな考え方をガラッと変えてくれる一冊。

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1089

フランスには「老い」を称える諺も多く、日本人よりも老いを肯定的に捉えている。そして定年後の楽しみのために30代、40代の時から準備をするらしい。世界的にレズビアン映画見てるけど、老婆2人の恋愛物見た時はフランスだなー！と思って嬉しかった。あの映画未だに好きだな。

賀来弓月
男性。１９３９年生まれ。１９６０年外交官上級試験合格、１９６１年名古屋大学法学部卒、外務省に奉職、英オックスフォード大学大学院留学（外務省在外上級研修員)、スイス、ブラジル（２回）、米国（２回）、デンマーク、イタリア、カナダ、インド（２回）などに勤務、外務省在職に防衛省防衛研究所（旧防衛研修所）、及び米国議会系シンクタンク「東西センター」（East-West Centre）に出向(1987-1989)（客員上席研究員兼センター所長特別顧問）、外務省退職後東京のカトリック系女子大学非常勤講師、NPO法人アジア近代化研究所特別顧問、ローマン・カトリック。仏カトリック女子修道会の老人ホームで１１年間（１９０６−２０１６）特別招聘ボランティアとして奉仕活動に従事。

60歳からを楽しむ生き方　フランス人は「老い」を愛する
by 賀来弓月
　フランスの高齢者たちは、よく人生を「一年の四季」にたとえます。ひとは春に生まれ春、夏、秋を生き冬に死ぬという考え方です。そして高齢期を「秋」と考えます。フランスの諺に「 老いは熟した果実である」（La vieillesse est un fruit dans sa maturité）というものがありますし、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世（１９２０－２００５）も高齢期を「 人生の実りと収穫の秋」と形容しました。フランスでは、神父や修道女がよくこの言葉を口にしていました。

　私たち日本の高齢者にとっても、いつまでも溌剌と元気でいたいという思いは変わらないはずです。そこで以下では、私がフランスの多くの定年退職者や高齢者から感じとった定年後や老後を充実させる生き方の「知恵」を紹介したいと思います。

フランス人が「La vie est belle（ラ・ヴィ・エ・ベル）」と叫ぶときに込める思いは、「人生を思い切り楽しもう」「生きる喜びを精一杯享受しよう」「人生を楽しく有意義なものとするために、自分自身で考え、自分独自の道を切り拓こう」 というものでしょう。

同じ精神を表すものとして、世界的に有名なフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフ（１９１５－１９６３）が歌った『バラ色の人生」（La vie en rose）』という有名な曲があります。 「人生は美しい」と『バラ色の人生』には、フランス人の美しく、楽しく生きようという強い思いが込められているといえるでしょう。

　日本では、「今現在を生きる楽しみの連続の先に、定年後や老後の楽しみがある」という当たり前のことがあまり意識されていないように思います。これは決して本人だけの責任ではありません。企業や官庁で、日本人の勤勉さや自己犠牲の精神に乗じるような労働文化（働き方）ができ上がっていたせいでもあります。働くことに一生懸命な状態から、突然定年を迎え、すぐに老後ののんびりした暮らしに切り替えるのは容易なことではありません。その意味では、多くのフラン���人のように、現役時代の楽しみの延長線上に、老後の生活の豊かさを築いていくという方法には、大きな意味があるのではないかと私は考えています。

　フランス革命の「自由・平等・博愛」の精神は、フランス人の生き方を支えています。 フランス人は徹底した合理主義者、個人主義者だ といわれています。フランス人は 自由に考え、自由に行動し、自由に生きようとします。 人は人間としては平等だという強い意識をもっている一方、各自の個性というものを非常に大事にします。自分自身の幸せに価値を置き、どんな定年後を生きるか。それを決めるときも同じです。

　しかし、 フランス人は個人主義者ですが、利己主義者でも孤立主義者でもありません。 フランス人は博愛主義者として社会の弱者の痛みを感じることができ、そうした人たちを支援するために行動しようとします。フランスの人たちはそういう生き方が自分自身の人生を充実させ、幸福にすると信じているのです。

　ところが、日本では、現役時代の終了間際になっても、定年後の生活設計ができていない人が少なくありません。フランスの状況を知って、私は 日本では定年後に向けた助走期間をもっと長くする必要がある のではないかと思うようになりました。定年後を本当に楽しく生きることができるようにするための準備は、「家を建てて、貯金をする」ことだけではないからです。

私の出会ったフランスの高齢者たちは、現役時代から、できるだけ多くの趣味を持ち、多くの活動に参加するよう心掛けていたといっていました。どんな趣味・活動かといえば、例えば、音楽や絵画の鑑賞、チェス、旅行、スポーツ、社会奉仕などです。

趣味は、個人で楽しむだけでなく、地域コミュニティの同じ趣味を持つ人々の団体に所属できるというメリットもあるでしょう。そうすることで、高齢期にありがちな孤独感を和らげることができるのです。フランスの高齢者たちの間には、老いを共に楽しく生きることができる新たな友人を得ることを主要な目的にして、優先的な趣味を決めている人が多かったように思います。

フランスでは「友人は人生を生きていくときの重要な人間的資産」であると考えられているのです。そのため、フランス人は学校や職場時代の友人を大事にしますが、それ以上に日常生活の社交活動で得た友人たちを大事にするのです。フランスには日本と違った社交文化があります。それは友人を夫妻で自宅に招待するというホームパーティの文化です。「パーティ」といっても、日本でイメージするような豪華な料理が並ぶものではありません。普段の食事に近い料理で友人を夫妻でもてなすのです。

一方で、日本の高齢者、特に男性の「交際事情」はそうはいかないようです。昔の職場での人間関係が希薄になると、交友関係が一気になくなっていく傾向があるのです。今、そんな寂しさを予感している人は、定年退職後でも遅くはありません。地域コミュニティの趣味の会、勉強会、ボランティア活動などに参加して、高齢期をともに生きる新しい友人を見つけることをお勧めします。

孤独に対して不安を抱く気持ちは、日本人であれフランス人であれ、基本的には同じだと思います。 　しかし、日仏では大きく��う点もあります。それは、 フランスの人々は、孤独を感じるときに、信頼できる他の人に自分の孤独感を率直に口に出して、訴えることができる ということです。例えば、「一緒に老人ホームに入っていた夫が死んで話し相手がいなくなってしまった」「老人ホームには友達といえるような親しい人がひとりもいなくて淋しい」「一人娘は私のことを忘れてしまっている。私は天涯孤独も同然です」「妻が亡くなって非常に淋しい。茶飲み友達程度でもよい、心から愛せる女友達が欲しい」などなど。フランスの高齢者たちは人間味に満ちていると感じました。

一般的に、フランスの人たちは、年齢も性別も職業も人種も違う人に話しかけることをあまりためらいません。初対面の人とも打ち解けた雰囲気で心地よい会話をする意思と能力に長けているのです。そして、初対面の他者に対する善意にも満ちています。

他方、私たち日本人は、見知らぬ人と会話を始めることを非常に躊躇します。警戒さえします。私の日本人の友人にこんなことを言った男がいました。「日本人は広大な砂漠のど真ん中の一本道ですれ違っても、話しかけられないように顔を背けて、去って行く」と。これは日本人のひどく自虐的なジョークですが、真実の一端を表しているような気がします。

一般的に、フランスの人々は、いつまでもおしゃれで、美しくありたいという強い思いを持っています。そのせいか、男女とも、見た目が老けることへの不安感が強いように見受けられます。日本では、アンチエイジングを考えているのは、主に女性です。この点では日本の男性は「反応が鈍く」、だらしない格好を平気でしている人も少なくありません。

本当の老いとは「学ばない」こと

イタリア移民の三代目だというフランス人ボランティアが私に教えてくれたイタリアの詩人の言葉があります。「 人は学ぶ能力を失ったときに老いが始まる」（La vieillesse commence au moment où une personne a perdu sa capacité d'apprendre）（アルトゥロ・グラフ、１８４８－１９１３）。人生１００年の時代。 60 歳で「老後」と考えると残り 40 年、 70 歳で「老後」と考えても残りは 30 年あります。 30 年あれば、何かをはじめて習得するのに十分な年月です。

フランスには、「France Culture」という知的水準の高い番組を有するラジオ放送を聴いて、政治、経済、哲学、文学、芸術、科学など各分野の知識と理解を深めている定年退職者も多い。「ラジオ放送番組はフランスの重要な国家的文化遺産である」と考えられており、何十年前に放送されたラジオ番組もしばしば再放送されています。

フランスの各都市には、大中小さまざまな官民の美術館、博物館、図書館などがあります。例えば、パリには１００近くの博物館・美術館があり、これらに足繁く通い、学ぼうとする高齢者も少なくないのです。 　フランスの人たちは、定年後も新しいことを学ぶことに喜びを見いだしていました。体系的に何かを学ぶことで、加齢による頭脳の機能退化と心の萎縮を防止できると信じています。 　日本にも無料の学びの場は多くあります。人はいくつになっても成長できますから、ぜひ自分の興味のある分野で新たな学びに挑戦したいものです。目標ができると、孤独を感じている暇はなくな��ます。さらに、学びの場を通じて、他の高齢者仲間との新たな出会いも生まれることでしょう。

　１９７０年代以降は、相対的に低い所得水準のフランスの人たちも、スペイン、ポルトガル、ギリシャのようなフランスに比べて物価の安い欧州南部諸国や、モロッコ、チュニジア、アルジェリアなどの北アフリカ諸国の海岸地域に老後移住するようになりました。年金でも、これらの地域で豊かに暮らせるようになったのです。しかし、外国に「第二の住居」を持つことには問題もあります。

ひとつは、海外生活中に発生する高額な医療費をどのように支弁するかという問題。ＥＵ加盟国内では「クロスボーダー医療における患者の権利」が認められており、ＥＵ加盟国内であれば、その国の市民と同様の医療サービスを受けることができます。費用について、自国の医療保険制度から全部または一部の払い戻しを受けられるのです。しかし、ＥＵ域外であるとそうはいきません。太陽を浴びながら生きる理想の暮らしに憧れながらも、現実的な理由からフランス国内に戻ってくる人も少なくありません。

　もうひとつは、治安の問題です。現在、フランス人居住者が集まる別荘地域などが「イスラムテロ」の標的になる危険性も増しています。海外暮らしとなれば、自分の身をどう守るかが一層問われてきます。

フランスには、「若いときの健康のみが良い高齢期を可能にする」（Une jeunesse saine peut seule procurer une bonne vieillesse）という諺があります。

フランス人は、アングロサクソン（英米）系やゲルマン（独蘭）系の人々に比べると、あまり「スポーツ好きの国民」ではないとされています。伝統的に英国の学校教育ではスポーツが重視されています。それに対して、フランスの学校教育ではフランス語と哲学の学習が重視されています。この違いが英国人の「フェアープレイの精神」とフランス人の「論理思考と議論好き」を支えているといわれています。

フランスの定年退職者や高齢者の間で最もポピュラーな運動・スポーツといえば、おそらくウォーキングとサイクリングでしょう。フランス人にとって歩く運動は、散歩（バラデ）、遠足（ランドネ）、ハイキング、山登り、巡礼などを意味します。フランスには、スペインにまで延びるカトリックの巡礼路がたくさんあります。そのため、フランス人の高齢者には、数十日をかけて巡礼の旅をしたいと思っている人たちが少なくありません。

サイクリングもフランス人の愛する国民的なスポーツです。世界的に有名なフランス国内一周の「トゥール・ド・フランス」にフランス人は熱狂します。ほとんどの都市が〝サイクリング仕様〟になっているのは、フランス国民の自転車好きに、自治体が応えているからに他なりません。サイクリングロードが整備され、市内のいたるところに自動式レンタサイクルステーションがあります。フランス国内を旅行すると、ロワールの河川敷、ブルゴーニュの運河沿い、アルカッションの海岸沿いなど河川・運河沿い、海岸沿いのサイクリングロードを緑と水辺を楽しみながら、自転車走行している人たちの姿をよく見かけます。多くの定年退職者や高齢者も、自転車に乗って市内散歩や遠出をしています。

　フランスの高齢���の間には、定年後の時間の使い方のひとつとして、ボランティア活動を選ぶ人が非常に多いです。 「自分より弱い立場にある、あるいは自分より恵まれない人のために何かをすることは、人助けになるばかりか、自分自身を人間的に成長させることができます。生きる喜びを与えてくれます」。 そういったのは、インドのムンバイにある修道会の老人ホームの全盲の神父でした。私が週末にこの老人ホームでボランティア活動を始めたのは、神父のこの言葉に背中を押されたからです。

ローマ教皇ヨハネ・パウロ２世は、国連の国際高齢者年（１９９９年）に、世界の高齢者たちに向けて次のような言葉を贈っています。 「寂しい時には、あなたよりももっと寂しい思いをしている誰かを訪ねるようにしましょう。あなた方は、何らかの方法で他の高齢者を助けることができます。例えば、お互いに話しかけることで。手を貸すことで。何か好意を示すことで。高齢者のみなさん、あなたの心の中にある善意を総動員して、いつも微笑み、人のために何かをするという気持ちを忘れないでください。他の人を温かく受け入れる気持ちを忘れないでください」

日本においては、「高齢者はケアされる側であるとしても、ケアする側ではない」と決めつける傾向にないでしょうか。私がフランスで知ったことは、多くの高齢者が、 80 歳、 90 歳になっても、健常であれば、他の人のために働くことができると考えていることでした。何歳になっても、自分のできることを自分のできる範囲で奉仕しようとする生き方なのです。

高齢期の性愛をタブー視しない

老人ホーム内外の多くのフランスの高齢者たちと交流しながら、私は フランスの人たちは死ぬまで恋をしたいと考えている ことを知りました。性愛の欲求は、死ぬまで続きます。 　実際に、フランスの高齢者の多くは、 80 歳や 90 歳になっても、「性愛の相手は必要だ」といっています。レンヌの元地方公務員のパスカル氏（ 81 歳）は、笑いながら「フランスでは性愛の喜びには、定年退職はないのですよ」という。

文豪ビクトル・ユーゴ（１８０２－１８８５）は、こんな言葉を遺しています。「老いの特権のひとつは、自身の年齢以外にあらゆる年齢を持っているということだ」（L'un des privilèges de la vieillesse, c'est d'avoir outre son âge tous les âges） 　つまり、老いはこれまでの人生の賜物であり、あらゆる経験を有している〝特権〟なのです。その自覚の強いフランスの高齢者の多くは、過去の人生で得た知識や知恵、集団的記憶（特に戦争経験）などの〝生きた歴史〟を若い世代に伝えようとします。

老化の問題は見た目ではなく、心にあります。フランスのすべてが優れているというわけではありませんが、老いを肯定的に捉える文化は素晴らしいと思います。日本でもそんな考え方がもっと広がっていけば、中学生の高齢者に対して抱いている「いつも寂しそうにしているので、かわいそう」という印象も変わっていくのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、人間を最も幸せにするのは、「 人を愛し、人に愛されている」という充実感です。その意味で、家族は、愛を与え、愛を得ることができる最も重要な生活の場なのです。 「世の中で最も美しい情愛は、家族の��で形成される（La plus belle amitié qui naît dans le monde est celle qui se forme au sein des familles）といったのは、フランスの作家・道徳家シャルル・ド・サンテーブルモン（１６１６－１７０３）です。

ベルギーの作家であるジャン・クロード・ピロット（１９３９－２０１４）は「老いには年齢はない」（La vieillesse n'a pas d'âge）と言っています。つまり、人の顔と心に皺ができる年齢はまちまちということです。例えば、 60 歳で「年をとっている」と見える人もいれば、 85 歳になっても「年をとっている」と見えない人もいます。 　チェコの作家フランク・カフカ（１８８３－１９２３）は「幸福は老いを忘れさせる」（Le bonheur supprime la vieillesse［原文はドイツ語、上記はフランス語訳］）といっています。

フランスの高齢者は、日本の高齢者と同様、心身の衰えや重病、配偶者との死別の悲しみ、孤独感、苦しい過去の記憶など、さまざまな「老いの試練」を味わっています。しかし、文化や国民性や人生観や宗教観が違うせいか、フランスの高齢者たちが老いと向き合う姿勢からは非常に前向きなものを感じます。自分自身の人生だから、自由な選択に従って、楽しく、有意義に、心穏やかに、威厳をもって、まっとうしたいと思う気持ちが強いのです。

老人ホームでのボランティア活動は、私に新たな生きる喜びを与えてくれたように思います。２００６年に修道会の本部のあるフランスでボランティアを再開したときには、私自身は高齢者になり、さまざまな老いの負担というか老いの試練を感じ始めていたのです。フランスの各都市にある修道会の老人ホームでの私の奉仕活動は、まさに日本で「老老介護」と呼ばれるものだったように思います。私にとってボランティア活動は、フランスの老人たちの世話をしながら、一緒に自分自身の老いを考え、私自身の老いを生きることを意味しました。フランスでのボランティアは、私にとって日本における老いを見つめ介護の問題をもっと深く考える強い動機付けにもなりました。

さらに、私は、フランスの老人ホームでボランティアをしながら、定年後を生きる多くのフランスの高齢者（ボランティア）とその友人仲間と親しく交流しました。フランスの高齢者たちの家庭を訪問することも始終ありました。フランスのこれらの高齢者たちは、その生きる姿を通じて、定年後と老いの生き方について、実に多くのことを私に教えてくれたように思います。これらのフランスの高齢者たちのお陰で、私は今、心豊かに老いを生きることができると思い、感謝しています。 　フランスでの私のボランティ活動は、２００６年から２０１６年まで 10 年間続きました。最後の２年は、２ヶ月近いボランティアの終わりになると、相当な心身の疲労を感じるようになっていました。老人ホーム専属の医師の世話になったことも一度や二度ではありません。２０１６年になってがんが見つかり、治療のためにフランスでのボランティアを断念せざるをえなくなりました。「死ぬまで続けるのだ」と意気込んでいましたので、今でも無念な気持ちはあります。