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紙の本
ウルフの腕は冴える。時代を感じさせない探偵モノ
2004/05/23 21:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は探偵ネロ・ウルフのシリーズである。1979年に初版が出されているせいか、文庫本にしても字が小さくて多少読みにくい。読んでいて気付いたが、長編の中でも長い部類にであろう。しかし、展開やテンポが遅いということはなく、さすがにスタウトの腕は生半可なものではなかった。
ウルフの事務所に、あるとき奇妙な依頼人が仕事を頼みに来た。恐怖感に駆られて来所した依頼人は、運命を阻止してくれという。高額な報酬を提示されたが、ウルフはその依頼を断る。
この依頼人ヒバートはコロンビア大学の心理学者だという。実はハーヴァード大学出身の彼には、同級生の仲間がいた。彼等の仲間は学生時代に一人の同級生、ポール・チャピンをいじめて怪我を負わせ、片足を不自由にさせてしまったのだ。
この仲間は作家となったチャピンへのいじめを後悔して、贖罪連盟を結成した。ところが、連盟に属するハリスン判事、画商のドライヤーが不可解な死を遂げてしまう。それだけならばどうということはないのだが、直後に連盟の各人宛に奇妙な手紙が届く。手紙を読むと、いかにも恨みを持ったチャピンが2人を殺したかのような暗示を受ける。そこでヒバートがウルフの事務所に駆け込んだという訳であった。
ウルフはこの仕事を引き受けて、連盟の各人を事務所に集めて、ある提案をしたのである。結末はあっけないのだが、その過程が楽しめる。助手のアーチー・グッドウィンの活躍はいつもの通りであり、1日4時間もかけてウルフは蘭の栽培を楽しむところがこの探偵の非凡なところである。また、ウルフは家を出たがらない。そこで活躍するのが助手のグッドウィンやダーキン、ゲイサーの面々である。
ウルフの提案はチャピンの復讐に怯えて「贖罪」が「腰抜け」に変わってしまった連盟各人の恐怖を取り除くことを約したものだった。したがって、ハリスン判事やドライヤーの死を解明することが仕事ではない。依頼には含まれないことだが、読み手としては何故死んでしまったのかが明らかにされないのは、何となく釈然としない。
本書はスタウトが1935年に書いたもので、ネロ・ウルフ・シリーズの2作目に当たる。その割には時代を感じさせない。このネロ・ウルフのシリーズは翻訳されていないものもあるし、されていても出版されていないものも多いが、2000年の現代でも通用するウルフの非凡な才能と生活を何とか甦らせてほしいものである。
紙の本
奇特な名探偵ネロ・ウルフが登場する本格ミステリの佳作
2002/03/01 00:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
長編作品。
ネロ・ウルフシリーズの二作目。
主人公のネロ・ウルフは、大変な美食家であり、趣味の蘭栽培でも名の通った名探偵。無口で無表情、巨大な体をわずかに傾けることですら珍しいという変人でもある。
このシリーズは、彼の助手であるアーチー・グットウィンの一人称で語られる。アーチーは、家から出かけることは勿論のこと、部屋から部屋への移動や椅子から立ち上がることですら嫌がる変人ネロ・ウルフの変わりに、外へで調査を進める。明るいキャラクターと持ち前の記録力で彼が集めた情報によって、探偵の推理が進められていく。また調査だけではなく、ウルフの表情や仕草に現れるわずかな変化とその意味を、読者に伝える役割も担っている。
ウルフの独特さは、安楽椅子探偵としての変人ぶりだけではない。事件との関わり方にも、非常に特徴的なものがある。
一つは、成功報酬への執着。これは、美食と蘭栽培という費用がかさむ趣味を持っているため、多額な報酬を得なくてはやっていけないため。
二つは、報酬を得るための作戦を立て、その通りに運ぶように事件の解決までもコントロールしてしまうこと。巧みな交渉と、常に相手の優位に立つ情報を手にいれることで、確実に多額の報酬を受け取ることができるように、見事に仕組んでしまう。この組み立てにこそ、ネロ・ウルフシリーズの面白さがあるのでは。
アーチーとウルフの、一筋縄では行かない友情関係も楽しい。