1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小林 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリス人でまだ少年のようなグレンが、日本人で若いが知的にも経験の多さでもまさっている佐藤優に出会い、素直に信頼し慕う。佐藤もグレンを弟のように可愛がり、助言を与え時にからかい、導き励ます。グレンが佐藤に言ったように、佐藤がグレンを見下ろす立場に立たず、気さくに対等な立場から話すので、グレンの心がほぐれていく。家族がグレンがあんなに明るかったことはなかったと言うほどに。
そして二人が今までのようには会うのが難しい事情になり、いつか離れていく。それはグレンのとっては裏切りのように感じられたことだろうか。しかしもう再び会うことはなくても、グレンが佐藤と共に過ごした時間を忘れることはないだろうし、戦場のメリークリスマスのことをずっと覚えているだろう。
人は変わり時は流れる。だが、グレンのように悩んでいる人は今もいるだろう。その人たちがグレンのように恵まれた時を持てるよう祈る。
ロンドンも今は変わった。フォイルズ書店は隣に引っ越し新しくきれいになったが、懐かしい本の匂いは今はもうない。コレット書店はすでにない。あの親切な老店主はあれからどう生きられただろうか。
電子書籍
紳士協定
2015/08/23 11:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mark - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の書籍のなかで最も好きな1冊となりました。ロシア語研修を目的としたイギリス滞在におけるホームステイ先でのグレン君との交流が微笑ましく、そして切なく、惹きこまれ一気に読了しました。
投稿元:
レビューを見る
これは、一言で言うと面白い!!
食べ物の描写も多く、読んでいてお腹がすく(笑)。
不本意なイギリスの英語研修のホームステイ先でのグレンとの出会い。
今の佐藤 優さんの土台になっているのでしょう。
外交官の武藤さんとの思い出もしかり。
12才のグレンが1週間分のお小遣いを貯めて、ミスターサトウにフィッシュアンドチップスをご馳走する場面。うるっときました。
戦場のメリークリスマスの話も出てきます。
中国ほどでないにしても、イギリスでも日本人は残虐ってことになっているのでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
ここでは筆者が外交官になってすぐのころ。イギリスはベーコンズフィールドにある陸軍語学学校時代に触れた回想録です。キャリアの同僚と12歳の少年。彼らとの出会いと別れの物語であります。
帯に書かれているキャッチコピーが
「あの夏の約束を捨て、私は外交官になった―。」
という非常に印象的な佐藤優氏のイギリス時代を振り返った回顧録になっております。佐藤氏のイギリス時代はラジオ番組などで自身が語っている話から想像するに外交官として語学を身につけるためにイギリスの陸軍語学学校の日々は本当に過酷なものだったんだな、と思っておりました。しかし、ここで描かれているものは語学学校の日々のほかにグレンという筆者のホームステイ先の家の12歳の少年との交流と、同期であり、キャリア外交官である武藤顕氏との交流と別れを中心に描かれておりまして、これがまたなんともいえない切ない展開になりましてね。
筆者はグレンとその家族を通して、イギリスに横たわる『見えない壁』具体的に言うところの『階級社会』の存在や、社会の姿を知り、武藤氏からはキャリアとノンキャリと立場は違えど、同じロシア・スクール(外務省の『派閥』)として語学で切磋琢磨する姿。さらにはグレンと映画『戦場のメリークリスマス』を見る場面があり、、この映画を大学時代に見たことを思い出し、台詞やト書きが出てくるとその場面の映像を思い出しました。
ここで武藤氏は筆者に『あまり政治に深くかかわるな。』や『君はいつか組織と対立するかもしれない』との警告があったり、グレンが両親と別な階級に行くために大学へ進学するべきか否かを筆者に問うている場面はすごく印象に残っております。グレンとの結末は本書に譲るとして、筆者と武藤氏は同じモスクワ大使館に勤めながらもだんだんと疎遠になっていき、筆者が政争に巻き込まれたときは組織に『踏み絵』のために『佐藤優調査チーム』の指揮を執った事がここに記され、こういう結末になってしまったことにやるせなさを感じつつも筆者が
「私が武藤君と会話を交わすことは、生涯ないと思う。しかし、武藤君が研修生時代の私にとってかけがえのない友人であったという記憶は一生消えない」
とあとがきのほうに記してあったことがあのすさまじい修羅場を経験した筆者だからこそ書くことのできるメッセージだな、という読後感を持ちました。ほろ苦い後味を持つ一冊ですが、これは面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
ジャンルと言われると自伝かと思われます。著者が外務省に入って、イギリスとソ連で研修を行っている期間だけの話ですので、小説といったほうが近いのかもしれません。
外交官としての研修で語学を主として学ぶためにイギリスに14ヶ月滞在、その期間の話をホームステイ先の息子グレンとの出来事を主体に書かれています。まだ研修中の話ですので、外交官の世界については触り程度のことが書かれているにすぎません。そのため著者の純粋な人間観ややりたいことについて、とても人間的に書かれてあり、読んでいる自分と照らして読むことができました。
自身の生き方に対して、少しだけ高度な視点で考える。著者の生き方を読み、そのように考えさせられました。
投稿元:
レビューを見る
若き日の追想記,というより懺悔の気持ちが通底した告白記,のように感じる.その中にも,佐藤氏の人間観,世界観が内包されていて読み応えがある.何より,極めて読みやすい文体で構成されているため,引き込まれる.
投稿元:
レビューを見る
『国家の罠』では非常に頼もしく新鮮に感じた佐藤氏の世の中を見つめる真摯な姿勢も、ここまでくるとちょっとくどいかな…
外交官だった身分へのこだわりとか膨大な知識の披露とか昔から大物感を漂わせていた自分とかが優先されてしまっている感じ。自分の物語を仕立て上げすぎと言うか。
タイトルの『紳士協定』は結局守られなかったようだし。最後まで読むとそもそもタイトルがそぐわないことにがっかりしてしまった。
あなたのこともあなたの仕事もとても尊敬しているので、そんなに誇示する必要はないと思うと伝えたい。
投稿元:
レビューを見る
なんか・・・こんな構造を持ったお話をどっかで読んでると思うんだけど・・・なんだっけ・・・(悪い意味では無い)。
投稿元:
レビューを見る
すごーく面白かった。久々に惹きこまれて一気に通読。佐藤氏の10代、20代の片鱗が垣間見えて面白い。‥‥わが身と比較すると全然違ってて、軽く落ち込むけど(経済学部の癖に、学生の頃、経済学のこと、まったくわかってなかったし)。
佐藤氏の無神論から洗礼を受けるまでの過程について、もっと知りたい。他の本に書かれているのかな。
投稿元:
レビューを見る
佐藤優はこういうのに集中して粗製乱造やめればいいのに… 一部、できすぎてて作ってないかというところはあるけど、自分自身とホームステイ先の少年の交流と階級の壁について。こういうものに私は弱いんだろうなあ、まあそりゃそうだろなあ。
投稿元:
レビューを見る
外交官専門職員の最初の1年か何の生活について分かるようになる。
ノンフィクションだが読みやすかった。
外交官になった理由や仕事、裏事情を赤裸々に書いている。
投稿元:
レビューを見る
佐藤優氏のイギリス研修生時代の小説。佐藤氏が外交官としての方向性を形成する時期に何を考えていたのかが分かる。
「先生と私」の方が私は好きですが、本作も佐藤氏のイギリス分析も含まれており、負けず劣らず面白い内容です。
投稿元:
レビューを見る
1980年頃のイギリスの文化、国際情勢、日本人がどう見られていたか、等を知ることができた。現在は大分状況が違うにしても、イギリスに行くことがあればその前に読んでおきたい本だと思いました。著者と少年グレンの対話が面白く、二人の関係が羨ましくも思いました。
投稿元:
レビューを見る
著者である26歳の日本人外交官と、12歳のイギリス人少年との交流を描いた回想録。
著者のエグい教養作品とは違った進学や恋愛相談を通じて、生々しく、心温まる交流を描いた文学的な作品だと思う。
大学出たばっかりの26歳で、自国の文化や歴史を語りつつ、「(イギリス人に対し日本)食は文化だから、食べなくてもいいんだよ」と言えるか?著者の本当のグローバルコミュニケーション能力・才能には、恐れいる。
海外赴任する人だけでなく、国内転勤族にも、使える実践的知識だと言っても過言ではないだろうか。
他人との交流のあり方において。
本作品の時代からは、変化しているのかも知れないが、生活レベルで見た日英の違いも見逃せない。
投稿元:
レビューを見る
駆け出しの外交官、いや、それに向かって歩みはじめたばかりのころの佐藤が、イギリスで語学研修(英語、ロシア語)を受けたときのホストファミリーの少年との対話が主。イギリス特有の階級社会とグラマースクールでの自分の立場に悩む知的な少年との対話が、佐藤の職業観を固めていく。
ロンドンの書店巡り、『戦場のメリークリスマス』を共に観たこと、キドニーパイの異様な味、同期同僚である武藤氏との濃密な対話など、佐藤の回想が甘酸っぱくもあり、人をして、同様の過去への沈潜に誘うような本でもある。