紙の本
大切な本
2015/12/27 15:58
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投稿者:ほし☆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
他人と距離をとり、必要以上に相手にふみこまないよう気をつけていた宇田川(主人公の男性)。地元の群馬で様々な人と出会い、少しずつ変わっていく様が描かれています。「人間関係はかけ算だなぁ ただ、神様への祈りだけは足し算だったらいい」(本文より)私にとって大切な1冊です。
紙の本
モラトリアム男と閉塞の町
2022/01/19 15:15
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
キャベツバイトと見習い神主に明け暮れる、主人公・宇田川静生のキャラが良かったです。田舎町ならではの生きづらさが、終盤の炎上騒ぎに繋がるところも見事でした。
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お前はそんなに偉いのかと最初は思ったけど、どうせ家業を継ぐからねみたいな諦めというか、先に夢がないというか、田舎だしね、閉塞感はあるよね。
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”薄情”という意味が伝わらなかった。群馬県在住作家の群馬本だったので読んでみたが、今一つのめり込めなかった。だが、宇田川君の心のひだに最後で触れられたような気がした。
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よそ者ってなんだろう。Uターンで戻って来たヒトは戻ってきた瞬間にそこの者になるのか。何年そこに住んでいたらよそ者じゃなくなるのか。
地方都市のそのまた中心ではないところに住む人たちの、よそ者に対する感情の複雑さ。受け入れ親しく付き合っていたとして、けれど完全に同化はさせない微妙な感情の溝。少したどればだれか知り合いにたどり着く縁の中で生きている人たちが使い分ける「内側のヒト」と「外側のヒト」への「情」の、その濃度。けれどその「よそ者への薄情さ」は実は情の薄さではない、という、これまたなんとも複雑な。
もともと他人と深く濃く付き合うことが苦手な人にとって、その情の濃い土地で生きていくのは苦しいモノだろう。けれどそういう付き合いを避けて生きて来た(と思っている)宇田川も、決してその情を拒否しているわけではなく、その濃さに自分を合わせ切れていないだけのような。なまじ東京で学生生活を送ったばかりに都会での軽くて薄い付き合いの心地よさを知ってしまったのだろう。たんなる都合のいい身軽さ無責任さ、なのだろうけど。
そんなかれが、都会から来て住み着いた木工職人の自由さへの憧れと嫉妬を自覚し、得体の知れない喪失感やあるようでないような居場所と未来への漠然とした焦りを飲み込むことでその場所で生きていく自分を受け入れていく。かれにとってあるいみリハビリ期間だったのかも。
ヒッチハイク少年との出会いは偶然のようで、あるべきときに起こる必然のようで。
そしてタイトル。誰が薄情だったのか。
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いい小説を読んだあとに共通する感想は“ていねいに生きたくなる”だ。
今回もそう。何かもやっとした違和感を抱えて生きる主人公の宇田川に心寄り添わせて読み進む。彼が出会う人々もまた同じ。もやっとしたものに目を背けて生きてきたって,いつかは向き合って,対話していかなくてはいけない。ていねいに。ていねいに。絲山さんの文章はいつも力強くてやさしい,と思って大好きで読んでいるけれど,今回はそのていねいさに心奪われた。そしていつも引用したくなる。から,する。かっこつけないで,かっこいい言葉で,もやっとしたものを綴ってくれる。“過去が,たしかに過去になっていく”とき,もやっとしたものが,すこしずつ,晴れていく。
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珍しく?主人公が男~高崎に住む宇田川静生は伯父の神社の跡取りで大学時代は都内で過ごしたが,地元では特に生業に就くことなく,嬬恋村のキャベツ畑で夏働く年が多い。帰ってくると女が欲しくなり東京に出て女とセックスするのだが,暫くすると女から金の無心話が出て,自然消滅を狙う。製材所跡の木工をやる鹿谷のプレハブに出入りするのが気楽だ。高校の一級下の女・蜂須賀が名古屋から出戻ってきた。しかし,留守番後に蜂須賀を連れて帰ってきた鹿谷を見てしらける。温泉宿で夜のバイトをして知り合った瑞恵とは何となく合うのだが,ある日突然,結婚を前提という男がいると打ち明けられ,ホテルに置き去りにして分かれた。その後は眠くて仕方ないが,刈り払い機の混合燃料を買いに行ったホームセンターで火事騒ぎで盛り上がっている一群が中に,鹿内を紹介した美容師の関が居て,自転車で見てくると出掛けていく。帰ってきてこっそり報告した内容は,痴話喧嘩の果てに倉庫から火を出してしまったのだという。見舞いに行って連れ出した蜂須賀から話を聞き,太田で高校生のヒッチハイカーを拾い,出羽に行こかと決めた~いつ終わっても良いような結末があるようでない話でした
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境界とはなにか、よそ者とは誰かーー。
土地に寄り添い描かれる、迫真のドラマ。
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんとの交流を通し、徐々に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起き――。季節の移り変わりとともに揺れる主人公の内面を照らし出す、著者渾身の長編小説。
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群馬という、地方というには東京が身近にあり、だがやはり人々の暮らしは田舎暮らしに近い地方都市を舞台に、地の者と、一旦外に出て戻ってきた者、そして都会からやって来た者との微妙な感覚の差異と、それに気づいて揺れる気持ちが描かれた物語である。いまいる所に、自分というパズルのピースがかっちりはまる場所がないような、心もとない気分を「薄情」と表したのだろうか。宇田川の思考の過程――ことに蜂須賀に関する――が、個人的にはあまりよく理解できないのだが、地方都市で生きていくということの鬱屈が関わっているのだろうか、とは思わされる。自分の立っている場所を無条件に受け入れられない葛藤は、じわじわと沁みこむように伝わってくる。鹿谷さんはずるくて嫌いだ。宇田川が、薄い卵殻越しに見ていた世界が、殻が壊れることでクリアになることを祈るような心地になる一冊である。
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読書記録です。まだの人は読まないでね。
淡々とした物語。
私は政令都市のサラリーマンの娘でサラリーマンの妻なんだけど、学生時代の○○休み以外は長期で休んだことがありません。どこかに属さなかった期間もなく、常に「通う」「自分以外にする人がいない」仕事を続けてきました。
本のなかには、けっこう自由な毎日を過ごしている登場人物がでてきます。田舎って狭いけどおおらかなところもあるんだな、と。
でも、住みたいとは思えなくて、人間関係の濃さについていけないかも…と思う日常描写が多かったです。
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田舎賛美でもなく、かといって鬱屈さを強調するわけでもなく、ひとりの若者を通して地方都市を淡々と描かれています。
よそ者やUターンなど、いろんな人が出てきますが、何に対しても肯定も否定もしていない小説でした。
主人公の抱える空虚感は、他人事とは思えず…
ラストに起こる事件を経て、主人公が最後にたどり着いた結論に、肩の力が抜けてちょっとラクになれました。
無理しなくて良いかな。
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共感できる部分が結構あって、あー…って声が思わず出てしまうほどだった。良い意味でこざっぱりとしていて、ムダな部分が無く、とても読みやすい文章でである。絲山秋子の文章はごちゃごちゃしてないので好き。ふと思ったのだが、人公の宇田川静生に考え方が似てるからか、共感できるんだろうな。面白いくらいに似てる。現代の若者の特性なのだろうかと思ったり。
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誰かを抹消してしまうような薄情さ…
よそ者だからってことではなく、私には抹消してきた人が山のようにいるのですけど…
自分が薄情な人間だってこと自覚してますし。
それと、他県の人用にガイドマップつけて下さい
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「離陸」よりは一等いい気がしました。全開とまではいなかいが絲山節が戻ってきてうれしいな、いいな~。神主見習いというのは驚きのペルソナだけど...次はうさちゃんだ!
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愛とか、いがみあいとかそういう重たいものが詰まっているところは密度が濃い。今どう思ったとか今日何があったとかそういう要素がぎゅうぎゅうに詰まった場所が苦手な主人公。新しい恋人とのつきあいは薄く平穏そのもの。自分の意見は持っていても強く主張することがない。連絡をさぼっても不安がることもなかった。小さな家庭菜園を丁寧に管理するように黙々とセックスに勤しむ。つきあう前に消耗してしまうような駆け引きがなく順風満帆といえたが、薄さの裏の途轍もない陥穽に嵌ることになる。しかしながら主人公には微塵の焦りもない。低体温の爬虫類好きも変わらない。最低限の保障に守られ熱さから最も遠い場所でシニカルに生きる。これからは、こんな生き方が多くなるのかもしれない。
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群馬に生まれ育ち、家業を継ぐ予定で、この地から出ることもないと何かを棄て、ずっと何かが足りない気分で生きてきた宇田川。
閉塞的な町で内からの目と外からの目の狭間で揺れる「かれ」の内面が丁寧に、主観的、客観的に描かれていく。
田舎という狭いケージの中にいて、ケージの外に憧れながら、それを認めたくない歪んだ気持ち。よそ者の自由さに対する憧れと嫉妬。それを認めたくないがための存在の否定。
それらが、行きつ戻りつ行き場のない気持ちで迫ってくる。
その中で、宇田川のお気に入りの群馬の風景の描写が素晴らしく、温泉やスキーだけでないこの地の魅力を味わいに出かけたい気持ちが沸々と沸き上がった。