紙の本
武田百合子氏が、作家であり、夫の武田泰淳氏と13年過ごした富士山麗での思い出を描いた傑作です!
2020/07/20 17:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『犬が星見た―ロシア旅行』、『ことばの食卓』、『遊覧日記』、『日日雑記』、『あの頃―単行本未収録エッセイ集』などの作品を発表してこられた武田百合子氏の作品です。同書は、作家で夫であった武田泰淳と過ごした富士山麓での13年間を、澄明な目と無垢な心で克明にとらえ、天衣無縫の文体で映し出した作品です。中公文庫からは上中下の三巻シリーズで刊行されており、上巻の同書は昭和39年7月から41年9月までが収録されています。同書は、田村俊子賞を受賞された作品でもあります。
紙の本
日記や備忘録の意義を教えてくれる本
2022/08/21 10:28
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投稿者:M★ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫・武田泰淳と共に暮らした13年間の日記。
献立等色々含む。
作家の妻は、一番身近なファン。
著者の文才が、夫の作家活動の殆どを支えていたんじゃないかと思った。
・・日記や記録の大切さを教えてくれる一冊。
読後のレビューは大事。
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夫・武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間を克明に描いた日記文学の白眉。昭和三十九年七月から四十一年九月分を収録。〈巻末エッセイ〉大岡昇平
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何度も読みかえしています。
的確な表現 描写 時に乱暴(?)とも思える言葉。
憧れの女性。
この日記を読むと何故か元気に強くなった
心持ちがします。
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日曜の朝10時、FMで小川洋子さんの「メロディアスライブラリー」を聴いている。それで知った本。小川洋子さんは随分気に入っているらしく、他の本を紹介する回でも「富士日記」に言及することがあり。
興味は持ったんだけど、でも、作家の奥さんとは言え、素人の日記だよなと、手を出さずにいたのだが。先日、新版が本屋に平積みされたので、購入。
読み始めて、う~ん、やっぱり只の日記かな、と思ったけど、ジワジワ百合子さんという人が見えてくる。
赤い実を口に入れようとして、泰淳さんに怒られる。
「ふらふら散歩に出かけて、やたら道ばたものを口に入れるんじゃないぞ。前に死にそうになったのに懲りないのか。」(前にあったのね。)
暗いガタガタのトンネルの中で車のホイールキャップが外れる。ふらふらトンネルの中に探しに行く泰淳さん。轢かれてしまうと怯える百合子さん
停車中の処にトラックに追突される。百合子さんは相手と交渉してるのに、泰淳さんは相手の助手席に乗り込んでビール飲んでたりする。
自衛隊が対向車線の中央分離帯を越えてくるので、「バカヤロー」と怒ると、泰淳さんに怒られる。その後、頭に血が上って無茶苦茶荒い運転をする百合子さん。
変な夫婦だなあ。
巻末に泰淳さんは日記には富士が美しいと書いてないと、記している。
それでも富士山麓の自然の雰囲気と過酷さが伝わってくる内容だと思う。最初は、冬は東京に帰っていた筈なのに、何で厳冬の年末年始を過ごすんだろう。そういう説明は全然ない。日記だから。
「暮れ方のサクラは一番きれいだ。何度でも観てやる。これはみんな私のものである。」
人に読ませる気があったら書けない文章だな。
勿論、続きも読むつもり。
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年末年始、富士が見えるところに行くのだからと、『富士日記』に手を出してみました。
勝手にお洒落なおばさまのお洒落な日記だと思っていたら、なんとも豪快な女性の元気な日記で楽しく読みました。
自衛隊に向かって「バカ」と言い、ご主人の武田泰淳にたしなめられ、口の悪い若者たちに言い返して、娘に「あんなことやめてね」と言われ、テヘペロしてる感じの百合子さんがかわいいです。
私は乗物酔いしやすいこともあり、車の運転にまったく興味がないんですが、車がないと暮らしていけない富士の山荘で、買い出しに出たり、原稿を出しに行ったり、湖に泳ぎに行ったり、フットワーク軽く運転している百合子さんを見ると、運転できるというのも悪くないのかもという気がします。
(武田泰淳が運転を妻に完全にまかせているのもまた。「桜を見に行こう」とか「明日東京に帰る」とかさらっと決めて運転は百合子さんという。)
昭和三十九年八月十七日の日記に「今朝、佐田啓二が蓼科の別荘からの帰り、韮崎で交通事故死。」とあったので、母に聞いてみたら、地元の人は「当時、事故現場まで見に行った」と言っていたとか。「佐田啓二ひとりが亡くなったのよね」とよく覚えている。
日記なので急がずタラタラと読んでいこうと思います。
以下、引用。
主人、鱒の木彫も買おうとする。大反対して買わなくした。それは紅鱒と大きさ形も全部そっくりで、ただ、木で出来ているというだけなので何となく馬鹿らしいのだ。紅鱒を買った方がいいのだ。
今日二リットル買った不凍液は、特別上等で「網走刑務所と自衛隊が使っている絶対凍らない高級品だ」とスタンドのおじさんの話。
門の石垣に佇って、高原一帯と下の部落をみわたす。ラッパを吹きたいほどの素晴らしい雪景色だ。
一月一日 快晴
八時半起きる。
南アルプス全部見える。はっきり見える。富士山も全部見える。いいお天気だ。
うぐいすは啼き方が上手になってしまった。
暮れ方のサクラは一番きれいだ。何度も視てやる。これはみんな私のものである。
「いいや。おらがわるかっただ。外川さんにいわれただ。『お前ら、何のために婦人会で花や茶なんど習っているだ。華道や茶道ちゅうもんは、そういうことをしねえ人間になるためにやるだぞ』そう外川さんにいわれただ」と言う。
ゴルフ場の横を通ると、雨が降っているのに、キャディを連れてゴルフをやっている人がある。キチガイみたい。
待っている間I夫人と話をしていなければならず、私は丁寧な言葉をつかったり、心にもないことを言ったりして、ガス中毒したように疲れた。
帰る車の中で花子は「フロントの人は眼が大きいといったのではなくて『眼玉(めんたま)の大きい人』と本当はいったらしいよ。Iさんが私にそういった」と言う。不愉快。
雨が降るたびに、どっと年をとるように秋へとなってゆく。
東大生はボートに乗るときも眼がねをかけ、泳ぐと���も眼がねをかけている。ボートには、アンネ、さゆりというような、いやったらしい名前がついている。
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読後に、日記をきちんとつけるのも悪くないかもと思わせてくれる1冊です。もちろん、文才のある人の言葉選びだからよいと思えるわけですが・・
当たり前ですが、いい肉屋を見つけたときの喜びなど人気作家も普通の日常の中で生きていることが食事の献立や買い物リストなどからも覗えて味わい深い。
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私は本当にこの人の日記が好き。書かれているのはつまらない事のようなのに、なぜ読んでいてこんなに心が落ち着くのか不思議。この人の性格は特別落ち着いているというわけでもなさそうなのに、こっちは落ち着く。朴訥として勝気そうなのに、「娘が生まれたとき「花」と武田は名づけてくれて」という文章の向こうに、家族への静かな慈しみがある(前書きなのに私はここで号泣してしまった)。不思議。
そのへんを散歩して、なんでもないような草に気づいたり、すれ違ったおじさんのくしゃみが聞こえたり、おかしな名前のアパートを見つけたりするだけで、気持ちが落ち着くのと似ている。
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平凡な日常の中にこそ人生の楽しみは隠れていることを教えてくれる。
武田泰淳、百合子夫妻は富士山麓に別荘を買い求める。そこでの暮らし、極めて平凡な、食事や季節の変化を記録しただけの日記。なのになぜこんなに面白いのだろう。
まだ高速道路の開通する前の時代。甲州街道経由か国道246号経由か。当然トラックが多いし、事故も多い。渋滞は少ないが。
ちょっとした買い物と地元の富士吉田の人々との会話の羅列。構成がなくとも、淡々と続く日々。武田百合子の視点の斬新が本書の魅力の多くの部なのだろう。
何か楽しいことがないか、刺激がないかと求める向きには、本書の視点は極めて有用であろう。
別荘というだけで非日常的な要素があることも否めないが。
全然ドラマチックでない淡々とした日々平安な生き方、これが大多数の人の人生のほとんどの部分なのだろう。毎日を何事もなく過ごすだけでも、立派な生き方なのだと思う。
上巻は昭和39年の7月から昭和41年の9月まで。
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家や車がしょっちゅう不具合を起こして修理していたり、これって飲酒運転じゃないかしら…?と思った場面がありました。(日記に登場する大人がよくビールを飲んでいる)
夏は湖で泳ぎ、冬は雪遊び、地元の人たちとの交流など、山での生活を楽しんでいる感じがしみじみと伝わってきて、興味深い本です。毎日の献立がおいしそう。
中・下巻も読んでみたい。
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「富士日記を完読する人と読まない人がいる」とどこかで聞いた。百合子さんは読まない人なんじゃないかと勝手に思っている
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202105読了
暮らしぶりや、人となりが感じとれる日記を書くのは、実はなかなかできることではない。もともと作品として世に出す目的で書き始めたわけではないのだろうから、素の記録がこれならば「天性の芸術家」と称される所以、と納得。続きが気になる。●人ごとながらやたらと普請が必要な別荘だな、と思う。やたらと車のトラブル多いな、とも思う。
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何も事件が起こらないただの日記なんだけど、しみじみ文章がうまい。
「ヒューマニズムのような家具」「ニスを塗ったような肌」とか、ここだけ取り出してもうまく伝わらないかもしれないけど、最高に笑える。
死んだ鳥を庭に埋める話も印象深い。ぞっとする。
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阿久津隆さんの「読書の日記」にて、読まれていた本。
以前より、気になっていてようやく手に取ることができた。
僕は何より、ポコが好きです。
残りの2巻もちまちま読んでいこうと思います。
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小説家、武田泰淳の妻、武田百合子氏の日記です。
私は再再読くらいで、小説家、泰淳の著作は読んだことがなく、百合子氏の方が知っていますね。
日記の中では夫、泰淳があり、妻の百合子があるって感じですけど、私の中では百合子氏が「主」というか。
こちら上巻は、昭和39年7月から昭和41年9月までの記録です。
主に富士山の麓での生活記録で、自然の美しさ、厳しさも「当事者」として瑞々しく描かれていますが、時折見せる鼻っ柱の強さが私は好きで。
この時代のことなので、小説家たる夫に甲斐甲斐しく尽くして、夫も「主然」としていて……というのもあるにはあるのですが、概ね鼻っ柱の強い女性です。
百合子が泰淳を乗せて車を運転していたとき、自衛隊の車と諍いになって。
相手が悪いと息巻く百合子は隊員に「バカ!」って言うんですが、横に乗っている泰淳が「男にバカと言うとはなんだ!」って激怒するんですね。
それに対して百合子はその場で泰淳に何か言ってはいないようですが、「隣にも敵がいるとは」みたいな感じで、泰淳が暴走運転が嫌いなことを知っていて、ものすごい暴走運転するんですよ。泰淳は事故の実験の人形のように固まっていたみたいで。
そういうところがとっても好きです。
私もそのくらいの復讐がしたい笑
これを再読しようと思ったの、阿久津隆さんが「読書の日記」の中で読まれていたからなんですが。
本書の中で、交通事故の記述がちょくちょくあって、実際に事故が多いというのもあれど、それを記録に残しているところに、そういうところに目の行く、注意の行く人なのかな、と思ったのですが。
そこでハッと思い出したのが、阿久津さんが書いていたこと。
泰淳が事故にあいかけて百合子は心底恐怖を感じるんですね。嘔吐してしまったほど。
阿久津さん曰く、そこから事故の記述が目立つようになった、みたいな。
(めっちゃ意訳ですが)
たしかに。
私の中でも、百合子が泰淳の事故未遂後、そういうことに深層心理で気持ちがいっていて……とか思いました。
点と点が繋がる感がありましたね。
まさに、一人の人が一日一日書き溜めている日記を、あとから第三者がいっきに読むからつながる筆者の深層心理、みたいな。
ただ思ったのは、泰淳の事故未遂は上巻の中盤あたりで、それまで……この出版されている日記の前が実際どうだったのか分からないのと(事故未遂前から注目している人だった可能性も)巻末に寄稿されいる大岡昇平の文章の中でも、中央高速道路が開通して事故が多くなったこと、そして事故ったら大抵死んでしまうとも書かれているので、時代的・場所的にそういうのに意識が向きやすい時だった可能性もあるな、とは思いました。
中下巻読めばその辺りも見方がまた変わるかもですね。
〘クスっとポイント〙
運転中、いわゆるおカマほっちゃうのですが、その理由が(意訳)「イキった車だから止まらないで信号が変わっても進むと思った」
分かります笑
そんなナリして法律遵守!?
って思うことありますよね汗
偏見に満ちた目で見てるってことですけど笑
〘こんな人におすすめ〙
日記好きさん。
昭和の、その時代にしては自由な夫婦もの読みたい方。
市井の人の描く自然描写に美しさを感じる方。