紙の本
なにせ著者を突然襲う病気が、とても珍しいものなので。
2018/05/04 04:20
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
<天国の証明>というものすごくタイトルですが、いわゆる「臨死体験もの」に分類されるものかと思います。ただ、この場合体験した著者が現役の医師であったことが他の体験ものよりも信憑性あり、という感じですかね。
なにしろ、「名門ハーバード・メディカル・スクールで長らく脳神経外科医として治療と研究にあたってきたエベン・アレグザンダー医師」ですから。
とはいえ私は「臨死体験」に並々ならぬ興味があるわけではなく(ないわけでもないですが、という程度)、むしろこの本を著者の特別な体験にプラスした自分の人生を語るエッセイ集として楽しみました。
エベンはある日、背中に激痛を感じた。お風呂に入って温まったらよくなったので安心していたら、翌朝さらなる激痛に襲われる。あまりの苦しみように妻のホリーは救急車を呼ぶというが、医師として自分の勤務する病院のERに運び込まれることを恥と感じたエベンは(医師はほぼそう思うらしいが)救急車を固辞、「少し休んだらよくなるから」とベッドに横になる。二時間後、様子を見に来たホリーは意識を失っている夫に気づき、救急車を呼ぶ。ERに運ばれた頃にはエベンは痙攣発作を起こしており、脳血管障害の症状を示していた。腰椎穿刺検査により大腸菌性髄膜炎と診断されるが、大腸菌がそのような悪さをする相手は新生児から生後数か月の子供が多く、成人が感染することは限りなく稀である。しかしひとたび感染してしまえば年齢に関係なく死亡率は40%~80%、ましてエベンのように意識不明になってから運ばれてくるということはすでに重症化しているということで、致死率は90%以上、更に昏睡に陥った場合生還率はほぼゼロであるらしい。なにしろ医療ドラマを山ほど観てきているので、このあたり面白い!
本人は昏睡状態なので、あとで人から聞いた病室・病院の様子と、昏睡状態の中で自分が体験したことをほぼ交互に短い章立てで書いている、という構成。その中で著者は妻との初デートのことやら、果ては自分が養子であることなど、極めてプライベートなことも書き綴っているので、そのあたりがエッセイ的で興味深い(でも部分が本筋にかかわってくることになるのだが)。
そんなわけで面白いは面白いんですが・・・彼がキリスト教徒であるせいか発想がそこからなんですよね。
<この世>と<あの世>があって、<あの世>をのぞいて帰ってきた・・・ということで説明できちゃうのでは?、と感じてしまった私は日本人です(解説によると世界の中でも「他界観」―つまり<あの世>と<この世>―をもっともはっきり持っているのは日本人であるらしい)。臨死体験を信じる信じないの前に、私は慣習的に<あの世>が存在すると受け入れているわけですね!
本書を発表後、著者は世界中で講演したりダライ・ラマと対談したりしてるみたいなので・・・考え方が今では変わっているのかもしれず(続巻『マップ・オブ・ヘヴン』があるようです)。そして自分の体験がキリスト教だけでは説明できなくなっていると認めたことで、キリスト教者からは反論が出たりしているらしい。なんだかちっちゃいなぁ。
筆者の<臨死体験>が脳の誤差からではないこと(そもそも病状から脳の多くの部分にダメージを与え、損害がなくとも機能していないと考えられた)、治療過程による投薬等の影響でもないことを仮説ながら医学的に検証しているのも面白い。でも医学で解明できることは一部でしかないんだけどね。
そもそもなんで大腸菌性髄膜炎になってしまったのかも原因不明で。
そこは海外医療ドラマのように、答えは出なかったらしい。
紙の本
やっと納得
2019/12/16 12:12
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投稿者:小さな花 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ生まれてきて生きにくい人生を送らねばならないのか、やっと少し納得出来ました。
人生は無駄では無いと思える一冊です。
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本書は、ハーバード・メディカル・スクールで長らく脳神経外科医として治療と研究にあたってきたエベン・アレグザンダー医師が、2008年11月に、大腸菌性髄膜炎(大人の場合は例年1,000万人に1人以下の確率でしか発症しないと言われる)で7日間昏睡に陥り、その間に体験した「臨死体験」について、自ら綴ったものである。
その内容は、2012年10月の米誌「ニューズウィーク」のカバーストーリーに取り上げられて一大センセーションを巻き起こし、その直後に出版された本書の底本はすぐに「ニューヨークタイムズ」紙のノンフィクション部門・ベストセラーのトップに躍り出、それから97週間連続でベストセラーリストにランクインした。日本でも、2014年にNHKスペシャル「臨死体験~死ぬとき心はどうなるのか」で取り上げられ、大きな話題になったことは記憶に新しい。邦訳は2013年に出版され、2018年に文庫化されている。
臨死体験を語った人やその体験を著した書はほかにも存在するが、本書がこれほどの話題となったのは、著者が著名な脳神経外科医であり、「意識」を生み出す仕組みに関する最新の脳科学の知識を持ち、かつ、昏睡に陥っていた7日間の自らの体・脳の状態を医学的に理解し、それらに基づいて自らの臨死体験を説明しようと試みているからであろう。臨死体験前には「科学の取り組みには、魂や精神、脳が活動を停止しても存在し続ける人格の永続性といったものが介入する余地は、ほとんど残されていない」という考え方に疑問を持つことのなかった著者が語る死後の世界は、確かに衝撃的である。
著者によれば、「意識こそが、存在のすべてにかかわる唯一の実体」であり、「われわれが空間、時間、質量、エネルギーとみなしているものは、本質においては高次元の時空で振動する一連のエネルギーで、最も深いレベルではすべてがひとつに絡み合っている。物質世界とその時空は巧みに組み立てられた幻想であって、そのおおもとにあるものは、神聖なひとつの意識である。意識は脳の活動に伴う現象ではない。物質世界とそこで見えているものの上位にあり、外から物質世界を支える、それよりはるかに豊かなもの」だった。また、そこで出会った“神”は、「この世界で呼び習わされている神という表現には収まりきらない」「無限の愛、慈悲、赦し、受容であり、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、仏教徒、無神論者、懐疑論者、すべての子どもたち、地上のすべての生命、全宇宙に満ちる意識を愛している存在」であるという。
読後にネットで調べると、もちろん、脳科学・脳生理学的見地からの多数の反論が見られるし、私自身も基本的には唯物論、合理主義的な考え方をするタイプなので、本書の内容を「真実・真理」として受け入れることは、現時点では難しい。
しかし、天動説から地動説への転回、ビッグバンや宇宙は拡大を続けていることの発見など、それまでの世界観を大きく変える事象は過去にも起こっており、完全に否定することもまた難しいように思う。
意識とは何か?・・・これを人間が解明する日は来るのだろうか。。。
(2018年1月了)
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オカルトの様な印象を受けてしまったが、非常に興味深い内容。
ノンフィクションであるが、フィクションと捉えて読んでも楽しめる。
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臨死体験と呼ばれれいる現象について、臨死体験とは何か?という問いに対してストレートに、実際に体験した脳神経医が説明を試みる。
著書はすでにメディアでちょこちょこ紹介されて大体の内容は知っているつもりではあったが、実際に読むと受け入れるのにはなかなか難しい個所も多く感じた。
それを著者は量子力学などを例に説明していくのだが、そもそも量子力学自体をすんなりと受け入れられる人が多くない状況である点もあって、自分などは「そういうものか」という受け入れ方になってしまう。(これは受け入れているようで受け入れられていないことは本書を読むとよくわかる)
ただ不思議なことにここに書かれていることは良くわかる。特に自由意志は存在するのかどうかという点について「存在する」と確信できたし、意識はフロイトの想像した「氷山」の通りなのだとも理解できた。心理学とは無意識を暴くためのものであるかもしれないし、脳科学は脳の機能についての説明を試みているだけかもしれないが、本書の通り「意識」は脳や心の「機能」ではないことは直観的に理解できる。これは脳と無意識という足かせを「しつける」方法を使えば簡単にわかることだ。
愛とは脳科学が説明する通りに化学物質が反応した結果にすぎないのかもしれない。そうであれば、例えばAIが「心」を持てるようになることは可能だろう。
だが、本書にある通り心と意識は別のものだろう。
心理学や脳科学で説明できるような心は説明できるが、本当の意味での「意識」はつかみどころがなく、言葉で説明できる範囲でしか相手に伝えられない。そしてその範囲は途方もなく狭い。だが、その説明を試みることを使命(mission)として受け入れた著者による本書は、文章はつたない箇所も多いが、一度だけでなく何度か読み返す必要があると感じた。
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臨死体験の本を読んだ一冊目です。
脳外科医で、手術をして、宣告する側だった著者が、原因不明の脳の発作で臨死体験をしたその経験のお話。
淡々と脳外科手術のお仕事をこなしていた筆者だからこそ、この「理論や学術、言葉では説明しきれない世界」を表現しているということが、とても印象に残りました。
日頃から「死後の世界」「潜在意識」「宗教のこと」を語る人が言うよりもとても説得力があります!
個人的には引用で記述されていた詩がとても素敵で、すごく感動しました。
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大脳皮質の機能が完全に機能停止し、仮死状態になった脳神経科医の体験談。
これが死後の世界だと信じる信じないは、人それぞれだろう。
だけど個人的には、前読んだ「奇跡の脳」や引き寄せの法則・量子力学・ダークエネルギーまで、きれいにハマったように感じた。
死の恐怖が和らいだ気がする。
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脳の機能が停止した状態で、見た世界というのが、とても興味深い。夢のようなものではなく、現実よりもリアルな世界だと言う。
意識は脳にはない。むしろ、脳は外界の情報を取り込まないリミッターのような役目をしている。
人間の意識は全体意識の外延。
全ての存在は認められ、愛されている。
この世界は一つではなく、多世界。
悪がなければ自由意志も成長しない。
等々。
多世界という概念が今一つピンと来ないけれど、他の事には何故か納得。
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書かれてあることが抽象的すぎて理解するのが難しい 途中飛ばして読んでしまった
けど大事なのは人それぞれの解釈の仕方があっていいということ。私も父親の影響もあって非現実的、非科学的、非理論的なことを信じるのは難しい。実際この医師も自分が体験するまでは患者の不思議な臨死体験については幻覚、幻想の世界と思って疑わなかった。
でも、古代からありえない、信じられないというところから化学は進歩して発展してきている。だから、もしかしたら将来研究が進み、
死後の世界ついての解明が進むかもしれないと思った。
あらゆることの基本は愛なのだ。全ての中心には無私の愛が息づいている。
断言できるのがすごい。この医師は臨死体験の際に愛する人に会う人が多い理由としてこれをあげているのかなと思った
私たちは自由意志を信じなければならない。そうする以外にないのだから。
信じるものは救われる精神と似ている。他人は関係ない。自分が信じると決めたのならそれでいいと思った。
愛されていない人はいない。
脳に細菌が浸潤し、機能停止状態になっていたにもかかわらず、臨死体験を経験したことで、死後の世界は幻想ではなく本当にあるのだと確信した脳外科医の話。
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私の中の意識はどこにあるのかるのか?脳内か?心臓か?細胞内の遺伝子か?私はどこから来て、どこに行くのか?思想・哲学・宗教とは何か?誰しも一度は考えるであろう疑問を専門の現役医師が体験を元に記した衝撃的な書。抽象的ではあるが、宗教的な悟りをわずかながらイメージできた実感を覚えた
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アメリカの脳神経外科医エベン・アレグザンダーによる、自身の臨死体験の記録。
専門用語が多いためか、知識がほとんど無い私はなかなか読み進めることができず、随分時間を掛けて読了した。
単なる興味本位で手に取ったけれど、それでも最後のページまで見届けたい、知りたいという欲求がそうさせたのだと思う。
ここに書かれていることを、創作だ幻想だと一言で片付けるのは容易い。
けれど、カール・ベッカー氏の解説にあるように、古の時代から世界中で報告が挙がっている。
実際に体験したことは無いけれど、それはある、と信じてみても良いじゃないか。
そんな風に(安易にも)考える自分の背中を後押ししてくれる一冊となった。
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脳神経外科医が、1000万人に1人という確率の髄膜炎で7日間昏睡状態にあった時に観た世界についての本。
脳が機能していない状態で意識が存在すると全く信じていなかった医者の臨死体験は科学的な証拠を重んじる自分と、臨死体験をした自分との葛藤がただの臨死体験者と違うように思った。
愛、光、美しい調べなど、体験を語るには文字というツールでは伝えきれないのだろうが、何とか表現しようという試みは理解できた。個人的な生い立ちやファミリー、嗜好の話は、正直必要ないと思っていたが話が進むにつれて、そう言うつながりだったのかと分かった。
脳について、データを処理するただのパソコンであり、、この世で生きるにおいて、制限をかけるリミッターとして働いているもしれないという考えは印象的だった。
祈りが昏睡状態の患者に何らかの形でも届いているようだが、本人が天国にいて、そこに止まりたいと感じたなら、現実に引き戻そうとする現実世界の人々の祈りは、愛なのか?愛する人を失いたくないというエゴや、呪いであるようにも思った。
実の家族は臨死体験中どうしていたのかや、結局、非常に稀な症例を引き起こした原因は何だったのかについては疑問が残った。