紙の本
全貌が一向に見えてこないからこそ味わえる、驚愕の真相。
2022/10/24 00:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年翻訳された「彼と彼女の衝撃の瞬間」同様、本作にも著者であるアリス・フィーニーの特徴が凝縮されている。
登場人物紹介表がないこと、登場人物の少なさ、視点の切り替え、信頼できない語り手。
こうした制限された情報の中でじわじわと不安を煽り、突如思いがけない方に舵を切るのが著者の十八番である。
脚本家のアダムとアメリアは、結婚カウンセラーの助言の通り週末旅行に出かける。
そして旅先で不穏な出来事が起こっていくというのが本作の大まかなストーリー。
そこに先述した視点の切り替えが加わることで、アダムとアメリアが互いに何かを企んでいくことが読者には明らかにされる。
ただし全貌は見えない。
そしてアダムとアメリアの視点に加えて、第三の人物の視点と毎年結婚記念日に妻から夫へと送られた手紙が挿入される。
これが非常に巧い。
第三の人物の思考や言動、かつて夫婦の間に何があったのかなど、提示されている情報は増えているはずなのに謎だけが蓄積されていくのだ。
どう組み合わせても纏まらない、答えが知りたいという欲求に従うままページを繰る先に待ち受ける真相。
驚愕すると同時にストンと腑に落ちる、この感覚はフェアなミステリーだからこそ味わえる醍醐味だ。
紙の本
何かが起こりそうで起こらない展開
2023/08/13 12:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
とある者から、郊外の家に招待された夫婦。お互いに何かを企んでいるらしき夫婦。そして夫婦を招待した者。これも当然何かを企んでいるという、この3人の視点で進むストーリー。事件は発生しそうで、発生しないジリジリとした展開に、次第に引き込まれていきました。夫は他人の顔を判別できない病気の持ち主で、このタイトルはそれを表したもの。勘のいいミステリー好きなら、なんとなくこれがトリックになるのではと思うところ。中盤付近から一気に読まさせられる面白さ。そして最後は夏にふさわしいホラーな展開でしたー!
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初めて、”ゲラ先読みキャンペーンに当たったんです。
「驚異の一気読み×驚愕のどんでん返し!」の惹句に偽りなし。ひっくり返されたよー!それも一度ならず。面白かったー。読み終えて、もう一度頭から読みたくなるよ。
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登場人物は、妻アメリアと、夫の脚本家アダム。2人の夫婦関係はうまくいっておらず、カウンセラーの助言もあり、週末をスコットランドの古いチャペルで過ごすことになった。
2人それぞれの一人称の短い文章が交代に出てきて、両者の噛み合わない気持ちが強調されると共に、不穏な事象がサスペンスを高めていく。さらに毎年の結婚記念日ごとに、妻が自らの気持ちを率直に、かつ密かに綴ってきた文章が挟まれ、幸せだった夫婦間の関係が次第に変容していく過程が、読み手にまざまざと迫ってくる。
そして、中途から新たな人物が登場してくる。一体何者なのか?夫婦とどのような関係があるのか?
あとは読んでのお楽しみ。
本書では、夫のアダムは、相貌失認の疾患があるとされている。人の顔の特徴を見分けることができないというもの。本書を読むまでそのような疾患を知らなかったのだが、調べてみると、実は2〜2.5%が該当するとのこと。当然だが、この病気があることに関わってくる。
多少展開に強引なところはあるが、サスペンスも十分で、アッと驚くところ、後でそういうことだったのかと納得する伏線ありと、非常に面白い。
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鬼★5 ハラハラドキドキ 怖いのに読んじゃう! 極上サスペンスミステリー #彼は彼女の顔が見えない
ある夫婦の物語。夫は脚本家を生業としており、人の顔だけ認識できない相貌失認のハンデを負っていた。
二人は斜陽な関係になりつつあったが、夫婦の綻びを修復するために招待された旅行に出かけることにした。山奥の古いチャペルに到着し、そこに滞在することになるのだが、大雪で身動きが取れなくなってしまい…
面白い!★5 またもや超絶素晴らしいミステリーを読んでしまった…
こんなにヒリヒリした緊張感が続くサスペンスは読んだことがないです。
しかもド派手なキャラや殺戮シーン、アクションがあるわけではなく、山奥のチャペルでごく少人数で進むお話なんですよ。にも関わらず、読めば読むほど強烈に不安と恐怖が押し寄せてくるんです。
とにかく本作は構成がめちゃくちゃ上手。
私もそれなりにミステリーを読んできてますから、まぁ大抵の展開には動じませんよ。でも本作は先の展開が気になって気になって読む手が止まんないのよ。寝れねぇ
かつてTwentyFourというリアルタイムで進行するドラマがあったのを覚えていますか?
各話の終盤3分前くらいで、ええええええっっ、そうなの?! というような観客を裏切ったり、話の筋を切り替えるような展開がありましたよね。あの感じに似ています、そりゃ読み続けちゃうっつーの。
しかも読み進めば進むほど、真実に近づいているのがわかるんです…
でも肝心なことはよくわからない、ハラハラドキドキ… 二人はどうなるんだ? 真相はどういうことなんだ? この人はなんなの? そしてっ
私はリアルに身震いをしてしまいました…
どういう構成、ストーリーになっているかは読んでのお楽しみです。
また登場人物もひとりひとりがよく描けてるんですよ、特に人間関係の描写が最高。
倦怠感が漂う夫婦の会話、言い合いと諦めの距離感が鬼リアルなんです。他にもいろんな人間関係が描かれていますが、最後には胸の底をズンッと抉られる真実が待ち構えています。
海外ミステリーで手に取るのが不安な方、ご安心ください。
登場人物の名前が覚えられない?本作は数人と動物数匹しか出てきません。
読みづらいんじゃね? めっちゃ読みやすいです、一日二日で読めます。
毎日が平凡だなーとぼやいている人には、是非読んでほしい。これぞサスペンスミステリーの傑作です、損させないからマジ読んどけっ
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夫婦仲が冷えていくのは、辛い。
以前はあんなに仲良しだったのに、そう思うとなおさら辛い。
まずはそんな夫婦が描かれる。
妻側、夫側、それぞれの視点から描かれるのだが、この夫というのが、なんだか、やなやつなのである。
気持ちはわかるけれど、それはそうかもしれないけれど、その口調、その態度、どうにかならないの?!
夫婦仲改善のための旅行中である。
夫婦二人と、犬一匹の旅だ。
心地よくすごそうよ!
それにしても、結婚生活が、どうしたらここまでこじれるのだろう?
コミュニケーションが充分にとれていなかったのだろうか。
私も気をつけて、心がけないといけないなあ、・・・・・・などと、我が身を省みていたらだ、趣が変わってくる。
いや、これは、単なる夫婦仲の話じゃないぞと思い始めたら、
『驚愕のどんでん返し』
帯に謳われる展開だ。
ジェットコースターのフィニッシュで、ズドーンと落下して爽快――とはちょっと違う。
ズドン、ドン、ドン・・・・・・
困惑と、混乱で、頭をつかう必要がある。
『彼は彼女の顔が見えない』
読み終えて、この題がとてもよいものだと感心した。
冒頭で、うむ、たしかにと強く頷いたのだが、読み終えて、ううむと、さらに感じ入ってしまった。
そして、夫よ、アダムよ。
はじめはいやなやつだと思ったが・・・・・・
あなた、気の毒な人だなあ。
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途中まではそれなりに興味を惹かれる程度だったけど、読み進めるうちに違和感が増してゆき、まさかの展開に驚き、うわ〜、やられたー!お見事!
となったのですが、指輪のクダりいる?あれは無い方が良かったのになと思いました。
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どんでん返しミステリ。叙述トリックによって読者の視点をミスリードされ、騙される。読まれることのない手紙に隠された真実……。
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ブクトモ様のレビューから選んだ1冊!
読むのが遅くなってしまったが…
これは素晴らしいサスペンス!!
全っ然わからなかった…すごい伏線回収!
海外小説なのにめっちゃ読みやすい。
サラサラ読めて手に取ってあっという間に読了。
オススメの1冊!
こちらの作品に出会わせてくださったブクトモ様に感謝\( ´ω` )/
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脚本家のアダムとペット関係の仕事をしているアメリアは40代の夫婦です。
アダムは相貌失認であり、人の顔を見分けられません。
妻のアメリアとの関係が壊れかけてきて、結婚カウンセラーから旅行を勧められ、冬の厳寒の中、アメリアがくじで当てたスコットランドのハイランド地方への旅へ出ます。愛犬のボブを連れて。
滞在先のチャペルに到着すると、次々とおかしなことが起こり始めます。
ボブは行方不明になり、二人が逃げ出そうとすると車のタイヤが四つともパンクさせられています。
猛吹雪のチャペルに二人は閉じ込められます。
以下、多少のネタバレを含む感想を書きますので、これから読まれる方はお気をつけください。
どこでどう話の風向きが変わったのか全く気づきませんでした。
最初は、追う方も追われる方もどっちもどっちだと思っていましたが、それが恐怖へと変わり、まさかこんな結末が待っていようとは思わぬ方向へ。
頭の中を整理するのに多少時間が要りました。
見事な逆転劇です。
○○の真実の素行を知って驚きました。
小気味よい反撃でした。
余韻がある終わり方もよかったです。
相貌失認という特徴から生まれたサスペンスだと思いました。
面白かったです。
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アメリア、アダム、ロビンの視点で語られてゆく。時々女性が書いたらしい手紙が挟まれる。
原題は「石、紙、ハサミ」
前作も彼、彼女の視点で書かれていて大いに騙されたので今回は登場人物を細かにメモったが、そんな小手先で分かるモンじゃなかった(苦笑)後半にかけて背筋がゾッとする展開に!
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今回も前作と同じで、登場人物の種間で物語が進んでいく。今作は相貌失認という設定を利用して、絶対に何かあると思わせつつも謎が解けたときは結局驚かされた。途中から先の展開が気になってしょうがなく一気に読み進めることができた。終わってからまた再読したくなる作品であり、また違った読み方ができると思う。ミステリー好きにはぜひとも読んでほしい作品。
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実に面白いミステリーでたいへん満足した。フィニーは"twisty, turny books"が好みだと言っているそうだが、本書はツイストがひじょうに利いていてジェットコースター・ライドが楽しめる一級のエンタメになっている。
だいたいは当てにならない帯(宣伝文句)だが、本書の「驚異の一気読み、驚愕のどんでん返し!」は正にその通り。
以下、少しネタバレになるので未読の方はスルーを。
p.66にアメリアが「10年という時間は顔が記憶に残らない相手と結婚を続けるのには長過ぎる」と言っており、読み返した際に、『これっておかしいよな!』と思った(アメリアはアダムと結婚して2年しか経っていない)。しかし、終盤p.351でアメリアは「10年は、結婚生活を送るには長い時間で、アダムとロビンは自然な経過をたどったのだ」と言っており、p.66の表現は自分とアダムとではなく、ロビンとアダムのことであったことがわかる。つまり、p.66の表現は、アメリアとアダムが10年間結婚していたかのように読者に思わせる"red herring"だったわけ。アンフェアかと問われれば、「ま、セーフかな」と思う。
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アリスフィーニー、ほんとにクセになります。脚本読んでいるよう。次々に現れる真実にのめり込まずにいられません。似たもの夫婦、、とため息でました。ラストも不穏で好みです。原題に収束させるテクニックにも唸らされました。しかし相貌失認、これミステリーで使ったらとんでもないことになるのではと思っちゃいました。次作がすぐに読みたくなってます。
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巧いなー
この字の巧い
とっても巧いと思いました
4つの視点で少しずつ進む物語
少しずつ明かされる物語
そして驚きをもってひとつ明かされると
空いた場所に新たな謎が埋め込まれる
伏線は回収されても全くスッキリさせてくれない
相貌失認症がギミックとしてすごい生かされてる
文章で構築される隠された世界にさらに相貌失認症を加えることで二重三重の目眩ましになっている
もう匠の技をしっかりと堪能させて頂きました
でもこれサスペンスなんだよねー
気付いたんだけど自分そこまでサスペンス好きじゃないみたい
この匠の技がミステリーとしてちゃんと昇華してたら文句なく★5だったんだけど
面白いよりも巧いが先にきちゃったな