アメリカン・ボーン・チャイニーズ アメリカ生まれの中国人

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投稿者：M77　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

本のタイトル通りアメリカで生まれた中国系(略してABC)の作者による自伝的コミック。

猿の王が僧の弟子になり旅に出る迄の西遊記パートと、
チャイナタウンから白人の地域に越してきた少年ジンのパート、
中国系の醜い戯画化チンキーを従弟にもつ白人ダニーのパートの３つが交互に語られ、
ジンの成長によりそれらは統合されていく。
チンキーは他者から与えられる自己像としては耐え難いほど醜く下品。差別を内在化してしまい自分やグループの仲間を愛せなくなるのは世界中で普遍的な内面の問題で、この本がアメリカで支持されている事にホッとする。

読後に色々気になって検索したところ、西遊記パートで何故か仏教がキリスト教に置き換わっているのは、アメリカのアジア系の若者達が新しく所属するコミュニティを求めてキリスト教に入信しがちな現状を表現したかったかららしい。

そして、ジンの優しい友達ウェイチェンは作者が創り出した人物で、実際は教師に世話を焼くよう命じられた中国系移民の同級生を作者は疎ましがり、当時の友人と一緒に木の皮を投げて追い払ったそうです。
ウェイチェンが人格者に描かれているのは、恐らくその経験を後悔して贖罪のつもりで描いたのではないでしょうか。
そう思って読むと、取り戻せないものを取り戻そうとする作者の想いが感じられるようで、尚更切なく尊く思えました。