紙の本
現状がよくわかる。
2018/11/06 16:52
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現状がよくわかる。>
捜査もののドラマなどで「遺体についていた昆虫」が決定の鍵になっていることも「たまに」はあるが、現状はどうなのか。「法昆虫学」と言えるものの実態を専門家が語る。
昆虫は人が入りづらい場所にでもたくさんいるので、犯罪現場の第一発見者になることもすくなくなさそうだ。しかし「どんな風に時間経過していくか」の基礎データを集めること自体がかなり困難なことも確か。そんな分野をどう扱っていくのか、が結構「リアル」に書かれている。現場写真などはなく、ラフなイラストだけなので視覚的に「ぎょっとする」ようなことはなかった。
著者の「書きなれていない」文章が気になったりしないではないが、比較的薄い単行本のなかにあまり知られていない領域の話が詰まっていて読み応えはあった。
普通の状況では「見たくない」感情が優先するような場面にも、本当はしっかりと基礎データを集めて解析しないといけないものがある。法昆虫学の話はそういう「見たくないけど重用」な世界を改めて教えてくれた。
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法昆虫学の研究者による入門書である。
法昆虫学とは何かといえば、タイトルが示すように、死体についた虫から死亡経過時間や死亡の場所を推定することを主目的とする学問である。
人が死に、死体が放置されれば、ウジをはじめとする昆虫が肉を食べにやってくる。虫の種類によって、ごく初期にやってくるものから、腐敗が進んでからやってくるもの、ミイラ化してからやってくるものなどさまざまである。産み付けられた卵や幼虫の種類や成長具合から、そもそもいつごろ死亡したのかを推定することが可能になる。また、昆虫は場所によって住む種類も異なり、地理的にこの種類はこの地域にしか見られないとか、水辺に多いものであるとか、昆虫の分布が死亡場所の推定に役立つこともある。死亡した場所と遺棄された場所が違うような場合、犯罪解明の手がかりになるわけだ。
つまり、物言えぬ死体の来歴を探る手段となるわけである。
ドラマや小説などではそこそこ取り上げられている。アメリカでは「死体農場」と呼ばれる大規模研究施設が複数作られ、ヒトの死体がさまざまな環境下でどのような経緯で腐敗し蚕食されるかが調べられている。
だが、日本では、それほど日の当たる分野ではない。いや、むしろ、アメリカが突出しているということで、他国でも実用の軌道に乗っている国は少ないようである。
著者は日本の数少ない法昆虫学研究者の1人である。実際に警察との協力関係もあるという点では唯一に近いようでもある。
日本では古来、「九相図」という死後経過の図譜もあるくらいで、素地はありそうだが、昆虫学専門家と犯罪捜査機関の間の連携が難しいこともあるのか、なかなかうまくはいかないようである。
そんなこんなの法昆虫学の現状を、現役研究者が語る。
物書き専業ではないので、そう流暢というわけではないのだが、率直な記述でイメージがつかみやすい。
著者自身、小さい頃から法昆虫学者を目指していたわけではなく、研究者として生き延びていくために最終的に選ぶことになったようだ。また、法昆虫学による死後経過時間の推定自体、不要になるような社会が望ましいとも述べており、それも一理あるかなぁとも思う。
各論については、初期に入植するウジの種類、シデムシやカツオブシムシなど、ハエ以外の昆虫、標本採集の仕方など、簡潔に述べられていてわかりやすい。
全般に、熱がこもり過ぎないゆえの説得力がある。
死亡の状況や場所、経過時間で結果はさまざまだろう。結論(死体の状況)を見て、その経過を推定するためには、膨大なデータが必要だろう。だが、ことの性質上、実験はしにくい。日本ではもちろん、アメリカのようなヒトの遺体を使った「死体農場」の許可は下りないが、著者はブタの死体で小規模な実験を行って観察している。その経過もなかなか興味深い。
うまく活用することが可能であれば、犯罪捜査の強い味方にはなりそうであるが、困難な点も多そうだ。実際に日本で活用されることになるのか、あるいはまったく行われなくなってしまうのか、ちょっと判断がつかないが、「法昆虫学」という分野のイメージを掴むにはよい1冊だと思う。
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海外の第一人者の著書『死体につく虫が犯人を告げる』とか、そこから着想を得たらしい法医昆虫学捜査官シリーズは読んだことがあったけれど、国内の研究者による法医昆虫学の本は初めて読みました。
写真がないのでまぁ大丈夫でした。
書かれていること自体は類書にもあるような内容が多いですが、どういうルートで法医昆虫学研究者になるに至ったのか、という話は興味深かったですね(もとは生物学専攻で、モグラ類の研究をされていたとか)。
仕事内容が仕事内容だからなのか、日本には法医昆虫学を専門としている人はほとんどいないそうです…… 「昆虫」の付かない法医学の分野に進む人も少ないと聞くし、法医昆虫学となると尚更だろうなぁ……
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死体にいるウジムシなどを研究する「法昆虫学」の話。そもそも法昆虫学という学問はなく、著者の三枝氏が名乗っているようだ。こういう人材は貴重なのか、警察にも協力を依頼されるらしい。
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薄い本だった。
しかし写真がなくてよかった…
ボーンズの法昆虫学者のイメージあったので
もっとバリバリかと思った。
死体農場、懐かしい…
私は虫嫌いだから絶対できない仕事!
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テレビドラマなどでよく目にするようになった、法医学。なかでも、遺体に群がる昆虫の様子から死亡推定時刻を割り出す、という取り組みに、ミステリファンとして思わず手に取りました。
今の日本には「法昆虫学」という学問分野は確立しておらず、わずかばかりでもシステムを構築して死体につく虫やその痕跡を分析して捜査に活用しているのは、著者の働く岩手県のみ、という状況のようです。
極めてマイナーな分野で、警察関係者であっても正確に理解しているとはいいきれない状況の中で、「法昆虫学でなにができるのか」「法昆虫学者は法医解剖室で何をして、何を調べているのか」といったことを、一般の読者に簡単に紹介してくれている本です。
ビジュアルで想像するとグロテスクであろう情景も、筆者の淡々とした筆致でたどることで、学問的な記述としてとらえることができ、嫌悪感を抱くことなく読み進めることができました。
(が、「腐乱死体」というような言葉は度々あらわれますから、そういったモノが苦手な方は避けたほうがいいかもしれません)
虫の生活が直接的に私たちの日々の暮らしを豊かにする、という分野の話ではありませんが、間違いなく「役に立つ」研究で、こういった学問分野があるのだということはもう少し認知されてもよいのだろうと思います。
…国を挙げて、人間の死体を使って法昆虫学の実験をおこなっているというあたり、アメリカという国の「大胆さ」を改めて感じさせられるところもありました。
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死体に集まった虫の種類や成長具合から、虫がいつ死体についたかを推定する法昆虫学について説明した本。
似たような本はいくつがあるが、この本の作者は日本人のため、日本の気候や昆虫の生息(正確には岩手だが)に則した説明が載っている所がポイント。
写真はなく、デフォルメ調のイラストのみで、さらに人の死体などは載っていない。せいぜい、服を着た豚の死体のみなので、死体が見たくない人でも読めると思う。
しかし、虫のイラスト(特に蛆虫)は載っているので、イラストでも虫は見たくないという人には向いていないかもしれない。
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川瀬七緒さんのミステリ小説〈法医昆虫学捜査官〉シリーズで興味を持った分野。
法昆虫学の概要を説明する一冊。
具体的な内容は、知る必要がないと思いスルー。
実際に、日本で法昆虫学者として活躍している人がいるということを知れただけでも収穫。
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川瀬七緒の法医昆虫学者シリーズで俄然興味が出てきた法昆虫学。蛆ちゃんたち、いつもいい仕事してました。
この本では、実際に遺体の死後推定時間の特定に携わる生物学者が、わかりやすく法昆虫学の世界を解説しています。
法昆虫学に理解がない警察の下です殺虫されて大事な証拠が失われる悲劇など現役の法昆虫学者だからこそのエピソードが満載。
そんな中、岩手県警の法昆虫学に対する理解の深さ、証拠(昆虫)の保全方法や教育の継承など、警察との連携の姿は見ていて嬉しくなる。
人知れず亡くなり、長らく発見されず、虫に蚕食された遺体の無念を晴らすには、昆虫の声を聞くしかない。だからこそ、岩手県警の動きは賞賛に値するし、他県の警察も追随してほしいなぁ〜。
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法昆虫学(法医昆虫学)というものを本書で初めて知った。
法医昆虫学は
法医解剖の対象となった死体に群がる虫を調査することで、その死について分析する学問
であり、それによって
死亡からの経過時間や死亡•遺棄された環境を推測することができる
ようだ。
本書を通じてわかったこと
•対象となる昆虫は、ハエ、シデムシ、ホシカムシ、カツオブシムシ、オサムシ、アリなど
•ハエは、死体の状態の変化によってそれを食す種類が異なる
•虫を採取するまでの死体の取り扱い方(時間、温度、捜査機関による虫の除去)によって、法医昆虫学的に把握できる情報量が変わる
•死体菜園!死体農場!言葉のインパクト!
ハエの生態だけでもまだ解明されておらず、人の腐敗と昆虫との関わりについてはなおさらまだわからないことは多いようだ。
そのため、法医昆虫学的な死後経過推定時刻の推定はまだまだ発展途上である。
そもそも法医解剖で法医昆虫学的なアプローチをしているところが、著者のいる岩手医科大学以外で一体どれくらいあるのだろうか。
法医昆虫学の認知度は極めて低く、現場でのルールやシステムもまだほとんどない中で、法医解剖の場で法医昆虫学者として地道に奮闘し、死体菜園(言葉のインパクト!!)で実直に研究を行う姿勢には、1人の人間としてとても刺激を受けた。
今後の著者の研究と法昆虫学の発展に期待したい。
なお、
想像力が豊かな方、虫が苦手な方、
気持ち悪くなるかもしれないので注意してください。
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知らない分野の話でとても興味かったです。
虫の写真等はなかったですが、イラストはありましたので苦手な方は注意。(苦手な人は読まないかしら)
どういった手順でどういった根拠で捜査の参考にされているのがわかりやすく説明されていました。
また、岩手県警の姿勢も素晴らしいなと思わされました。
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すごい!本当に法昆虫学を研究している人がいるんだ!!と思った!
日本ではミステリーの中だけにしか存在してしていないかと思っていた!
淡々とした文章の中に時折垣間見ることができるユーモラスな言葉。すごい読みやすい!
フィクションのように、はっきり死亡推定時間を当てるのほ難しいのはよくわかった。
この方は、どのように腐敗していくかを調べるためにブタの屋外留置実験までしている!それも1人で!!すごすぎる情熱?使命感?
岩手県の県警の方にレクチャーし、法昆虫学の有用性を理解し実践されている岩手県警の方も素晴らしい!
最後に、法昆虫学が不要な社会が理想的とも書かれており、人柄も素晴らしいと思った。
これはぜひ、世の中の子どもたちにも読んでもらって、こんな研究もあるのだと知って欲しい!
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なかなかマニアックな本を読んでしまった、、
とても興味深かったが、具体的な虫の描写は読み込むと気分を悪くしそうだったのでサッと流し読みしつつ。アンナチュラルや監察医朝顔のような法医学の世界で、虫から死亡推定時刻を推定できるとは驚き。法昆虫学が必要のない社会(亡くなってから見つかるまでに時間が掛かるパターンがなくなる)になってほしいという作者の思いが印象に残る。
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ミステリー小説などででてくる法昆虫学。ウジ!ウジ!ウジ祭!論文ぽく書かれているので、そういう生物として読めるので、全然気持ち悪くない!旺盛な食欲のため、食べ進んでいかないといかんから、頭部が鉛筆の様に尖ってるとか、なるほどなるほど!すごくよく分かる。
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テーマはとても興味深かった。
気温と産卵~羽化までの日数の積(積算時度)が死亡経過時間予測に使われる指数である。この辺りは勉強になった。
あとがきの最後の一文がブラックジョークみたいで好きだった。