妖怪少年の日々 アラマタ自伝
著者 著者:荒俣 宏
貪るように本を読み、平井呈一、紀田順一郎などの師匠たちに師事した学生時代から、六十歳を超えついに現実世界で出会った「目に見える妖怪」の記憶まで、日本を代表する知の巨人が人...
妖怪少年の日々 アラマタ自伝
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商品説明
貪るように本を読み、平井呈一、紀田順一郎などの師匠たちに師事した学生時代から、六十歳を超えついに現実世界で出会った「目に見える妖怪」の記憶まで、日本を代表する知の巨人が人生の軌跡を振り返る初の自伝!
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アラマタ・コリャマタ、すごい分厚い自伝になったものだ
2021/07/25 18:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般には、時々テレビに出て来ていろいろな蘊蓄を傾ける恰幅の良い叔父さんというイメージなのか、あるいは昭和末期に映画化もされベストセラーとなった『帝都物語』の作者として知られているのかと思う。そんな、荒俣宏の自伝だそうだ。
個人的には、そんな一般的なイメージよりも図像学や博物学、後には妖怪といったことに博学な知識を持つ一方、翻訳者であり作家でありといったマルチな活躍をしていた人として知っており、その始まりはもう40年も前に呼んだ『理科系の文学誌』だったのだ。それからは、ちょうどバブルな時代だったこともあり、後から後から綺麗な本や読み応えのある判型の本や何やらが出版されるたびに買い集めたものだった。そうそう、『世界大博物図鑑』も買いました。
そんな荒俣大先生の自伝なのだから、これはもう読むしかないでしょう。ちょうど、なぜかバブル時代の荒俣大先生の本を改めて何冊も読み返していたところだったから、もう運命と言うしかない。
ところが何とこの本は、460ページを超える分厚いハードカバーの本なのだ。しかも、本文は2段組で、フォントも今時にしては小さめのようにみえる。荒俣大先生も73歳になったかもしれないが、こちらも相応の年齢になっているので、読み終えるまでが大変だった。でも、しっかり読み応えのある本だったのは、荒俣大先生の面目躍如か。
もっとも、自伝とは言いながら、概ね時系列に沿いながらも、話は自分のことだけでなく、その時々や執筆当時の興味関心のあるところへ自由自在に展開していくなどして、どうみても1冊の読み物になってしまっている。
そんな中でたびたび触れられており、自分のことよりもむしろ丁寧に語られているのが、荒俣大先生が師匠と仰ぐ人々の中でも最も師事していたという平井呈一のことだ。なんだかアラマタ自伝というより、平井呈一伝記といった感じにすら思える。
それでも、ここに登場する平井呈一とその家族の歴史はとても興味深く、それを知ることができたというだけで、このアラマタ自伝の価値が高まるというものだろう。
もう少し、子ども時代の太平洋戦争後まもない東京・下町の話だとか、やはり『帝都物語』執筆の頃のことだとかを語ってくれると良かったのだが、荒俣大先生はまだまだ過去を振り返るというよりは前を向いて、興味の赴くままに世界中を駆け巡りつつ古書や奇書に埋もれているのが似合っているのだろう。そんなことを思わせられた分厚い自伝だった。