紙の本
後半がいいので、期待を裏切りはしなかったんですが、正直、それ以上のものを感じなかったので辛めの採点。なんていうかひと時代前の時代劇、っていう感じがあるんです。文学の香りがしない。次作が勝負、っていうところでしょうか。
2009/06/13 20:08
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
期待の一冊です。なんといっても矢野が1976年生まれ、若い。おまけに福岡県久留米市出身というのがいい。文学も演歌も九州勢は強い、という印象があります。根拠のないイメージですが、とりあえずミステリなら京都周辺、純文学なら中京地区、文学全般で関東地区、というのが私の脳内作家地図。いやはや我ながら大雑把だ・・・。
そして2008年、「蛇衆綺談」で第21回小説すばる新人賞受賞というのも魅力です。そしてご推察の通り、『蛇衆』は「小説すばる」2008年12月号(抄録)に発表された「蛇衆綺談」を改題したものです。ただし、本だけの情報からは、この改題が雑誌発表時に行なわれたのか、単行本化に際してなされたのかは不明です。
造本関係のデータになりますが、力感あふれる装画・装丁は妹尾浩也(イオル)です。いやあ、本当?イラストだけじゃないの?タイトルの書体も妹尾さん?なんて思うほどの迫力。何といっても傭兵集団「蛇衆」の躍動的な様子を金色のちょっと抽象的な線に勢いのあるイラストで表現した、それが偉いです。ただし造本は平均的。
構成は、序、二十二章、終章です。章タイトルがないっていうのは、私にしてみると寂しいんですが、海外の小説では一般的。どっちがいいのでしょう?時代は応仁文明の乱の後、とあるので室町末期、九州の鷲尾領、筑後と肥前の境にある肥岳地方の中央にある鷲尾山です。そこの鷲尾家の家督争いが話の中心です。
蛇衆は、室町末期、各地の戦で怖れられていた傭兵集団です。集団とはいうものの、人員は僅かに六人です。朽縄、十郎太、孫兵衛、夕鈴、鬼戒坊、無明寺がその面々で、彼らに仕事を紹介するのが、商人である宗衛門です。六人について、得意技などについて書いておけば
朽縄は、傭兵集団「蛇衆」の頭目で、目指す相手をしとめると「御首頂戴」と声を上げます。夕鈴は、『血河』という太刀の使い手ですが、もとはごく普通の少女でした。朽縄に助けられたことから、彼を慕い剣術を学んだ美女です。十郎太は、朽縄を兄と呼び慕う若者で、『旋龍』という槍の使い手です。鬼戒坊は大きな体躯の僧形の男で、金棒『砕躯』を、孫兵衛は、弓『雷鎚』を、無明寺は小さな棒状の刃物『雫』を使います。
で、彼らが巻き込まれたお家騒動の側ですが、まず当主で、以前は重意と名乗っていた鷲尾嶬嶄がいます。嶬嶄の正室は法真尼。二人の間には長子の弾正・意吉と側室の子で、兄以上の切れ者と噂される隆意という二人の娘がいます。末崎弥吾郎は娘が弾正の妻で、権勢をを誇りますが、彼には三十年前、当時、重意と名乗っていた嶬嶄から、嶬嶄の子どもを殺せと命じられた過去があります。末崎と権力争いを繰り広げているのが堂守兼弘です。兼弘は鷲尾家の重臣で、隆意こそ嶬嶄の後継者、と後押ししています。堂守嘉近は兼弘の息子で、堂守家の養子です。
そしてこのお家騒動に影を落としている不気味な存在が、我妻秀冬です。秀冬はもともとは鷲尾家の家令でしたが、主家を裏切り、室町幕府が開かれる直前に領地を得ています。その当主になって10年、今は周防守護の大内家と被官関係を結んでいます。その秀冬に雇われた忍というのが如雲で、「蛇衆」の一人、無明寺の弟です。
あとは読んでもらうしかありませんが、予想外の展開をします。正直、感心をしました。それまでの劇画風のある意味では荒っぽい、そしてありふれた流れが全く別の流れになります。もし、前半だけなら普通の出来で、賞をとれたかどうかは疑問ですが、後半があっての評価でしょう。次の作品で本物かどうかがわかる、そんな気がします。
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家族でもない。かと言ってただの他人と言うわけでもない。
心の底から仲間と言い張れるのはこういう人達が言うのだと思いました。
一人一人が背負う傷は深いけれど、それに匹敵するぐらいに彼等たちの絆も深い。
だから最後のシーンでは涙を流さずしては読めません。
本当にお勧めです。
この本が賞をとるのは納得。
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第21回小説すばる新人賞受賞作
戦国時代、傭兵のように金銭などで雇われて戦う、「蛇衆」と呼ばれる集団があった。
それぞれに、独特の武器を持ち、戦場へ乗り込んでいく。
「蛇衆」たちの抱える生い立ちや絆。。。それもまた刺激的で、
戦いのシーンが多くても、ストーリーがしっかりしてるので楽しめます。
それに、彼らの暴れっぷりは、それはそれは、ものすごい迫力で、
映像が頭の中に浮かんでくるのです。
これは映画にしても、面白いかも。。。なんて思うほど。
冒頭で、巫女の預言を信じ、幼いわが子を「殺せ」と命じた武将がいたのだけど、
死んだと思っていたその幼子は、部下の計らいで生きのびていて、
成長したその息子とは、いったい誰なのか?
物語は、その話も絡んできて、益々面白くなっていくのです。
ラストは、血しぶきが飛ぶ怒涛のシーンにもかかわらず、
涙があふれてくるのでありました。
面白かったです!こうゆうの大好きです!
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軽めのエンタテイメント性の強いものの中で、かなりいい線いってます。
アクションシーンが俊敏で豪快で超人的で、少年漫画見てるみたいでした。
期待と不安と予想通りのストーリー展開ですが、不思議とがっかりしない!
若干わかりにくい部分があったものの、文章はしっかりしてて言葉の使い方もきれい。
結構突飛な超人集団だけど軽すぎもせず、次々とページを捲ってしまう面白いお話でした。
デビュー作とのことで、今後も楽しみですねー。
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室町末期、各地の戦で力をふるい怖れられていた傭兵集団「蛇衆」。
頭目・朽縄ら6人は、そのときどきの雇い主のもとに赴き銭を得ている。
一方、九州の鷲尾領では、当主・鷲尾嶬嶄の2人の息子が家臣らを巻き込み激しい家督争いを繰り広げていた。
「蛇衆」が鷲尾家に雇われめざましい働きをみせた戦が終わり・・・
朽縄が、30年前に死んだとされる嶬嶄の嫡男ではないか?という噂がどこからともなく囁かれるようになる・・・
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小説すばる新人賞って、結構掘り出し物な作品があると思うのよね。
前回の「桃山~」はイマイチだったけど、その前の「でかい月だな」や「となり町戦争」は面白かったし。
今回の作品も、勢いがあってかなり楽しめたかな。
作者本人も公言してるけど、かなりゲーム的要素がたっぷりなので、ゲームっ子は尚のこと楽しめるかも(←戦国BASARAフィルターごしに読むと、無明次が佐助に見えてしかたがない。あ、性根は佐助=孫兵衛かな。なにせ無明次は照れ屋さんなので)
大太刀〈血河〉(けつが)をふるう美女・夕鈴
巨大な金棒〈砕軀〉(さいく)をにぎる大男・鬼戒坊
両端に刃をつけた槍〈旋龍〉(せんりゅう)を振りまわす陽気な若者・十郎太
百発百中の弓〈雷鎚〉(いかづち)を放つ楽観主義者・孫兵衛
体中に小さな棒状の刃物〈雫〉を仕込んだ無口な元忍び・無明次
己の武器はこぶしのみ、すべてを破壊する男・朽縄
そして彼らに仕事を運ぶ謎の商人・宗衛門
っちゅーキャラクターもそれぞれ個性的でよいのよ。
欲を言えばもう少し書き込めたかな~と思わないでもないけれど、新人さんでここまで描けたら及第点でしょお!
ゲームっぽい?そんなのここまで勢いで読ませてんだからいいんじゃない?。
難を言えば、主人公だと思っていた朽縄が、途中で○○○○してしまう事。
その後の展開も読めちゃうんだよね。
でも蛇衆たちのそれぞれのラストは、納得のいく描き込みようで文句なしです。
特に無明次が~。無明次の最後がかっこええ~~~。
いやみんなかっこええけどな!
嘉近の首を取るまでの一部始終は、大興奮で読み進めてしまいました。
「これからは俺が蛇衆だ」
十郎太がそう呟くラストもうまくまとまっていてよかったですよー。
のぼうよりこっちの方が面白かったな~。
次回作にも期待したいです♪
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戦乱の世にあらわれた7人の凄腕傭兵集団「蛇衆」
頭目格である「朽縄」の出生の謎から徐々に物語はゆがみを帯びていく・・・
「歴史エンターテイメント」が流行り、とかいう話とともにこの作品と「のぼうの城」が紹介されていまして。
で読んでみたんですが・・・どちらかというと「エンターテイメント色」が強くて・・・
何だろう?全体的なうすっぺらさが非常に気になります。
登場人物に対する深い掘り下げが不充分なままで話が進んでいって「いきなりなんだ?!」といった感がぬぐえませんでした。
「のぼう~」がかなりおもしろかったので期待していたんですけどねえ・・・・
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ページがすかすかだったので、「読み応えないかも」とちょっと危惧していたけど、結構面白かった。
戦国時代といえば、武将に焦点を当てたものが多いように思うのだけれど、これは、名も無き人々が戦国という時代に翻弄される様を描いている。ちょっと、登場人物が漫画っぽいけど。戦いの描写とかは臨場感があって上手。
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戦国時代の九州地方を舞台にした7人(蛇衆)の傭兵の話、夫々武器の使い手で強くてエンターテーメント性に優れた作品で出生の秘密から因縁めいた雇い主(殿様&旗本)に翻弄され生き抜く姿がものがたり上面白かった。頭領的存在の蛇縄は因縁の中殺され、復讐する残りの蛇衆も400人との戦いで仇うちを果たしたものの、最後は蛇衆の7人が1人(十朗太)だけ生き残って終わる。
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かっこいい集団。今で言う庸兵なのか?
最後一つの目標に突き進むひとりひとりのスポットがいい。
もっと色んな戦いのお話があるとよかった。
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宮部みゆきおすすめだったので借りてみた。すばる新人賞受賞作(この賞は昔、花村萬月が取ったっけ。すばる新人賞ってのは、何かこう、勢いとかスピード感を評価しているのかな?)。えーと、勢いがあっておもしろかったのですが。会話部分が多く、一文一文が短くてすかすか。まあそれが勢いにもつながっているんだろうけど。蛇衆が6人というのがちょっと多すぎて、最初誰がだれやらよくわからなかった。どろどろスプラッタ系、なイメージです。
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圧倒的な力を持ち、戦を生業にする者たち――蛇衆の物語です。第21回小説すばる新人賞受賞作ということで手にとってみました。とにかく蛇衆の面々が凄すぎです。冒頭から槍をぶん回す少年あり、大剣を振りかざす女ありで、敵を次から次へと屠っていく姿はまるで戦○BASARAのよう…(笑)こういうのが好きな人は好きだと思うのですが、私は戦国モノってあまり読まないし、主人公が最強すぎる話ってどうも好きじゃないな…と思って最初は読むのに苦労しました。しかし中盤、蛇衆が覇権争いに巻き込まれていくあたりから徐々に面白く読めましたし、最後のまとめ方も上手いなーと思いました。なんというか、滅びの美学みたいな…?まあ、話の展開は早い段階でよめてしまったのですが、私はベタな展開が好きなので(*^_^*)特筆すべきは何といっても戦闘シーン。スローモーションがかかってるようでしつこいような気がするけれども、そこがとても映像的です。とにかく勢いがあり、作者が好きなものを書いたということが伝わってくる作品でした。
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おもしろかった、けれど・・・以下ものすごいネタばれ。冒頭の蛇衆の活躍シーンはかっこよかった。いやもう人外の強さです。その強さのまま、爽快活劇ってな感じな作品と思いきや、もう一度鷲尾にみんなが戻ってくるとこらへんからいやーな感じはしてたのよね。変な予言婆さんもでてくるし。あーもーやだやだなんでみんな死んじゃうの!てっきり朽縄が蛇だと思ってたらあっさり死んじゃってなんだかなー。彼がメインだと思ってたんだけど違ったとは・・・・。感情移入するひまがなかったよ。そっちが蛇かあ、という驚きはそのまま夕鈴たちの怒りにうつって、彼女たちの殆ど無謀な最後の戦いぶりには読むのを止められないものがあった。悲しい。なんかちょっとサムライセブンっぽい?「勝ったのは我らでは、ない。」みたいな。結局生き残ることが全て、かもな。なにに守られることもなく己の力のみで生きてきた彼らが、結局は争いの因果の中に組み込まれ命を落とす。無常だ。
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超痛快戦国時代活劇。人間模様も謀略も描かれてるんだけど、やっぱり目を引くのは、圧倒的な戦のシーン。得意の武器を手に、戦国アクションもののゲームみたいに、ガンガン敵をやっつける。やっつける。本屋大賞作品を読まなきゃいけないのに読んじゃった…
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戦国の傭兵グループが不本意ながら領主の後継争いに巻き込まれる。悪くはないんだけど、人物描写、設定が粗いな。この本を読む事にしたのは、作者が同郷だったから。時代活劇小説家としての今後を期待したい。無理しなくて大衆小説として気楽に読者を楽しませようと書けばいい。この作品は、やや小細工と強引さが目立つ。壊滅したから無理だけど、グループをシリーズ物として歴史に絡ませれば面白かったんじゃないかな。