紙の本
驚きに満ちた近未来を存分に味わえるSF
2021/03/28 12:46
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投稿者:yura - この投稿者のレビュー一覧を見る
純文学作家の純文学作品集というよりは、もっとずっと近未来SF集だった。東京オリンピックが2020年に終わった後、長い年月が過ぎて日本がもうなくなっている世界だったり、日本語がもうちゃんと話せる人がいない世界で古き良き日本への愛惜が記されたり、舞台設定がとてもSFとしてしっかりしていて、その世界へ足を踏み入れることができる。どの話の設定自体も話の展開も、「センス・オブ・ワンダー」に満ちた、存分に楽しめる短編集。
電子書籍
中島京子さんの作品2冊目!!
2020/04/02 20:38
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投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベンジャミンをまず読了!
初めて読んだ「樽とタタン」とは内容は異なるけれど、直接、対談を間近で聞いた時に受けた中島京子さんの印象とこの本も重なります!
今回の本も、ベンジャミン!の内容は、少し、驚きましたが、それでも、坦々と、変わっていると感じる事も、日常の1つの様に、読者の1人として、素直に受け止めることができる文章!書き方に脱帽です!
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6つの近未来短編。どう紹介すべきか、かなり困ってしまいます。
共通した背景は2度目の地震と原発事故によって壊滅しつつある日本。それをベースに各短編で遺伝子工学、生殖技術、ロボット、AIなどを扱います。各短編の世界感のつながりは極めて弱く、背景だけは共通。その為に却って中途半端感が有ります。
全体的には技術革新に対してネガティブなディストピア小説です。とは言え、優れたSF小説の様に一つの近未来を構築して見せるようなリアリティは無く、寓話という見方でも強いメッセージ性を感じられません。中島さん自身がインタビューで言っているように「ふだん目にする情報や身近な話題の中からひっかかってくるものを」テーマに「自分の心配や、あるいは若干の希望を織り込みながら、『こんな未来を考えてみた』」という作品です。そうなるとSFでとも言えず、さらに中途半端な感じがします。その上に基本的にディストピアを描いているため、中島さんの最大の長所と言うべき「不思議な可笑し味」があまり出て来なのです。
と言うわけで、それなりに面白く読めるのだけど掴み所の無い作品。そんな感想です。
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原発事故により日本が滅びた近未来が舞台の短編6本
「ベンジャミン」
チサとユーゴは、田舎の動物園の園長であるお父さんと暮らしている。チサとお父さんは似ているが、ユーゴだけが似ていない。
動物園のスターアニマルは「ベンジャミン」
スターと言っても、他に動物園らしい動物がおらず、消去法でスターの位置に君臨しているに過ぎないが、2人にとっては特別な動物だった。
来園者のいない動物園では、動物たちと3人での生活だが、チサも進学で島を出て、父親と2人きりの生活が始まる。
父の説明から「ベンジャミン」が20世紀に絶滅したフクロオオカミという種を復活させた生き物なのだと判明するが、話の核心はそこではない様子。言い難い秘密を告白することへの葛藤から、常用していたクスリの過剰摂取により、お父さんは死んでしまう。
大学から帰ってきたチサにより、真相がユーゴに告げられるが……。
結果、冒頭で母が父に吐いた「ひとりよがりで、頭のネジが外れていて、まともな人間ではない」の言は何よりも核心をついていたことが判明する。
「ふたたび自然に戻るとき」
原発事故のため、首都近郊がゴーストタウンと化した未来。緑化の流行時に建てられた多くのタワマンは廃墟となり、緑のタワーへと変貌していた。そんな廃墟にも僅かに人影があり、その多くは地方へ避難しなかった不法滞在者だった。
そんな廃墟マンションをモニターで遠隔管理する会社へ就職したレナ。自分が担当する廃墟マンションでは老人が忽然と姿を消すという都市伝説があることを同僚から聞かされる。その消えた老人のひとりはカラスと友情を育んでいたようで……。
この章、前半必要?導入や対比にしては世界観構築しすぎで長いような気が……そこにあるかもしれない意味をいまいち掴みきれていない。
2ページ程度の導入からの、人も社会もなんやかんやで自然に還るっていう後半メインではいかんのか。
「キッドの運命」
主観は「俺」ことキッド。
旧式ロボット「日本人」を作る違法工場を営む九十過ぎのじいちゃん、「日本人」を組み立てる「日本人たち」、そして区分Dであるこの集落の数少ない住人たち。
この小さなコミュニティに、ある日突然、冒険家を名乗る赤毛の女が現れた。テルマと名乗ったその女は、冒険を続ける費用を稼ぐため、世界中で様々な仕事を請け負うという。
テルマに強烈な魅力を感じるキッドだが…。
24年後っていう、物語上で「未来」と呼ぶには「現在」との地続き感が強い未来が舞台。おそらくどのストーリーも同じ世界観で描かれているが、具体的な情勢や年号が登場。
2度目の原発事故で消滅した日本という国の名残が「日本人」。いや、旧式ロボットの描写が世界の中のジャパニーズビジョンと完全に重なってて強烈な皮肉感。
そんなじいちゃんや日本人たちを脇へどけといてのっそり起き上がるメインテーマは人工知能。うーん。キッドの運命やいかに。
「種の名前」
初めてきちんと希望らしい希望を感じるストーリー。
父の都合で9月の年度変わりには転校を余儀なくされている14歳の女の子ミラが主人公。移住先のヒュース���ンでは、父と、父の新しいガールフレンドで未来の継母になるかもしれない女との新生活が待っているが、ミラは決して乗り気ではない。
ささやかな抵抗として、移住前最後の夏休みは、行ったこともない父曰く「ひどい田舎」と形容される母方の祖母「瑠璃」のもとで過ごすことにしたミラ。瑠璃の娘であるミラの母はホテルの火事に巻き込まれ他界している。
生活補助ロボットや運動機能補助ロボットが普通に登場するものの、瑠璃が暮らすその集落は、住人が老女のみという姥捨山然とした世界。娘を失った失意の瑠璃が、世を捨ててたどり着いた場所だった。
しかし、ミラを迎え入れてくれたその集落の真の姿は、失われた日本の食文化を復活させた秘密のコミュニティ。
日本の原風景を彷彿とさせる「奇跡の畑」で密かに自給自足を営み、天寿を全うすれば、少ない仲間に見送られ、自然へと還ってゆく満ち足りた世界。
祖母とのひと夏の思い出と琺瑯入りのコメノコウジミソマロを抱えて、希望の持てない新生活に立ち向かうミラの背中には、冒頭には感じなかった可能性の翼を見てしまうようなあたたかい読後感。
この桃太郎はあの桃太郎なのだろうか……。
「赤ちゃん泥棒」
この本で一番未来を感じた話かもしれない。
出産に関わる一切が体外で完結できるようになった未来。卵子や子宮も「作る」ことができ、ゲイカップルや高齢の夫婦でも2人で完結する出産が可能になった時代。
主観である男性と妻である女性は計画にない自然妊娠をしてしまい、出産に対する考え方の相違から離婚するに至る。
出産を希望する男性に対し、無断で女性は堕胎してしまう。これを「赤ちゃん泥棒」だと激怒した男性は、結婚したときに生殖バンクに預けていた妻の卵子を無断使用して、自身の体内(胎内)で妊娠するという手段をとることに。
体外子宮を用いた場合、強制堕胎という手段を取られる恐れがあり、二度も我が子を奪われることを恐れたが故の大胆行動だったが、資金調達のために執筆した体験レポ漫画が原因で、結局妻にバレてしまう。
卵子泥棒だと怒り狂う妻は訴訟も辞さないと怒鳴り込んできたが、それに対し盗まれたものを取り返したのだと応戦する身重の男性。
妻を部屋から追い出した男性は過度の興奮のため倒れてしまう。
目覚めた病院のベッドで、子供はどうなったのかと問うが、ナースロボットはプログラムされた処置だけを行い去っていく。
場面は変わり、これまでの話が回顧録であったことが明かされ、一人称が「僕ら」に変化する。あの大喧嘩の後、再び部屋を訪れた元妻とよりを戻した男性は、無事第一子を出産し、現在2人目を妊娠中。高額の人工子宮を再利用できたのでした。
一番の未来感に加え、予想外のベストほっこり感。そして現代社会が抱えるジェンダー問題の三分の一くらいはこの未来が解決してくれる気もする。
他の話のような原発による日本の消滅には触れられていなかったような。
「チョイス」
人類がユニットという単位で共生する未来。家族ユニット、シェアハウス型ユニット、会社型ユニットなど様々な形があるが、ユニットを選択しないシングルセルという生き方もある。
現状の家族型ユニットから進路を選���する18歳を2年後に控えた少女がこの物語の主観。ユニットの構成員、つまり遺伝子的繋がりのない家族を少女が紹介する形で、この世界の現状が明かされる。
ユニットよりももっと大きな構成単位として「層」が存在しており、労働をせず、好きなことをして生きる自由な「U層」
元来の意味として「ユースレス=役立たず」のUを冠するこの層に少女は属している。
そして富豪を意味する「P層」
主観がU層であるため、Pについての情報は多くないものの、U層がマジョリティであるという発言があることを考慮すると、選ばれた人間だけが属しているという意味においては「B層」と人口的には変わらないのだろうか。
労働の時代を過去の暗黒としつつも、官僚としてシステム管理を担う「B層」は登用試験があり、ごく少ない人材が属している。
そして異質な「A層」
地球には未来がなく、地球にとっても人類は害を及ぼす生き物でしかないと、この星を離脱した人々を指す。
そしてタイトルの「チョイス」
医療の発達により自然死と縁遠くなってしまった人類に与えられた、自己選択の「安楽死」サプリメント。選択した期日に向けて、苦しみや痛みのないままに、少しずつ死んでゆける夢のお薬。
家族型ユニットに所属しつつヒキコモリの形態を選択している少女の兄が、このチョイスについて闇深な発言をして終わる……
いや、情報量多いのに何もわからない……。他の章とからんでるのか?いや、でももう疲れて読み返す気が起きない……。親切な解説を漁りたいと思います。
苦役の時代を生きる我々に乾杯。
面白くないわけでもないし、近未来物にしては変なリアリティと奇想天外が共存する不思議な読み心地。
しかし短編だからっていうこと抜きにしても、先が気になって手が伸びてしまうタイプでもない。
読み終わって、ため息ついちゃった。
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二度の原発事故により国家として機能しなくなった日本を舞台とした、近未来小説。6つの短編を収録している。
汚染された自然界、アジア諸国の統廃合を背景に、AIや人工子宮など、扱っている素材にとりわけて目新しさがあるわけではない。
でも、たとえば村田沙耶香など昨今の毒の過剰なディストピアものに比べると、どの短編も根底には人間的な温かさとドラマがあり、ほっとする。
表題作よりも、老女たちが孫に秘密を伝授する「種の名前」がよかった。
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「ベンジャミン」「ふたたび自然に戻るとき」「キッドの運命」を読んだところで嘆息した。本や映画が、近未来をユートピアでなくディストピアとして思い描くようになった転換期はいつからだったろうか・・・。初めて中島京子さんが近未来に取り組んだ作品は6話の短編集。作品に共通するのは、日本は2度の原発事故に遭い列島の半分が沈没し首都は福岡となる設定だった。そう来て当たり前だろうと実感できるのが悲しい。3作読んだところで読むのを控えようかと迷った。
でも4つ目の「種の名前」で踏ん張れた。
主人公・ミラは母親を日本人に持つアメリカに住む十四歳の少女。日本の田舎に住む祖母を訪ねる。深い森に老女たちが農業をしながら共に暮らしている。瑠璃おばあちゃんは細い腕には自動翻訳機付き通信機、腰から下には運動補助機能ロボットを付けていて歩行が楽そう。実は私も年を取って足腰が弱くなったら少々値が張っても補助ロボットを買い山に登ろうと計画しているので少し気持ちが上向きになれた。家には介護ロボットがいて”お清”とお祖母ちゃんは呼んでいる。名前を付ける事で、機械が生活の中に溶け込み人間と機械との関係が温かく感じられた。
次の1編「赤ちゃん泥棒」には、生殖技術が発達した未に人工子宮が一般化した世界が現れ、ゲイカップルや高齢者夫婦の出産・子育てへの道が開かれている。妊娠した妻が勝手に堕胎。憤慨した夫は人工子宮手術を受けて子供を産むというストーリー展開。凍結した卵子や精子を体外受精して受精卵を子宮に戻すのは”今は昔”なのだとつくづく思わされます。
最後の「チョイス」は安楽死を扱った話。
星新一のSFショートは読み辛い私ですが、本作はそれなりに愉しめました。
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近未来を舞台にした短編集。
それぞれ面白味はあるものの、あっさり感も強かった。
「君はいい子」の雰囲気を期待していたため、少し肩透かしだったかな。
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近未来小説の短編6編からなる。明るい近未来ではない作品ばかりなので、愉しく読むことができる作品集ではない。科学文明の終焉を匂わせる短編集。作者の描く近未来が実現しないことを祈りながら読む作品集。
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近未来のあるある物語だ。最初の2話は、なにかしらよく分からないまま読んでしまったが、3話以降を読み進めるほどに「なるほど」と、それがしは感心しきりであった。『種の名前』では、おばあちゃんたちのコミューンにほっこりと癒された。『赤ちゃんどろぼう』なんて、そう、将来LGBTなんて言葉さえなくなるほど性の垣根が取り払われれば、さもありなんである。日本という国の存在自体が歴史の一ページに記される将来って、決して戯言ではないんだろう。
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何十年後かの「輝かしい未来」を圧倒的な筆力で描く。ありそうで、膝をたたいて笑いながら読んでいたら、やがてだんだん怖くなってくる6篇。どれも怖いですが、「ふたたび自然に戻るとき」、「ベンジャミン」はきついです。なかなか手がでず、読み切れず、ようやく読了。
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「小さいお家」と「長いお別れ」のイメージで読み始めたので、近未来の話に少々戸惑ったが、カラスに、自分の遺体を食べて欲しいと頼む「ふたたび自然に戻るとき」、人工子宮移植手術で男性が出産する「赤ちゃん泥棒」は好き。星新一さんを重ねた。
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近未来が舞台のお話。非現実的のようでいて、今この時間の続きに確かに有るような時間を覗き見た。
中島さんは、わからなくても本筋に支障はない遊び心をちょいちょい散りばめている。
きっと気づかずにいることは多いのだけれど、見つけると嬉しい楽しい。
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短編集6編
近未来,AI,ロボット,遺伝子操作などを絶妙に料理して見せてくれる.また家族のあり方,出産,安楽死なども.便利になって進歩することがまた新たな問題を連れてくるということも.思いついたアイデアをパァッと散りばめたような短編集.
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近未来を描いたお話たちなのだが、そもそも私は現代にすらついていけてないので、大幅リードされたまま一歩も縮められず終了。
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なさそうでありそうな、いややっぱりないかなぁというような近未来の話。私的にはないかなぁと思いながら楽しく読みました