- 販売開始日: 2013/02/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-100513-3
細雪(中)
著者 谷崎潤一郎 (著)
雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家...
細雪(中)
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商品説明
雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家は東京に転任になる。時代はシナでの戦争が日ましに拡大していき、生活はしだいに窮屈になっていくが、そうした世間の喧噪をよそに、姉妹たちは花見、螢狩り、月見などの伝統的行事を楽しんでいる。
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この物語の舞台となっている昭和10年代初めごろの風俗や天災なども織り込みながら物語は進んで行く
2017/01/10 21:37
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻では物語の中心は、三女の雪子だったが、中巻では末娘(こいさんと呼ばれる)の妙子になっている。この物語の舞台となっている昭和10年代初めごろの風俗や天災なども織り込みながら物語は進んで行く。最後のところで大きな事件が起こるが最終巻でどんな展開を見せるのか、楽しみである。
ああ、やっぱり谷崎だなって思った。
2003/09/18 11:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
近頃雑事や仕事で忙殺されていて、ゆっくりと本を読む時間を持てない。睡眠時間を削れば読めるのだが、そういう時に読むと次第に瞼が重くなり、同じ個所を何度も読んだりしている。せっかくの本なのに、それでは無意味だ。だからちょっとした暇を見つけては読んでいる。
谷崎の「春琴抄」もまた、素晴らしい女性描写だが、本書もそれは見事に美しい女性像を想像させてくれる。耽美派、美にとことんこだわった人たち。今度は川端康成にも手を伸ばそうと思っている。
上巻では三女・雪子の見合い話を要に語られていた。関西弁の会話や、美人姉妹で京都に花見のために赴いたり、四女・妙子のハイカラぶりを描いている。
中巻では、そのハイカラな妙子にスポットライトが当てられる。関西地域に起こった大洪水、東京を直撃した大型台風の話も出てくる。許婚の奥畑との諍い、写真家である板倉との仲。
妙子は雪子とは違い、行動派であり意志が強い。奥畑と縁を切るために洋行を希望したり、板倉との将来を案じて洋裁を学んだり姉たちの反対を押し切る。本家と対立したり、本当に穏やかとは言えない日々が続く。本家と妙子との間にはさまれた幸子は頭を抱え、雪子と共に妙子を説得したりした。
一人一人の言動を細かに表現し、谷崎らしい文章が美を携えている。関西弁も彼女たちの魅力の一つと成っている。優しげな関西弁、いいものだなと真剣に思ったのだ。現代では妙子のような女性は活発で好奇心旺盛と称されるだろう。時代というのは流れ続け、止まる事はない。姉妹が生きている時代というのは本家や分家、しきたりや伝統を重んじる。一口に結婚と言っても相手の環境をじっくりと調査したり、身内の人が新聞沙汰になるような事をしただけで縁は遠のいたりする。個人の感情など無視されてしまう事も多々あったという(祖母から聞いた覚えがある)。
薪岡家は由緒ある一家で、妙子と交際している板倉は身分が低い。今でも、伝統とかしきたりとか、そういう事に重きを置く家庭もあるだろう。けれど一般的に生活していれば、身分だの何だの、よっぽどでない限り問題はないのに。
中巻が終わる頃に板倉の身に起こる事を考えれば、身分というものによって裂かれてしまった仲を少し悲しいと思った。大奥というドラマをご存知だろうか。私はあのドラマを観て将軍家に嫁いだ女性の、深い哀しみや強く眩しい意志に涙した。
とりとめもなくいろんな考えが錯綜した。少なくとも、私の家庭は伝統なんて大それた事もないし、しきたりなんてない。だから余計に新鮮に感じ、心底楽しんで読める。やっぱり谷崎だなあと、ふと大きく息を吐いた。
源氏物語の伝統復古をもくろんだこの大河物語文学の中巻で、大谷崎が一番書きたかったのは案外、花屋与兵衛で修業した親爺の握る上方鮨ではなかったか。うまそうなネタ並ぶ。
2001/11/10 13:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
美女とかいい女っていうのは、その見事な食べっぷりもランクアップの条件なのではないだろうかと思える。食べっぷりだけに留まる私としては、美貌と気品の上に食べっぷりまで素晴らしい女性が現れると、何とも情けない心持ちがして仕方ないのだが…。
美食家で名高い谷崎潤一郎としても「これ、うまいから食べてごらん」などと、首尾よく食べ物屋に連れ出した舞妓さんや芸妓さんが「これ、苦手どす」なんてお残しでもしようものなら、すっかり興ざめしたのではないだろうか。うれしそうに笑いながらぺろり食べて、腹が盛り上がりもせず、ましてやゲップをするでもなく「ほな、待合に行きましょうか」てな具合に艶やかに笑う——そんな女性に美点を認め、そそられたのではないかと勝手な想像をたくましくしてしまう。
この巻の終盤近く、次女の幸子夫妻と3女の雪子、4女の妙子の4人が「与兵」という鮨屋に出かけていくくだりがある。3女の雪子は、上巻に引き続いてまだ縁談がまとまらない。東京に住む長女一家が後見人であるが、東京の暮らしは肌が合わないし、長兄との折りもあまりよくない。それを気遣って次女夫妻が何かと芦屋に呼び戻してくれるわけである。ちょうど4女の妙子の上方舞の舞台があるというので、異性関係で問題の多い妙子の相談も兼ねて戻ってこないかという話になる。ちなみに中巻では、妙子の男性関係が主流を成している。
舞の会のご祝儀代わりに幸子の夫・貞之助がおごる話になって、くだんの鮨屋かオリエンタルホテルのグリルか選択肢が持ち上がる。長いこと東京に行っていたのなら、やはり明石の鯛が食べたかろうという気遣いで、乾杯用の白ぶどう酒を提げて「与兵」へ…という運びになるのである。この前段を省いて、鮨屋での場面に8ページが割かれている。
鯖鮨と箱鮨しかなかった関西に、握りが定着するのは関東大震災で寿司職人が移住したからだろうという解説が註にある。握りの創始者であり大成者である両国の花屋与兵衛(現在はライフコーポレーション系列のファミレスの名に使われている)の店は、東京随一として有名であったが、「与兵」のがんこ親爺はそこで修業したという。江戸前と上方の違いを語る谷崎の筆致は滑るようで、ネタがずらり挙げられ、客の注文をきかず親爺の采配と機嫌で食べられるものが決まる店の雰囲気が丁寧に描写される。
肉が生きてぶるぶるふるえている蝦を、雪子はそのままでは食べられない。ふるえが治まってから安心して食べるのである。姉の幸子に「早う食べなさい」とそそのかされるあたり、雪子が婚期を逃したのはあたかも<おどり鮨>が食べられないからだとでも言いたげな書き方ではないか。雪子を東京から関西の方へ惹き寄せる数々の牽引力の中に、この鮨も入っていたと云えるかもしれない——という記述もあるが、雪子のキャラづけを借りて美食家・谷崎の本音が出ているようで楽しい。
鮨談義に終始したが、そのような瑣末なことにも気の行き届いている作家の美学を読み取るのが、この物語の醍醐味なのだ。
時代を感じさせると同時に感じさせない。
2016/06/02 21:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中巻は、四女、妙子の恋愛模様が中心かもしれません。
周りがお膳立てをしてくれるお見合いが当然と考えている三女、雪子に比べ、四女、妙子は家が豊かだった、華やかで派手だった頃を
知らないだけに自由恋愛を選びます。
災害、蛍狩り・・・他の谷崎文学のように良い意味でのけれん味はない、淡々と一家の様子を語る口調に少々、驚きましたが、大変読みやすく、これが戦前、戦中の上流家庭なのかと感慨しきり。
お見合いで、事前に相手方をくまなく調べるのは後々の事を考えると今よりも慎重で良いのかもしれない、と私の年になると思ってしまう。
ただし、大層、大袈裟で、高慢で、息の詰まりそうな堅ぐるしさも同時に感じます。
そういう時代だった、とも言えるし、時代が変わっても変わらない部分もあるのだという発見と両方ありました。
ヒット
2014/10/15 04:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:eudes - この投稿者のレビュー一覧を見る
細雪の評判は耳にしていましたが、今まで未読であったのが悔やまれます。
さすが谷崎先生、高レベルですね。
これを読み終わってから暫くの間、他の本がみすぼらしく感じられて読めず、困りました。
ありがとうございました。