まなしおさんのレビュー一覧
投稿者:まなしお
2016/10/12 19:13
この本を読むと、丸山眞男が真に偉大な思想家だったことが再認識させられる
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丸山眞男氏の戦後約10年間に書かれた論文を集めたのがこの「超国家主義の論理と心理 他八篇」である。丸山眞男氏については、批判も多いが、この本を読むと、真に偉大な思想家だったことが再認識させられる。特に第一部「日本のファシズム」に収められた三篇は圧巻である。この本を読んでいると現在の自民党安倍政権が戦前に非常に似ていることがよくわかる。
紙の本昭和天皇の終戦史
2016/08/14 19:19
たくさんの資料を徹底的に調べつくして著した非常に重要な書物
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本は1992年に新書として発行された。社会学者である吉田裕氏が「昭和天皇独白録」やその他たくさんの資料を徹底的に調べつくして著した非常に重要な書物であり、貴重な昭和史である。私たちは、このような書物を正面から受け止め、歪んだ歴史観を改める努力をしなければならない。
紙の本すばらしい日々
2017/03/06 16:48
日々のふとした感覚などがさらっと述べられている
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
このエッセイは、東日本大震災後、両親の死や友人、ペットの死などを経験した時期のエッセイ集である。しかし、暗さはない。よしもとばななは小説でもそうだが、読んでいてほっとする。派手なことや大問題に正面から言及しているわけではない。でも、日々のふとした感覚などがさらっと述べられ、筆者の生きるスタンスが読者に伝わり、生きててよかった、これからも生きていこうという気持ちにさせられるのである。私はよしもとばななの小説やエッセイを読んで嫌な気持ちになったことは一度もないし、がっかりさせられたこともほとんどない。
2021/02/20 10:42
大部分が話し言葉で書かれているのて大変理解しやすい
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これは網野善彦後期の、主に講演、対談などを集めたものである。一部には雑誌に発表したものや、書き下ろしもある。講演、対談は、話し言葉で書かれているので、大変理解しやすい。どれも網野善彦の著作を読んだ人なら、読んだことのあるものかもしれないが、大変分かりやすいので、読んで損は絶対ない筈だ。
2020/06/27 22:42
この本はグレート東郷というひとりのレスラーを素材にしてナショナリズムについて著されたものだ
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岩波新書がプロレスを扱うのには、非常に違和感がある。それは本文でも触れている。森達也だから一筋縄ではいかないことは当たり前だ。この本はナショナリズムについて著されたものだ。グレート東郷というひとりのレスラーを素材にしながらだ。この謎に包まれたひとりのレスラーについて書かれながら、結論は宙に浮いたままだ。当たり前だが世の中はそんなに単純ではないということだ。
紙の本幕末史
2019/02/06 21:06
皇国史観は「薩長史観」
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講義録を活字化したもので、語りの文体になっているので非常に分かりやすい。幕末から明治維新にかけての話にはいつも違和感があった。攘夷から開国への方針転換と討幕の関係とか、他にもいろいろあるが、この本を読んで納得がいったことがたくさんあった。半藤一利が戦前の皇国史観は「薩長史観」だと書いているがそのとおりだと思う。一読をお薦めする。
2018/12/16 17:33
大変勉強になり、知識が蓄えられたと感じる
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
幕末から明治維新にかけては登場する人物が多く非常に分かりにくい。この本を読んで大変勉強になり、知識が蓄えられたと感じる。明治維新に関心のある人にお勧めする。
紙の本鐘の渡り
2018/03/09 23:37
集中して読む必要があるが、苦労して読む価値は十分ある
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古井由吉は、長い空白の期間もなく順調に小説を発表し続けている。ししてそのどれもが高いレベルにある。短編連作という方式が合っているようで、ほとんどがそのスタイルだ。ひとつの文章が長く、過去・現在を縦横無尽に描いている。また、描写している対象が何時の時代か、何処の誰の描写かが、少し気を許すと分からなくなる。それだけ集中して読む必要があるが、苦労して読む価値は十分ある。
紙の本容疑者Xの献身
2018/02/06 23:07
壮大な仕掛けがこの作品には仕掛けられている
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ガリレオシリーズの三冊目にして、初の長編、そして直木賞受賞作である。前二冊を読んで、はっきり言って天才物理学者ガリレオはあまり好きになれなかった。冷静でシニカルで人間的感情があまり感じられなかったからだ。でも、それらがこの「容疑者Xの献身」のための伏線だったと思えるほどになった。そして、前二冊で多くあった科学的トリックではない、壮大な仕掛けがこの作品には仕掛けられている。多分誰もがあっと驚くだろう。素晴らしい作品である。
紙の本真空地帯 改版
2018/02/04 17:34
軍隊内の閉ざされた空間内での日常とは違う異様な態様を描いている
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軍隊内の閉ざされた空間(これを野間宏は真空地帯と呼ぶ)内での日常とは違う異様な態様を描いている。曽田と木田という二人の視点が交互に描かれている。初めはあまり物語の起伏がないが、途中からいろいろな事件が起こってくる。野間宏は第一次戦後派と呼ばれるらしいが、十分読みに値する作品だ。
紙の本夫婦茶碗
2017/05/30 21:29
町田康の小説にはいつも感じることだが、戦後の無頼派の匂いがする
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この本には「夫婦茶碗」と「人間の屑」二編が収められている。どちらも傑作である。特に「夫婦茶碗」は、芥川賞ではなく三島由紀夫賞の候補になったが落選した。後に「きれぎれ」で芥川賞を受賞したが、この二編の方がずっといい。特に「夫婦茶碗」は、傑作である。町田康の小説にはいつも感じることだが、戦後の無頼派の匂いがする。
紙の本楢山節考 改版
2017/04/15 11:25
三島由紀夫にこわいと言わしめた小説
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これは深沢七郎の鮮烈なデビュー作であり「中央公論新人賞」を受賞した。その年の芥川賞にはノミネートされなかったが、中央公論新人賞を受賞したためらしい。詳しいルールはわからないが、ノミネート可能だったならば文句なしにこれが受賞していただろう。中央公論新人賞の選考委員であった三島由紀夫にこわいと言わしめた小説である。日本近代文学に屹立する大傑作であり。このような小説は、深沢七郎しか書けなかったであろう。
紙の本ナミヤ雑貨店の奇蹟
2017/03/23 15:10
殺人事件など何も起こらない感動の物語である
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東野圭吾の作品を読むのは3作目である。推理小説だと思っていたがこれは違った。ジャンルでいえばファンタジー小説とでも言えるのだろうか。不思議な物語である。全5章から成っている。それぞれが完結した物語のようであるが、中盤からそれぞれが絡み合ってくる。周到に用意されたストーリー展開である。殺人事件など何も起こらない感動の物語である。
紙の本柳田国男を読む
2016/11/29 21:18
柳田國男の仕事の全体像を見るのには恰好の本である
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「日本民俗学の父」と言われる柳田國男に関する論考を集めたものである。柳田國男の仕事の全体像を見るのには恰好の本である。柳田については批判も多い。特に後期の常民という考え方が強く出ているところや、日本人の由来を説いた「海上の道」などへの批判である。赤坂憲雄もその点に関しては批判的であるが、柳田の成してきた仕事の全体を見据え、評価すべきところは多くあることも認めている。そのバランス感覚がすごくいい。柳田國男がいなかったら今の日本民俗学は全然違ったものになっていただろうと思える。専門的な本だが大変わかりやすい文章である。一読の価値あり。