- 販売開始日: 2013/02/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-100514-0
細雪(下)
著者 谷崎潤一郎
昭和十六年、三十五歳になった雪子は、やっと貴族出の男との縁談がまとまり、結婚式に上京する。他方、バーテンと同棲した妙子は子供を死産してしまい、明暗二様の対比のうちに物語が...
細雪(下)
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商品説明
昭和十六年、三十五歳になった雪子は、やっと貴族出の男との縁談がまとまり、結婚式に上京する。他方、バーテンと同棲した妙子は子供を死産してしまい、明暗二様の対比のうちに物語が終る。『源氏物語』の現代語訳をなしとげた著者が、現代の上方文化のなかにその伝統を再現しようと、戦争中の言論統制によって雑誌掲載を禁止されながらも、えいえいとして書き続けた記念碑的大作。
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物語全体に大きな起伏はないが、ここまで読ませるというのは谷崎潤一郎の筆力であろう
2017/01/18 21:23
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は、谷崎潤一郎が書いた一番長い小説である。昭和十八年に中央公論に2回掲載されたがその後は「時局にそわぬ」として掲載できなかった。その後私家版「細雪」を上木したところ、また取締り当局を刺激したらしい。それでもめげず戦中もずっと書き続けたらしい。本文後に「細雪」回顧という作者のあとがきのようなものが載っているが、反骨の人である。物語全体に大きな起伏はないが、ここまで読ませるというのは谷崎潤一郎の筆力であろう。
読者を退屈させず引っ張ってくれる長丁場。「どんな結末が待っているのだろう」と思い描く想像をさらりとかわす粋な結末。「ええっ、ここで終わり?」と裏切られる気持ち良さ。
2001/11/21 13:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
上中下巻にわたる堂々の長編だったけど、いやあ、面白かった。すごかった。
結婚適齢期の男女が何人か出てきて、わいのわいの。この子があっちとくっついて、この子はこっち。と思いきや、意外なそっちとくっつく——『細雪』で去就が注目される三女の雪子と四女の妙子は当時の適齢期をとうに過ぎ、現代の適齢期も少し過ぎてしまっているあんばいだが——そういうのって、やっぱり一番面白いし引き摺られてしまう恋愛物なんだよなあと思う。
二組のカップルが中心になるオースティンの『自負と偏見』も最近読んだばかりで、ちょうどそんな様子だった。そちらは元祖ハーレクィン・ロマンスの香りする世界文学史上の傑作のひとつで『細雪』同様、上流階級の結婚を扱っているのだけれど、京都や東京の風物、名勝などにも枝葉を伸ばす文化の深み(谷崎いうところの「陰翳」)が重奏している点において、こちらの方が一枚上というか、私には数え切れない楽しみがある小説だった。
谷崎があとがきとして<「細雪」回顧>に書いているが、<関西の上流中流の人々の生活の実相をそのままに写そうと思えば、時として「不倫」や「不道徳」な面にも亙らぬわけにいかなかったのであるが…>、戦時中に起稿したため頽廃的な面を十分に書き込むことはできずに、綺麗ごとで済まさなければならなかったことの遺憾があったという。
確かにそちら方面をこれでもかと追及していき、女の本性をあばいてしまうというのが谷崎文学の骨頂なのかもしれないとは思うが(これは、もっと他の作品を読んで見極めたいと思っている)、これはこれで十分に素人女の凄みが書けている。
映画化されるたび絢爛豪華な女優さんたちが揃い踏みで、あでやかな上方の生活のイメージばかりが女性に訴えるという感じだけれど、ああ、やはり肝がすわったドスのある小説なんだと私には思えた。特に、背筋がぞくっとしたのは結びのくだりである。
中巻で水害に遭い、あわや水死という経験をした四女の妙子は、同時に、いいなずけの誠意が疑われるような態度にも出くわし、大きなダメージを受ける。
続くこの下巻でも、妙子の悲運は続く。身から出た錆と言えなくもないが、他の姉妹が口にしない鯖鮨を食べたことが原因で、婚約者の住まいで悪性の赤痢を発症する。おまけに新たに恋仲となったバーテンの子を身ごもり、仕方なく有馬温泉に身を隠すのであるが、子は出産直前に逆子となり重なる不幸。
おとなしくお嬢さんしてればこんな目に遭わないのに…というような、解放的な性を考えさせられるむごい結果が待っている。
片や、家の方針、姉たちの意志に従うお嬢の三女・雪子は、いくたびものすったもんだが繰り返される結果、公卿華族出の男性と縁づく。まだ定職がないとはいえ東大出の洋行帰り、いろいろな才ある人で、しかも人当たりのいい性格なので話をする雪子もいつもの引っ込み思案が陰をひそめ朗らかに相手する。
「ああ、よかったね、雪ちゃん」と読者も嬉しくなり、盛大な華燭の典までいって明るい先行きで結末というところかな…などと思って読んでいると、意外なエピソードで完結する。
確かにこれぞ女の一面という鋭利な切り口がぱっくり開いて終わり、あっけにとられてしまった。
意外な幕切れながら、優れた人間ドラマ。
2016/06/02 22:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻は、三女、雪子の見合いと四女、妙子の恋愛の行方と意外な幕切れ。
こうして読むとこれ、といった大事件は起こらないけれど、人間が
生活していく中で身分に関係なく、何かしら「事件」が起こって、
心境の変化も色々あるのだと思います。
四姉妹の物語として有名だけれども、読み終わってみると、長女はあまり
出てこず、結局、三女、四女の義兄、父かわりであり、次女の夫で
ある貞之助が立派。
義理の妹の為にここまでする男性は今、いるのでしょうか。
当時の上流階級としては当然だったのかもしれませんが。
しかし、性格は違っても仲は悪くはならない四姉妹のあり方を通して、
家族というものをしみじみと考える物語でした。
今や自分と比べるには遠いけれど、身近な物語と読めてしまうのはさすが。