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稀代の寡作家、飯嶋和一さんの新刊が届けられた。上下巻合計1000p超という、過去最長のボリュームである。今回も時代物だが、題材や登場人物は、メジャーと言える。しかし、歴史の知られざる面に切り込む姿勢は、変わらない。
物語の中心に位置するのは、徳川家康の嫡男・三郎信康に取り立てられた、甚五郎という人物。序盤の舞台は、武田勝頼との対立が続く徳川領下の三河。裏切りが横行する戦国の世にあって、彼は父と折り合いが悪い主君に忠義を尽くす。
複雑な意図が絡み合う混迷期、家康は三郎信康を廃嫡する決断を下す。甚五郎らわずかな配下のみを伴い、追放された三郎信康。三郎信康はあまりスポットが当たらない人物だが、廃嫡に至る過程を丹念に描き出すのは、さすが職人らしい仕事だ。
三郎信康や甚五郎の物語だけでも、十分に1冊の本になりそうだが、本作においては序章でしかない。主君を守れず、出奔した甚五郎は、堺から九州へ渡り、商人として生きていた。時代が豊臣秀吉の世になり、結局甚五郎は苦悩することになる。
天下人となった秀吉の新たな野望は、明国征伐。いわゆる文禄の役について、教科書には簡単な記述しかなく、大河ドラマ等でも詳しく描かれたことはなかった。秀吉の愚かな野望を、これほどまでに詳細に描いているのは初めて読んだ。
秀吉の支配で、ただでさえ国内は疲弊しているのに、多大な人員、武器、兵糧、金銀が投入される。側近らは何とか諌めようとするが、誰も逆らえない。特に、朝鮮と緊密な関係にあった対馬は、大いに苦悩することになる。そうして苦しむのは、名もなき民なのだ。支配層が下々の民を苦しめる、まさに飯嶋流時代物の構図である。
武将のみならず、甚五郎たち商人も、出兵を回避するべく、ぎりぎりまで朝鮮側と駆け引きする。しかし、万策尽きて追い込まれていく様に、ぐいぐいと引き込まれていく。秀吉は、日本が破滅し、最後には自身が破滅することに思い至らない。
征明の足掛かりとして遂に朝鮮出兵が始まると、主に武将たちの視点になり、甚五郎の出番は大きく減るのだが、逆に彼の無力さが伝わってくる。商人として、求めに応じて物資を送るしかない甚五郎。そして、朝鮮に渡った武将たちは、秀吉の野望の無謀さを思い知る。開戦直後の破竹の勢いは、長続きしなかった。
朝鮮側の視点でも描かれている点に注目したい。秀吉の野望により、日本人のみならず、朝鮮人の血も大量に流れたのだ。下巻に続く。
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上巻に入っている第一部と第二部では違う本を読んでいるようだ。
第一部は色彩と閉塞感。
第二部の戦乱。
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上巻だけで533ページ! 時期的にこの本を読むのが早過ぎた。
飯嶋和一氏の作品は初めて。下巻は数年おいてから読んでみたいと、今は思っている。
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とても読むのがしんどかった.主人公は沢瀬甚五郎でなるほど魅力ある人物なのだが,歴史を丁寧に調べた結果を少し上空から俯瞰して眺めたような記載方法が,詳しすぎてごちゃごちゃし非常にわかりずらかった.ただ秀吉の朝鮮侵攻を勉強するという点では為になったかな?下巻,甚五郎が活躍すると面白くなるのだろうが,ちょっと一休みしたい気分.
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上巻で533ページ。なげぇ!
気合入れて取り掛からなきゃ読み終わらなさそう。
著者の本は以前「始祖鳥記」読んだけど、歴史掘り下げて横道逸れると説明が冗長で眠くなってキツい章が出てくる。
後半ほとんど主人公出てこなくて、ひたすら長い朝鮮出兵の話だった。
徳川家康の嫡男、三郎信康の小姓に抜擢されたのは、かつて祖父が家康に弓を引いた逆賊の家の子、沢瀬甚五郎だった。
馬を見る目は抜群で、暴れ馬でもすぐに手懐ける技術を持っていた。
しかし、時代は信康にとって逆風だった。
家康の嫡男でありながら今川の血も引く信康は父家康と不仲だった。
そして、自らの刃傷沙汰によって岡崎の地を追われ、小姓を引き連れて流れ着いた先の二俣城で信康は切腹し、小姓頭の修理亮も後を追った。
出奔した甚五郎は二人を殺した罪を擦り付けられ謀反人の扱いを受ける。
そして日が経ち、甚五郎は遠く薩摩の地で商人として生きていた。
しかし、島津征伐のち世界の王となる野望を抱いた豊臣秀吉の朝鮮出兵が始まる。
忖度・忖度・ザ・忖度。
小西行長の忖度が逆効果。
誰も得しないのに、朝鮮出兵を止められない。
からの、補給路が伸び切って義民団に寸断され、前線は食料弾薬切れで疲弊する。
という朝鮮出兵の流れ。
第二次世界大戦でもよく聞くジャパニーズ・デスロードですね。
ルソン交易の下巻に続く。
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内容は沢瀬甚五郎が信康の小姓から逃げ出して堺のお店で働き出したことをきっかけに薩摩の店、博多の店に移り住み、とうとう秀吉の朝鮮出兵に巻き込まれるところで終わる。
しかしこの話は中が細かくて内容がトロの様に重くて良く味わうと美味いと言うか、良いんだけど速読は厳しい。
でも内容的に面白いので下巻にも行くぞ! エイエイオオ!
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嫌日の生姜に似た名前の人が帯に載っているということで不吉な感じの本作。
上巻読了。
相変わらずの筆力である。
が、朝鮮征伐のあたりからしんどくなる。
というのは、飯嶋作品の特徴である個:不撓不屈の主人公(1~3名)の姿が埋没してしまっているからだろう。
下巻に望みをつなごう。
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★2018年9月16日読了『星夜航行(上)』飯嶋和一著 評価A
沢瀬甚五郎という戦国時代末期から江戸時代にかけて生きた武士を主人公に当時の武士、町人の人々、そして九州、対馬、朝鮮の現地はどのような状況だったのかを飯嶋氏らしく丁寧な時代考証を元に描いていく作品。
織田信長の命令に逆らえない実父徳川家康の命で徳川家康の息子徳川三郎信康は切腹。その部下だった石川修理亮は殉死。
その修理亮に遣えていた沢瀬甚五郎は逐電、修行僧となって追っ手の追及を振り切って逃走。大阪堺に流れ着き、商人集屋助左衛門を手伝うも、本能寺の変で織田信長が死亡し、畿内が安定しなくなった情勢を見て、九州、薩摩山川の出店へ移る。
それを追うかのように、秀吉の九州征伐の手が伸び、島津も軍門に降る。関東の北条滅亡後、豊臣秀吉の興味は朝鮮、明征服の大野望へ。
事前に平和的な解決を図ろうとするも、結局その外交策は実らず朝鮮出兵となる。
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戦国時代の末期、織田信長が本能寺の変で斃れ、豊臣秀吉が天下統一を果たし、朝鮮出兵で厳しい戦いをしている時代の歴史小説。岡崎三郎信康が徳川家康の嫡男だったころに仕えていた小姓の沢瀬甚五郎を軸としている。
三郎信康は父家康から切腹を命ぜられ、甚五郎は主を失う。それから様々なことがあり海商人として活躍をする。ところが、朝鮮出兵に巻き込まれ、日本と朝鮮の民や兵士を苦しむ現実に直面する。
時代が大きく動く中で、有名武将ではなく、少し離れた視点での歴史を語られる。そのため、民の苦しみや心情が甚五郎を通じて浮かび上がってくる。非常に長い物語であり、読むのに少し時間がかかった。しかし、これでもまだ半分。下巻ではどのような物語が待っているのだろうか。期待しながら下巻に進む。
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徳川家康の長男・徳川三郎信康の小姓 沢瀬甚五郎。彼の波乱の人生を通して語られる信長・秀吉・家康。それらはあまり語られていないイメージでそこにも引き込まれるが、最大の首根っこひっつかまれポイントは学校でも教えてくれない、司馬遼太郎も大河ドラマも避けて通った【文禄慶長の役】をこれでもか!って...いや、もう読んで!知らなきゃいけない歴史の真実は司馬史観のミッシングリンクを補完してくれる。
あと、大日本帝国参謀本部は学習してないのかよ!ってくらい秀吉軍と日本軍が同じテツ踏みまくり!児玉源太郎なにしてんねん!みたいな。
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上巻は戦国時代から秀吉の朝鮮出兵まで。物語の目線は、秀吉や家康ではなく、戦国武将でもなく、元信康に仕えた一介の男なので、時代のうねりに巻き込まれる側の歴史を知ることができます。また、朝鮮出兵の内実も知れました。俺が俺がの戦いぶりは酷いし、韓国人はみんな逃げちゃうんですね。戦線が伸びきって補給がヤバイというのはデジャヴか?下巻に向かいます。
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2019.4 冗長すぎる。最後は斜め読みではなく5段飛ばしで読了。まぁ秀吉の朝鮮出兵の酷さははじめて読みましたが、これだけくどいと半減ですね。
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飯嶋和一の「星夜航行」を読み終えました。
ハードカバーの本をベッドで読むのは難しいですね。
でも、読み進めるうち、そんなこと言ってられないくらいひきづりこまれました。
会話部分も極端に少なく、硬い文章で森鷗外の読んでいるような気がしました。
舞台は戦国、徳川家康の長男・信康の小姓として側そばに仕えた沢瀬甚五郎は
罪無くして故郷を追われ、堺、薩摩、博多、呂宋の地を転々とする。
海商人として一家を成した頃、秀吉の朝鮮・明国への無謀な侵略に否応なく巻き込まれる。
この本ではかなりの部分をさいて小西行長、加藤清正ら秀吉軍の
傍若無人な侵略も様子が丁寧に描かれている。
『この戦乱で最も苦しんでいるのは、衆生、下々の民である。この朝鮮でも、日本でも、
恐らく明国でも、最も厄災をこうむるのは、いずこによらず民草なのだ。
この秀吉が起こした戦乱によって、親兄弟を殺され、夫や妻や子をうしない、
疫病は蔓延して皆飢餓に瀕している。』
九年の歳月を費やして書かれたこの小説は飯嶋和一の代表作になったことに間違いない。
近年の作家の中では出色の作家だと思う。
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歴史は勝者の視点で語られがちであり、大河ドラマやゲームだけで歴史を知ったつもりになってはいけない。謀反を企てたとして死んだ家康の嫡男に仕えていた主人公の甚五郎から見た、歴史の勝者による愚挙の数々がこの小説からは語られる。特に第二部での朝鮮出兵のきっかけからの下りには、こんなことでいいのかと頭を抱えたくなる。ボリュームのある物語の半分が終わったばかりで、この後は一体何が語られるというのか。頑張って読もう。
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沢瀬甚五郎は徳川家を出奔する。
家康の長男信康付の小姓となるも、家康の命により主君は自害。追腹を切った同朋追善の為に出家するが、後に商人となって堺、薩摩、博多へと変転の人生を送る。しかし、天下統一を成し遂げた秀吉の政略が、甚五郎のみならず日本中の人々を、やがて朝鮮やフィリピンの人々までも飲み込んでいく。
物語は、沢瀬甚五郎を主軸としつつ朝鮮と日本の間で翻弄される対馬島主宗氏や、阿蘇大宮司家を主君と仰ぐ肥後国人衆、日本との貿易で利益をあげるポルトガル人、ひたすら神の教えを伝えようとする修道士など、多彩な人々の生き様を描いていく。
絶対的な権力を手中にし、朝鮮と明を服属•支配するという秀吉の無謀な夢が、数多の命を死と荒廃の坩堝の中に投げ込む様はまるで悪夢だ。だがふと振り返れば、私たちは同じ悪夢をウクライナの地で見せられているのかもしれない。