紙の本
魅力あふれる様々な作品たち
2022/02/25 10:46
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投稿者:kkzz - この投稿者のレビュー一覧を見る
怪奇編に続き、こちらも魅力あふれる素晴らしい作品の数々。特に好きだったのは藤田雅矢さんの「奇跡の石」。SF×感覚がもたらすイメージ喚起の力に思わず震えてしまった。
紙の本
広義のSFアンソロジー
2021/07/09 07:06
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投稿者:HR - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的にアンソロジーは、けっこう面白い作品が2つ入ってたらアタリ、という気持ちで読むのですが、その点ではこの本は大当たりでした。
収録作の大半が面白いし、あまり好みに合わないものでも何かしらの発見というかヒントのようなものが得られる作品ばかりだったように思います。
あと自分はSF読者という感じではないので、SFの定義がゆるいアンソロジーほど好ましいというのもありました。
それと編者である伴名練氏の詳細すぎる解説が素晴らしい。
個人的に特に面白かったのは「劇画・セカイ系」と「人生、信号待ち」。
前者は「劇画・オバQ」よろしく、ボーイミーツガールなセカイ系の世界観(へんな言い回しだけど)を大人の視点から眺める話。ピュアな少年期と様々なものに押しまくられる大人との隔たりを象徴するある行為のディティールがすごくて参りました。
後者は、この物語を「信号待ち」という形で描くところから来るリリシズムが素晴らしかったです。
これからも面白い作品を続々発掘?していただければ大変ありがたいものです。
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現役SF作家である伴名練氏がアンソロジストとして腕を振るっただけあり、商業流通では入手が困難なマニアックで尖った作品を厳選した、読み応えのあるアンソロジーです。中堅どころから新しめの作家が中心。鴨もこれまで存じ上げなかった作家さんの作品もあり、「へー、こんな作家さんもいるのねー」と楽しく読むことができました。円城塔作品が、さすがの貫禄ですねー。
ただですね、ひとつ気になる点もありまして。
これ、「恋愛篇」と銘打っていますけど、その必要ありますか?無理やり「恋愛」にこじつけて収録した作品が多く、わざわざ「恋愛篇」としてまとめる意義が今一つよくわからず。わかりやすく売り出して初心者の心を掴もうという、マーケティングの関係なんですかねぇ・・・(SFに恋愛要素を求める読者層って、どれぐらいいるんだろう・・・)。それだったら、「叙情篇」で全然問題ないと思うんだけどなぁ。各作品の序文で、伴名氏が「何故この作品を恋愛ものと考えるか」頑張って説明しているシーンもちらほらあり、余計気になってしまいました。
収録作品はそれなりに粒揃いですので、読んで損はありませんよー。
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伴名練さんの作品はまだ読んでいないのだけど、若いのにこれほど充実したアンソロジーを編めるなんてすごい。書き手であり、マニアックな読み手であるらしい。著者紹介も熱がこもっていて、「ぜひ短編集を」という毎度の要望につい頷いてしまう。
『G線上のアリア』(高野史緒)、『月を買った御婦人』(新城カズマ)が好きかな。どちらも歴史改変もの。私には目新しいジャンルで面白かった。
「免罪電話サーヴィスがあれほどまでに威力を発揮したのは、それがまさに人間の声によるものだったからだわ。」
中井紀夫の表題作も良かった。
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科学と論理の、先にあるもの。
それを確かに捉えたとき、ひとはやっとそれらに追い付くのかもしれない。
つくづく、ミステリとSFは似ているなぁと思う。
よく考えてみると、ミステリを読み漁っていたらいつの間にかSFを手に取っていたり、その逆もまた何度もある。主に森博嗣と萩尾望都を軸足として。
〇〇モノ、って括りがあったりとか、いくつかの定型のなかで多様なバリエーションを見せようとしたりだとか、そういう部分が同じ方向を向いてるのかなと思うんだけれど、やっぱり何より物語そのものよりも作家がきちんと論理に支配されている、というのが大きいんだろうなぁ。
きちんと支配されている、ってなんだかマイナスイメージだけど。
そうそう、ミステリ作家とSF作家に共通して、作家自身がそのジャンルの熱心な読者である印象。
恋愛小説を読んだことのない人間が恋愛小説を書くことは出来ても、
SF、ミステリを読んだことのない人間がそれらを書くことは出来ない。
って、これ誰かの名言じゃなかった? 違う?(笑
作家もそうだし、編集者もそうなんだろうなぁ。だからこそ伝説の編集者、みたいな存在も出てくるわけだ。
あーさてさて!
臨界点、と銘打たれているだけあって、もちろん好みはあるけれど粒揃いのアンソロジーでした。
それぞれの短編に、詳細な著者紹介と他短編の紹介が付いてるのもほんとに、心尽くし。入門書としても良いし、玄人好みでもあります。中間くらいのわたしは勿論楽しんで読みました。
『アトラクタ』とか好み。百合SFにベテランが居るとは…
短編の成り立ち的には『ムーンシャイン』がカッコ良すぎる…いや内容も良いけど(笑 こういうエピソード付いてるとより深みに嵌りやすくて良いですよね。
ちょっと敬遠してたけど円城塔読んでみます。
科学と論理の、先にあるもの。
それを確かに捉えたとき、ひとはやっとそれらに追い付くのかもしれない。
その頃には科学はもっと先へ上へ、翼を拡げているのだろうけど。
ぁあ、そうね。
このひとたちは、科学に恋をしてるんだな。
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日本SFの恋愛短編小説と言えば、私にとっては梶尾真治の「美亜へ贈る真珠」がNo.1である。恋愛だけじゃなく時間SFとしても完成されたものであり、今回のアンソロジーも当然それに近いものと期待していた。しかし、私の期待はものの見事に崩れ去った。恋愛でもなく、SFでもなかったものが半分以上。次の短編は素晴らしい作品であって欲しいの連続で、結局最後の作品に辿り着いてしまった。
その様な作品群の中で唯一心に沁みた作品は、小田雅久仁の「人生、信号待ち」。読み終わった後に、胸が熱くジーンと鳴った。そう、この読書感がSF恋愛小説に求めていたものなのだ。プロフィールに宮城県出身と書かれてあった。同郷ということで嬉しい。
一方、全く理解不能だった作品は、扇智史の「アトラクタの奏でる音楽」。所謂、百合SF作家、百合作品との事だが、百合に偏見は全く無いのだが、最初から全く頭に入ってこなかった。
この本と同時に「怪奇篇」も発売されて既に入手しているが、もう少し時間をおいてから集中して読みたいと思う。
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2020-09-03 「日本SFの臨界点[恋愛篇]」読了
当たり前といえば当たり前なのだが、怪奇篇より美しいものがめだった。例えば「ムーンシャイン」何が書いてあるのか半分以上解らないけれど、美しい。
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恋愛篇と言ってもコテコテのラブストーリーみたいなものはなく、基本はSF。ロマンス要素やほっこり要素があるSF、というものが集められてる。高野史緒と小田雅久仁が好きだった。(アンソロジーを読む時の一番の収穫は、好きな作家を発見すること)
「怪奇篇」より、だいぶ良かったです。
中井紀夫「死んだ恋人からの手紙」★★★★☆
- はるか遠く離れた星にいる主人公が地球にいる恋人に手紙を送る。亜空間通信は送信した順で到着するのは限らない、という設定が面白い。また高次元な観点で見れば、生死も一時の状態で、繰り返しているのではないかという考え方も良い。
藤田雅矢「奇跡の石」★★★★☆
- 超能力を持つ人が多く住むという東欧のロベリア(という架空の国)へ訪れた主人公が出会った姉妹の話。音や味など五感を結晶化させることができる能力。美しい雰囲気が漂うSF (恋愛物語ではない)
和田毅「生まれくる者、死にゆく者」★★☆☆☆
- ホッコリ系。産まれかけの子と死にゆく祖父。
大樹連司「劇画・セカイ系」★☆☆☆☆
- ラノベっぽいラブコメSF。
高野史緒「G線上のアリア」★★★★☆
- 高野史緒作品はいくつか呼んだ短篇はあまりハマらなかったものの『カラマーゾフの妹』で食らった。こちらも歴史改変テイストで、ある意味既存の題材(既存の小説や史実)にフィクションや創作を織り込むのが得意な作家のようだ。
- この物語の世界では12世紀ごろから電話が発明されている。古いタイプの電話機ではあるものの、それはインターネットのように世界をネットワークで繋げていて、更に電気工学なんかもあり、なんなら主人公の一人は元ハッカーだ。史実に登場する人物の名前も多数出て来て面白い。
扇智史「アトラクタの奏でる音楽」
- 百合テイストは得意じゃないためスキップ。
小田雅久仁「人生、信号待ち」★★★★★
- 面白い。小田雅久仁作品を読むのは短篇3本目くらいだけど全て面白い。他2本は怪奇ホラーだったけど、こんなロマンチック系も書けるとは。恋愛色は強すぎずで程よい。
- 2つの横断歩道に挟まれた高速道路の高架下で赤信号に挟まれた男女。ラブコメでも始まるのかという雰囲気の中、なぜか赤信号が異常に長いことに気づく。時間の流れが急激に加速し、赤信号のうちに数十年の人生が繰り広げられ、最後に 無事横断歩道を渡り、(恐らく)人生を閉じる。
円城塔「ムーンシャイン」★★★☆☆
- 数字に対する共感覚を持っている少女の話(だということも伴名練の解説があったからわかった)
- 円城塔の作品は理解できないことが多いので低評価にしがちだが、それは自分の読解力や想像力がついて行けてないからという自覚もある。それでも読み飛ばさず頑張ってみたくなる。
新城カズマ「月を買ったご婦人」★★★★☆
- 19世紀、令嬢に5人の男性が求婚する、という竹取物語の展開。「G線上のアリア」同様、時代に似つかわしくない技術 (ロケット開発) が登場するタイプ。
- ラノベ出身なだけあって、文章は読みやすい。
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藤田雅矢さんの不思議な石の物語が良かった
なかなかファンタジーだ。恋愛ものを感じさせる表紙に腰が引けるが、中身はバラエティに飛んでおり楽しめる。半分ほどでギブアップしたけれど、このシリーズなかなか良いな。
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短編アンソロジーは、いろんな作家の作品に触れられて、お得感があります。
いずれも面白く読ませてもらいましたが、特に気に入ったのは、藤田雅矢「奇跡の石」と小田雅久仁「人生、信号待ち」です。
難解で理解できてないんだけど、なぜか面白い、というSFの懐の深さを感じました。
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やっと読了。円城塔作品は正直訳が分からなかったのでまた落ち着いてトライしたい……。伴名練氏が作中解説と編集後記で度々触れているように、人間同士の男女の恋愛に偏っている点は気になったものの、「死んだ恋人からの手紙」「人生、信号待ち」「月を買った御婦人」がかなり好みだった。全体的に玄人向けの作品が多いという感覚だが、SF初心者に向けたガイドがついているのはありがたい。
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円城塔「ムーンシャイン」で止まってしまったがようやく読了。ムーンシャインは難解…というか文字は読んだが理解できなかった…のでちょっと別枠で。 ただどの短編もとても良かった。特に印象的なのは「劇画・セカイ系」、いやこれは刺さる人に刺さるでしょ。世界を救うために消えた幼馴染みが時を超えて帰ってくる。「青春のアフター」に近くも別解。 「生まれくる者、死にゆく者」、「人生、信号待ち」も印象的。 あとは百合SFの「アトラクタの奏でる音楽」。世界中の空間ログにタグづけされている世界?での研究。関係性…
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とにかく編者の伴名練氏の熱量がすごい。
個々の作品についている解説も、編集後記の中にあるSF紹介も楽しくて、読んでみたいものがさらに増えてしまった。
・中井紀夫「死んだ恋人からの手紙」
時間と空間の概念を俯瞰した宇宙人の存在、というのは解説にもある通り「あなたの人生の物語(好き)」を思い起こさせる。
せつなくてかわいくてよい話だった
・藤田雅矢「奇跡の石」
・和田毅「生まれくる者、死にゆく者」
・大樹連司「劇画・セカイ系」
「劇画・オバQ」のライトノベル版。「最終兵器彼女」のイメージで読んでいた。よかった。
・高野史緒「G線上のアリア」
中世ヨーロッパに電信・電話がある世界。イマイチ。最後のオチを言いたいだけだったんじゃないか
・扇智史「アトラクタの奏でる音楽」
よい百合SF。
・小田雅久仁「人生、信号待ち」
うーん、どうだろう。清水義範にこういうのあった、それよりちょっとなんか気持ち悪いなぁという感想。
・円城塔「ムーンシャイン」
これはいかにもSF、雰囲気でしか読めないけど楽しい。解説がありがたい。
・新城カズマ「月を買った御婦人」
伴名練氏自身の作品は読んだことがないなぁと思っていたが、「アステリズムに花束を」で読んでいた。
あれもよかった、他のも探して読もう。
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9つの短編が収録されている。難解な作品は少なく、どれも楽しく読めた。「恋愛篇」とあるが、恋愛要素は少ない。
『死んだ恋人からの手紙』は異空間の仕様で手紙の時系列がバラバラという設定が面白い。戦争に出ている恋人からの手紙によって、異空間からの司令が時系列がムチャクチャなのでよくわからない行動を起こしてしまっていたり、意思疎通が測れない異星人と不条理な戦争を起こしてしまったりと…。
『人生、信号待ち』は高速道路の下で信号待ちをしている間に、家庭が築かれたり子供ができたりと語り手の気づかない間に時間がぱっと進む不思議な世界観。
"彼はぎょっとして立ち尽くした。「ああ、そやったな…」"
『アトラクタの奏でる音楽』は百合。