紙の本
ミラーニューロンの性質だけでなく、社会的な意義についても説明しています。
2017/04/28 21:32
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミラーニューロンに関する実験結果についての詳細は省かれていますが、
その分だけ、科学にあまり馴染みのない人にも読みやすくなっています。
本書の後半では、ミラーニューロンが社会にどのように関わっているのかを記しているので、
前半があまり理解できない人は、後半を先に読んだ方がいいかもしれません。
紙の本
ミラーニューロン
2017/10/17 01:32
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投稿者:匿名 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳科学に興味があって他にもいろいろ読んだのですが、自分は他の本の方が向いていると感じました。他にも読んでいたせいか、あまり引き込まれませんでした。
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≪内容≫
共感のための神経細胞であるミラーニューロン。その発見までのプロセスとそれらがもたらす地平について、ミラーニューロン研究の第一人者であるマルコ・イアコボーニ氏が解説。
≪感想≫
脳科学の最大の発見であるとされる「ミラーニューロン」とはいったいどのような細胞なのか。端的に言うと、他者の行動を自分の脳内で鏡のように表象する働きを持つらしい。前半の部分では主にこの細胞の発見・特定に至るまでを、その分野を牽引し続けてきたイアコボーニ氏本人が詳細に説明する。もちろん専門的な話にはなるので小難しい用語や理解しにくい部分も多くあるが、徐々に煮詰まっていく理論構築の鮮やかなプロセスが小気味良く、ワクワクしながら読めた。
そして格段に面白くなるのが、中盤から後半にかけてのミラーニューロンによってもたらされる仮説と検証の数々。自閉症の解明・治療、表裏一体である自己と他者、暴力とメディアの相関関係、薬物やタバコの常習・再発、効果的な広告、我々の自由意志と間主観性―それらのテーマについての理解を深め、さらには解答をも与えてくれる可能性をミラーニューロンは十分に秘めている。
まだ始まったばかりのミラーニューロン研究がどう発展し、どう使われ、何を解決していくのか。科学の最先端に触れ、その発見が社会に働きかけていく様をリアルタイムで追うことができる楽しさこそが本書の魅力ではないかと思う。
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自分がある行動をするときと,他者が同じ行動をしているのを観察するときのどちらの場合にも活動するという不思議な神経細胞が,10年以上前にサルの脳から発見されました。この不思議な細胞はどうやら,私たちの脳にもあるようです。本書はこの不思議な細胞「ミラーニューロン」について一般の人々にも分かりやすいように解説した本です。
本書はありふれた朝の一場面の描写から始まります。洗面台の前に立ち,鏡に映った自分を見る私。家族の顔つきからその感情を読み取る私。研究室に入って目にした同僚の様子から彼が何をしようとしているのかを瞬時に悟る私。「私」は一体どうして,「他者」のことをさも当たり前のように理解することが出来るのか。本書の著者は,これらを可能にしている神経メカニズムこそが,ミラーニューロンにあると指摘します。この日常の引用に続いて,著者はミラーニューロンの発見の顛末を語り,それが私たち人間にも備わっているという仮説の証拠を提示し,それらが自分が他者を「シミュレート」することに関与しているのではないかという説を展開していきます。それだけではありません。この細胞は言語をつかさどる能力や他者に共感する能力ともかかわっており,さらには自閉症の発症メカニズムや私たちの経済活動,政治的態度にまで影響を与えているのではないかと指摘します。正直なところ,これだけの情報をよく一冊に本にまとめることが出来たものだと感心せずにはいられません。けれど,本書は私たちの持つ「人間観」に根底から揺さぶりをかける何かを持っているのではないか,と考えさせられてしまう説得性を持っています。その意味では,最後の11章に書かれている哲学的論考は,私としては最も読み応えのあるもののように感じました。
とはいえ,本書を読んでいるとやはりいくつかの疑問が湧いてきます。ミラーニューロンが他者の行動と自分の行動とを同じようにコードするということは分かりますが,では,人間の脳の中では実際にどのような役割を持っているのか。哲学者のいう「間主観性」の座は本当にこの細胞たちにあるのか。そも,たった一握りの神経細胞が私たちの社会活動全般の基礎にあるということが本当にありうるのか。私の直感では,少なくとも「共感」のような複雑な心的過程では,ミラーニューロンのような個々の神経細胞が中核的役割を果たすとは思えません。そしてこれはクリス・フリスの本を読んでも感じたことですが,自己と他者を区別せずに処理するのが脳の機能なのだとしたら,「私」という意識を規定するのは一体何なのか。それは,本書が提案する「スーパーミラーニューロン」などという機構で本当に説明可能なのか。本書の解説を書いている森山和道氏は,本書が一研究者による「現時点での考え方の提案書」であると記しています。本署に限らず,私たちは科学者のものする文章を読むときには,常にこのことを肝に銘じておくべきでしょう。
この細胞に関する研究は近年目覚ましいものがありますが,まだまだ十数年の歴史しかありません。最近ではようやっと「心の理論」との関連が研究され始めたようです。も��かすると来年の今頃には本書の主張が覆されているかもしれない。そう考えると,この先の展開がとても楽しみに思えてきました。塩原通緒訳。
(2011年8月入手・11月読了)
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人間は、人間が思っているほど人間的ではない。もっと機械的なのだ。でも、その自動的な仕組みこそが人間を人間らしくしている鍵だとしたら。
人の脳には、他人の行動を見るだけで自分が行動しているときと同じように発火する神経細胞がある。そのミラーニューロンについてのワクワクドキドキ。
ある程度知ってはいたけど、こりゃ面白い。
「相手の立場になって考える」ということわざがあるけれど、それは実際にすでに脳内で起きている(より正確には、考えるより速く感じている)。スポーツの試合を見て思わず体が動いたり、映画を見て感情移入しすぎたりすることをイメージすればよい。あれは特別なことではなくて、常日頃我々の中で起きていること。ミラーニューロン。
この仕組みが高度に発達しているおかげで、人類は「意図せずに」相手の行動を脳内で再現(シミュレーション)し、そこから相手の意図を逆算して理解するようになり、人間関係=社会および言語コミュニケーションが発達したという。
なんて面白い逆説。
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ミラーニューロンとは鏡のように、他社の行動を脳内で表象する働きを担っている神経細胞の一種である。 まだ十分にこの細胞の脳内での働きが解明されていないとのこと。まだ、学者以外の一般人にとって具体的なメリットを提供できるレベルではないようなので、研究が進むことを祈ります。
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ミラーニューロンの発見から様々な実験結果をまとめ、そしてどのようにそれが私たちの生活と結びついているのかを説いた本。
ミラーニューロンとは脳に存在する細胞で、人を精神的、感情的に理解するためにとーっても重要な役割を果たしています。この細胞の存在をクラスで知った直後には、私のお気に入りの細胞になっていました(笑)実験もとてもおもしろいものばかりで、読んでてとても勉強になりました。専攻を変えようかと一瞬考えた程!
(ただ、心理学を英語で勉強しているせいか、日本語での専門用語が全くわからなかった‥。特に脳の部位の名前‥トホホ。)
これから先、もっともっと注目される細胞だと思う!
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人が物を掴む動作を見ていた猿の脳が、自分が物を掴むときと同様の発火を示したという。つまり他者の動作を目撃してその動きに「同期」するような、脳の特定の部位があるらしい。これがミラーニューロンと呼ばれる。
しかもこれは単に「物まね」活動するだけではなく、他者の表情を読み取ってその心情と同調したり、人間の場合だともっと複雑に、抽象的な記号等を介しても他者と連携しようとする働きを示すらしい。
確かに、この本に書かれたことがほぼ正しいとするならば、これは凄い発見である。器質的に「他者とつながろうとする細胞」があるということは、これまでの西洋近代哲学史をも一部無効化してしまいかねない。
そういえば、教室や職場で、誰かがセキをするとそれが数名に伝播していくことがある。この本に書かれていることではないが、これもミラーリング作用かもしれない。
現実に、私たちは日常、周囲にいる他者たちの感情に影響されていることは確かだ。西洋近代哲学が考えてきたようには、「個人の精神」なるものは独立していない。それは絶え間なく他者たちとの相互作用のもとにおいてあるものだ。
この考え方はまさしく、木村敏さんの「あいだ」の思想と合致するし、レヴィナスがあんなにこだわった「他者の顔」というのも、ミラーニューロンがその作用を自己へと引き受ける、そのシステムを予言していたのかもしれない。
ミラーニューロンを研究した科学者チームの中にメルロ=ポンティ・フリークが一人いて、メルロの思想を咀嚼しながら彼らが研究を進めたという逸話も、胸が熱くなる。
このミラーニューロンの発見を受ければ、フッサールもハイデッガーも、「他者」に関する理論を書き換えなければならなくなってしまう。とりわけ、「他者への跳躍」は自己にとってはなはだ突飛なものだ、などと考えてきた独我論者たちは葬り去られてしまうだろう。なにしろ、独我論者たちが「自己」に閉じこもってぶつぶつつぶやいているのに対し、脳はとっくのまえに他者とのミラーリング作用を活動させてしまっているのだから。
この本に書いてあるように、自閉症がミラーニューロンシステムの何らかの故障だと考えるのも、もしかしたら妥当かもしれない。現に「模倣」活動を取り入れた治療活動がすすめられつつあるという。
この本は私にとって非常に画期的だった。今までずっと考えてきた「なぜ、音楽作品のなかではある要素が”模倣””反復”されなければならないんだろう」という疑問は、ミラーニューロンが示唆する自己-他者間の模倣-反復作用が音楽に反映されたものかもしれない、という新たな仮説に到達する。
ほかにも、音楽など芸術作品にとって、ミラーニューロンがどの程度の意味を持つのか、素人が性急に断定することはできないが、やがてさらなる研究が進んでいくことだろう。
まだ日本語で読める文献は少なそうだが、もうちょっとミラーニューロンについてしらべてみなくてはならない。この書物は私に、それほどの衝撃と切迫感を与えたわけだ。
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「生物学におけるDNAの発見に匹敵する」と称されるミラーニューロンは、サルで発見された、他者の行動を見たときにも自分が行動しているかのような反応を示す脳神経細胞。
この細胞はヒトにおいて、他者が感じることへの共感能力や自己意識形成といった、じつに重要な側面を制御しているという。
ミラーニューロン研究の第一人者自らが、驚くべき脳撮像実験などの詳細を紹介しつつ、その意義を解説する。
新たに発見をされたミラーニューロンについて実験や検証結果、仮説などが順序立てて書かれている内容でした。
自分自身が行動を起こしていても、他者が行動をしていてそれを自身が見ている時でも同じ神経細胞が活性化しているというもの。
ミラーニューロンがあるからこそ、相手の感情を読み取り共感する手助けをしている。
人格形成のひとつである模倣にもミラーニューロンは深く関わっていることなど、人間には無くてはならない要素の一つであることが書かれています。
普段当たり前の様に誰かの話に耳を傾けて、哀しい話ならば哀しい気持ちになって楽しい話なら互いに笑うといった行動をしているが、その一連のコードには経験則が含まれていたりすると考えると少し感慨深い気持ちになる。
今まで経験してきたことも多少なりとも今後の事象の対応としてコードされているのかと考えてしまう。
人と人が本当の所では何を考えているのか、何を想っているのか分からないのは変わらないけれど、行動から推測が出来る様に、人の気持ちを汲む事も人にはできる。自分以外の誰かの気持ちを受け止める為に重要な働きをしているミラーニューロン、制御をするスーパーミラーニューロン。
本書の中にある、
関連研究によってもはや明らかになっているように、模倣は私たちを変えることができる。私たちは模倣によって緩慢にもなれば迅速にもなり、賢くもなれば愚かにもなり、数学が得意にもなれば不得意にもなる。役立つ人間にもなれば、無礼にも丁寧にもなる。くどくなったり、憎たらしくなったり、攻撃的になったり、協力的になったり、負けず嫌いになったり、従順になったり、反抗的になったり、保守的になったり、忘れっぽくなったり、注意深くなったり、無謀になったり、細やかになったり、いいかげんになったりする。
この文章を読むとわかる様に、人は意識によってどうにでも変われる可能性を見る事が出来る。精神論の話になってしまうけれど、向上心はとても大切だと感じました。
この様な人体の新発見を分かりやすく読める本だと思います。
今後研究が進んで自閉症などの新たな治療法や新たな人間の在り方が発見されることを強く願っています。
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ミラーニューロンについて、読者の興味が湧くようにわかりやすい喩えや、冗談を交えながら解説している。わかりやすいので入門書として読むのに適しており、一方で入門書と呼ぶには勿体ないほど濃厚な内容となっている。読むことであらゆるものに対する見方が変わる一冊。
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【私の中のあなたの素】1990年代後半から神経科学の世界で脚光を始めたミラーニューロン。他人の行動を観察したときに活動するという「鏡」のような役割を持つこのニューロンの潜在的可能性、そしてその衝撃に迫った作品です。著者は、イタリア生まれの神経学者であり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校において、自らもミラーニューロンの研究をリードし続けているマルコ・イアコボーニ。訳者は、科学関係の翻訳を多く手がけている塩原通緒。
少しずつその認識は広まってきているのだとは思いますが、改めてミラーニューロンの持つ意義に驚かされた一冊。単に知的好奇心を満たしてくれるのみならず、哲学や政治、さらにはマーケティングにまで影響を及ぼす可能性のあるこの存在を知ることにより、ものの見方までもが何となく修正を迫られるような衝撃を受けました。ミラーニューロンを軸として物事を語ることにどこまでリーチがあるかはわかりませんが、注目の神経科学の分野の一端がのぞける良作だと思います。
科学の本と聞くと、門外漢は受け付けないような印象を受けますが、数々の具体的な実験や身近な出来事を例としながら語られるので、まったく抵抗なくミラーニューロンの世界に足を踏み入れることができたのも本書の大きな魅力の1つです。また、科学者が普段何を考えているのか、そして実験を行うに当たってクリアする障壁はなんなのか等もわかり、今まで知ることのなかった世界についても教えてくれた作品でした。
〜人間は別の人間と深くつながりあうように進化してきた。この事実に気づけば、私たちはさらに密接になれるし、また、そうしなくてはならないのである。〜
科学と哲学が改めて密接にリンクしていると感じた☆5つ
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他人のある動作を目にしたとき、自分がその動作を行った時かのように活性化するニューロンの話。脳について、心理学的な証明が必要になる場合、個々人の主観っていう部分がどうしても少なからず入ってしまうから、いくら条件設定をしっかり整えても、ある一定の胡散臭さが混ざってしまうと思う。素晴らしい発見には違いないけど、説得力っていう点ではイマイチピンとこなかったのも確か。面白い話題ではありました。
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目からウロコの「ミラーニューロン」仮説。誠実な科学者として、つねに慎重な実証的データをもとに話をしている様子は、読めば読むほど、ものすごくよく分かる。いろんな対照実験も本当におもしろく。さすがだと思いました。しかし、それを「説」として編み上げる/結論づけるところで、すいません、ときどき、私にとっては反骨とユーモアが足りない気がして。
まるで暗闇をところどころ照らす明かりを頼りに、地図を描いているよう。手探りながらも厳密に。さすが科学者、立派。一方で話のトピックが大きくなり、価値判断が入ってくると……
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他者に共感する気持ちはどこから来るのか?
他者の行動を先読みできるのはなぜか?
そもそもサルと我々の違いはなにか、
[DNAの発見に相当する]の謳い文句に偽りなしのモノマネ細胞について安っぽいハウツー本では得られない知識の部分が濃い!サイコウ!正直なところ脳科学の本て微妙なのが多いなかでこれはほんとうにおもしろい!
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ミラーニューロンにまつわる話題がてんこ盛り。てんこ盛り過ぎて消化不良である。
模倣であるとか、他人の行動・意図の直感的な理解が、人のこころの働きを理解するにあたって大事なのは腹に落ちる。われわれは日常生活の会話などの中で互いに模倣しあったり、模倣のプロセスによって相手を理解しているわけだ。しかし、それがミラーニューロンみたいに局在的な機能に還元されると言われると、なんだか煙に巻かれたような気分。スーパーミラーニューロンだなんて登場すると余計にだ。これを読む前に、ミラーニューロン仮説に懐疑的な人の書いた本を読んだせいもあるだろうけれど。
他人のこころを理解する仕組みとして「理論説」は不自然だと著者は言う。確かに、(わたしが直感的に思うに)直感的に理屈抜きで他人の意図などを察知できている気はする。しかし、それがミラーニューロンの働きとしても、なぜ見聞きした他人の行動の外観を、己の行動・意図と結び付けられるかは説明されていない。そこには「理論説」ほどしゃちほこばった感じでなくても、おそらく発達の過程での推論めいたプロセスの存在は外せないのではないか?