紙の本
壁を築いて生きることはできない
2021/12/25 07:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
16年にわたりドイツ・EUを率いてきた宰相メルケルの評伝。東ドイツ出身で物理学者であった彼女がベルリンの壁崩壊後どの様に考え行動し、最高権力者に就いたか。生い立ちから書かれている。在任期間中大きなスキャンダルにも合わず最後まで職責を全うした責任感と思慮深さ。癖のある外国指導者との交渉など興味深い記述が多い。
退任直前に生じた新型コロナへの対応も書かれており評伝として評価が高いのでは。
読み終わってメルケルの生き方から自伝は書かないと思った。その点でも読む価値があると思う。政治家として誰のために仕事をするのか、日本の政治家には是非読んでもらいたい。
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メルケルという稀有な存在。
著者の洞察力、インタビュー力、文章力が秀逸。
翻訳者の言葉のチョイスが素晴らしかった。
読後、一本の大河ドラマを見終わったような
そんな気持ちになった。
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【彼女こそ「本物の政治家」だ! 今秋、引退。決定的評伝】「東独出身」「女性」「理系」がなぜ頂点へ? トランプ、プーチンと渡り合い、コロナに勝った。彼女の武器は「倫理」「科学」だ。
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民主主義を守るためのエッセンスが詰まっています。メルケルの様な政治家が今後も誕生して世界をリードしていって欲しいと心から願う気持ちになりました。産まれた時から自由が当たり前だった戦後生まれの日本人には是非読んでもらいたいです。
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著者をあまり意識せずに読み始めたので、誰目線?って感じが強かった。
今でも存命の方の、伝記的要素の強い本なので、どうしてもフラットな書き方はできないのは分かりつつも、賞賛する方の書いた本と言う雰囲気がダダ漏れだったのはちょっと残念。
ただ、日本人が、日本語で、遠いヨーロッパの首相を務めた女性のあゆみを知ることに於いては、決して内容的に劣るものでは無い事も確かです。
この本を日本に出版し、彼女について私たちが知る事はとても有意義な事でしょう。
彼女が引退し、ウクライナとの戦争が始まったのは偶然では無いと思います。彼女の力で今までくすぶりつつも戦争にまで発展しなかったんだと、この本を読み、強く思いました。
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電気を読むに相応しくないと思いつつも、深く感動し、胸が熱くなる想いで読み終える。彼女が4期歩んだドイツへの想い、東ドイツ出身なればこそ、牧師の娘、科学者という幾つかの運命的なモチーフを痛感する。2021末で表舞台から去った彼女は最後まで謙虚の姿勢を崩さなかった。良し悪しの評価は無責任な後世へ委ねるとして、個人的には世界最高の女性指導者にリストアップされると思える。
伍した中でもプーチン、習近平は権威主義の権化、とても並では太刀打ちできないと思うし、一旦退いたとは言えトランプ主義の残影は残って何時牙をむくやもしれぬ。
最後の時間で「やっと」訪れたアウシュヴィッツ収容所、彼女の想いの片鱗に触れるだけでも涙が出た。
フランスと組する想いの欧州合衆国構想は複雑な世界政争の一こまを見るようである・・マクロンとの頬を寄せ合う姿が興味深い。
最後に彼女が去る決定打となった「荒れて行くドイツ政界・・極右政党の台頭」のシーンはひりつく想いだった。
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TVで見る節目節目の発言に好感を持っていたけど、深く知らないうちに引退されてしまったので後れ馳せながら読んだ本書。明晰な頭脳と考え抜かれた言葉遣い。自分の仕事の局面でも、彼女の姿勢に倣って取り組むと、不思議と落ち着いて考えられることに気付きました。本当に素敵な方です❗
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恥ずかしながら雲の上の存在なのに、シンパシーを勝手に感じでいました。
この本を読んで絶頂期での引退、倹約、レームダックにならないなど、自分の哲学と相通ずるものがあることを確認できました。
改めて読んでよかったと思います。
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2005年から16年の長きに渡り、ドイツ初の女性首相として活躍し、自国の欧州盟主国としての地位を確固たるものにしたアンゲラ・メルケル氏の生い立ちや素顔に迫るとともに、様々な危機を乗り越えて多くの偉業を成し遂げた政治手腕の秘密を解き明かした一冊。
著者は、幼少期〜青年期を東ドイツの監視社会の中で過ごし、厳格な両親に育てられながらも共産主義イデオロギーに染まることがなかったメルケルが、ベルリンの壁崩壊を機に優秀な物理学者として地位を捨てて政界に転身し、巨大政党CDUで頭角を表し、要職を歴任後に首相まで登り詰め、国際政治の舞台で活躍した背景には、常に慎重でファクトや論理を重視する姿勢、政治家同士の権力ゲームから距離を置く実直で飾らない性格、男性中心の社会をしたたかに生き延びる並外れた自制心、さらにはどんな難局や難敵であっても諦めない、粘り強い対話力や交渉力があったと分析する。
ブッシュやオバマ、マクロンなど同盟国首脳とのやり取りや、プーチン、トランプ、習近平といった難しい相手に対峙する姿勢からは、民主主義の砦、あるいは他国間連携の要としての責任感や使命感が伝わってくるが、それはまた、ナチスという不幸な歴史から目を背けず、2度と同じ過ちを繰り返さないという強い決意の表れでもある。金融危機対応やシリア難民受入れからコロナ危機まで、ますます分断が進む世界で多くの困難に直面し、時に賛否両論を生みつつも数々の英断によって世界をより良い方向に導いたメルケル氏の実像がとてもよく理解できる良書。
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トランプや習近平、そしてプーチンという、権威主義的で信頼の置けない世界のリーダー達と堂々と正面から渡り合ったメルケルは、やはり歴史に残る偉大な政治家だったと改めて感じる。
女性なのに、だからという言葉が意味を成さず、圧倒的な人間力があり、そしてもちろん多少なりとも評価が分かれるところもあるが、人格者なのであろう。
バイデン、マクロンの言葉には、彼女のような重みは感じられない。
そして、メルケルの引退と同時にウクライナへの侵攻を仕掛けたプーチン。
メルケルが抜けた西側諸国に、プーチンと渡り合える人物は果たしているのだろうか?
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読みごたえのある一冊でした。
2021年首相退任までの様子が書かれているので、現在の世界(EU)情勢がよく分かった。
イギリスのEU離脱に見られるように、決して一枚岩ではないEUの中で重要なポジションにいるのがドイツの首相。
メルケルさんは、35歳まで東ドイツで暮らした女性の物理学博士という西側諸国の政治家としては稀有な存在です。
謙虚で質素、正確で根拠(エビデンス)に基づいた意思決定を信条とする。
どんな時でも、どんな相手でも、地道に辛抱強く合意点を見つけ出し問題解決に取り組んできた。
「日本の女性政治家」といえば、市川房枝さん、土井たか子さん、「日本のお母さん」といえば、京塚昌子さんが思い浮かびます。
メルケルさんは政治家なのですが、「ドイツの肝っ玉かあさん」というイメージもどこかに感じます。
これほど存在感と信頼感があり、親近感すら感じる政治家は他にはいません。
メルケルさんは、戦争に敗れロシアに支配された東ドイツという国で人生の半分を過ごしている。
ベルリンの壁が崩壊の時、そこに35歳のメルケルさんもいた。
壊された壁の向こうは、自由度も経済力も科学技術力も別世界だった。
東ドイツはどうなるのだろうと心配になったが、東西統一だと聞いてびっくりした。
ベルリンの壁が崩壊の時、東ドイツに派遣されていたKGBの諜報活動局のプーチンもいて、(おそらく)苦々しい思いを抱いていた。
今またロシアがウクライナ侵攻を再開しているが、2014年のロシアのウクライナ侵攻に対して粘り強く交渉し停戦に尽力したのがメルケルさんです。
メルケルさんはロシア語が話せる。プーチンはドイツ語が話せる。両者は通訳なしに会話ができる。
メルケルさんは長い間ロシアの監視社会の中で生きてきたので、ロシアの思想も理解しておりプーチンと最善の対応ができる人物として頼られもしたのだ。
ロシアのエネルギー、中国の市場、アメリカとは安全保障と、この3国と特に密接な関係にあるのがドイツという国だ。
アメリカとは、ブッシュ、オバマ時代は友好関係を築いてきたが、2017年にトランプが出現しアメリカが信頼できるパートナーではなくなった。
ドイツにとって最重要3国のトップが、プーチン、習近平、トランプになってしまったのだ。
実は2016年メルケルは首相の座を降りようとしていたが、世界各地での権威主義の台頭がそれを許さなかった。
ISテロ対策と難民受け入れがあり、イギリスのEU離脱が決まり、トランプが西側の秩序を壊しまくる。
プーチンは西側諸国の分断を大いに喜ぶ。習近平は様子を見て弱いところをじわじわ攻めてくる。
このままではプーチン、トランプ、習近平に好き勝手にやられる。世界の秩序を守るためにリーダーの役目を続けるしかない。
メルケルさんは、4期目は特に環境問題対策とデジタル技術の向上に注力するつもりだった。
AIと量子コンピュータの勉強もしていた。中国の技術力に脅威を感じていたのだ。
しかし未知のウイルスのパンデミックにより、コロナ危機管理マネージャーに急遽変身せざるを得なくなる。
コロナ��応に関しては、ドイツ人はメルケルの発する言葉を信じた。
メルケルに嘘をつかれたことは一度もなかったからだ。
15年間信頼を積み重ねてきた首相が、自分の言葉で自分の本心で語っているのが伝わって来たのだ。
日本やアメリカのように、公式な情報が信じられないのとは違っていた。
「国家レベルの危機にあっては、首相はそこにいる必要があって、責任者として指揮する姿を人々に見せなくてはならない。」
という当たり前のことをきちんと実践し、頻繁に国民に訴えかけた。
2005年首相になった当時は、東ヨーロッパやロシアとの友好関係維持やドイツ国内の問題改善に注力していたようだが、
2010ギリシャ財政危機からは、ドイツの首相というよりもヨーロッパの代表のようになる。
「自国のことだけを考えていればいいわけではないのです。我々はみな、この世界の一員なのです。」と言わざるを得ない世の中になってしまった。
メルケルさんの考え方や演説での発言内容は、当たり前のことのように思えるのだが、それが絶賛されるような社会は危険な兆候なのだともいえそうだ。
4期目の任期の終盤にきて、「レガシーは何か。」という質問には、そんなことを考えているヒマはないと答えていた。
自分を振り返る(=おおむね自分への言い分けで終わる)ことがじれったく我慢ならなかったようだ。
メルケルさんは、サッカーが大好きらしい。
世界中が平和の中で、純粋にワールドカップサッカーが楽しめる日が来て欲しいものだ。
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私達はメルケルの多くを知りません。
確かに、ドイツという欧州で重要な国の一つである以上、日本にいてもメディアを通じて触れる機会は多いです。
しかしそれはあくまで一政治家としてのメルケルです。ドイツ関連の本でメルケルに触れる記述をみても、その人物像に触れる記載はほとんどありません。メルケルは多くの自己顕示欲の強い、派手な各国のトップと異なり、プライベートを徹底して明かさない人でした。
そのためメルケルについて多くを知る、ということは困難なことなのでした。
本書はそんなメルケルについて多くを知ることができます。
牧師の娘として生まれ、冷戦下の東ドイツで育ったメルケル
抑圧された生活の中で自分を巧みに守りながら勉学に励む。名門ライプツィヒ大学(カール•マルクス 大学)へ入学。物理学を選んだ理由の一つが「東ドイツでも基礎的な算術と自然の法則を止めることはできなかったから」。
23歳で結婚し現在まで名乗ることになるメルケルとなるも3年で離婚。ちなみに直後しばらくは荒廃地域のアパートの空き部屋に無断で住んでいたとのこと。
ベルリンの壁が崩壊。
眩い輝く未来が広がっていることを感じ、刺激を求め、また新たな国をつくることにも魅力を感じ、政治家へ転向。
以後現在に至る。
多様性と自由を尊重する、寛容である、感情的にならずに冷静に理性的に人と接し物事を取り組む、物事をじっくり考え慎重に行動を起こす、そのようなメルケルの姿勢がその生い立ちを背景にして染み入る様に理解できます。
著者のカティ•マートンは旧東欧のハンガリーで生まれ育ち、ユダヤ人の祖父母をアウシュビッツでなくした背景をもつ女性の元記者とのこと。
ドイツ、欧州、米国のかつての政権周辺の重要人物にも多く取材をしており、メルケルが関わった年代のドイツ国内、国際政治の裏側の一部を垣間見ることができるのも、本書の面白いところです。
尋常ではない体力で、国内、欧州、世界と大小の差はあれそれぞれの深刻さを抱えた問題に、焦らず、感情的にならず対処していく様は、ドラマチックと言う類のものではないにしても驚きを持って受け止めるべきものです。
2014年のロシアによるウクライナ侵攻以降のプーチンとの闘いについて。このあたりの話題は現在のウクライナ戦争にもつながるものであり、情報としても重要かつ価値があるものでしょう。
自由と民主主義の世界代表として話し合いで解決を目指すメルケルと、権威独裁主義で嘘を交え(真実を交え、の方が適当か?)争いで抑えつけようとするプーチンの闘い。政治的な描写だけでなく人間的な側面も交えて生々しく描かれています。
とはいえメルケルは、プーチンに対しても極めて冷静に(心の中ではともかく)、事実やデータを踏まえて、粘り強く対応していきます。十数時間のぶっ続けの会議の末に結ばれたミンスク合意も(内容とその後の現実はともかく)、それまでのメルケルの粉骨砕身の努力によるところが大きいのだということがよくわかります。
スキャンダルとは無縁で、自由、民主主義、人権の尊重などの確固たる信条を持ちながらも、様々な利害��係の中で多くの妥協をしてきたメルケル。こんなすごい人でも完璧にこなすことはできないんだ、と社会と世界が安定して存在することの絶望的な難しさをつくづく感じます。
と同時に多様な人々の間で一致点を探ろうとして、それが一時的にでも生まれた瞬間の輝きに触れると、人を信じて対話をしていくことを諦めてはいけないという思いにもさせてくれます。
首相時代からずっと賃貸マンションに夫と住んでおり、自分でスーパーへ買い物に行って料理を作る(洗濯は夫)メルケル。
現欧州委員会委員長かつメルケル政権元国防相であるウルズラ•フォン•デア•ライエンに手を添えられながら彼女を見つめるメルケルは、とても慈愛に満ちたチャーミングな表情をしています。
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欧州の政治や問題には、詳しくない私ですが、メルケルの人間性に興味があって読見ました。
歴史や宗教、民主主義、共産主義など今まで知らなかったこと少し理解できた。
1人の女性として尊敬に値する人でした。
難しい部分もありましたが、概ね理解できた。
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世界最高の権力を持った女性宰相メルケルの決定的評伝!東独出身の地味な理系少女が、なぜ権力の頂点に立てたのか?――その強さの源泉は「倫理」と「科学」にあった。
メルケルのことはあまり知らなかった。東独出身の女性ということくらいしか。結婚していたことも知らない。でも演説などからは自分の理想に近いなと思っていた。
でもこの本を読んで、彼女の冷静さ、女性たちが後に続けるよう声高に叫ぶよりも着実に実績を残すこと、話し合いを諦めず妥協地点を見つけること、全てに感銘を受けた。自分はかっとなりやすさがあるし、立場も仕事も違うけれど、おおいに参考にしたい部分がたくさんある。もちろん欠点もあるけれど人だから当たり前で、それ以上に温かさと理想のために身を尽くす姿勢に頭が上がらない。ロールモデルにしたい女性だし、こんなリーダーがいたら安心して国を託したいと思う。
彼女の生い立ちから人生をなぞるように書かれた評伝は、でも暴くというよりも彼女が徹底したプライバシーを守る姿勢を見せていて、その信頼に足る人物しか周囲には残れないのだという事実を浮き彫りにしていて、だからこそ著者のすごさも伝わってくる。
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「メルケル 世界一の宰相」。
「私にはいくつか問題があります。女であること、カリスマ性がないこと、コミュニケーションが下手なこと」(P95)。
まぎれもなくこれは名著である。
我が娘が将来仕事をするようになり、社会に貢献したいと願いながらなおその社会の理不尽さに翻弄されるようなときがきたらこの本を贈りたい。
同じようなバックグラウンドを持った同質な集団(西ドイツのエリート政治家集グループ、全員男性)の中に投げ込まれ、異物(東ドイツの田舎者と軽んじられる女性)として孤独を味わったときどうたち振る舞うべきか。
あまりにも多くの利害を調整せねばならず、しかもそのそれぞれの立場から無能をなじられても冷静さを失わないにはどのような鍛錬が必要なのか。
平気で嘘をつく、つまり交渉の前提の成り立たない相手となお平和的に合意するためにどれほどの忍耐が必要か。
そしてもちろん、今この瞬間の国際情勢をどのような基礎知識をもとに理解すればいいか。
「・・・首相に就任してからというもの、メルケルは定期的にプーチンと話し合いを続けてきた。
(中略)
話し合いの最初の三十分は、メルケルが聞き手にまわり、西側諸国によってロシアが被った被害---事実も含まれているが、大半は被害妄想---をプーチンに愚痴らせる。メルケルはそれをプーチンのためのセラピーと考えている。そんなふうにして言いたいことをすべて吐きださせてから、『いい?ウラジーミル、他の国は物事をそんなふうには見ていない。これはあなたにとって得策じゃない』と釘を刺すのだ」(p169)。
このような同時代的エピソード満載の中でも私から見てやはり本書の白眉は、シリア難民の受入(2016 年)をめぐる一章であろう。
「・・・危機というのはリーダーの持つ最も優れた資質を引き出すことがある。アンゲラ・メルケルにもそういうことがたびたびあった。だが、この難民危機のケースに限っては、リーダーとしては最悪ともいえる資質を二つも表面化させることになる」(P287)。それが何かは読んでもらうとして、このときの政治的な苦しみ、それを支えたキリスト者としての倫理観、そして空前の規模の難民受け入れという彼女の決断を最後に国民が受容していく過程の読みごたえは比類ない。
健全財政に固執してユーロ危機を悪化させた、習近平に阿った親中派だと日本でも賛否あるメルケル氏だが、でもこの人の引退でいよいよ世の中はまずいことになるのでは、と感じた人も多かったはずだ。
そして今、その予感が現実になりそうなことに皆が戦慄している。
本書のエピローグにこうある。
「メルケルの他にも、国のリーダーとして優れた指導者ぶりを発揮している女性は数人いる。だが、残念なことにその数はまだあまりに少なく、エゴを抑えられるという理由で女性のほうが最高権力者に向いているかどうか、まだ明確な結論を出すことはできない。ただし、アンゲラ・メルケル一人の例をもってして、一足飛びにそう結論したくなる気持ちも抑えがたい」(P441)。
断片的なデータだけで判断せず、常に集めら��る限りのエビデンスをもとに意思決定する。
そんなメルケルの特質を繰り返し強調してきた著者の、でもこれだけは言わせて的な迸りに思わず笑ってしまうのと同時に、ふと胸が熱くなるのである。