紙の本
今だからこそ
2020/09/26 11:15
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投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫化された作品なので、今現在描かれた物では無いけれど、今出会えた事にすごく驚きを感じます。
一読しただけで十全に理解し得たとは思いませんが、とても深い言葉が多く、繰り返し読み返す一冊になると思います。
紙の本
生きることを語る往復書簡
2022/04/21 21:39
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
往復書簡の形をとった対談。いのちに関して、人が生きることに関して、それぞれの考え方を提示し、考え方ををすり合わせるようにして進行する。人は何のために生まれ、生きて、そして死ぬのかを問いながら、それおぞれの価値観に基づいたことを述べ合う。決して結論めいたことが生まれるのではないが、この二人と一緒に思索するように読むのgいいのだろう。コロナ禍の中、先の光を見る気がした。
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【未曾有の難局の中、地球に宿る私たちの未来を思う】母の肺癌判明を機に出会った世界的物語作家と聖路加の医師が文学から医学の未来まで語り合う。未曾有のコロナ禍を受けて新章増補版。
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私も上橋さんとほぼ同時期に母を亡くしましたので、その部分では一年半も看病できた事が羨ましい。私の母は原因不明で入院し、直後、意識不明。一か月も面倒を見てあげる事ができませんでしたので。
それもまた生命力というものですし、色々と思う事が多い読書でした。
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新聞を読み、テレビを見、内容によって気持ちが動くことがある。ふと湧いた想いを捕まえることなく流してきた私にはその想いを言葉にすることはとても難しい。こうやって言葉にできる人たちがいることが嬉しい。
一つずつ頷きながら読み、辞書を引きながらゆっくりと読み返し、お二人と共にいる世界を感じた幸せな時でした。
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『守り人』シリーズや『鹿の王』の作者として知られる上橋菜穂子さんと、聖路加国際病院の医師である津田篤太郎さんとの往復書簡。上橋菜穂子ファンとしては、物語の背景となる作者の思想を知ることができる貴重な本です。
タイトルに「生と死を巡る対話」とあるように、人間の生と死や身体について、文学、医学はもちろん、生物学、文化人類学、社会学といった多様な視点から、二人が自由に語っています。織りなされる二人の対話の中から、ふと心に残る文章やフレーズが出てきて、自分の死生観が改めて問い直されるのを感じました。
特に、「人の心は生きたいと願う一方で、身体は時が来れば崩壊するよう促してくる。生まれた瞬間から、私たちは矛盾を生きるように定められている」という上橋さんの洞察は、とても正しく、とても恐ろしかったです。でも、その矛盾を強く心に抱いているからこそ、数々の素晴らしい物語を紡ぎ出すことができるのだとも感じました。
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2015年1月、上橋菜穂子さんの母親の肺ガン罹病がわかります。その後の数ヶ月間は、娘はありとあらゆる手立てを尽くしてかけがえなのない生命を救おうとしますが、80代の身体とは思えないほど進行は速く、半年ほどして彼女は絶望の縁に立ちます。その時に出会った漢方医学の津田医師との、お互い看護と治療をしながら、母親の最期を看取りながらの往復書簡の内容です。
テーマは必然「生と死を巡る対話」となりますが、お互いの教養の広さと深さを知った上での対話は、人類学から生物学を踏まえた哲学的思考、或いは古典音楽からAIの話題まで縦横に語られます。
わたしも、父親の死を看取ることで、その時は少したいへんでしたがそれ以上に多くのことを学び、今でもハッと気がつくことがあって、あの時間を感謝しています(それと同等ぐらいの後悔と共に)。上橋菜穂子さんは、人類史規模、地球規模で学びます。わたしは、そこから少しでも学びたいと思います。
挿絵は全て上橋菜穂子さんが描いたという。鉛筆画ですが、玄人はだしです。「明日は、いずこの空の下」の表紙絵は父親が描いたものでしたが、この両親ありてこの娘あり、ですね。
以下覚書用のマイメモ。分かりやすく書くと膨大な量になるので、もう本当に自分だけにわかるように省略しています。
・何のために生まれ、何のために生き、何のために死ぬのか。(20p)
・性(セックス)は、絶滅回避システム。親と異なる遺伝子DNAを生み出す。
・人間は、性システムに一定の制限を設け、種レベルの多様性ではなく、個体レベルの多様性を達成。(33p)
・宗教を、私は信じません。神仏を思い、拝む気持ちはある。自分には見えない認識できないものはあるかもしれず、ないとは思えないから。「信じる」は、わからぬまま、静かに目を瞑って「想定の箱」の蓋を閉じ、安寧に至る行為。(51p)
←宗教者から反論はあるかもしれません。わたしはどちらかというと、上橋菜穂子さんの気持ちと同じ。ただし、「信じない方に賭ける」といった方が正確。
・「私は遺伝子を残すために生きているんですね、素晴らしい!」と思って納得出来る人はどのくらいいるのでしょう。
・人を産む能力が備わっていることを示す月経が、何故か世界各地で「穢れ」として扱われているのは何故か?(←cf.映画「パットマン5億人の女性を救った男」或いは我が郷土でも昭和始めまで月経小屋があった)ジェンダー論やフェニミズム的な見方だけでは説明できない。お産は、魂を永遠から有限の世界に引き出す、死への歩みを始めさせる行為、だと気がついていたから?死は、生まれてくる前にいた所(ほの暗い永久)に帰ってゆくこと。そう心から信じられたら、どれぐらい救われるだろう。(77p)
・「進化」は「最適解を選んだ」というわけではない。霊長類の経腟分娩は、頭部が大きくて危険を伴う。帝王切開が進んだたった100年で、頭の大きい胎児や骨盤の小さい女性が増えた。これは経腟分娩が進化の最適解ではなく無理を重ねた「苦渋の選択」であったことを裏書きする。
←この一つとっても、障害者を「排除」しようとする主張は、人類の多様性を担保した叡智に逆行する考え方だとわたしは思う。もちろん、このことだけが障害者存在の理由ではない。
・今や人類は「性」システムそのものを忌避する方向に動いている。(103p)
・「性」システムは、個々の人間に「成長」を、生物種には「進化」を与える力を持ち、一方で個体を滅ぼすほどの侵襲性がある。そこまでして「成長」「進化」に意味があるのか、という疑問もあり得る。
・何故生物は「性」システムを持つのか。それは、短い寿命と引き換えに素早く進化する細菌やウィルス、寄生虫に対抗するため。
・ウィルスの漢方最古文献は張仲景の「傷寒論」(紀元3)。「風」を軽症例、「寒」を重症例とする。ウィルスを何故「風」と表現したか。「易経」の「風」を説明する部分は、そのままウィルスの説明になっていたから。
・今年は1940年の「五輪挫折」からちょうど80年。歴史は80年周期で変動を繰り返すという説がある。1980年代のバブルまでが上がり坂、そのあとは衰退へ。だとすると、あと「数年のうち」に「どん底」を迎えることになる。(208p)2020年5月末日、津田記す。
・地球をひとつの身体としてみれば、私たち人類は、ウィルスと、とても良く似た存在。宿主に頼らなければ存在できないのに、なぜか宿主を害してしまうところなど。人類もまた、ウィルスに似て強かな生物。
・私たちは皆、ほの暗い永久から出でて、地球という宿主の中で、多くの他者と共に、辛苦と幸せを味わいながら生きている。(222p)令和2年6月、上橋記す。
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死生観のみならず、二人の往復書簡の話題は多岐に富む。年長者で作家である上橋氏は勿論、津田医師が実に泰然自若とした雰囲気を感じさせる。
掛かり付けの医師を持つならこういった方になって貰いたい。
これからの読書の秋の夜長に味わいつつ読むのにオススメ。
丸善京都本店にて購入。
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往復書簡だが,一部が重なり多くが重ならないテーマで話が進行していく.一方は物語を通した人間の生のありようを,もう一方は医学の立場から現状の世界における人間の生のありようを,それぞれ紡いでいく.交わる訳ではなく,二重螺旋を描くかのように言葉が流れていく.
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蓑虫の雌の生態は、悲劇なのだろうか・・・。女性である上橋さんはふと考える。昆虫が4億年かけて選択したかたちが、あの生態なのだと考えたら?上橋さんにそう語りかける津田先生は優しい。
患者の看取りを重ねてきた津田先生と、向こう側とこちら側を考える上橋さん。なぜ人は死を恐れ、受け入れ難いのか。
答えのない会話を、往復書簡という形で応酬する。
それは対談よりも、もう少し考える時間がある。そして、相手の文章を何度も読み返して返事をかける。
それでも話が噛み合わなかったり、お互いの興味に流れたりして一貫性がないことも多かった。
それでも、ここには考える種が多く残っている。ラインをつけて、後からもう一度読んでみる。
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守り人シリーズの作者の飾らない語り口と 医師として向き合う津田氏の誠実さが、伝わる往復書簡
もう一度 読み返して考えたい
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上橋さんの書簡は星5。
津田氏の書簡は星無し。
(どこが嫌かは面倒だから省略。)
生きるということ、言葉の限界、一見関係なさそうなもの同士の相似。
上橋さんの、いろいろなことへの洞察により、混沌とした世界がクリアになり、いろいろ腑に落ち、落ち着く。
よき物語を紡ぐ人の文章は、書簡の形式をとっても変わらず魅力的。
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文庫化にあたり、2章追加されています。
これまでの章を踏まえて、この度のコロナに関するお二方の視点が書かれています。自分と同じ考えへの共感もあり、新たな捉え方の発見もあり、とても興味深いものでした。
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お母様の晩年の過ごされ方とその支援をなさる上橋菜穂子さん、生物としてのヒトの生死にまつわる内容を語られる医師、おふたりの往復書簡。文章が美しく内容は興味深い。
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お二人の言葉の選び方が美しく、とても気持ち良く読み進められました。時節の挨拶ひとつにしても、なんて鮮やかな表現なんだろうと感動の連続。
生と死という、一番身近でありながらどこか考えることを避けてしまうことについて、様々なお話を交えながら対話されています。興味深い話がたくさん出てきて、一気に読み進めてしまいました。