紙の本
カタルーニャ版大聖堂
2023/07/07 08:32
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
カタルーニャとカスティーリャが別々の王国だった時代のカタルーニャの首都バルセロナを舞台とした壮大な歴史劇である。登場人物たちも歴史背景も実にいきいきとしていて生命感にあふれている。大聖堂の建設をテーマにしているところなど ケン・フォレットに決して負けていない。
紙の本
時は中世、14世紀。舞台はスペイン。 海に臨む教会、サンタマリア・ダル・マールの建設期間55年を背景に、「時代」と「都市」と「民衆」を描く堂々の大河ドラマ。自由、富、権力、愛情、平穏、あるいは、ただひたすら生きのびること。交錯する欲望のぶつかり合いが登場人物の運命を推し進めていく。
2012/03/27 18:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きし - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は中世、14世紀。舞台はスペイン。
海に臨む教会、サンタマリア・ダル・マールの建設期間55年を背景に、「時代」と「都市」と「民衆」を描く堂々の大河ドラマ。
物語は農奴であるバルナット、息子アルナウのそれぞれがたどる運命を軸に進んでいく。
自由、富、権力、愛情、平穏、あるいは、ただひたすら生きのびること。
さまざまな階級の人間が、自分の求めるものに向かって手を伸ばす。
何を求めるにしても、それが欲望であるという点では同じだ。
交錯する欲望のぶつかり合いが登場人物の運命を推し進めていく。
背景となる中世は激動の時代であり、戦争は絶え間なく、黒死病が都市に襲いかかる。
人々の中に深く刻まれた信仰は美しく荘厳な教会をつくりだす一方、異端審問で人の命を奪い、弾圧に走る。
光と影の国スペインの人々の熱い血なのか、あらゆる出来事が極限を目指して高まっていくようだった。
戦場は血、礼拝堂は蝋燭の油煙、街は汗の臭いに満ち、いたるところで民衆たちの怒号、あるいは沈黙が響く。
過酷は過酷を、悲惨は悲惨を極め、気の休まる時もない。
正直に言えば、冒頭、人間として最低ランクの領主が、バルナットの花嫁を婚礼の宴の最中に凌辱し、その直後、バルナットに初めての夫婦の営みを強要するという、気持ち悪さに吐きたくなるような出来事の時点で読むのをやめたくなった。
そういうことが当たり前で、特段罪でもない時代の物語なのだ。この先、どんなことがあるかわからない。
でも、上下巻の最初の数ページで投げ出すのはやはり惜しい。
この先、どんなことがあるかわからないということ、それは物語を読む楽しみでもある。
物語はそのあとも禍福を繰り返し、時代を映しながらうねるように展開していったが、読み進めるうち、少しずつ読むのが楽になってきたのは、物語の中心人物であるアルナウの人物像のためだったと思う。
彼の感情の方向と発露は素直だ。
愛する父親を貶める者には憎しみを抱き、復讐を誓う。
ひとかけらの記憶もない母親の代わりに、聖母マリアを慕う。
その愛に報いきれなかった妻の亡骸に心からのキスを贈る。
骨惜しみをせず働く男たちを混じりけのない尊敬の念でもって見つめ、同情すべき人には惜しみなく心を傾ける。
誕生の最初の一歩、受精のときからして波乱の幕開けで、乳飲み子のうちから(自覚はないだろうが)苦労をした彼だが、その苦労は少年の中の強さを鍛えたけれど、冷酷な狡さは育てなかった。
アルナウは、一方的に人を傷つけることがない。彼によって傷つけられる者がいたら、同じようにアルナウ自身も傷つくのだ。
そういう主人公なら、辛苦の後の幸せな結末を願うことも易しい。
ギリギリのところでは運のいい主人公は都合がよすぎる気もするが、だからこそ素直に物語に準備された喜怒哀楽を味わうことができたようにも思う。
タイトルになっている「海のカテドラル」、海の聖母教会は今も変わらぬ姿で建っている。
もし、訪れる機会があるならば、その石に触ってみたいと思う。
遠い昔、素朴で力強い男たちがその背で運び上げた石だ。
数えきれないほどの石と人々の聖母への祈りによって組み上げられた教会。
著者に物語を描かせた思いが、もしかしたら私にもわかるかもしれない。
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ちょっと乱暴に簡単に説明するとスペイン版『大聖堂』。時代背景や封建制度、宗教と政治と金の構造も良く似てます。似ているけれど海の、、、とあるようにバスターシュという荷揚げ人のことや船での交易を仕切る両替商のことなど、養老さんが帯で書いていた「スペインという国を知るよすがになる」という言葉に納得。面白かったです。全体的に、男性の登場人物に比べて女性の描かれ方がもの足りない感じ。ジュアンが偏っていく過程が描かれていないのとあと他にもいくつか展開が唐突で違和感感じたところがあったものの、いったいどうなるんだと思いながら一気に読んでしまいました。
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春の戴冠からロンドンときて、今回はスペインが舞台の本。
最初から衝撃的。それさえ乗り越えればあとはノンストップ。
いつも爆睡する通学の電車で一睡もできなかったくらい、本当に面白かった。
悲惨な生い立ちの主人公に、追い打ちをかけるように次々と理不尽な事件が降りかかる。
抵抗できず屈してしまう場面もあるが、必ず立ちあがって別の方法を探していく姿に、思い通りに生きていくことはできなくとも必死に頑張っていればなんとかなるんだと勇気をもらえる。
階級の低い者の視点で当時のスペインの状況が描かれており、教科書を読むよりも勉強になる。
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衝撃的な出来事で物語が始まる。その後は悲惨な状況が続き、読むのが辛くなって来たけど、物事が順調に進み始める。
でも、主人公の心の弱さから、、、「どうして、そんな?」ってことをし、また読むのが辛くなって来た。
でも、早速下巻を読み始めるつもり。下巻の初めはさらに悲惨な出来事が起こるらしい。
スペインの歴史って奥深い。wikiで調べよ〜!
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
14世紀、カタルーニャの農村で、農奴と村娘の婚礼の宴が晴れやかに行われていた。しかし、領主の来訪によって一変。泣き叫ぶ娘は領主に暴行され処女を奪われてしまった。領主は夫より先に新妻と同衾する権利が認められていたのだ。この衝撃的な冒頭から一大叙事詩の幕はあがった。理不尽に絶望し自由という新天地を求めて力強く歩き出した農奴バルナット。時代の渦に翻弄されながらも尊厳を失わずに生きていく運命は如何に。
バルナットの悔しさって、たぶん普通なら「しょうがない」で済ませてしまう痛みだったんだろうと思うのね。時代的に。
それをどうしていくか?が彼の生命力なのね。
La catedral del mar by Ildefonso Falcones
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『自由の値段ってどれくらいなんだろう?』
14世紀のスペインを舞台とした自由と絶望の物語。主要ストーリーのみならず、政治、信仰、建築等、描写が非常に細かくて丁寧。スペインという国を知るよすがになる、確かに。
ひどい、悲しい、可哀想、理不尽だ、そういった感想を抱く背景にエンターテイメント性以外の何物も存在しないことは確かだろう。それでも、スペインという国のテンポラリーな「文化」を見聞きし語る上で、読んでおいて損はない、そんな内容だと思う。
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生い立ちから悲惨な主人公達、更に追い打ちをかけるように次々と襲いかかる困難や試練。どれもが不条理で納得いかないことばかりだけど、心根がまっすぐなアルナウを思わず応援したくなってページを捲る手が止まらない。「弟」ジュアンの母が彼の幸せを願いつつ最期を迎えるシーンは哀しいけれど暖かみを感じた。バルナットの突然のキレっぷりには、唐突過ぎてアルナウ同様困惑したままとなってしまったのが残念。優しく頼もしいバスターシュに好感が持てる。下巻も楽しみ。
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2010年9月5日読了。
17世紀スペイン、バルセロナの普通の人々の暮らしを描いた歴史もの。貴族でも王族でもない普通の人が主役です。
でも、当時の厳しい世の中…生きていくだけで大変だった。
特に女性は男性の所有物という時代。
本当に大変だったんだなぁ。
スペインの歴史ってあんまり知らなかったけど、結構面白いです。
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一応面白く最後まで読んだ
でも「大聖堂」の信奉者としては物足りない
何故だろう
きっと貫かれた哲学みたいなものが欠如しているのかも知れない
読後感が全然違った
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中世のスペインではいかに一般市民が貴族に虐げられていたか。
前半の主人公の境遇は相当にきつい。
子供が徹底的に痛めつけられ、精神的にも嬲られている様は、
読んでいるだけでも相当につらかった。
それでもどうに父子で生きて行く様には感動する部分はある。
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スペイン版「大聖堂」といった趣き。
14世紀のカタルーニャが舞台。
土地に縛られた農奴だが、あたりで一番豊かなバルナット。
農奴といっても4代前は自由民。支配者が勝手な法律を作って農奴にしたのです。
めでたい結婚の日に、強欲な領主が現れて、祝いの席は一変、初夜権を要求されて無惨なことになる。
美しい花嫁フランセスカは以来、夫に口もきかない…
しかも領主の子の乳母として召し出されてしまい、城へ出向いたバルナットは自分の子が放置されていたのを見つけて連れ出し、バルセロナに逃亡。
妹の嫁ぎ先に身を潜め、バルセロナに1年と1日住めば市民権を貰えるという希望に賭ける。
幼い息子のアルナウは、当初は従姉達と一緒に可愛がられて育つが、悲劇が襲う。
バルナットの妹が亡くなり、夫のプッチが貴族と再婚。
プライドだけは高い貴族の新妻に、逃亡農奴だったバルナット親子は疎まれる。
もっと悲運な育ちをしている男の子ジュアンがアルナウと仲良くなり、ジュアンにもわが子同様に接するバルナットだったが。
バルセロナで蜂起が起き…
海辺に市民のためのカテドラルが建築中というのが美しく、希望を感じさせます。
尊敬されている建築家が、大勢の市民が入れるようにと、広くするために高さはそれほど高くないカテドラルを設計したのだ。
地中海の光を取り入れた大きな窓とステンドグラスが特徴。現存するカテドラルです。
石切場から「海の仲仕」と呼ばれる力持ちの男達が、無償で重い石を運んだのだそう。
アルナウは少年ながら、これに挑戦するのです。
一番小さな石を運ぶのにも一歩ずつよろけそうになって、背中が傷だらけになった少年が、何年かするうちにはたくましく成長します。
スペインは一つの国として統一されておらず、四つの王国の王の権力も安定していない。
ローマ教皇庁も絡んできたり、ユダヤ人差別の問題も大きい。
ややこしいが、それも新鮮。
どう転ぶかわからないので、目が離せない。
基本はドラマチックなエンタテインメントです。
恋愛も豊富というか~全く違うパターンの男女関係がいくつも出てきます。
アルナウは初恋の娘アレディスへの結婚を申し込んでもかなわず、アレディスが老いた親方に嫁がされた後に、彼女から迫られて関係を結んでしまうのですが…
当時は不倫が発覚したら組合を辞めさせられて男性は職がなくなり、女性は生涯幽閉の可能性もあったという。
とんでもない法律がたくさんあったのです。
美しいアレディスは奔放で軽率ですが、それ以上に父親にも夫にも囲いこまれるだけで全く世間知らずにされてしまったがために、堕ちていく…
後半でまた意外な展開に!
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14世紀カタルーニャ。ばるナットは息子を守るため、すべてを投げ打ち、自由を手にするため一路バルセロナへ!
人物の掘り下げは甘いかもしれないが、その分テンポよく物語は進んでいく。
当時の生活、社会、歴史の描写などはいきいきとしていていい。
面白い!!!
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中世のバルセロナを舞台にした歴史ロマン。
土地に縛り付けられ、領主の搾取され虐げられる農民たち。その身分から自由になるために自由都市バルセロナに向けて旅立つ父と子。彼らの生き様を通して、厳しい封建制度の中で生きる市井の人々の日常が描かれて行く。
どんどん苦しく追いつめられて行く展開のまま下巻へ。
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中世スペインの世界を一人の男の生涯を通じて描く歴史小説。
理不尽な世界を懸命に生きていく主人公、成功を収め這い上がっていくが、世界は決して優しくはなく、それでも歩み続けていく姿に心動かされる。
本当に大切なものを手放した時は、かなりイラっとしたが(♯`∧´)