紙の本
職場めぐり6編
2020/05/19 20:19
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な職種に光を当てながら、家族や自分自身の葛藤を描いていて共感できます。トランスジェンダーの女将など、多様な生き方についても考えさせられました。
紙の本
あっさりと
2022/02/27 10:56
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれ多少の葛藤や問題は抱えつつも、
普通に話は進んで、普通に終わり。
こういうのが持ち味なのかな。
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家業だけでない、あとを継ぐひとたちに焦点をあてた短編集。
女社長の結婚がすき。麩菓たべたくなった
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いつのまにか、伝わっていた。 理容室、老舗旅館、会社員……6つの職業現場を舞台に、新しい時代の働き方、暮らし方、生き方に惑う現代人に贈る、仕事小説集。
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「生き方を見つめる仕事小説集」と帯にある。だけどこの「仕事」たちは親の、あるいや祖父母の営む仕事であり、これはその仕事をめぐる6人の物語である。
ヒトは仕事を選ぶとき、なにを基準に選ぶのだろう。
やりたいこと?得意なこと?給料?福利厚生?それはどれも自分にとってどうか、ということが基準になる。
「自分」が選ぶ仕事。けれど家が理容室であったり旅館であったり酪農家であったりすると、自分が仕事を選ぶ基準にどうしても「家業」という選択肢が入ってくる。
家を継ぐか、あるいは、別の仕事に就くか。その選択は、とても、大きく、そして重い。
どちらを選んだとしても、一片の後悔もなくその仕事から退く人は少ないだろう。あのときあちらの道を選んでいたら…という思い。
「家業」というものがある人にとって、仕事を選ぶというのは人生の中でとても大きな決断になるだろう。
あとを継ぐのか、継がないのか。
親の期待、後継者としてのプレッシャー、あるいは、継がないことの負い目。
何のしがらみもなく仕事を選べるというのは、ある意味、スタート時点で手に入る最高の幸福かも知れない。
親としても、子どもに継いで欲しいという気持ちと、自由にさせてやりたいという気持ちと両方で揺れるだろう。自分の代で家業を終えることの恐怖と、忸怩たる思いもわかる。
けれど、跡を継いでも継がなくても、親が伝えたいと思ったであろうことは自分の中にきっとある。言葉ではなく、それは思いという形で残っているはず。どんな形であってもたぶんいつかそれがわかる。それが、親にとっても子にとっても、救いだ。
ただ、短編集なのが残念。
もっとひとつひとつの、継いだ人の、継がなかった人の、一人一人の葛藤や後悔や忸怩たる思いを読みたかった。
特に若女将の物語。色んな話が広がりそう。
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〇自分の周りに実際に起こったかのような、共感せざるを得ないエピソードをまとめた6編の短編集
・後継ぎのいない理容店
理容店を営む哲治。息子の誠は介護福祉士だ。誠とは疎遠な哲治は、父子家庭だったのにいつも姜さんや娘の美沙ちゃんに近況を聞いてばかり。ある日誠が帰ってきたとき、ある母子を見て哲治はついカッとして誠に当たってしまい・・・
誰かに教えてもらえないと、自分の愚かさに気づけない自分の性。
・女社長の結婚
万澄は家業の菓子製造会社の若くして社長になっている。お見合いでは断られ、仕事もうまくいかない。社長を続けるべきかどうか・・・そんなとき万澄が出した答えは。
家業を継ぐことの辛さと、継げないことの辛さ。みんなイチモツを抱えるのだ。
・わが社のマニュアル
翼は知的障碍者が多く勤めるチョーク製造会社に転職した。そして同じ部署の伊藤さんは気難しい。困難さを同僚の原口にぶつけるが、「伊藤さん攻略マニュアル」は「毎日顔をあわせて慣れること」。そのうち伊藤さんを怒らせて?しまい・・・
原口の言葉が突き刺さる。どの職場にとっても、人間関係を大事にするなら重要な指摘。
・親子三代
祐弥は酪農業を営む農家の長男。テレビ局の関連会社で働く。息子の傭平は就活時期なのに実家の牧場に出向いて何やら手伝っているようだ。妻から連れ戻すように言われた祐弥だったが傭平に共感した部分もあり・・・
人生の重大局面での判断基準とは何か。
・若女将になりたい!
実家の旅館で若女将になりたく修行している長男・範之。母親の女将にいつもいびられてばかりだが職場のこともなんとかしてやりたいと思うようになり・・・
親の心子知らず、子の心も親は知らない。ふとしたきっかけ。
・サラリーマンの父と娘
健一の娘・美咲は、とぼとぼと駅から家とは別の方向に歩き、遠回りに自宅へ帰る。その様子を不思議に思った健一は、何とか話しかけようときっかけを作ろうとするが・・・
自分のことをわかっていれば等身大で関われる。そのままでいいこともある。
*****
夫婦、親子、男女、仕事仲間、土地。
それぞれの関係や視点、絆を大事にしつつ、そのお仕事の中身をそれぞれの想いとともに描く。これらは、とても素朴だ。そして、登場人物を誇らしく思えたり、僕らが応援したくなったりするような描かれ方であるのがまた心地好い。
仕事に迷った人はちょっとしたヒントはもらえるかもしれない。これから仕事を始める人はいま読んでおけば、そういえばあんな登場人物がいたな、と数ヶ月後に思い出せるはずだ。
しかし、仕事が生活にしっかり根ざしていることを、この小説を通して知ることになるだろう。そこにある人間関係や環境は自分たちが切り開くものなのだ、と教えてくれるようでもある。
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厳しい親、気難しい同僚、めっきり会話の減った娘… そんな一筋縄ではいかない相手と向き合う人たちの物語。悩み、衝突しながらも少しずつお互いの距離が縮めようとする様子が、緊張感を保ちながら繊細に描かれている。主人公達に「頑張れ、頑張れ」と声をかけるような気持ちでページをめくった。
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「家業」というものを持つ家が少なくなったように感じる。
商店街が出てくる小説に必ずと言っていいほど登場する、“後継ぎ問題”だが、この作品ではもっと範囲が広い。
家業を継がなかった人もいるし、諦めた人もいる。
“家業”ではないお話もある。
受け継ぐのは、形あるものだけではないということ。
そして、人から人へと渡すものだ。
今まで、家業云々のお話を読む時、自分はサラリーマン家庭だったから、外側から見る気持ちで、「自営業って大変だなあ」と思っていたけれど…この本では、サラリーマン家庭も仲間に入れてもらえました(!)
自分も、何かバトンタッチできるものを持っているだろうか?と考える。
しかし、知らないうちに受け継がれているものがあるかもしれない。
「わが社のマニュアル」が、ほのぼのしていて好き。
伊藤さんが良い。
「跡継ぎのいない理容店」
シャンプー上手の優しい指先が、親子の証し。
最後の父の姿はちょっと切ない。
「女社長の結婚」
お見合い持ってきた横山さんは、ただのお節介おばさんだと思っていたら、なかなかに含蓄のあるお話をされた。
「わが社のマニュアル」
難しい相手ほど、近づけるとうれしい。
人付き合いにマニュアルはない。
「親子三代」
自分が継がなかった実家の牧場を、息子が継ぎたいと言い出した。
一瞬、頬が緩む話だが、意外な問題が露見して…
だが、孫の気持ちだけを信じて亡くなった祖父は幸福だったのではないか。
「若女将になりたい!」
トランスジェンダーの範之は、若女将になって、義父の旅館を継ぎたいと思った。
母と娘は似るもの!
「サラリーマンの父と娘」
定年を目の前にした健一は、娘が何か悩んでいるのではないかと気づく。
健一の父は無口だったから、亡くなった後、自分が父のことを何も知らないことに気づいた。
伝えたかったことがあったのでは?
サラリーマンの自分が、血の繋がった者へ伝えられる「大切な何か」はあるのか。
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家業を継ぐ
というだけでなくもっといろいろな面からえがかれた
6篇の短編集
それぞれ興味深かった
障碍やトランスジェンダーなどへの柔らかい目線
悩みながら継ぐひと、継がない人
でも心はしっかり継いでいくんだね
≪ 惑いつつ 生きて働く 暮らし方 ≫
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いわゆる「お仕事小説」といえるのだろう。仕事をする、仕事を継ぐということをテーマにした短編連作六作。
仕事を継いでいく、引き受けていくということは何も家業を継ぐということに限らず、また親の仕事を見て、別のものを目指すということもある。主人公たちがそこに至る道程を丁寧に、優しい目線で描いている。
どの作品も登場人物の描写に共感ができ、爽やかな読後感である。
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6編からなる短編集。
子どもの未来を考えたとき、親としてなにができるか。
老舗旅館を継ぎたい息子(娘?)と母の葛藤など。
〈仕事小説集〉とあるけれど、そこから一歩踏み込んで描かれた人生観が胸に迫る。
「少し肩の力を抜いてみたら?」と言われているような気がした。
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代々その家に受け継がれてきた家業を、子供に継がせようとする者もいれば、親から受け継ぐ者もいるし、親の願い虚しく家業を継がず贖罪に苛まれる者もいる。
また家業ではないけれど会社の仕事を先輩から後輩へ引き継ぐこともあれば、職種は違えど同じサラリーマンとして子供に仕事の極意を伝えたい者もいる。
そんな様々な立場で仕事を"継ぐ"者たちの悲喜こもごもを描いた短編集。
自分の仕事を他の人へ継ぐということは、ただ技術的なものを伝えるだけでなく、その仕事に関わる人との繋がりや仕事に対する思いも伝え、託すことなんだとしみじみ思った。
普段会社で日々の業務に追われる私も前任者から業務を引き継ぎ、いずれは後輩へ引き継ぐことになる。
その時にはきちんと引き継がなくては、と仕事に対する姿勢を正された気持ちになった。
仕事を後の者へ託すことは、その人の生き方も引き継いでいくことになるんだろう。
短編の一つの会社の社長さんの一言
「急がなくていいんだよ。うちの社員は、すぐに仕事を覚えたり業務をこなせたりする人ばかりじゃない。何度も失敗して、少しずつできるようになってる。『待つ』ことも大事な仕事だと、私は思っている」
この会社の社員に今すぐなりたい。
田中兆子さんはこれが2作目。
前回とは全く異なる作風だけど、こちらも好き。
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田中さんは、いつも変化球でくる。そんなイメージがあった。でも、今作は、とても真っ直ぐな良い話。そのことに一番驚いた。
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トランスジェンダーでレズビアンの生物学的にいうところの「男性」と、バイセクシャルの「女性」のカップルが登場するのですが、トランスジェンダーでレズビアンの人もいるのだとはっとさせられました。
そういう多様性を素直に認められる人になれたらと思いました。
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働き方、暮らし方、生き方に惑う現代人に贈る、6つの“あと継ぎ”物語。
ここ最近、毒親題材の小説を読む事が多かったため、久々に心が洗われるような作品に触れた気がした。
もちろん本作に描かれる親子や家族も、すれ違いや確執があったりもするのだが、なんだかんだで子は親の背中を見て育っているし、あとを継ぐ事を拒否して出て行った兄弟姉妹も、それぞれの持ち場で己の役割を担っている。
「女社長の結婚」の終盤、怒涛の展開には笑ったし、「わが社のマニュアル」は伊藤さんが送ってくれた、たった四文字に泣きそうになった。個人的に一番好きなのはやっぱりラスト「サラリーマンの父と娘」。聴き上手で褒め上手という自分の魅力に全く気付いていない父と、全てきちんと伝わっている娘の関係が何だかとても愛おしかった。
家族にも職場にも様々な形があり、どう関わっていくのかは最終的に自分が決める。押しつけがましさの無い、良作だった。