紙の本
藤本の魅力
2022/09/28 14:30
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
刑務所の臨床心理医やその周辺に集う人、そして受刑者など、黒人女性へのインタビュー。アメリカにおける黒人女性の置かれた立場というのがよくわかるが、そういったジャーナリスティックな部分だけでなく、藤本の活き活きとした聞き書きこそが本書最大の魅力かもしれない。
紙の本
アメリカの知らなかった一面を見た。
2021/01/11 16:26
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人種や障害による差別をしないようにしている国、アメリカ。
以前に差別をしていたからこそ、それを改めたことを強調しているのかもしれない。
実生活では差別は消えていない。
そんななかを荒んで生きるのか、自身に誇れる姿となるのかは、自分次第だ。
自分の素晴らしさに気づいた女性たちの壮絶な半生の本だ。
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オーラルヒストリーの重要性をひしひしと感じる一冊だった
「戦争は女の顔をしていない」(読み途中でいったん置いてしまっているけれど)も男性が動かしてる現実に翻弄される側の証言だ
翻弄される側だが、ただ翻弄されてるわけじゃなくて、そこには確実に生きてきたという事実がある
彼女たちの生きてきた事実が言語化され、大小関わらず思いも含めてすくって書きとめられたとき、それは読み手に生きる力を与えてくれるだけにとどまらないものとなるんだ
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1980年代前半、アメリカ。著者はウィスコンシン州懲治局の臨床心理医ジュリエットをたずね、彼女が参加する「女性グループ」の会と、仕事で担当する「女たちの家」の受刑者たちの話を聞いた。80年代アメリカの黒人女性たちを取り囲むさまざまな困難を語りながら、それでも語ること、言葉にすることの喜びや力に満ちた〈はじまってもいないたたかい〉の記録。
「普遍性のなかにやすらぎを見出すよりも、他者の固有性と異質性のなかに、わたしたちを撃ち、刺しつらぬくものを見ること。そこから力をくみとることだ、わたしたち自身を名づけ、探しだすというのなら」。本書は黒人女性たちの連帯を語ると同時に、〈黒人女性〉をひとかたまりとする見方をときほぐし、ひとりひとりの言葉に真摯に耳を傾ける。じっさい、ネイティブ・アメリカンの血をひいていたり、親から「白人として生きろ」と言われるほど肌の白い〈黒人女性〉がいる。〈黒さ〉にもさまざまなグラデーションがあるのだ。
第一章では、まず大学を卒業した人たちからなる「女性グループ」がそれぞれの生い立ちを語りはじめる。ここで静かな衝撃だったのは、ジュリエットが語る母の兄と自分への差別教育の違いだ。女のジュリエットは白人に対抗し、進学することを推奨されたが、男である兄は目立たぬことが第一だと教えられていたという。それは母がアメリカのヒエラルキートップである〈白人男性〉から目障りな存在とみなされた〈黒人男性〉の苦難を知っていたからだろうとジュリエットは推察する。創作物にはインテリで優等生の黒人少女と不良の黒人少年の組み合わせがよくでてくるけど、その背景が少し掴めた気がした。
第二章ではジュリエットの職場である〈女たちの家〉へ赴き、そこにいる女性受刑者二人からの聞き書きを収める。〈女たちの家〉は受刑者の社会復帰のために町中に作られた施設で、刑期を務めながらそこから学校や仕事に通えるという試みがまず興味深かった。
麻薬の密輸をしていたブレンダと殺人で捕まったウィルマは、どちらも刑務所に入ってから"自分の言葉を獲得する"ために努力し、その重要性を強く訴える。"以前から今と同じような話し方をしていたか"と問われたブレンダの答えは深く胸を打つ。彼女たちが言語化に見いだす希望を藤本さんはこうまとめる。「なぜなら、『女たちの家』の住人はことばを探している女たちであったから。(略) 自らの生に意味をあたえ、生の輪郭を見せてくれる魔術はないか。混沌や茫洋にかたちをあたえることができるもののひとつがことばであるなら、それは魔術のようなものだ」。語りの力を鋭敏に感じとり、強く信じた人の文章だと思う。藤本さんが彼女たちの言葉を訳すやり方には、上記のような〈魔法〉にも等しいきらめきがあり、個人に対する敬意が溢れている。
エピローグは公民権運動に参加したことのある104歳のアニーへのインタビュー。アニーは政治活動そのものについては多くを語らないが、あからさまな差別が少しずつ減ってきたことについて「愛が勝利するのです。そうでなければおかしい。白人の隣人におはようと挨拶できなければ…」と語る。
斎藤真理子さんが素晴らしい解説で日本と在日コリア���の人びとの関係性に敷衍して考えることを提案されているように、差別との闘いにおける最終目標は、ある人種が別の人種に勝つことではなく、愛の勝利。手にしたいのは隣人に気兼ねなく挨拶できる喜び。〈たたかい〉はいつでもそのためにあるのだ。 自分自身の言葉をたずさえ、隣人を愛するために。
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強烈な現実
そして変わらない現実
藤本和子さんを通して伝わってくる現実
解説に書かれている通り
「語り手だけでなく、聞き手の何かどくどくとこちらの血管に注ぎ込まれるような…」リアリティ!
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現実から目を背けず、強く生きている姿に感銘をうける。多様性の時代と言われるが、同化では意味がない。多様性を多様性のままいかに受け止めていけるのだろう。
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1980年代のアメリカで生きる黒人女性たちからの聞き書きをまとめた一冊。黒人女性たちが直面する困難が率直に、彼女たちの言葉で描かれている(当然、日本語に訳されているわけだが)。率直に言えば、日本にいる限りマジョリティになる日本人で、また男性である自分は、本書の価値を十分に理解できていないのかもしれないと思う。ただ、改めていつか読み返したいと思う。そのときにさらに理解を深められることを期待している。
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1986年に刊行された本が文庫で復刊。1980年代に筆者がインタビューした黒人女性たちの言葉が、すぐそこで話されているかのように迫ってくる。差別や貧困を極める生活のなかで、彼女たちは考え、学び、体験し、彼女たちが確かに得た力強く聡明な言葉で、彼女たちのありのままの人生を話している。ここまで心に迫ってくるのは、彼女たちの話は、今の私たちの話でもあるからだ。彼女たちが直面した問題は、未だ色濃く残っているからだ。斎藤真理子さんの解説がこの本の真髄を伝えてくださっている。私たちは彼女たちの話を受け止めて、「自分の言葉を作り出すことで応えるしかない」。今、多くの人が読むべき本だと思う。
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30年ほど前のアフリカン・アメリカ女性の生い立ちの聞き書き。中でも夫の不倫相手を殺し、服役する女性の話が辛い。自分ではどうにもできない生い立ちを抱え、やむをえず殺人を犯す。1986年出版の本だが復刊。今読みたい名著。
ブルースなんてただの唄。嘆いていたって始まらない。
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歴史の授業で何の思い入れもなく習った事柄が、個人の語りによって生々しく押し寄せてくる。昔の本だけど、外国の話だけど、全然他人事じゃない。
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黒人女性へのインタビュー形式で書かれています。
彼女たちの苦しみや誇り…とても伝わります。
ただ…う〜ん…読むのが少ししんどかったな…
きちんと理解すべき現実ですが…とてもしんどい⤵︎
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教育は歓迎するが、白人文化への同化は望まない、という女性の言葉が印象的だった。
国や地域に文化があるなら、女独自の文化を保ったままでいいんじゃないのか?ことさらに男性への同化を自他に求めなくとも、やっていけるんじゃないのか?男たちが勝手に作ったヒエラルキーを内面化してあげなくても、もう、いいんじゃないのか?
本書を読みながらしきりに「崖」(石垣りん)の一節が思い出されてならなかった。
戦争の終り、
サイパン島の崖の上から
次々に身を投げた女たち。
美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。
とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)
それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。
女たちが落ちる「崖」に、ここまで、という終わりはない。
20年も経つのに。
そろそろ80年も経とうというのに。
当時インタビューを受けた女性たちは、今、60代、70代を迎えている。アジア人女性が黒人男性に路上で殴り倒される自分たちの国を見て、どんな思いでいるのだろう?
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生きていく上で、
男の子と女の子にとるべき態度を別々に教えなくてはいけなかったということ、
暴力がとても近くにあったこと、
いわゆる授業の教材で使うような本(to kill a mockingbird, the bluest eyeなど)の描写と変わらない状況に置かれていたこと、
などなど、
生の言葉とそのまま出会って、たった少しではあるけど黒人の女性の置かれてきた環境、そのまわりの空気を知ることができました。
情報として、人種差別と戦うために、黒人男性がやってきたことや、代表的な女性の発言などがアクセスしやすいところにあったので目にしていたけど、
いち女性の人生を紡ぐ言葉は、とても心に入ってきました。
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人種差別を生きた黒人女性の聞き取り。
13で家を出た人の話が印象的、つらい生活でも、
こんなものと生きて来た。神を信じて。
豊かな日本人には、耐えられない。
人間は、いかなる状況でも生きていかれるのか?
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黒人に対する差別について初めてリアルを感じた。
著者の翻訳に感嘆しながらも、聞き書きの胸をつく威力はすごい。
歴史的背景を知らないが故に理解の難しいところもあったが、それを差し引いても読んでよかったと思える一冊。