☆VR空間ならではのトリックだなと思った☆
2024/08/10 12:00
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投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
「犯人役を演じてもらいたい」
世界有数のゲーム会社メガロドンソフトからの依頼でVRミステリゲームのイベント監修を請け負った加茂冬馬。会場であるメガロドン荘に集ったのは《素人探偵》の8名。その中には、幽世島の事件に関わった竜泉佑樹もいた・・・
イベントは恙なく開始されるはずだった・・・ が・・・ 探偵と人質にされたその家族や恋人の命を賭けた殺戮ゲームへ変貌を遂げる。
大切な人と自身の命を守るには、VR空間と現実の両方で起きる殺人事件を解明するしかない。
VR空間の犯罪と、現実での犯罪を、見事に解決できるか!?
VR空間ならではのトリックだな、と思った。
そのうちとんでもないバカミスを創り上げるのではないか
2024/09/12 18:49
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投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
設定がやや複雑であったり、違和感のある伏線、動機など全体としてはあまり評価できない。しかし、中盤のあるトリックは独創的で面白かった。シリーズ2作目の最初の事件といい、バカミスの大傑作を書き上げる可能性があるのではないか。
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「竜泉家の呪い」シリーズ第3弾となる『名探偵に甘美なる死を』の概要と感想になります。
概要です。
一作目と二作目で奇怪な事件に遭遇した加茂と佑樹は、世界的に有名なゲームソフト会社の新作ソフトの試遊会に招待され、孤島の館へ導かれる。館に揃った人々は何らかの実績を有する素人探偵という共通点があり、ゲームオーナからVR空間と現実世界を行き来した推理ゲームをクリアすることを命ぜられる。しかし、そのゲームは全員を恐怖に陥れるデスゲームであった。
感想です。
「竜泉家の呪い」シリーズ三部作の最後と位置付けられる本作ですが、続編の匂いを感じるのは私だけですかね?
しかし今回のトリックは過去2作に並ぶほどに斬新なものでした。読み終わってしまえば納得ですが、相変わらず「読者への挑戦」には完敗です(^_^;)
謎の水先案内人たるマイスターホラも今作で再登場しますが謎は深まるばかり…。やはり続編はあるのかな?
楽しみで仕方がないです♪
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方丈貴恵、大好きすぎて困る。
推しの加茂がこれでもかと活躍する話です。あと佑樹くんも!
登場人物に馬鹿がひとりもおらず、読者(わたし)が一番の馬鹿なので、物語がめっちゃスムーズに進む。ゆえにストレスがなく、ただひたすら感嘆する。
犯人を当てるところ、名前聞いた瞬間うおおおって叫んじゃった。なんとなく犯人の目星はついていたんだけど(勘です)、最後の最後でその展開はお見事。好きすぎる。
素人探偵に対する憎しみっていうのは阿津川辰海の館シリーズでも見た話なんだけど、それより説得力がある話だった。
運命とは皮肉なもんだ。
毎回毎回オチが一筋縄ではいかぬものばかりで痺れる。
方丈貴恵、大好き!推し!
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まさか続編とは知らず読んでしまった……笑
ミステリーといえばトリックが肝になってくるが、とても面白かった。
ミチ殺しの気圧差を利用したトリック、そしてユウキ殺し、ケンザン殺しで使ったVRならではの館自体の大きさを変えたトリック、特に後者は想定できなかった……また、現実空間での棟方殺し、不破殺しも面白い観点だった。
また、この著者の特徴なのか、途中で推理できるポイントを挑戦状として書いてくれてるのは楽しかった。
一番はプロットの面白さだった。
犯人の視点として3事件、探偵として2事件を扱う構成はなかなか無い面白い展開だった。
更には、最後の東が千景であった驚き、犯人の目的はこの空間だけでない全素人探偵の殺害であったことなど、どんでん返しの展開も素敵だった。
(本書全編にわたった伏線の張り方も自然で良かった)
とても満足しましたー!
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シリーズが好きになり、期待大にして読んだからこそあえて星4かなと思います。
私自身特殊設定は受け入れており、だからこそVR空間を用いたトリックには頷け、ハウダニットとして十分楽しめました。
しかし、シリーズとして何か言葉にできない物足りなさを感じてしまったのも事実です(一気読みできなかったからかな?)。犯人の動機?前2作で得られたような読後感?
シリーズとして楽しんできて、なお高い期待値だったからこその消化不良感がありました。
ですが、作品として徹底した場面設定と特殊設定、館ものとしての緊迫感などなどミステリ好きとして楽しめました。
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VRの設定さえ受け入れてしまえば、至高のハウダニットを味わえます。全体的には第二作目の「孤島の来訪者」の方が好きですが、トリックに関してはこちらの方が凄いです。シリーズ第四弾が早くも楽しみ。
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トリック、謎解き、二転三転(三転四転?)する推理を展開していくストーリー構築が秀逸!
あれはこういう事だったのか…というのがいくつもあって、どれだけ緻密に練られた作品かを思い知らされます。
(3部作の)前作、前々作に出てくる加茂と佑樹の連携もナイス!「運命」について描かれたエピローグも良かったなぁ。
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竜泉家シリーズ、3作目。2作目は前作を知らなくても楽しめたけれど、こちらは1,2作目を読んでいたほうがより楽しめると思う。
1作目、2作目でそれぞれ常人離れした推理力を見せた主人公二人の共闘が熱い。
クローズドサークルに閉じ込められた名探偵たちが、定められた時間までに、VR空間で起こる殺人を巡り、自分たちの中にいる「犯人」役とその「犯行方法」、そして黒幕の手先である「執行人」を見つけなければ全員死亡というデスゲーム。
このシチュエーションだけでわくわくするのに、複数の密室殺人が起こり、探偵たちが導き出す誤回答含めトリック盛りだくさんの大盤振る舞いな作品という印象だった。最後の最後まで様々な仕掛けを楽しめた。
特に、VR空間ならではの密室毒殺トリックの大胆な発想には唸らされ、大満足。
一方で、黒幕の用意した「腕時計の中の毒針」という脅迫アイテムが強すぎて、被害者があまりに「執行人」に都合のよい動きをせざるを得ないところが、パワーバランスが一方的すぎるようにも感じた。
作中で、世のデスゲーム作品における主催者の動機がいまいち納得しにくいという話になったが、残念ながら本作もその呪縛からは逃れられていない印象がある。
ただ、デスゲーム作品の読者が求めるのは「ゲーム中の緊張感と、駆け引きの面白さ」であって、主催者の動機ははっきり言ってオマケ程度だと思うので、この点において本作の魅力が損なわれたわけではない。
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面白かったです!トリックもVR空間を活かしていて自分には想像もつかなかった
竜泉家三部作全部読んだけどどれも中盤からグッと引き込まれて一気読みしてしまいました!また続編読みたいなあ
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“竜泉家の一族”三部作の三作目
特殊設定クローズドサークルミステリーながらも、相変わらずフェアな、読者への挑戦。
一作目でファンになった加茂さんと、二作目でファンになったゆうきくん。2人の頭脳が掛け合わさってとても読み応えがあった。
おもしろかった!
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VRを取り入れたミステリ。
メタミステリのような多重構造。こうゆう技術を取り入れたミステリが増えていくと面白いと感じた。
トリックもよく考えられていてVRならではであり面白い。
設定として主人公2人が呼ばれてる理由がイマイチ納得出来ない。呼ばなきゃ上手く行ったのに。
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あなたは、『命を賭けたゲームに参加』したいでしょうか?
“ロシアンルーレット”という『ゲーム』があります。ただし、『ゲーム』とは言っても、それは、”回転式拳銃に1発だけ弾薬を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭(特にこめかみ)に向け引き金を引く”という危険極まりないものです。一つ間違えば、というより、非常に高い確率でそこには死と背中合わせになる世界があります。とても『ゲーム』などという呑気な言葉で語れるものではないと思いますし、そのような『ゲーム』には絶対に参加したくありません。
しかし、そんな拒否権が許されない場合もあります。それが小説の中の世界であればもちろんのことです。そこでは、作者の意のままに『ゲーム』に参加せざるを得ない登場人物たちの逃げられない現実があります。
『私は降りると言っただろう?お前は残りの七人のバカとゲームを続ければいい』
そんな強がりな言葉を言ったところでそんな人物には厳しい仕置きか待っているだけです。この世を生きるのも大変ですが、小説の世界に生きる登場人物たちもなかなかに大変な日常を送らされていると思います(笑)。
さてここに、こんな言葉に必然的に『VRミステリゲーム』に参加させられる八人の登場人物を描く物語があります。
『これから、皆さんに命を賭けたゲームに参加してもらいます。そのゲームの名は…「名探偵に甘美なる死を」』
そんな言葉の先に『VRミステリゲーム』の世界が展開していくこの作品。そこに、あの人物が再び登板する喜びを感じるこの作品。そしてそれは、方丈貴恵さんの代表作である”竜泉家の一族シリーズ”第3作な物語です。
『このような形でお呼び立てして申し訳ありません。はじめまして、私はメガロドンソフトの椋田です』という挨拶に『…あなたが?』と戸惑いを見せるのは主人公の加茂冬馬(かも とうま)。『ええ、椋田千景(くらた ちかげ)本人に間違いありませんよ…女性だと知って驚かれることが多い…』と説明する椋田は『私、ゲーム業界ではただ一人、覆面プロデューサーで押し通しているんです』と続けます。『テンミリオンセラーを叩き出したオープンワールドRPG「バトル・ウィザウト・オナー」シリーズの生みの親としても有名で、業界でその名を知らない人はいない』という『メガロドンソフトのゲームプロデューサー』が女性だと知って驚く加茂。そんな加茂は『六千万本以上の出荷・ダウンロードがされている』という『メガロドンソフト』の『ミステリ・メイカー』のプレイ経験を語ります。『親戚にミステリ作家がいまして、ソイツに誘われる形でマルチプレイ(複数人数での同時ゲームプレイ)をやったことがある』と語る加茂は『一年ほど前』に『竜泉佑樹(りゅうぜん ゆうき)から連絡を受けた』時のことを振り返ります。『青葉遊奇(あおば ゆうき)というペンネームで作家デビューし』た佑樹から『「ミステリ・メイカー」でオリジナルの事件を作ったので、遊びませんか?』と連絡を受けた加茂は『VRゲームに時間を費やす』のに乗り気でない一方で『妻の伶奈が嬉々として招待を受けた』ためやむなく佑樹の家に出かけます���早速『VRゴーグルと手袋型コントローラを装着し』た二人にゲームの説明をする佑樹は『VR空間に入』った二人に『お二人には「探偵役」として、僕が起こした事件を解明して頂きます』と役割を告げます。そして『問題編として提示されたのは、オーソドックスな密室殺人』でした。『「犯人役」は佑樹と分かっているので』、『どうやって犯行に及んだか?』『何故そんな行動に出たのか?』『を解き明かす』というその趣向を理解した加茂ですが、『犯人役はVR空間で実際に犯行に及ぶことで問題編を作る仕組みになってい』ると聞いて『ということは、犯人役は密室トリックなら密室トリックを…実際にゲーム内で実行しないといけないのか』と驚きます。『おい、遊ぶのにめちゃくちゃ時間がかからないか?』と訊く加茂に『そこがいいんですよ。中にはプレイに半日以上かける猛者もいます』と答える佑樹。そんな記憶を思い起こしていた加茂は『あの時は、探偵役が勝ちました』と『思い出し笑いを浮かべ』ます。そんな加茂に『素晴らしい…。やはり、いくつもの冤罪事件を明らかにしてきた方は推理力が違いますね。「アンソルヴド」の記事、毎回楽しく拝読していますよ』と話す椋田。『十年近く連載を続け』てきた『アンソルヴド』で『不可解な結末を迎えた事件について資料や新たな証言を集めたり』することで『新解釈を見つけ』、結果として『取り上げた事件の』中から『再審が認められて逆転無罪が確定したものも出てき』ている加茂は『逆転無罪の立役者』として知名度が上がっています。『まるで本物の名探偵みたいだ』と言う椋田に『皮肉の棘を感じ』る加茂は、『…そろそろ、本題に入りませんか…世界有数のゲーム会社が、何だって俺みたいなジャンル違いのライター風情に用があるんです?』と返します。『あなたには人を殺してもらいたいのです』と話し出した椋田は『加茂さんにはオリジナルの事件をコーディネートしてもらいたいんです。…もちろん、報酬もしっかりご用意しますので』と説明を始めます。『二〇二五年二月に、「ミステリ・メイカー」の続編「ミステリ・メイカー2」の発売を予定しています。そのプロモーションの一環で、特別な試遊会を企画しているのですよ』と続ける椋田はそれが『クローズドなイベントになる予定』と告げます。『クローズド・サークルと言いかえた方がいいかも知れません』と補足する椋田は『思わず顔を歪める』加茂が『身震いしたことに気づ』き、『あれ、おかしいなぁ?加茂さんには間違いなく喜んで頂けると思っていたんですが』と続けます。そして、『推理力が高い人間ばかり集めて「ミステリ・メイカー2」をプレイしてもらう』、『現実に存在する素人探偵を集めて頂上決戦を行う』、『招待するのは、加茂さんも合わせて計八人。その人数で「探偵役」「犯人役」といった役割に分かれてマルチプレイをして頂きます』と説明を続ける椋田に、『まさか、八人を別荘か館にでも集めるつもりじゃないですよね?』と訊く加茂。それに『そのまさかです』と『瀬戸内海の戌の島に』ある保養所のことを説明する椋田は、『立地的にもクローズド・サークルに向いている』と補足すると、『試遊会の成功は、犯人役の手腕にかかっている』、『その大役をぜひお願いしたい…加茂さんなら、きっと最高の犯人になれるから』と続けます。『なし崩し的に「犯人役」を引き受けることになった』加茂が『クローズド・サークル』な『VR空間』の舞台で奮闘する姿が描かれていきます。
“「犯人役を演じてもらいたい」と、世界有数のゲーム会社・メガロドンソフトから依頼を受け、VRミステリゲームのイベント監修を請け負った加茂冬馬。会場に集ったのは『素人探偵』8名、その中には「幽世島」の事件に関わった竜泉佑樹もいた。だが、イベントは一転、探偵と人質になったその家族や恋人の命を賭けた殺戮ゲームへと変貌を遂げる”と内容紹介にうたわれるこの作品。デビュー作「時空旅行者の砂時計」で第29回鮎川哲也賞を受賞された方丈貴恵さんの代表作でもある同シリーズ3作目となる長編小説です。
そうです。この作品は「時空旅行者の砂時計」に連なる3部作の一作という位置付けの作品でもあるのです。まずは、そんなシリーズを振り返っておきましょう。
● 方丈貴恵さん〈竜泉家の一族シリーズ〉
・「時空旅行者の砂時計」(2019年10月11日刊): 2018年から1960年へと”タイムトラベル”した主人公の加茂冬馬が妻の祖先である竜泉家を襲った”死野の惨劇”の真相究明に立ち向かう物語。
・「孤島の来訪者」(2020年11月30日刊): 謀殺された幼馴染の復讐を誓う主人公の竜泉佑樹が、ADとして”無人島”のロケに参加する中に巻き起こる連続殺人事件に立ち向かう物語。
・「名探偵に甘美なる死を」(2022年1月8日刊): 世界有数のゲーム会社から試遊会における犯人役の依頼を受けた主人公の加茂冬馬が親戚の竜泉佑樹らとVR空間と現実世界の殺人に対峙する物語。
1作目刊行後、およそ1年に1冊のペースで続編を生み出されて来られた方丈さん。もちろん、その裏にはこのシリーズの人気のほどがあるわけですが、残念ながらその翌年に続編が続くことはなく今に至っています。内容的にこの作品までで一つの区切りを見せることからこのシリーズは3部作として一応完結ということなのかと思います。
そんなこのシリーズは『クローズド・サークル』の設定が大きな特徴の一つです。「時空旅行者…」では外部に繋がる橋が落とされた別荘、「孤島の…」では”無人島”が舞台となるなど、その舞台設定は『クローズド・サークル』の醍醐味をたっぷりと見せてくれます。そして、この作品ではこんな設定がなされています。
● 『クローズド・サークル』な設定
・メガロドンソフトの保養所
・戌乃島はK港の沖六キロにある、面積一平方キロほどの有人島、島の人口は六十人ほど
・住宅地は島の北側に集中しており、南側にあるのはこの保養所関連施設と朽ちかけた遊歩道だけ
・隣の建物で個別に身体チェックを受け、スマホなどを没収、回収したスマホ等は分厚いフェルト袋に入れられ、頑丈そうな黒い箱に収められた
・腕時計や財布まで回収
いかがでしょうか?「孤島の…」では”無人島”を舞台とした『クローズド・サークル』が設定されていたのと比べると一見、なんだか拍子抜けしてしまいます。一方、このシリーズでは「時空旅行者…」で”タイムトラベル”、「孤島の…」では”未知の生物”というようにその作品特有のプラスアルファの要��が盛り込まれているのがもう一つの特徴です。この作品でその要素に当たるのが『VRミステリゲーム』です。そして、このゲームの設定こそが『クローズド・サークル』を強固にしていくのです。
● 『VRミステリゲーム』とは
・直径二・五メートルほどの白い球状の全身型VR操作用装置、RHAPSODYを使ってミステリ・メイカー2に入る
・VR空間ではプレイヤーの動きに合わせてアバターとして活動する
・VR操作スーツが触覚・痛覚と温冷感を再現
そして、このVR空間=『傀儡館』の外は虚無という設定です。また、そもそもの『現実空間』自体、
・手首に巻かれたスマートウォッチは『死の罠』つきの特別仕様で、中に毒針が仕込まれている。毒針はリモートでいつでも起動可能
→ メガロドン荘から脱出を試みるのは、重大なルール違反としてこの起動対象となる
という設定がなされています。ある意味で”無人島”以上に『クローズド・サークル』な設定と言えると思います。いずれにしてもこの作品はこの『VR空間』がキーになります。一方で、この作品を読むに当たっては必ずや好き嫌いが大きく分かれるような気がします。それは、『ミステリゲーム』もしくは『VRゲーム』をやったことがあるか、もしくはそれが好きかということと直結するものです。実のところ私は『ゲーム』自体ほぼやったことがなく、ましてや『VRゲーム』など全く縁のない日々を送っています。そんな人間には以下のような記述が頻出するこの作品のハードルに少し高いものがあると感じました。三つほど抜き出します。
・『VR操作スーツには、高性能なモーションキャプチャー機能がついていた。そのおかげで、プレイヤーの動きが正確に読み取られ、アバターに反映される…』。
・『フリーズしているのは、現実世界でVRゴーグルのバイザーが上げられたせいに違いなかった。バイザーが目から外された為に、アバターがポーズ(一時停止)状態になったのだ』。
・『RHAPSODY内部の湾曲した太く黒い柱にもたれかかるように座る。すると、自動でジャックとプラグの位置が調整されて同期がスタートする仕組みだ』。
このような記述がこの作品には全編に渡って散りばめられています。上記した通り私にはハードルが少し高く感じられるのですが、一方でこの記述を見て目を輝かせられる『VRゲーム』大好き!という方もいらっしゃると思います。そうです、この作品はそんな貴方に超オススメ!な作品だと思います。
そんな物語は、方丈さんらしく、期限のある『クローズド・サークル』な世界の中に展開していきます。
『VR空間である傀儡館をメインの舞台とし、現実世界のメガロドン荘にもまたがって、二重のクローズド・サークルで行われます。そして、このゲームが終了するのは、二日後の二十四日の正午…』
そんな前提設定の中で、椋田によって集められた八人の面々が『VR空間』と『現実空間』を行ったりきたりしながら『ゲーム』に関わっていきます。
『前提として、君たちの中には「探偵役」「犯人役」「執行人」の三種類がいます』。
『クローズド・サークル』な設定の中で、お互いに疑心暗鬼を��んでいく面々。そして、一人、また一人と『VR空間』、『現実空間』のそれぞれで誰かが死に追いやられていきます。誰が『犯人』なのか?誰が『執行人』なのか?そして、その『犯行』の手口は?物語は、上記した『VR空間』の設定の妙も見せながら展開していきます。
さて、そんなこの作品の主人公は1作目の「時空旅行者…」で主人公を務めた加茂冬馬が再登板しています。また、2作目の「孤島の…」で主人公を務めた竜泉佑樹も登場します。そして、この作品独自に別の主人公が登場するわけではないことから嫌が上にも読者の注目はこの二人に集まります。ただし、ダブルキャストではなく、あくまで加茂が全編通しての主人公、一方で佑樹にも美味しい役割が与えられていますので佑樹ファンの貴方にも満足いただける作品になっていると思います。私は、「孤島の…」のレビューで、「孤島の…」は必ずしも「時空旅行者…」を読まなくても楽しめると記しました。それは、「孤島の…」では、加茂ではなく佑樹という別の主人公を用意し、「時空旅行者…」との関係性が極めて薄い物語が展開したからです。しかし、この作品は違います。そもそも加茂が主人公ですし「時空旅行者…」が前提となる展開も肝心な部分で登場します。また、佑樹がどういう人物であるか、どういった修羅場を潜り抜けてきたかを知っているか否かで随分と読み味が変わってくるようにも思います。
ということで、この作品を読む前に、必ず「時空旅行者…」と「孤島の…」の両作を読むようにしましょう。3冊合わせると文庫本1,300ページという圧倒的物量のシリーズ作ですが、3部作としてそれぞれに面白い要素を盛り込んだ読み味たっぷりの充実した読書の時間を味わえると思います。そして、そんな3部作のトリを務めるこの作品に用意された結末。そこには、3部作の世界に魅了されてきた読者が思わずニンマリするこのシリーズらしい物語が描かれていました。
『どうして、竜泉家の人々はこれほどまでに異常な事件に巻き込まれる?「竜泉家の呪い」は本当になくなったのか』
そんな思いの中に、新たな『クローズド・サークル』な世界で推理を働かせていく主人公の加茂冬馬。この作品にはそんな加茂が『VR空間』と『現実空間』を行ったり来たりしながら次々と生まれる謎に対峙していく姿が描かれていました。『VRゲーム』が好きな方にはたまらないであろうこの作品。そうでない方には頭の中が少しこんがらがるこの作品。
あまりに緻密な物語設計にこのシリーズの魅力を改めて感じた、そんな作品でした。
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《竜泉家の一族シリーズ》第三弾。一作目の加茂冬馬と二作目の竜泉佑樹が共演する嬉しい筋立て。VRゲーム「名探偵に甘美なる死を」の中で連続殺人が起き、そのからくりと犯人を探偵が解く。
開発者の椋田千景に犯人役を指名されたのは加茂。招待される探偵役の中には、竜泉佑樹がいた。
ゲームの中だけの事件のはずが、主催者の復讐のために、探偵自身とその家族や恋人の命を賭けたデス・ゲームへと変わった。生還するには、現実世界とVRの両方で起こる事件をすべて正しく推理しなければならないという。
最初は緊迫感があり、どんどん読み進められたが、途中からそれが薄らいだのが残念。VRで起こる事件の方は犯人側からの視点になるので、驚きがあまり無いせいかな。
また、集められた探偵たちが主催者曰く「素人探偵」なので、鋭い頭脳戦のようなものが感じられず、特に不破さんの推理などとても人間臭くて驚いた。探偵たちもVR事件の方は正しく推理してしまうと犯人役の加茂が主催者に殺されてしまうので、遠慮する様子が描かれていて、そこも少し残念。
役割分担が「犯人役」「執行役」「探偵役」と入り乱れており、しかも人数が複数。舞台もVRと現実の館の両方。そして、主催者は自分の興が乗れば推理が一度間違っても探偵役におまけしたりする。かなり混乱しながら読んだ。
ラストはやはりどんでん返しが複数あって良かった。《竜泉家の一族》に平穏あれと願いつつ、四十五年後の話も期待しています。
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めちゃくちゃ面白かった。
竜泉家シリーズの完結作。ミステリ・メイカー2の試遊会に招待された加茂冬馬、竜泉佑樹を含む8人の素人探偵達。しかし彼らを待ち受けていたのは楽しい試遊会などではなかった。それぞれ人質を取られてしまいVR空間と現実世界で起こる事件を解決しなければならなくなってしまう。
竜泉家シリーズではお馴染みの読者への挑戦とクローズドサークル。さらに3部作の完結編という事もあり孤島とVR空間の2重のクローズドサークル、2つの読者への挑戦とボリューミーになっていて読み終わった後の満足感がすごい。
今回のトリックも先入観を捨てて考えなきゃいけないようなトリックだった。1作目の砂時計は1つしかない、2作目はマレヒトが1人しかいない、今作は犯人役が1人しかいない、自分が今いるのは傀儡館、本当の椋田千景は誰なのかと、自分が前提としているような事がひっくり返されるのがこの竜泉家シリーズの特徴だと思う。それに人の身長が変わったり、気圧を下げたり、自分がVR空間にいるように錯覚させたりとトリックの規模がデカくてぶっ飛んでてめちゃくちゃ面白かった。
それに、毎回この人が犯人だったら面白いなーって人が犯人で期待を裏切らない。今回の東柚葉(千景)も終始いい人キャラだったから犯人だと分かった時はびっくりした。
最後にマイスター・ホラが出てきたのは激アツだった。それに加茂がマイスター・ホラを渡した少年が乾山だったと判明したのも良かった。
ここまで3作品読んできた中だと2作目の孤島の来訪者が1番好き。竜泉家シリーズはどれもめちゃくちゃ面白かったし大満足。
最高だった。