家庭裁判所物語

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家庭裁判所の父：宇田川潔
その下で働いた裁判官：内藤頼（ごんべんに宣言）
新宿御園も明治までは内藤家の土地だった。
内藤の妻は西郷従道の孫
石田和人も、思想的には保守だったかもしれないが、裁判所の独立を非常に重視し、介入しようとする政府には抵抗した。

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家庭裁判所というアイディアが生まれて実際に家裁が誕生し、動き出していく様子、昭和40年代の少年法改正議論とその後、東日本大震災のときの仙台家裁の話などが、描かれていました。
いかに家庭裁判所というアイディアが画期的だったか。そして家裁スタートの際のみんなのアツい気持ちと活動。
改正議論では、対象年齢を18歳に引下げる、検察官先議を導入するなどの法務省案と裁判所含めたバチバチの攻防。
少年事件も時代背景を映していろんな時代があったんですね。
知らなかった家裁の歴史も知ることができて、とても面白かったです。

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全てが生まれできまるのか？
そうではなく教育に可能性はあるのか？
教育に可能性があるなら、同様に更生は可能なのか？

敗戦後、戦災孤児の浮浪児が当たり前の時代であった。
裁判官（山口 良忠）が闇米を拒否し、法令遵守の結果
栄養失調で餓死してしまうような時代である。
少年による刑法犯の検挙者が11万人を超え、
この大半（8万人）の罪名は窃盗だった。

もし全てが生まれで決まらないとしたら
後天的要素、環境要因の改善に力を尽くせば
救えるのでは？より良い社会が作れるのでは？

家庭に光を、少年に愛を。



裁判所は社会福祉や教育機関ではない。
ならばと、宇田川（最高裁初代家庭局長）や内藤
（現代司法制度の礎に尽力、家裁所長）、三淵（日本初の
女性判事及び家裁所長、初の女性弁護士の一人でもある）
らが理想に燃えて創設したのが家庭裁判所である。

家裁には「家裁の5性格」があり、これは家裁の理念に通ずる。
わたしはこれを大凡以下のような内容と理解した。

1.家庭の調整、少年の保護
後天的要素、環境要因の最たるものは家庭。
少年を取り巻く家庭環境をできるだけ調整する。
それとともに、少年が社会に害をなしたり、
害されることから保護をする。

2.家庭にとって第二の親
部外者のお役所仕事と感じられるようではダメだ。
親しみを感じられる、尽力する存在であるよう努める。

3.少年や家庭を安直に悪者にせず
生まれながらにヤク中になると決まっていないなら
ヤク中となる後天的要素、環境要因が解決対象。
ヤク中は治療対象と理解できる。
安直に問題原因を人に求めず、科学的姿勢を持つ。

4.裁くより助け、教え、育む
家庭事情、したがって少年、親、地域社会を助ける
真摯な教育者としての役割を果たすことが肝要。

5.各所と緊密な連携
これらを現実のものとするには家裁が一人相撲してもダメ。
教育や更生に可能性があるという前提を共有している
組織や人々と、緊密に連絡して協力する。



理念を形にするには、少年、家庭、社会などをよく知る必要がある。
つまり、現実に対処するために、調査官を育成していく必要性がある。

調査官は非行を犯した少年の生い立ちや環境要因などをつぶさに調べる。
裁判官に（行動科学の知見など）多面的な判断材料を与えるためである。

調査官は多様な見識が必要で、裁判官とは別の視点を持つ必要性もある。
家裁調査官を育成するにあたり、講師は一流ではなく、
日本一でなければダメだと理想の研修所を目指した。
当時の調査官は敵性外国語として英語が排斥されていた世代
であるが、見聞のためアメリカやイギリスの家裁にも派遣した。

研修所では裁判官を講師として動員しても、教官にはしなかった。
これは、裁判官が教師、調査官が生徒では理想に外れるからである。



人足らず物足らずでも脈々とこうした理念を受け���いできたのが
現代の家裁という思うと、少し家裁を身近に感じられる気がする。

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戦後の多くの浮浪児を救うためという、当時の職員たちの強い信念が感じられた。
家裁は司法では表立って目立ちにくいが、こうやって熱意を注いでいる人も多いと、わかってもらえるといいなと思う。

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家庭裁判所の誕生から、その役割、後半は少年法改正論議（検察官関与、青年層構想など）について、歴史文書・議事録等に基づきつつ物語として仕上げたもの。家庭裁判所の父と称される宇田川潤四郎、女性初の法律家・三淵嘉子など登場。

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戦後日本の混乱した中でうまれた家庭裁判所のはじまりから、1970年代の少年法改正議論まで、分かりやすく丁寧に書かれた一冊。家庭裁判所に馴染みのない私にも、初期の理念がよくわかった。現在に至っても、家事審判、少年処遇にまだ現場の苦労が多いことだろうと思うが、とっつきやすい論調に安易に堕さず考えていきたい、と改めて思う。

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家庭裁判所の誕生譚を分かりやすく描いている。家裁を軌道に乗せるべく理想を持って熱く走り抜けた方々に対しては頭が下がる思いです