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商品説明
浦島太郎や「兎と亀」などの昔話によって、あるいは長寿の象徴として親しまれてきたカメのイメージを歴史と民俗に探る。古代の亀卜の方法から亀にまつわる信仰と迷信、鼈甲細工やスッポン料理まで語る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
矢野 憲一
- 略歴
- 〈矢野憲一〉1938年伊勢市生まれ。国学院大学文学部日本史学科卒業。伊勢神宮奉職。神宮禰宜、神宮司庁文化部長、神宮徴古館農業館館長を経て現在、「五十鈴塾」塾長。著書に「伊勢神宮の衣食住」など。
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このシンプルなデザインがいいですねえ。話の方も、色々な逸話がいっぱい出ていて。こんな文章を神宮司庁文化部長が書いちゃうんですか
2005/09/15 20:00
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前から気にしていたのが、法政大学出版会のこのシリーズです。大きな書店や図書館でシンプルなデザインの〈ものと人間の文化史〉を見るたびに、私の中の知識欲というか好奇心が蠢きます。読みたい、知りたい、伝えたい。でも、法政大学っていう堅い名前とそっけないようなカバー、そしてほとんど一文字のタイトルに近寄りがたさを感じていたのも事実です。そして、タイトルに『亀』という字を見たとき、読んでもいいかな、って思いました。
ま、著者の経歴を見ますと、1938年伊勢市生まれに、なんだ年寄りジャン。国学院大学文学部日本史学科卒業には、け、今どき右翼?伊勢神宮奉職に、なに、国家神道?神宮禰宜に、なんだ普通の社会生活してないじゃん、神宮司庁文化部長には、これって公務員?神宮徴古館農業館館長って天下り?「五十鈴塾」塾長に、街頭宣伝カーのうるさいやつ?なんて思うんです、不遜にも。
で、これがすらすら読めちゃう。しかも矢野のはなしっぷりが、いかにも庶民的。難しい漢字は、亀にちなんだ事典部分では出てきますけれど、そういうのはルビ振られていますし、下世話なところもありますし。たとえば、亀と鼈の本質的な違いとかも、わかりやすいっていうかいい加減ていうか。
まず目次を見ますよね。はじめに、があって、第一章「古代の亀」です。神話、昔話、亀甲文字などお馴染みのことが満載です。第二章「亀の文化史」では、いよいよ明日香の亀石や聖徳太子といった歴史時代に入ります。
第三章「亀の昔話」では、兎と亀の話のバリエーションなどが示され、第四章「スッポンと鼈甲」では似たもの同士の違いや、眼鏡のこと、第五章「亀のエピソード」では紋章など美術的なこと、第六章「亀の歩みはのろくても」では亀にちなんだ様々な言葉が出てきます。
伝奇小説やガメラなんかには必ず青龍、白虎、朱雀、玄武という「四神(しじん)」の話が出てきます。東西南北の四方の神のことで東は青龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武です。漢字だけではどんな動物か分らない玄武、これが亀のことです。SF、伝奇小説ファンはこれだけで涎たらたらです。そこもしっかり紹介されています。
鼈料理、私は食べたことはありませんが、一度、仕事の関係でご馳走になった、という夫に言わせると、ほんとうに美味だそうでるが、やはり頭とオチンチンを食べてください、と出された時はかなり抵抗があったとか。でも、気合で食べたらただただ美味しいだけ、自分の持ち物を連想するからグロになるだけだ、などと申しております。そういうことも書かれています。
世界の伝説中の亀のはなしも、日本の在来種を駆逐しかねない外来種のはなしも、亀のつく言葉も(亀戸、亀有といった地名や亀田といった会社の名前は無かった気がしますが)、亀を食する人々の差別?のことも書かれていて、盛りだくさんです。ただ、亀についてはわかったものの、矢野の経歴を見る限り、どうしても後に国家神道の影がちらつくんですね。
こんな面白い話を笑顔でしていた人が、いざ皇室のことにでも触れようものなら顔つきががらっと変わって、右翼然としたり、街頭演説カーで脅しをかけたり。勿論、改憲賛成で国民徴兵は当然、亀のルーツをもとめて海外派兵、なんて平気で言いかねない。
この時期の右翼は自暴自棄になっていますから恐いです。「五十鈴塾」塾長、気になりますよね。なんだか殻の中に隠れながら虎視眈々としている、もしかして亀って矢野のことだったりして。
浦島太郎や「兎と亀」などの昔話によって、あるいは長寿の象徴として親しまれてきたカメのイメージを歴史と民俗に探る。古代の亀卜の方法から亀にまつわる信仰と迷信、鼈甲細工やスッポン料理まで語るものと人間の文化史の一冊。