紙の本
『あしたの幸福』
2021/04/22 20:29
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
母を知らず、父とふたり家族の外崎雨音(とざき あまね)、中学2年生
父が事故であっけなく死んでしまい、父と暮らしていたマンションに住み続けたいと願っていると
「お困りでしたら、わたしと住みますか?」
電話してきたのは国吉さん、雨音の実の母だった
雨音と国吉さんの風変わりな共同生活に、父の婚約者がくわわって……
《家族? 友達? 恋人?・・・どんな名もつかない間柄がつむぐ糸の行方は》──帯のコピー
『朔と新』で野間児童文芸賞を受賞した いとうみく の受賞後YA第一作、2021年2月刊
《人と人との物理的な距離に対する考え方が一変している今、心の「間合い」を描いた物語。》──編集者コメント
肉親をなくした少女のアンビバレントな心、彼女を思う周囲の人々の関わり方、“欠陥人間”とのコミュニケーションなど描写に深みがあり、人物像がくっきりと浮かび上がってくる
また
・いろんな声や笑い声に混じって、パコンパコンとすのこの上に上履きを落とす音が響いている。
・男子数人が上履きの下に雑巾を置いて、長い廊下をスケートのように滑っていた。
などディテールの描写にリアリティがあり、読みごたえのある作品にしあがっいる
紙の本
続編希望
2021/11/16 10:06
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投稿者:とりまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
いとうみくさんは、割と重い状況にいる子供達のお話を書かれますよね。
廉太郎と雨音の話と、帆波さんと国吉さんとの共同生活の話はそれぞれ分けて、もっと突っ込んで読みたかったかも。
赤ちゃんが生まれた後や、国吉さんと交流を深めていく話を。児童書だから難しいですかね。
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事前情報全くなしで読みましたが、最初からひきこまれて一気に読み終えました。
恵まれた環境とは言えない、むしろ、「普通」に照らしてみれば「大変」な状況なのでしょうが、読んでいて幸せさえ感じられたのはなぜなのかー私自身も日頃の生活で息苦しさを感じることが少なくない中、国吉さんの態度や言葉にスカッとするものを感じたからかもしれません。
内容確認する前に購入してしまったけれど、間違ってはいなかったと思います。
高学年以上におすすめ。
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お父さんを突然失くした雨音。
そこに出現した産みの母「国吉さん」。
その後一緒に住むことになる父の婚約者帆波さん。
雨音の親友唯も廉太郎も中2なのに十分大人の考えを身につけている。
にしても産みの母国吉さんは、絵に描いたような発達障害。けれどもこの先雨音と暮らすことで、生きることが楽になっていくんじゃないかな。
ついでに父も結構発達障害入っていると思う。相手の気持ちを忖度できないあたり。
それに比べて、雨音は定型発達ゆえに気を回し過ぎるところがけなげ。
ついでに、廉太郎のヤングケアラーっぷりにも胸をつかれる。
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父子家庭の雨音、中2の夏休みに突然父が死ぬ。1人になった雨音は昔出て行った母と住むことになる。そこに父の再婚相手だった帆波が妊娠もあって三人で住むことになる。実の母の不器用な性格が人間関係の距離感を狂わせ、逆にぎこちなさを修復していく。三人の個性豊かな女性たちの暮らしがとても良い感じだった。
父はいなくなってしまったけれど、きっとこの先もやっていける、そんな未来を信じる事ができる、そんな素敵な物語。
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父をなくした雨音は、父の元妻である国吉さんと暮らすことになる。この人のユニークさがすばらしい。なんでもきっちり決めないと動けないなど一般的には問題があるとされることはあるけど、それでもいいのだ、と思う。新しい家族のかたちを感じさせる。
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それぞれの立場や思いを考えると辛いけれど、お互い一緒にいることで保たれている。辛いときに一緒にいられる人って、そのあともずっと一緒にいられる、未来につながる人かもしれない。
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父が交通事故で亡くなった。
幼い頃、母は離婚し、父と私を置いて家を出た。
父には1ヶ月後に結婚を控えた女性がいたが、彼女も一緒に事故に遭い今は入院している。
おいでと言ってくれる叔母がいるが、引き取る余裕なんてないのはわかっている。
何よりも、この家に居たい。
中学生の雨音はどうにも身動きが取れなくなったところを、実の母・国吉さんと暮らすことになる。幼馴染みの蓮太郎のさり気ない気づかいに息をつき、父の彼女だった穂波さんとも新しい関係を結びなおしていく。
〇ずれたりすれ違っているところもあっても、よい家族なのだなあと思う。国吉さんはADHD の自分を律して、穂波さんはちゃっかり大らかに、雨音ちゃんは真面目に少しずつ柔らかな世界と自分を見つけられるのではないか。
連太郎くんは、これから学生の時代をしっかり味わって欲しいな。
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よかったと薦められて読んでみたら、一気読み。うまくいえないんだけど、ほんとによかった。
周りからみたら普通でないのかもしれない、かわいそうと思われているのかもしれない。でもそんなの他人が決めることじゃない。雨音と国吉さんとのやり取りも、帆波さんも、廉太郎も、好きだなぁと思った。何が幸せかなんてわからないけど、読んでてあったかい気持ちになった。チェッカーベリーの花言葉、素敵なタイトル。
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父子家庭の父が亡くなりひとりぼっちになった雨音。
テーマ的には泣かせにくる系なんだけど、風変わりな実母、国吉さんの登場、そこに父と結婚するはずだった帆波さんまで加わり、なんだか美味しそうな場面もあり、普通じゃないけど、アリ!な暮らしができていく。
友人の連太郎くんもいいし、するする〜と読んでしまった。
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3人で始まった奇妙だけれど、暖かな暮らし。
それぞれがそれぞれを想い合いながらしあわせのために自分を貫いて、寄り添い合うくらしのかたち。
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いとうみくさんの本は
小学校高学年の女子にファンが多く、
図書室にもかなりあるが、これは図書館の
ヤングアダルトコーナーに置かれていた。
他人から見ると、ありえない3人の同居、
抜け落ちた家族の穴を埋めるように、
どんどんしっくりとなっていく。
いい人ばかりじゃないところが、好きだった。
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父親が交通事故で亡くなってしまい、ひとりになってしまった雨音。
今の家に住み続けるために小さい頃に別れた母親に保護者になってもらうことに。
ちょっと不思議な生活が始まる。
そこへ父親の婚約者も同居することに。
別れた母親がいい。
人がどう思うかではなく、自分がどうしたいかで生きている。
もちろん他人との軋轢をうむ。
でもこういう人がいちばん裏表がなく言葉に嘘がないのかもしれない。
そういう言葉って折れかかった心には逆に優しいのかも。
廉太郎は国吉さんに救われてのかな、って思った。
雨音も救われながら、静かに暖かく見守られながら成長していくだろう。
印象に残ったのは帆波が雨音の父親が事故のとき、お腹の赤ちゃんをかばったのではないか、と言ったとき、国吉さんは危ないと思ったときはとっさに身体が動き隣の人をかばうのではないか、と言った場面だ。
すごく当然のことを言っているがこの言葉で雨音は救われたのでは、と思う。
意図した言葉ではないかもしれない。
でも正直な言葉が雨音の父親への気持ちを守ったのではないかなあ。
国吉さんはやっぱり雨音の母親だ。
国吉さんと雨音のこれからが穏やかなものになりますように。
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ナンテン(の実)の花言葉は
「幸せ」「私の愛は増すばかり」「よき家庭」
なんだそう。
雪うさぎは溶けてしまったけれど、眩しい日を浴びてキラキラのナンテン(幸せや外崎さん(へ)の愛)がそこに残っていたんだね。
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父とふたりだけで暮らしていた中学2年生の雨音は、突然の事故で父を亡くしたあと、伯母の家でも施設でもなく、今まで通りの暮らしをしたいと思っていた。そんなとき、幼少期に父と離婚した実の母から「私と一緒に住みますか?」との提案があり、雨音はそれを受け入れることにする。国吉と名乗ったその人は、極端に人間関係に不器用で、母らしくもなく、直接的な物言いしかできなかったが、料理人をしているだけあって、料理はうまかった。父と婚約していた帆波が線香を上げに訪問してきたとき、父の子を妊娠しているから、雨音たちの家に同居したいと申し出る。帆波がそうしたいのならと雨音が承知して、前妻とその娘と婚約者との奇妙な同居生活が始まった。
無意識に周囲に距離を置いていた少女が、父の死によって、父やその婚約者だけでなく産みの母からも愛を受けていたことに気づき、もっと理解していきたいと思い始める物語。
******* ここからはネタバレ
いいお話のようなんですけど、この物語ならではの特異性に支えられている部分がかなり大きいと感じました。
まず、父の前妻と婚約者が、多感な中学2年生の少女と一緒に生活するというシチュエーションに驚きます。
まあ、肝心の父親が他界しているからこそ、前妻の国吉が一風変わったキャラクターだからこそできることだと思います。前夫の子どもを妊娠中の女との同居なんて、一般的にはしたくないことでしょうから。
そして、この父娘もすごいです。
父娘の父子家庭の場合、同性の親子のときよりもはるかに結びつきは固くなります。娘はある意味父の妻のような存在となることも少なくないので、後妻が受け入れられるのは相当難しいです。
さらに、もし愛情に飢えていた場合は、その不足分を新たな親に一気に求める傾向があるので、甘えや気を引くための反抗、本当に親と信じていいのかといった試し行為が見られることも多いです。
この物語の主人公雨音は、父親からしっかり愛を受けていたんだなと思うと同時に、父子家庭の父親が、娘と協力しているとはいえ、仕事と家事を”きちんと”両立し、不足なく愛を注ぎ、さらに自分自身も恋愛する時間とエネルギーがあることに驚きました。
また、雨音のオトナな考え方やふるまいが中学2年生らしくないと感じられてしまいます。
高校2年生ぐらいだったらありえるかなぁと思うんですけど。
さらに、帆波のわがままさ。
同じ男を愛した女がすでに血の繋がった娘と生活を共にしているのに、そこに割り入っていくとは。
しかも、春に出産が控えているとのこと。働けないばかりか家にいてもお世話になる存在ですよね。
いろんなことを気にしない国吉はいいとしても、新生児と一緒に広くない家に暮らすのは本当にたいへんだと思います。出ていってほしいと思っても、同居を了承した以上そうは言えない葛藤もあって、けっこう苦しい思いをするのではないかと今から心配してしまいます。
それに、春には雨音も受験生ですよね。プレッシャーの中、新生児に注がれる愛を、平然と見ていられるのでしょうか。
まあ、こんな危うい無責任感がいっぱいの物語ですが、これら登場人物の特異性に救われて、読後感は悪くないです。
特に、国吉さんがいいですね。慮ることのできない杓子定規の人ですが、そのために周囲はいらない気遣いから開放されて楽になっているようです。
辛い渦中にいる人たちに、どれだけの距離感を持って寄り添っていったらいいのか、このお話は考えさせてくれます。
ただこの3人の同居生活があまりにも理想にすぎるので、現実的に親子や養親子の問題に苦しんでいる人には参考にならないでしょう。単純に読み物としてならおすすめできます。
文章は平易ですが、状況理解ができたほうが楽しめると思います。しっかりした高学年以上の読書をオススメします。