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- カテゴリ:小学生
- 発売日:2011/10/01
- 出版社: 三起商行
- サイズ:26cm/40p
- 利用対象:小学生
- ISBN:978-4-89588-126-5
紙の本
氷河鼠の毛皮 (ミキハウスの絵本)
荒れくるう吹雪の十二月二十六日、夜八時、ベーリング行の最大急行に乗ってイーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったのか…。金の指環をはめた男、帆布の上着を着ただけの若者、...
氷河鼠の毛皮 (ミキハウスの絵本)
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商品説明
荒れくるう吹雪の十二月二十六日、夜八時、ベーリング行の最大急行に乗ってイーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったのか…。金の指環をはめた男、帆布の上着を着ただけの若者、きょろきょろと皆のはなしに耳をすます赤ひげの人、—彼らを乗せて、汽車はどこへ向かうのか…。【「BOOK」データベースの商品解説】
12月26日の夜8時。ベーリング行の最大急行に乗ってイーハトヴを発った人たちは、どんなめにあったのか…。厳しい冬の自然と、そこで生きる動物たちが人間に投げかける警告。宮沢賢治のメッセージを表現した絵本。【「TRC MARC」の商品解説】
厳しく冷たい冬の自然と、そこで生きる動物たちが傲慢な人間たちへ投げかける警告。
このおはなしは、氷がひとでや海月やさまざまなお菓子の形をしている暗い寒い北の方から飛ばされてやって来たのです。
12月26日の夜8時ベーリング行の列車に乗ってイーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったか、きっとどなたも知りたいでしょう。これはそのおはなしです・・・・。
人物の表情や衣服、冬の風景をダイナミックな構図でインパクトたっぷりに描いています。【商品解説】
著者紹介
宮沢 賢治
- 略歴
- 〈堀川理万子〉1965年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。画家。タブローによる個展を定期的に開催するとともに、絵本作家、イラストレーターとして活動。絵本に「きえた権大納言」など。
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紙の本
賢治の原作もですが、堀川理万子の絵も今までにはない感じがあふれていて、嬉しい予想外。絵本と言っても漢字がかなり多いので、お父さんお母さんがしっかりと読み聞かせて上げる必要が。でも、案外、読んであげるほうも楽しんだりして。なんたって、冒険小説ですから・・・
2011/10/15 23:21
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読書好きの知人から、「あなたのことだから原作、読んでいないと思うので」という注つきで贈られた本です。いやはや、古典や名作というものに背を向けてきた私のことをよくご存知で、確かに私の読書体験に宮沢賢治は入っていません。鴎外、太宰も読まずにきた私ですから賢治を読むはずがありません。ま、文庫一冊くらいは読んでいますが、殆ど未開拓ゾーン。
ということで、新鮮な気持ちで読みました。ま、絵本についている文章と賢治のそれが全く同じであるのか、それとも一部省略があるのか、比較もせずに多分、同じだろうという前提に立って書くのですが、これって冒険小説なんですね。いや、スパイ小説でもいいんですが、そんなものを賢治が書いているとは、本当に驚きでした。短いお話の上にミステリとくれば、お話の筋を紹介するのは野暮というものでしょう。
気になったので、出版社である三起商行(ミキハウスのことですが)のHPはどう紹介しているかと思って覗いてみると、これがまた一時代前の中央公論新社並みの手の抜きようで、ガックリ。宮沢賢治シリーズということばと、数冊の本らしいものの姿があるだけで、クリックしても開きません。書名で検索しても何も引っかからない。当然、シリーズ全体の内容も分かりません。出版がメインの会社ではないのは分かりますが、もう少し親切であってもいいのじゃないでしょうか、三起さん。
ということで、いつもなら装丁から入るのですが、今回はそちらをメインに語りたいので、先にごくごく簡単に内容紹介をしておきます。まずはカバー折り返しの文ですが
*
荒れくるう吹雪の十二月二十六日、夜八時
ベーリング行の最大急行に乗って
イーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったのか……。
金の指輪をはめた男、帆布の上着を着ただけの若者、
きょろきょろと皆のはなしに耳をすます赤ひげの人、
――彼らを乗せて、汽車はどこへ向かうのか……。
*
となっています。最大急行、というのがなかなか面白いです。何が最大なんだろ? なんて突っ込んだりして。で、その車両に乗り合わせたのは、指輪男、帆布若者、赤ひげだけではありません。15人の旅客が乗り合わせていました。一番は、やはり指輪男です。毛皮を着込み、二人前の席をとり、十連発のぴかぴかする素敵な鉄砲を持っているというのですから、目立ちます。イーハトヴのタイチ、と名前が分かるのもこの男だけです。
他の人はみな痩せているようで、帆布若者は自分だけに聞こえるように微かな口笛を吹いていて、船乗りです。赤ひげは北極狐のようにきょとんとしてすましています。他に、眉を深く刻んで陰気な顔を外套のえりに埋めている人、もう眠り始めた商人風の男、眼鏡を外したり時計をみている男もいます。葉巻をくわえている役人らしい男もいます。洋服のことで話し合う男たちを乗せた急行は吹雪の中を一路ベーリングに向かうのですが・・・
賢治の文章で引っ掛かったところが一か所ありました。たまたま読点がないために意味が通じにくい、それだけなんですが読速100頁/時の私としては、そういう箇所に来ると混乱するんです。え、だれが何だって? と。そこをそっくり引用したいのですが、ミステリの根幹にかかわる情報が出ているので、それは無理。じゃあ、頁だけでも書いておこうと思ったら、これがまた頁表記がありません。いやはや、困惑です。
閑話休題、漸くブックデザインと絵の話になります。デザインはタカハシデザイン室、ルビ監修は天沢退二郎、絵は堀川理万子。で、堀川理万子の絵ですが、今回はなかなか意欲的です。カバーにも本文の絵にも登場するオーロラがなかなかいい。カバーは白クマたちの上に小さく描かれていますが、本の中のオーロラは見開き頁を抽象画のように飾っています。この美しさはただものではありません。玄人好みではありますけれど、絵としての完成度はベストといってもいい。
それと吹雪です。これは扉に一か所、見開きで二か所あります。ちょっと吹雪で見えにくいのですが、下にちゃんと景色が描いてあります。それを吹雪で殆ど見えなくしてしまう。これって度胸いります。失敗したら下の絵から描き直さなければいけない。だって、上に雪を描くんですから。これが実にうまくいっています。もの凄い吹雪だなっていうのが、一目瞭然。それにしても大胆な筆さばきです。
もう一つが光の扱いです。冒頭のイーハトヴ駅の雰囲気が実にいい。堀川が絵を付けた本は基本的に明るいものが多いのですが、今回は原作のせいで夜の場面が目立ちます。なかでも、この駅舎で急行の到着を待っている人たちにあたる炎の温かそうなことといったら。それと、中ごろの列車の中から外を見るところ。船員の若者に当たる光は、炎でも日の光でもない、まさにルナティックとでもいいたくなる妖しさを感じさせます。その頁をめくると私が絶賛したオーロラの頁になります。
そして、今回特徴的なのがアングルです。下から見上げる絵が三枚あります。人間を大きく下から描いたもので、消失点は素直に上一か所ですが、その迫力たるや生半可なものではありません。特に最初の指輪男の絵たるや、もうこれだけでこの人物の性格や生活までもが伝わってくるようなもの。そして船員の躍動感あふれる姿。私が思ったのは映画『トランスポーター』。DVDのパッケージを連想しました。
今は下から見上げについて触れましたが、視点が上にある絵が三枚あります。これは左右と下の三つ消失点があって、ちょうど魚眼レンズを通して見たような不思議な雰囲気を醸し出します。空中を浮遊しながら車室を見ている感じというのが当たっているかもしれません。ちょっと気付きにくいですが見返しのモノトーンの、どこか海中を思わせる不思議な絵も、面白いです。堀川はこんな絵を描いたかしら、なんて思いもします。
そして雪の結晶です。これはカバーと本文中にも登場しますが、雪の結晶というだけではなく雪をまとった杉木立のようでもあって、一枚だけ雪山が見開きで描かれた頁がありますが、それと重ねてみることも可能です。堀川はいままでも、大胆な構図の絵を描いているのかもしれませんが、私としてはここまで勇気をもって取り組んだものを見るのは初めて。これは賢治の原作あってのものなのか、彼女のチャレンジなのか、気になるところではあります。
こうなると、堀川の絵がついた本もですが、このミキハウスの宮沢賢治シリーズそのものにも興味がわいてきます。カバー後の折り返しには、既刊と今後出るシリーズ本の名前が沢山出ています。いつか機会があれば読んでみたいもの。そういう人のためにも、HP、もう少し力をいれてもいいのではないでしょうか、三起商行さま・・・