紙の本
人の真の姿
2001/09/05 22:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みつはる - この投稿者のレビュー一覧を見る
珠玉の短編集である。戦時中、戦後を中心として露天の婆さんや力士、芸人をとりあげた様々なエピソードが淡々と描かれている。しかし淡々とした中で作者が時に書く人間が真に生きる姿とはこうではないかという部分にはっとさせられる。その独自の感性には驚嘆するばかりだ。特に「見えない来客」と「墓」という二編が出色の出来である。見えない来客には特にぞっとしてしまう。
紙の本
1977年泉鏡花賞受賞作
2016/03/18 17:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争を挟んで心にも体にも傷を負った人々が登場する。社会的に彼らは成功者とは呼べないかもしれない。しかし著者は独特のユーモアで、暖かい眼差しを向ける。
紙の本
おかしくも哀しい人物伝
2001/07/20 12:53
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「色川武大」とは『麻雀放浪記』を書いた「阿佐田哲也」のもう一つのペンネームである。
戦中、戦後の話が多く、そのなかにいろいろな人たちが登場する。神楽坂の露天商の中でもひときわ汚い格好していた婆さんや、打たれても打たれても前に出つづけ、パンチを打ち返し、かなりの歳になっても引退しようとしなかったボクサーなどなどである。それぞれのエピソードが生き生きとしており、登場してくる人物たちは可笑しくも哀しい。
投稿元:
レビューを見る
本名色川武大での、初作品集。現実と生理的実感、現在と記憶とを分離せず、体感的なひとつの現実として丁寧に掘り込んだ、「存在」の小説。
投稿元:
レビューを見る
チョー暗い。暗いし、じめじめしているが、作者が天然なのだろうか、冷静なのだろうか、それとも、出てくる人がいかれているせいか、思わず笑ってしまうエッセイ集。
っていうか、変な人が沢山いるとかいっているが、作者が一番変わっている。
あと、無頼って超かっこいい。
アチキも無頼で生きたい、無頼。
作者の別名は阿佐田哲也。麻雀の神様の若き時代を知るために読んでみる価値あり。
投稿元:
レビューを見る
文体が美しいわけではない。素晴らしい比喩や表現があるわけでもない。この作品に心惹かれる訳は、「怪しい来客」を通して描かれる作者の崩れてしまいそうな繊細さ。それゆえの葛藤である。「墓」は必読
投稿元:
レビューを見る
なにかの番組でダウンタウンのまっちゃんが「哀しくないと笑えない」というようなことを言うのを聞いたとき、なぜか高校のころ繰り返し読んだ、電信柱の話や、手術にまつわる「名医」や「若先生」の話が浮かんだ。けして良い方向には向かわないだろう固執や安堵、自分でもどうにもならない自分という得体の知れなさ、を苛烈なほど正確に見ている視線は、他人事に乗るようなおもむきで、これでは自分相手の心中だ。自分の頭に空いた穴に見投げするテの撞着を、また凝っと見ているような可笑しさは、なぜだかせいせいする。文章のリズムに乗せられながら、こんなのが気持ち良くて何度も何度も読んでるっていけないんじゃないか、と思いつつ、何度も何度も読んだ。いまでもたまに読む。やっぱり哀しくて淋しくておもしろい。
投稿元:
レビューを見る
「墓」を読んだ。出だしの文章が不思議で妖艶な印象だったので、グッと惹きつけられた。タイトルと初めの印象から、透明なつかみ所の無い話かと期待したが、意外と現実的で情が篤かった。男の人が書く文章だと思った。
投稿元:
レビューを見る
本当に上手い文章って、こういうモノを言うんだろう。
なんたる余韻というか。
色川氏の目を通した様々なインプット&アウトプット、その人間愛や達観に、痺れまくる。
戦後初期の混沌をベースに、そこに生きるニンゲン達の業や哀しさが、色川氏自身の生き様も含め濃縮している。
しかし、こんなにも鋭敏な感性と伍しながら生きた色川氏って、
あまりにも剥き身というか、例えるならば、皮膚さえ削がれていたかのようなクリアさというか鋭敏さであって、
とかく鈍感でこそ凌げる浮世を思えば、それはそれはきっと生き辛かったのではなかろうか、とも思う次第である。
否、だからこそ、アウトローに徹せざるを得なかったのか。
戦後成長から飽和、そして停滞の今こそ、凄まじいリアリティと共に読むヒトに迫り来る最高の随筆といえよう。
投稿元:
レビューを見る
本人も色々おかしいからゆえだろうけれど
彼が巡り合ってきたギリギリアウトな人々のエピソードの
連作短編集。
人々よりも色川さん本人のおかしな思考が見え隠れするのが好きだ。
電車や車に追われる感が怖いとか(´゚艸゚)∴ブッ
曲がり角から出てくるとびびるとか、老婆が怖いとか
目線は全体的に優しくてとても好感がもてるが、なぜか実に眠かった本でもある
投稿元:
レビューを見る
色川武大がマイブーム。匂い立つような文章。決して芳香ではないがすっと身体に馴染むような、匂い。、私の生まれる前の時代に気がつくとふと佇んでいるような気持ちになる。
投稿元:
レビューを見る
僕は漫画で哲也を知りました。色川氏は哲也と同じ人ですが、やはり、感情移入してしまいます。哲也よ!永遠なれ。透明な文体よ、いつまでも読まれ続けるのだ。
投稿元:
レビューを見る
幽霊が見えるとゆう人は物凄く優しく目が大きいとゆう自分法則があるが、ブダイさんもそうです。日の当たらないものに対する愛情深さは天下一品。
投稿元:
レビューを見る
異形巨躯な相撲取り、白痴の少女、一発屋の歌手、香具師のお婆さんetc...
世間で言う、「一風変わった人物」達を各章で取り上げ、各々のエピソードを色川氏の想像と感性を加えて語られた短編集。
色川武大。
幼き頃に容姿に劣等感を持った事を契機に、以後の人生をずっと劣等感と屈託に彩られた人生を送られたようだ。
人と馴染む事が出来ず、人と競争することも出来ず、人と同じ生き方を選ぶことも出来ず、だから、人と違った独特な生き方をしないと生きて行けないという苦い心情の中をもがき続けた人。
この色川さん、独特な生き方でなければいけないという一心から、
一時はスリになろうともしたような面白い方。
そんな厭世的な特色を持った方だが、この人は心から好感が持てるんです。
苦しくても辛くても、どんなに嫌であれ、どれだけ風変わりだろうとも、頑張って生きていた人。
厭世的な代名詞と言えば太宰治が思い浮かぶが、太宰治の場合はもっと押し付けがましくて可愛げが全く無いのだが、色川さんは、何と言うか健気さが感じられる。
本書で色川さんが取り上げた人物達はみな、
色川さんのように「生きにくい」人生を送った人達。
時に注目を浴び、時に嘲笑われるような人生を送った人達。
そんな人達を色川さんだからこそ分かる心情と優しい眼差しを持って描いた、不思議とホッと心温まる作品。
本当にこの方の作品は、色川さんの人生そのもの、「独特」です。
投稿元:
レビューを見る
どこまでが創作で、どこからが自伝なのか。作者の作品を初めて読んだので分からないが、とにかくその世界に引き込まれる。生きることを、そのまま文章に写し取ったような、肌に吸い付くような現実感と臭い。
(2014.10)